平成11年 4月15日(木)
天候:晴れ
同行:単独
春にもう一度訪れたかった芦生の森。木々はまだ若芽を開いたばかりでしたが、それで
多くの花々が歓迎してくれました。以下はその感想記。
久々の早起き。コンビニで食料仕入れて6時過ぎにいざ出発。
例の如くR27の升谷大橋から美山町へ入る。大野ダム湖畔の桜が満開。崖のコバノミ
ツバツツジの赤紫も綺麗だ。早朝から見物だろうか、車が1台とまっている。
中地区だったろうか。小学校や中学校に通う子供達の喚声が聞こえてきた。のどかな山
里の朝である。
9時過ぎに目的地須後に到着、青少年山の家の駐車場を拝借する。先着の車は7台。
昨年訪れた時はトロッコ道を辿ったが、今回は林道でブナノ木峠に向かう予定である。
型通り入山届に記入して、鎖の車止めを横切っていると、横の民家の白い犬が2匹、闖入
者を見て吠え立てる。うるさい!静かにせぇ!と心の中で...。
ブナノ木峠へ行くには、自然文化村かツーリストの主催するツアーで長治谷作業所まで
マイクロバスで行くのが普通なので、長いアプローチとなりそう。エアリアマップでは3
時間半とある。しかし、名にしおう芦生の森の林道だ。イワウチワをはじめ春の花々に会
えるのを楽しみに歩いてみようというのが今回の企画である。
左に内杉谷川の流れ、右に崩れた炭焼き窯跡を確かめながら荒れた道を行くと、まず歓
迎してくれたのがショウジョウバカマ。よく見ると赤っぽいのと白いのとがあるようだ。
フキノトウもそこここに。春です。思わず気分も軽くなる一瞬である。
岩の切り通しを横切る。何気なく右上に視線を這わせると、ありました、初対面だが人
目でそれと分かるイワウチワ。なかなかの美形。清楚。一遍で気に入った。一つ気づくと
あちこちに見つかるものだ。岩一面に群生している所もある。思わず撮影モードに。
が、そこではたと或る事に気がついた。何と接写用のマクロレンズを忘れてきたではな
いか! (-_-);
折角いろんな花に会えるのになんと馬鹿なことを! (T T)
仕方がない。手持ちのズームレンズのマクロ機構で我慢しよう。トホホ
大きなポカに悔やんでいるうちに2つ目の橋を渡る。落合橋。ここで道が分かれていて、
左は櫃倉谷から杉尾峠へのコース。ダム反対のたて看板もある。ここでもダム建設の話が
あるのか。一体幾つ作れば満足するのだろうか...。心配です。
杉の植林の中のナメコ組合のシイタケ栽培場を過ぎてまもなく、京大演習林の標識のあ
るゲート。左に大きな残雪の塊が残っている。思わずトレッキングポールでつついて遊ん
でしまった。 (^^)ゝ
ここからガラッと景色が変わる。そうです。自然林中心の植相に変わったのだ。こうも
違うものなのか。何か一種劇的な感じである。
美山にお住いのNobuさんがHPで紹介されていたメタセコイアが見えてきた。谷沿
いにすっくと数十本。秋はさぞや彩られることだろう。そしてここでミヤマカタバミやタ
チツボスミレを発見。これは以前お会いしたことがある花々。
失礼の無いようにカメラで挨拶して進むうち「おやっ?」
同志社のマークのようなやや大きな葉っぱに気づいた。
エンレイソウではないか。葉の上に紫っぽい花が載っている。これも初対面。パチリ。
そして次はイカリソウ。ほんに錨の形。これは一回見れば名前を忘れないね。 (^_-)
内杉谷の右岸を伝っていた道は3度目の橋を渡って山腹を巻くようになる。幽仙橋とい
うそうな。何やら出てきそうな名だが、至って明るい場所。百葉箱と雨量計が設置されて
ある。しかし沢の日蔭には結構な量の残雪。
滝がある。と、上の沢には水が流れていない。なんと途中から湧き出しているのだ。地
中を潜って来たのだな。旨そうだというわけで飲んでみた。やっぱり旨い!大阪の水とは
雲泥の差でした。ついでにおにぎりを一つ頬張る。
滝の裏から変な声がする。滴のしたたる部分に穴ぼこがあって、そこから聞こえてくる
ようだ。水溜まりを見ると胡麻粒の混ざった寒天が..。正体はヒキガエル。寒天はその
卵なのでした。蛙も恋の季節を迎えたようである。
そうこうする内に徐々に高度は上がる。内杉谷の向こう側の山も同じ高さ位になってき
た。と同時に、谷はいつの間にかはるか下に姿が見えなくなり水音のみが響いてくる。日
蔭の残雪も増えてきた。ここまで来ると木々の芽も今やっと萌えだしたばかりの様相であ
る。その枝先は煙っているようだ。
