蛇谷北山〜巳年に歩く芦屋の最高峰

蛇谷北山山頂にて。1月4日以降、干支の山らしく
新しい山名プレートが設置されたようだ
平成25年 1月 4日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 毎年恒例の小生主催の干支オフ。目的地選定がそれはそれでなかなか難しいんである。
というのはささやかな新年会も兼ねているからである。つまり夕方には都会に戻っていな
くてはならぬ。少々きこしめすので当然のこと車は運転できないから公共交通機関が使え
ねばならぬ。こうして条件を絞ると思いの外、候補は少なくなる。巳年の今回も蛇谷ヶ峰
や丹波の蛇山がすぐに頭に浮かぶが、車でないと少々不便である。そんなことであれこれ
思いあぐねていると、六甲山系にその類の山があったことを思い出した。エアリアマップ
を広げると、ありました!蛇谷北山、標高846m。ほとんど無名の山だけれどなんと芦
屋市の最高峰なのだとか。しかも石宝殿の近くで初詣も出来てしまうという間のよさ。直
ちに決定の断を下したのは云うまでもない。(笑)

 阪急芦屋川駅、午前9時。きれいなトイレも整備されていて六甲登山の玄関口の一つ。
三が日明けの平日の今日も、幾組かのパーティや単独行の老若男女が電車の着く毎に集ま
り散っていく。電車の遅れなどがあって定刻より15分ほど遅れたが、当方のグループも
芦屋川沿いに坂道を北へ向かう。この辺りは芦屋市山芦屋町。ガレージだけで拙宅の敷地
を軽く凌駕する大邸宅も多い。(^^;

 まもなくアンテナを戴く鷹尾山が前方に現れるが、鷹尾山の道標分岐までしばらく高座
の滝方面へ進む。ほとんどのハイカーは直進して高座滝へ向かうようで分岐を右折してこ
ちらへ廻る人は少ない。ほどなく現れた階段道の前で防寒具を脱ぐ。寒いとの予報だった
が風も弱く存外暖かいのだ。高さ250m足らずの鷹尾山へ登っただけで額には汗が滲む
ほどである。

 鷹尾山の山道は緩やかなつづら折れのの上り坂。近隣の住民の散歩道になっているよう
で、今しも一人の小父さんが降りてきた。整備が行き届き、見晴らしのよい角にはベンチ
も置かれている。その一つがいい展望地だった。元日には多くの人が初日の出を拝みに登
ってきただろう。東南方向に昇る陽の光に白く輝く海と、阪神間の市街地が大きく広がっ
て、小休止にはちょうどいい。

 やがてサンTVとNHKのアンテナが並ぶ鷹尾山の山頂。これといって特筆するものは
ないが、城跡だけに山頂は平坦な小広場で、西側のロックガーデン、風吹岩方面の眺望が
よい。露岩を登っていくカラフルなハイカーの姿も認められる。

 道標によれば、荒地山まで1時間の道のり。まだまだ先は長い。小休止して北への尾根
道をとる。索道工事中の注意書きを確認しながら、広田西線bR9、仁川連絡線bR6、
そして新神戸線bS4と三つの高圧線鉄塔を次々と通過する。鉄塔の立つ場所というもの
は展望が良いものだが、新神戸線bS4の立つ辺りの360度の眺めは最高である。小さ
な露岩に登れば、遠く関空島の連絡橋まで見える。ここから見る鷹尾山は山頂部が人工的
に削られた台地で、いかにも砦があった感じがする。北はこれから登る荒地山の緑の中に
所々見え隠れする白っぽい岩肌が面白い。

高圧鉄塔から望む荒地山

 徐々に道が岩がちになる中を鞍部へ下り、高座滝への分岐を過ぎて登りに入ると、いよ
いよ荒地山の核心部、岩梯子と七衛門ーの岩登りだ。岩梯子は階段状に適度にでっぱりが
あり登り易いのであるが、問題は七衛門ー。阪神大震災で七衛門ーが崩れ、今は新七衛門
ーと呼ばれているが、ミニ「鬼の架橋」のような岩のトンネル。これが狭く、ザックを降
ろして先に押し上げないとまるで通過できない。貴重品を落としでもすると回収は到底不
可能なので、慎重に確かめながら通過する。後続メンバを待って岩の上から見下ろすと、
風に流れてきた細かい雪片が、陽の光を受けキラキラと、まるでダイヤモンドダストのよ
うである。
新七衛門ーから荒地山の岩場の核心部を見下ろす

