箕面ぶらり散歩Part4〜点名『萱野』を踏む

                           平成12年 4月 2日(日)
                           天候: 曇り
                           同行: 単独

 行く当ては無いのに山を歩いてみたい時は、取敢えず箕面へ行く。あきゆきさんにとっ ての生駒山みたいなものか。今日も例によって午後からの遅出。これも取敢えず勝尾寺園 地の駐車場に車を止める。  準備を終えても猶、行先は未決、さて何処を歩こうかと地図を見る。 「?」 外院へ向かう豊能自然歩道の西の高みに三角点の表示がある。勝尾寺の参道から政の茶屋 方面へ廻り、途中、その三角点に寄って自然研究路で勝尾寺へ帰って来るのも悪くないな ぁ。そうと決まれば早速、勝尾寺山門前から旧参道へ。  高野山よりも古いといわれる町石を右に見ながら階段を登って行く。自然研究路5号分 岐を過ぎると左に八天丑未方傍示石蔵。1230(寛喜2年)敷地争いを防ぐ為、勝尾寺 が設置したもので、中から軍荼利明王像が出土したという。そして参道を挟んで向かいの 杉林の中にはひっそりと石仏が一体。  ここから参道は下り基調となり、深くえぐれた石ゴロ道は西へ曲がって再び南へ向かう。 石仏を過ごして案内板までやってきた時である。ガチャガチャと自転車の音がすると思っ たのも束の間、「うぁっ!」と声がして、振り向くと完全装備のMTB兄さんが自転車か ら投げ出される瞬間である。大した怪我はなさそうであったが、そこいら中に痣が絶えな いスポーツではある。兄さん起上がると、照れ隠ししつつも、もう一人の連れと話ながら 林の中に消えていきました。  豊能自然歩道との分岐で、参道コースから自然歩道に入る。参道から外れたといっても、 こちらも西国巡礼道であったことは、途中の石の道しるべが示している。下草にササが茂 る杉林を行くと、やや小広くなって小さな峠に出る。道標があって、直進は政の茶屋方面、 左はウツギ谷から外院に下る道である。以前には気づかなかったが、谷山尾根を示すプレ ートがある。ふと横を見ると杉林の中を10m程入り込んだ所に等身大の大きなお地蔵さ ん。何故か「しらみ地蔵」と呼ぶらしい。これも以前には気づかなかった。如何に人間の 目はあてにならぬものか...。  さて、407mの無名峰は2.5万の地形図によると外院へ下る道の西側の山。取り付 きを探しながら、外院への道を進むが、どこもヤブでそれらしきものがない。その内に石 の道しるべが建つ所迄来てしまった。「左、大坂、右、中山」。右がいわゆる谷山尾根と ここにもプレート。去年だか一昨年だかに天上ヶ岳でお会いしたご夫婦に谷山尾根でササ ユリが咲いていたと聞いた事を思いだした。6月頃、また歩いてみたいものだ。  一旦、峠の分岐まで戻って、政の茶屋方面の道からの取り付きも探してみる。が、ここ もそれらしい所はない。仕方がないので、何かの境界を示す石標の所から試しに山腹に取 りついてみる。しかし傾斜が急だし、ヤブの茨や枯れた松、腐った倒木が行く手を遮り鬱 陶しい。早々に断念。(^^);  再び、外院への道に舞い戻って、もう一度取り付き易いところを探す。そうすると、や やヤブの薄い所が見つかった。枯葉で滑り易い斜面に取りつく。松の枯れ枝や、茨などが あるものの、先程よりは登りやすい。潅木の幹にすがりながら、ヤブの薄い部分を選んで 体を持ち上げていくと、尾根に出たのかようやく傾斜が緩んだ。前方を透かすと幹に赤ペ ンキが塗られたアカマツを発見。そこには薄い踏み跡もある。それに導かれて潅木のトン ネルの中、高みを目指すと、すぐにこんもりとした山頂。アカマツの疎林の真中に三等三 角点がポツンとある、6畳程の静かな頂きであった。
無名ピーク点名『萱野』の三等三角点
 無名の山である。何も無いと思っていたのだが、流石にプレートは無いものの「吹山会」 と書かれたテープが潅木の細い枝に巻かれてあった。こんな所にも三角点マニアの好き者 は来るようだ。周囲を見まわすと、西の尾根沿いに踏み跡がある。境界石標があるのでそ れについていけばどこかへ出られそう。東側にも白いナイロンテープがあり降りられそう だが、これは少々ヤブっぽかった。  でも意外だったのはその展望。山並みのコブに過ぎないであろうと思ったら、南側が開 けていて、大阪市街から神戸にかけての阪神間が良く見える。大阪湾も霞んでいるではな いか。その儲け物の景色を見ながら、茶でのどを潤す。その間も南の峰では十数羽のカラ スがうるさく鳴き交わしていた。  一息ついた所で、下山は先程のアカマツからペンキの塗られた幹を探しながら降りて行 く事にする。道はだるい尾根上のなんとなく踏み跡という感じで、落ち葉に足を取られな がらの急降下。あっという間に降っていくと、ヤブに踏み跡は消える。しかし強引に突っ 切ると外院への道が現れた。そこから10m程左の杉の木に赤ペンキ。ということはそこ が登り口だろう。でも入り口付近がヤブでは、初めての時は分からないはずだよと、独り 合点の小生である。  政の茶屋方面へは、丸太の木橋を渡って小さな沢沿いの道を下っていく。周囲は杉の植 林で展望は無い。まもなく見覚えのある自然研究路5号と合流し、府道との出合いであっ た。  ここから勝尾寺方面へ少し戻って、自然研究路4号に入る。ヘアピン気味に登る道は尾 根筋に辿りつくと丸太の階段道となり、やがて政の茶屋と勝尾寺を結ぶ道に出合う。  ここには2脚のベンチが置かれている。持参のサンドイッチとカフェオレで小休止。こ のT字路から勝尾寺までは以前も歩いた道。鬱蒼とした植林の中の道である。その植林が 自然林に変われば、勝尾寺はすぐで、薬師堂の前に出る。コゲラだろうか何処からかドラ ミングの音がする。  左に奥の院への階段道があるので寄ってみることにする。古い墓石の間を登っていくと、 道は北に向きを変え、急勾配となるが、およそ50mも登ると、大きな丈六の金仏の広場 に出る。他には左に熊谷直実塔と呼ばれる鎌倉初期の五輪塔。もう一段の高みには賽の河 原を思わせる石だらけの六角堂があるのみ。しかしここからの眺望は良い。摂津・河内平 野から生駒、金剛、鷲峰山塊、大和高原の山並みも見渡せた。  勝尾寺の境内はいつもながら綺麗に整備されていて、丁度、梅とアセビが満開。ゆるゆ ると下る参道の両脇に植えられた西洋石楠花も大きな蕾を着けている。5月頃はさぞや絢 爛たるものだろう。読経が流れる中、仁王門から茶屋を通って府道に出、駐車地へ戻る。  数台止っていた車も今は愛車のみ。土手にはタチツボスミレが転々と花を着けている。 大阪でも開花宣言が出されたという。帰宅途中に服部緑地公園の池の側を通ると、ツバメ が翻るように飛んでいた。春本番もようやく秒読み。三角点も踏めたし、期待した以上に 充実した午後でありました。

