仲秋の大峰〜観音峯山

平成11年 9月26日(日)
天候: うす曇り
同行: 単独
観音平のススキ 背景は弥山、八経ヶ岳の山並み

 先日、NHKで放映されていた「大峰奥駆け修行」。それを見ていたら大峰へ行きたく なってきた。が、なかなか良い機会が無い。そんな中、明日は天気が良いというので、台 風一過の26日、半年ぶりの大峰へ目指すは山上ヶ岳。                 久々に張り切って朝6時過ぎ出発。しかし予報に反して空には灰色の雲、金剛の山並み にはガスまでかかる。話が違うやないか?でも雨の心配は無いという。ホッと安堵。タイ ミングを図った様に、ラジオからは羊蹄山での遭難話。山で雨は頂けません。         順調に天川村川合の交差点を左折し洞川へ。車窓の空気が冷たい。こりゃ半袖半パンで  は寒いかな等と独りごちながら虻トンネルを出ると、片側にズラリと十数台の車の列。と、 前方のガードマンが頻りに手を振る。丁度、みたらい遊歩道入り口の前だ。       「なんでんねん?」                                「どんでんねん。いや、この先、土砂崩れで通行止め。洞川行くんなら遊歩道で。30分  位かかるけどねぇ..。」                            日曜なのにダンプがちょくちょく走っているのでおかしいとは思ったのだが、いやな予感 が当ってしまった。                                 さて、これからどうするか?地図を広げて思案である。大橋の取り付き迄1時間以上の ロスだ。帰りに風呂にも入りたいしなぁ。                       結局、以前から気になっており、近頃、道が整備されたと関西ハイキング最新号にも記 事のあった観音峯山にあっさり方向転換。これがお気軽山行の真骨頂。          虻トンネルの洞川側の出口横に駐車場があるので利用する。改造整備中だったが2台先 着の車。                                      暫く車道を歩いて観音峯登山口バス停の前。ツリフネソウが満開。橋を渡って、檜林の 中を、湿ったやや陰気な感じのする道は車道から徐々に離れていく。           下にトンネルの入り口が見え隠れする頃、真新しい道標が立っている。真っ直ぐ行くと みたらい峡。左の折れて展望台迄は2km。                      檜の植林帯の中、山腹を絡んでいくと岩の間から清水が湧き出している。『観音の水』 と呼ぶらしい。これが冷たくて旨い。さすが名水の里。                 丸太で補強された階段に飽きた頃、左手に大岩が現れてまもなく第一展望台に出る。景 観図があって、白倉谷、頂仙岳、弥山となかなか雄大である。                二つばかり真新しい橋を渡る。やがて、沢を絡んでその源頭に出、尾根筋に乗るとシロ ヨメナの群落。更にススキの穂の中を進んでいくと、丈の低いササが現れてきた。その中 に朽ちた鳥居が倒れている。そして左前方に真新しい鳥居と休憩所が見えてくる。ガイド にある神社跡のようだ。                               やや寂寥感の漂う広い台地状の広場にはヤマモミジとブナ、ササ。建武中興600年記 念の大正12年製の石碑が2基。南朝文化ゾーン整備事業で新設された黒御影製の石に座 り、おにぎりと水で小休止。                             石碑横の石段を登っていくと、門柱のような岩に何かが彫りつけてある。『お歌石』と いうそうだ。                                   「よしの山 花ぞちるらん天の川 くものつつみを くずすしらなみ」         護良親王が本歌取りして作った歌だという。それを彫りつけた石が昔あったのだが、次第 に磨滅したので、新たに作ったと解説板。                       柔らかい土と石の入り交じった道をジグザグに登っていくと、『観音の岩屋』の標識が 現れた。それに従って、100m程登っていくと、大きな岩に出くわし、その下にポッカ リと穴。中に石仏が祀ってあるが、入り口の天井も低く、奥行きも無い。人間が起居する には少し無理がありそう。                              もとへ戻る。何だかケモノ臭い。そういえば、シシか何かの足跡らしきものがあったな ぁ。背中を揺すって熊除けの鐘をわざと鳴らす。                    そこら中、白っぽい岩が増えてきた。石灰石だろうか。近辺に鍾乳洞が多いのと関係し ているのだろう。                                  再び、檜の植林帯の中をジグザグに山腹を絡んでいく。直登するとかなりの急傾斜だろ う。道は丸木の階段が整備してある。                         道の傾斜が緩むとススキとササ、雑木が現れて周りが明るくなり、一気に視界が広がっ た。前方に新しい石碑が立っており、3人の方が休憩中。観音平である。       