 新七衛門ーから更に幾つか岩を乗り越えると、ようやく平坦となって熊笹が現れる。奥
池への小道を右に分けて、左へゆるゆるとした登り坂を行くと、何度目かの荒地山の頂で
ササに囲まれた小さな広場。時間も頃合いと見てここで食事とする。

 座っていると汗も冷えてきて寒い。それもそのはず手元の簡易寒暖計では気温は0℃で
ある。早々と片づけてザックを担ぐ。

 結構、時間をかけて荒地山まで来たから道半ばかと思いきや、木の間隠れに見える東お
多福山の草原とその向こうの六甲主稜線はまだまだ遠い。直線でも2kmくらいあるよう
だ。クマザサの中を抜けて、細流が横を流れるようになったら、左前方の繁みの奥から人
声も聞こえてきて、まもなく魚屋道と合流だ。途端に歩く人の数も増える。今回もナカミ
山はどこか判らずじまい。いつ来てもどこがそれだか分からない所だ。(^^; 

 北に折れてしばらく進むと雨ヶ峠への分岐が右に現れる。緩いだらだらと登る道が雑木
林に続く。やがて湿った鞍部状の場所に出たら芦屋ゴルフ場のカート道の下である。動物
除けのゲートがある。その先の植林下の休憩スペースでUさんと電話連絡が通じる。もう
土樋割峠に到着して待っているらしい。もう1時間近くかかるだろうというと、アルコー
ルで暖を取って待っているという。申し訳ないがもうしばらくご辛抱願おう。(笑)

 ようやくきつい登りになってきて、人工林の下をジグザグに上がる。今回はこの雨ヶ峠
の手前がなんだか一番長く感じた。東屋とベンチで憩うハイカーを見て、ようやく雨ヶ峠
に着いたことを知る。この先、谷コースをとっても東お多福山コースをとってもあまり時
間は変わらないとの事なので、煙と○○は何とやら。当然、展望の東お多福山コースを採
ることにする。

 四等三角点『天ヶ峠』横を抜けると、六甲でも珍しい草原の山、東お多福山の稜線で、
谷越しに西お多福山や六甲最高峰が望めるようになる。そろそろ次が最高点だろうと頑張
って辿ればその背後により高い部分が現れてどこが頂上だか分からないが、振り返れば真
南に海が光っている。見覚えのある奥池分岐の道標地点で小休止して西に下る。「もうえ
えやん」と思うくらい下ると、奥池から上がってくる林道に出くわしてそこが土樋割峠だ。
Uさんとは土樋割峠手前の下り斜面で合流。痺れを切らして登って来たという。重ね重ね
申し訳ございません。m(_ _)m

東お多福山の枯野を望む
西お多福山から六甲最高峰はまだまだ高い

 1.5車線程度の舗装林道にはオフィシャル道標が立つ。西に行けば六甲最高峰、直進
の山道は北山から石宝殿へ、東に歩けば東おたふく山バス停に出るという六甲の重要地点
の一つである。但し、道標の他には何もない。(笑)

 「石宝殿まであと50分か...」。と、近くで単独小父さんがガイド本を持って思案
投げ首。聞けば観音山方面へ行きたいとのこと。この辺りに詳しいUさんが丁寧にガイド
してあげていたけれど、いかにポピュラーな山域とはいえ、山歩きにはエアリアマップ程
度の地図は持参したいものだ。

 さて、蛇谷北山への道は今までとはうって変わって険しい。というより今までの六甲の
道が良すぎたのだけれど...。(笑) ここから短い距離で200mほどの標高差を克服
しなければならない。しかし道は良く歩かれているようで、しかも昔の峠道によくあるよ
うに九十九折れでそれほど疲れない。どうも石宝殿への南からの参道だったのではなかろ
うか。尾根へ巻き上がると崖上に出、眼下の黒岩谷の堰堤工事の向こうには神戸の街並み
だ。ここまでやって来ると、遠かった六甲の分水嶺もようやくにして間近に迫ってくる。
細かなアップダウンを続けながら、やや平坦な笹原になった所で分岐を左へ進む。オフィ
シャル道標を見た後、しばらく歩いて右にカーブする辺り、宝殿へのルートは直進する小
道を分ける。これを数m辿ると北山の表示が見えた。

阿蛇谷北山の登山路途中からの展望
遠く加太から友ヶ島、淡路島が霞む

 クマザサに囲まれた3m四方ほどの小さな切開きには、中央にケルン状にこぶし大の石
が積まれ、芦屋市が立てたらしい字の擦れた古い木標がある。展望がないとのネットの記
述を見ていたが、意外や神戸市街から大阪湾が望めるではないか。やはり頂きというから
には展望がないとねえ。でも下から見てもどこが蛇谷北山か分らんだろうなあ。芦屋の最
高峰はそれくらい目立たない小さな高みでありました。(^^;

