八宙山・傘峠・ブナノ木峠〜山笑う芦生核心部縦走
 
平成17年 4月23日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲
雪が残るブナノ木峠


 まるで先月の悪天続きの埋め合わせをするかのような好天続き。今日も薄雲はあるもの
のいい天気。絶好のオフ日和だ。集合時間の7時には北急桃山台駅西のロータリー集合組
の全員4名が集まる。遅刻なし!(笑)

 芦生核心部を縦走する新緑オフを呼びかけたところ、10名の応募。奈良から参加のT
ちゃんを京都深草BSでピックアップして、神戸方面からの5名はGさんの車で現地集合
という趣向だ。桃山台組がきっちり集合したので、深草には7時半には着いてしまい、7
:35位でいいよと連絡してあったTちゃんに急遽電話連絡。最寄り駅から少し走らせて
しまう羽目に。 m(_ _)m

 渋滞もなく順調に進んでもうすぐ生杉という手前。先行するMさんの車が突如停車。「
何事ならん?」といぶかしめば、なんと山菜。生杉川の川原には目敏く見つけたセリ、コ
ゴミ、ツクシ。そこへ、いつの間にか神戸組も合流して、全員で時ならぬ山菜摘みとなっ
たのでした。小生は少しコゴミを戴いた。(その夜の酒の肴にサッと湯がき、醤油を数滴
垂らした後、からしマヨネーズで和えたのは絶品でありました)

 「気候もいいし混んでいるかも...」と懸念していたけれど、生杉林道の終点には3、
4台の先行車がある位で意外に空いている。新緑の山肌に全員、気分はもう森の中。そそ
くさと準備を急いで地蔵峠に向かって出発する。

柔らかい若芽に包まれる芦生の山

 概して林道歩きは退屈なものだが、ここ芦生では、この時期多くの花々が見られ楽しい。
切り通しの崖上にはイワウチワ(トクワカソウ)が満開。二週間前には小さな蕾だったの
で上手くいけばと思っていたけれど、ドンピシャだったらしい。(^^/ イワカガミも赤い
蕾が見えている。ピンクの花のイワナシ。詳しい種類は分からないがアメジストをばら撒
いたようなスミレ。そして何よりも新緑の山肌。黄緑、薄赤、薄茶と千差万別、渾然一体。
なんとも一口で表現できない春の彩りである。でも北向きの陰には、例年になく雪が多か
ったと見えて、未だ沢山の雪が残っている。その所為なのか、林道には倒木が至る所に横
倒し。それも根こそぎである。それでも新芽を吹いている木もあって、その生命力には驚
かされる。それとは対照的に道端には1頭の鹿の屍骸。先々週のトロッコ道では3頭の屍
骸を見かけたが、これも雪の仕業なのだろうか。そんな色々な光景に遭遇しながら、古い
石碑の立つ地蔵峠へ。ここで小休止。早くも長くなった隊列を整える。

 林道に別れを告げ、森に入ってまずびっくり。枕谷合流部から中山神社にかけて、まだ
雪の絨毯なのだ。道が雪で消されているので、慣れていても少し面食らう。雪解けと沢水
による泥濘を避けつつ神社の前を抜け、上谷に架かる丸木橋を渡って左へ向かえば、まも
なく長治谷の作業所がある広場。何時来ても清々しい所だ。テントが一張り。時ならぬ人
声に五月蝿くはなかっただろうか?

 作業所から上谷の流れの音を聞きながら更に南へ。右手の山から流れ出す沢沿いにはト
リカブトやバイケイソウの緑。サンインシロカネソウもあったそうだが残念ながら小生は
見落とす。

 上谷と下谷が合流する辺りが中山。先ほど分かれた地蔵峠からやってくる林道が合流す
る橋を左に見て少し歩いた左手、沢(下谷)へ降りる所が取り付きなのだが、「はて?」。
去年の秋にはあった道標がない。雪かなんぞで無くなったのだろうか?そして踏み跡を伝
って沢へ降りて更に「?」。予想以上に水量が多い。近くの手頃な石を投げ入れて足場を
作ってみるが、当然完全なものは出来ない。仕様がない。少々濡れるのは覚悟の上で突っ
切る。幸い、靴の中までの浸水は免れる。「汚れた靴洗えてええやん」心の中で悪態をつ
く。(笑)
水嵩の多い下谷を渉る

 ここは川沿いに進む七瀬への道との分岐点でもある。その踏み跡と分かれて植林の下、
右に伸びる尾根の先端に取り付く。ここでまたまた「?」。去年以上に尾根上が整備され
ているではないか。そしてトクワカソウが道脇で群舞。それを見た一行はデジカメ構えて
全く動かなくなった。「まだまだ上の方が凄いのですが...」(笑)