前方に巨大樹が姿を現した。数本のケヤキの大木である。保存木に指定されており、枝
にはヤドリキが寄生している。古びた幹の大きなうろにトトロでも居そうであった。
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谷へ向かい枝を伸ばす欅の巨樹
枝にはヤドリギが |
ジグザグに山腹を巻き、トラクタの跡も生々しい林道を歩き疲れた頃である。前方に四
角いカーブミラーとその下に何やら道標らしきものが見えてきた。その左からは林道が合
流してきている。やっとケヤキ峠に到着したようだ。道標には管理事務所まで6.8Km
とある。ほっと一息。さっきのケヤキが名の由来か?しかし長かった。一服し喉を潤す。
左の方向を見る。火の用心の看板の下に道標。ブナノ木峠まで1.2Kmとある。それ
に従い、いよいよ山に分け入ることにした。
ところがのっけから踏み跡を残雪が覆っている。足跡がないということは、雪が降って
から人が来ていない?いや、獣の足跡らしきものはある...。念の為、熊よけの鐘を着
けてきて良かった。(^^)!! (^^)v
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残雪が彩るブナノ木峠への心地よい登山道 |
結構きつい登りを耐えて、鞍部にさしかかった時だった。突然「ドドッ!」という音と
「ザザッ」というササをかき分ける音と同時に、茶色い姿が一瞬の内に目の前を通り過ぎ
た。野生の鹿のようだ。それにしても驚かせる。思わずザックを揺すって鐘をよけいに鳴
らして進むことにした。クマでなくて良かったわい。そういえばさっき、狸か何か獣の糞
を見つけたなぁ。
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傘峠・八宙とブナノ木峠との分岐を示す道標 |
傘峠への分岐を過ごし、稜線沿いに数回緩いアップダウンを繰り返す。所々残雪の残る
自然林の中のプロムナードだ。確かな踏み跡と要所には「SKH歩こう会」の塩ビのポー
ルと布があるから心強い。そして、イワウチワの咲き乱れる中、急登に喘ぐと、やっと杉
とブナの混交林と下生えのササに囲まれた山頂に飛び出した。
切り開かれたような山頂には、三角点と緑の山名標識が立つ。腰を下ろせる枕木のよう
な木も置かれてある。微風がそよぐ。思わずザックをおろして伸びをした。
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ブナノキ峠の自然林に囲まれた明るい山頂 |
さて、食事の用意の間には期待の展望。と思ったのだが、木々が繁ってそれが余り良く
はない。お目当ての日本海を探すが見えず。春だししゃーないか。その上、この辺の山に
詳しくないし..。それでも東のこんもり山は傘峠(からかさ)、北東にあるのは百里ヶ
岳だろうか。その横はるか奥には雪を戴いた江若山塊らしき山並みがうす青い。南にうね
るのは比良らしいが良く分からない。残念でした。
小一時間の大休止の後、下山は来た道を戻る。
ブラブラ降りていくと、往きに追い越していった山仕事のジープが又追い越していった。
乗せてくれへんかな?甘いんだちゅーの。
鳩ほどの大きさの鳥が数羽、梢をかすめていく。ウグイスが驚くほど近くでさえずる。
薄い雲が出てきて、太陽の光を淡くする。トトロが棲みそうな森にも遅い春。典型的な芦
生杉も見ることが出来たし、沢山の花々にも会えた充実の一日でした。早起きした甲斐が
あったというもの。そして結局、山仕事の方以外、一人の登山者にも会いませんでした。
それにしても往復約16km。足の裏が痛い。(^^;
◎芦生で見つけた花々の写真集「トトロの森のお花畑」を見る。
【タイムチャート】
6:15 自宅発
9:15〜20 京都府山の家駐車場(356m)
9:49 落合橋(櫃倉谷林道分岐)
9:55 京大演習林ゲート
10:25 幽仙橋
11:12 ケヤキ峠林道合流点(780m)
11:22 林道横断点
11:29 傘、八宙、中山分岐
11:39〜12:20 ブナノ木峠山頂(三等三角点 939.1m)
12:35 傘、八宙、中山分岐
12:50 ケヤキ峠林道合流点
13:46 幽仙橋
14:10 京大演習林ゲート
14:15 落合橋(櫃倉谷林道分岐)
14:42 京都府山の家駐車場(356m)