 記念写真でもとタイマーの用意をしていたら、干支の山、日頃より訪れる人が多いのだ
ろう。タイミング良く若い3人組が上がって来たのでシャッターをお願いする。このパー
ティ、これからのコースをはっきり決めていないというので、我々の予定を教えてあげる。
結局、阪急芦屋川駅まで同じバスでありました。

 蛇谷北山を後にして最後の目的地、石宝殿へと更に北に向かう。クマザサの繁みの中の
小道である。六甲の主稜線はもうすぐそこに見えるが、やはり一筋縄ではいかず、これで
何度目だろうか、また下らねばならない。これも何度目かの鞍部に出るとドライブウェイ
を走るバイクの音が聞こえてくる。ツツジやヒサカキなどの雑木林を抜け、丈の低いクマ
ザサの間を急斜面を一登りすると広場に出た。初詣の赤い幟と白い石の観音像があって、
最終地点、石宝殿と呼ばれる白山の宮の境内に到着したことがわかる。

石宝殿と呼ばれる六甲山神社の境内

 昔は茶店のようだった建物の横を廻ると赤い鳥居とこじんまりとしているが立派な本殿
があり、一段高い位置に石造りの所謂、石宝殿が鎮座している。江戸時代から雨乞いの神
として霊験あらたかだったという由緒ある神社だ。今日の無事を感謝すると共に今年の山
歩の安全を祈る。そしてお参りしたのち改めて振り返るとそこには息を呑む絶景があった。
大阪湾、阪神間は言うに及ばず、西宮から池田、川西方面、北摂南部の山々が一望なので
ある。コンディションが良ければ本家の加賀白山まで見えることがあるという。当然のこ
と夜景も素晴らしいであろう。

 ここは小休止がてらじっくり眺めていたいところだが、バスの時間が迫っている。バス
は宝殿橋BSを毎時52分。もう2時30分を過ぎている。宝殿橋までここから15分は
かかるだろう。これは急がねばならない。ドライブウェイに出て日頃は車でスイスイ行く
ところをえっちらおっちら。あと10分というところで姿を現した芦有ドライブウェイの
宝殿ゲートはまだはるか下に見える。これは駄目かもと思われたが救われるのは道は下り
で登りがないこと。歩は思いのほか捗って、バス停に到着したのは51分頃。幸いバスは
我々を思いやってくれたのか、3分ほど遅れて到着してくれた。(^^;

 文明の利器は凄い。20分程度で阪急芦屋川駅へ戻ってきた。あとは梅田へ出て新年会。
頭の中はそっれしかない。(~^; 時間のあるメンバにMさんも合流して、親父御用達の居
酒屋で日のある内から気勢を上げ8時頃に解散となった。意外としっかり歩いた今日の干
支オフ。皆さん今年も宜しくお願いします。


【タイムチャート】
08:50〜09:15阪急芦屋川駅(集合地)
09:32〜09:35鷹尾山登山口
09:50〜09:55展望台
10:02〜10:08鷹尾山(272m)
10:35〜10:44高圧鉄塔(新神戸線bS4)
10:58〜11:15岩ばしご、新七衛門ー
11:35〜12:00荒地山(549m)(昼食)
12:16雨ヶ峠方面分岐
12:25〜12:30獣除けゲート
12:55雨ヶ峠
13:15〜13:17東お多福山(697m)
13:30〜13:35土樋割峠
14:04〜14:10蛇谷北山(836m)
14;25〜14:30六甲山神社(石宝殿)
14:50宝殿橋バス停
15:15阪急芦屋川駅

■同行: 裏人さん、呉春さん、幸さん、たらちゃん、二輪草さん、もぐさん、
     yukinkoさん(五十音順)


蛇谷北山のデータ
【所在地】兵庫県芦屋市
【標高】836m
【備考】 通称石宝殿と呼ばれる六甲山神社の南に位置するマイナ
ーピークです。熊笹に囲まれた小ピークで、展望にも恵
まれていませんが、南方向に大阪湾が望めます。登路は
六甲山登山の要所である土樋割峠からです。
【参考】
2.5万図『宝塚』、『西宮』

東お多福山については『東お多福山〜六甲メインコースは蟻の行列
荒地山については『荒地山〜初冬に愉しむ岩歩き
 をご覧下さい。


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