可憐なトクワカソウが満開だ

 暫く急登が続く。まだほんの蕾のホンシャクナゲの茂る岩場を越えて、満開のタムシバ
を愛でながら登れば、やがて傾斜は落ち着いて、右手に八宙山から傘峠の尾根筋が見えた
ら間もなく杉の保存木のあるCa850mピークに着く。地形図の850m標高点ピークの
南西だ。小休止。ここで少し虫押さえをしておく。

 道筋はこのピークで南から西に変わる。茂っていた笹が枯れていて歩きやすい。だが、
その撥ねは怖い。顔に当たらないように注意が要る。

 そろそろこの辺りからコナラなどに混じってブナの姿が現れてくる。枝先は薄黄緑の柔
らかい色だ。そして一旦鞍部に降りて登り返すと、プレートがなければ気づかない八宙山。
食事はその先の傘峠で摂ることにして、皆さんにはもう少し頑張ってもらおう。

 八宙山を過ぎると再び登り基調でシャリバテの身にはやや辛い。標高差80m。ようや
く東西に長い傘峠の山頂部に出る。右手がやや開け、中腹に林道が傷跡のように走る百里
ヶ岳が目立つが、他には顕著な峰は無く、どれがどれだかはっきりしない。ほぼ水平にな
った道を100mばかり進んで、プレートが架かる傘峠の山頂。丁度12時前だ。殆んど
枯れている笹を踏んで、縦走路から少し外れた小さな空き地を見つけ食事とする。

 先週、たぬきさんから頂いた限定吟醸酒を持参、皆さんにおすそ分け。アペチットの代
わりになっただろうか。今日も自作の弁当。結構旨い。(^^;

 凡そ40分のランチタイムを終えて12時30分、午後の部の開始。傘峠から西へ向か
う。これからは小生も未踏の部分だ。どんな感じか楽しみ。

 やや急な斜面を下ると、前方に見えるCa900mピークとの広やかな鞍部である。大人
3人がかからねばと思われる程太いブナが林立する気持ちのいい場所だ。最低部にはヌタ
場もある。鹿も喜ぶ場所らしい。(^^;

傘峠西面は清々しい所

 Ca900mピークには七瀬中尾根への標識がある。地形図を眺めると、なかなか立派な
二股尾根が由良川へ下っている。ブナの木に残る無数の引っかき傷は、熊のものらしい。
去年の秋以前のもののようである。そんな木が2本つづけてある。

 南西に向かっていた稜線は北西よりに転換してCa890mピークに続く。その尾根筋か
らは名前どおり傘を広げたみたいで、意外に独立峰っぽい傘峠の姿が眺められる。この辺
りも倒木が多い。その中に杉の倒木。枝を揺らすと黄緑の花粉が煙幕のように漂い出る。
これはすごい。アレルギーの人なら見ただけでくしゃみが出そうだ。

縦走路途中から傘峠

 前方に大分姿が大きくなってきたブナノ木峠を見つつ、広く笹が刈られて歩きやすいCa
890ピークの南西斜面を降りる。地面には古くなって灰色になった鹿の糞が転がる。そ
の中に、大きな黒っぽい塊が。ひょっとして熊の糞?俄然、緊張が走る!というところだ
が、昨日今日のものでなくこれは安心。(^^; でも、「やっぱり出るんやぁ」

 まだ芽だしの進まない雑木のトンネルの遊歩道みたいな稜線を進んで次の892mピー
ク。左手に雪を被った林道終端の回転場らしきものが見える。と、傘峠・中山方面を示す
オフシャルな立派な道標が忽然と現れた。が、そこから先が残雪でやや不明瞭。北に向か
う尾根筋に明快な踏み跡が一本あって、足は自然とそちらに踏み込むが、地形図を見ると、
次のポイントCa890mピークへは西へ向かわねばならない。こういう時はGPS。確認
すると回転場方向を指している。そこで一旦、道標の地点に戻って、回転場から西に向か
い、若い杉の植林帯の中をとりあえず林道に沿って進んだ。

 ここも倒木が多い。それも枝に弾力があるから倒れて間無しだろう。ということは雪で
倒れたのか?その内に林道(作業道に近い)に並行して数m上の高みにも踏み跡が現れた。
これで安心。この辺り、のっぺりした地形で、今回のルートの中で最も判り難い部分であ
ったが、流石、GPSのルートナビである。しかしながら、オフィシャルの道標を設置す
るのなら、もう2、3、この付近の適所に設置したらどうなんだろうか。

 林道が右にカーブする辺りで、ほんの最近まで雪が残っていたらしい痕跡を残す、枯れ
たシダに覆われた斜面を強引に登ると、そこがCa890mピークである。太いブナが林立
する顕著な鞍部に下って少し登り返せば、見覚えのある古い道標が立つブナノ木峠と八宙
山・傘峠の分岐に到着である。