   【タイムチャート】
   13:00自宅発
   13:35〜13:40勝尾寺園地駐車場(約345m)
   13:55八天丑未方傍示石蔵
   14:03 豊能自然歩道分岐
   14:30〜14:40点名『萱野』山頂(406.9m 三等三角点)
   14:50豊能自然歩道
   14:52政の茶屋・外院道分岐
   15:03府道豊中亀岡線出合
   15:12〜15:22自然研究路4号出合
   15:39勝尾寺薬師堂
   15:50勝尾寺奥の院
   16:20勝尾寺園地駐車場

    
  点名『萱野』のデータ
 
    【所在地】大阪府箕面市
    【標高】406.9m(三等三角点)
    【備考】 勝尾寺の南方、旧参道の西に位置する無名峰です。登山
道等はなく、麓がヤブっぽいので夏から秋は登り難いと
思われますが、登り口からの標高差が50m程度なので
少々我慢すれば山頂の眺望が報いてくれます。三角点ハ
ンター以外は訪れないと思われ、静かに憩うには最適で
しょう。尚、地形図では標高が406.9mとなってい
ますが頂上の国土地理院の標識や、エアリアマップでは
407.1mとなっています。

箕面ぶらり散歩Part5〜点名『堂屋敷』探索』を読む
    【参考】2万5千図『広根』

    【後日譚】上記について国土地理院に問い合わせた所、点名を『萱野』
         と云い、平成7年の再測で406.9mに改められたという
         ことです。情報有難うございました。



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