 10名無事揃ったところで、南に向かってブナノ木峠への斜面を登る。タムシバが至る
所にあって、タイミングよく満開を迎えている。足元には所々にイワウチワ。殆んど同じ
ような斜度を登ること10分。6年ぶりのブナノ木峠は相変わらず展望はほとんどない。
木の間越しに僅かに百里ヶ岳、傘峠などが望める程度であるが、珍しく無傷の三角点のあ
る小広い山頂は、憩うには最適の場所である。笹が少なくなり、ユニークなブナの葉の形
をした山名プレートが二つに割れて下に落ちていて、丸太のベンチも朽ちかけているが、
それ以外、当時と余り変わっていないのは何よりだ。

 各自思い思いに座り、Nさんから差し入れのおやつなんぞを頬張りながら小休止の後、
引き返す。さっきの八宙山、傘峠への縦走路を過ぎ、作業道を横切る。6年前にもあった
塩ビパイプが目印だ。台地上に広がった846m標高点を過ぎるとやがて雪の残るケヤキ
坂の林道へと降り立つことができる。

残雪のケヤキ坂の林道へ下りてきた

 ケヤキ坂には大きな重機。直径1mはあるタイヤになんとチェーン装着。路肩にある砂
まみれの雪塊は、この重機が排除したのだろう。

 林道三叉路を長治谷方面へ向かう。右に見える下谷の源流、柔らかかったオホノ谷も作
業小屋を過ぎた辺りから峡谷状を呈し、林道が右に大きくカーブする辺りでは左に20m
位の三段の滝が現れる。京大生が恋人の名をつけたという『のりこの滝』とはこの滝のこ
となのか。

 この林道もなかなか見ものが多い。崖にはイワウチワ、ミヤマカタバミ等が群れ、水溜
りにはイモリ。そして四方山話をしている内に、池ノ谷からのショートカット道を見過ご
してしまった。おかしいなと思って、現在位置をチェックしたら、もう長治谷作業所まで
1q足らずまで来ていたのだった。(^^; そういえば、さっき、谷筋の横に踏み跡らしき
ものがあったがあれだったのだろうか?ここまでくれば、もう引き返す気もなく、このま
ま林道を歩くしか選択肢はない。(^^;

 花の撮影に忙しく、遅れたメンバを待って進む。川原には主の如く大桂の保存木もある。
美山町の自然休暇村のチャーターバスとすれ違い、大きく左にカーブすれば、沢を渉るに
難渋した、縦走路の取り付きは間もなくであった。

 足元が悪いので、地蔵峠へは林道経由で戻ることにする。ところがこれが上り基調で結
構長い。作業小屋が立つ辺りでようやく下りとなって、前方に地蔵峠の案内図が見えるま
で30分を要した。下を歩いた方が楽なようである。(笑)

 峠から駐車地まで歩く間に、山陰はうっすらと黄昏色。陽はいつのまにか西に傾いて赤
っぽい光を投げかけている。あっという間に過ぎた芦生の一日。余韻に浸りながら帰途に
着くことにしましょうか。皆さん、お疲れ様でした。

■同行 GORYUさん、ukkiiさん、谷口さん、たらちゃん、なかいさん、
    法香さん、水谷さん、宮本さん、もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:30自宅発
6:45〜7:00桃山台駅西ロータリー(集合地)
9:05〜9:15地蔵谷林道ゲート前(駐車地)
9:45〜9:55地蔵峠
10:09地蔵峠、上谷・杉尾峠分岐
10:26〜10:40八宙山・傘峠縦走路取付き
11:10〜11:20杉の保存木のあるピーク(Ca850m)
11:34八宙山(Ca870m)
11:48〜12:30傘峠(935m)(昼食)
12:39Ca900mピーク
13:10892m標高点ピーク
13:35Ca890mピーク
13:45〜13:48ブナノ木峠、八宙山・傘峠縦走路出合
13:59〜14:12ブナノ木峠(939.1m 三等三角点)
14:21ブナノ木峠、八宙山・傘峠縦走路出合
14:28846m標高点ピーク
14:36ケヤキ坂
14:47オホノ谷作業所
15:47八宙山・傘峠縦走路取付き
15:50林道中山側入口
16:20〜16:30地蔵峠
16:58地蔵谷林道ゲート前(駐車地)

傘峠、ブナノ木峠のデータ
【備考】 傘峠・八宙山〜小さい秋見つけに芦生
ブナノ木峠〜芦生の森にも遅い春を参照下さい
【参考】
エアリアマップ『京都北山(2)』



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