観音平に建てられた石碑 黒いのは私のザック
 石碑は南朝文化ゾーン整備のシンボルのようで、周囲を石で囲んで展望台にしてあり、 その石には四方の景観が写真に焼き込まれていて、同定に非常に便利だ。まず東に稲村ヶ 岳、大日山、バリゴヤの頭の激しい起伏。南には鉄山から弥山、近畿の最高峰八経ヶ岳の 大きな姿が指呼の間。北に目をやると、金剛、葛城山。西側直下に天川村川合の家並み。 西には重畳とした西吉野から紀州の山々のうねり。下からは500mは下だろうと思われ  るのに、白倉谷か川迫川の水音らしき音まで響いてくる。それにしても深い谷と山である。  さて、景色を楽しみながらの小休止が済めば、次は観音峯山。そこからそのまま法力峠 へ抜ける事も考えたが、車まで戻るとなると時間かかるわなぁ。昼食はここで食べたいし なぁ。ここでまた軟弱の虫がうごめきだし、なんやかやこんな理由を付けて、結局、目の 前と思しき観音峯山までピストンする事にする。                    背丈を越えるススキが生い茂った中へ踏み跡が消えている。そこへ吸い込まれるように 突入。数十m程度だが、足元の踏み跡に注意しないと方向が分からなくなる程の茂りよう だ。やがて踏み跡は、灌木とササの斜面に取り付き直登する。              当初、姿といい、高さといい、これが観音峯山と思っていたのだが、どうも三角点がな い。ヤブの中に朽ちた石油缶らしきものが転がっているのみ。一旦、鞍部に降って更にテ ープを目印に進む。                                   狭い尾根筋が徐々に広がってきた。周囲は南斜面にアカマツの大木が目立つ。その他に ブナ、アセビ、コウヤボウキ等々。北斜面は植林帯。その中をクネクネと登っていく微か な踏み跡。枯れ枝に足を乗せると滑るぞと思った瞬間である。スッテーン。滑った所がふ かふかした土で怪我が無くて良かったわい。そのかわり、左下半身は土まみれ。      やがて前方の木の枝に板がぶら下がっているのが見えた。それに囲まれるように三等三 角点。展望は皆無だが、結構人気があると見えて、大阪独標山の会など数枚の山名板と道 標が立つ静かな頂だ。時折、野鳥のジャージャーという不気味な声。         
ヒメザサが茂る静かな観音峯山の三角点
 ふと気づくとやや盛りを過ぎた紫の花が。トリカブトのようだ。猛毒だが変わった形の 花は綺麗。早速撮影モード。その後、蒟蒻ゼリーで一息入れる。             三角点にタッチして戻る事にする。行きは大分距離があるなと思ったのだが、帰りは意 外と早く着くもの。すぐに勘違いしたCa1280mピーク。それを降って観音平のススキ原 でコンパスを出して遊ぶ。石碑を目印に赤い矢印を針に合わせてっと...。       先程とはうって変わって無人の展望台。早速、昼食とする。              簡易クーラーの中から缶ビールを取り出していると、ススキの中から鐘の音が聞こえて きた。出現したのは和歌山から朝6時に来られたという単独おじさん。法力峠へ抜けるつ もりが、迷って戻ってきたという。「あせったわ」とのたまっておられました。そういえ ば道標には天川山岳救助隊の名が記入されていたが、その名称から、近畿の屋根は遭難も 多そうとあらためて感じた次第。                           そんな話をしている内、戻る最中にすれ違った方々が数名帰ってこられ、展望台は又賑 やかになった。                                 
観音平から眺める稲村ヶ岳、バリゴヤの頭と続く
稜線。左の尖ったピークは大日山。手前は白倉谷
 昼食後、双眼鏡で景色を楽しむ。焼き込まれた写真では、護摩壇山が見えるというので 覗いてみると、なんと護摩壇山タワーと思しき塔が見えたのには驚きであった。      一時間も経っただろうか。皆さんとは一足お先に下山とする。横の茂みにゴンズイの紅 い実がはじけている。ツイーッとアキアカネ。下界よりも一際小柄なツユクサが名残を惜 しむかのように足元にあった。                              遊歩道分岐から左に折れるとすぐに駐車場。先に降りられた和歌山のおじさんが一服し ていた。今日は残念でしたねと四方山話。これから温泉です。縁があれば又会いましょう と挨拶して別れる。大峰好きのおじさん。又会えそうな気分です。            川合で豆腐を買う。ついでにおじさんに土砂崩れについて訊ねてみると、危ないな、そ の内にと云っていたらザザーッと崩れたそうな。復旧にはまだ10日前後かかりそうとの ことであった。                                   天の川温泉は登山客などで盛況。露天風呂で手足を伸ばした後は、大広間で恒例の缶ビ ール。帰りに天河大弁財天社に立ち寄る。祭神が女の神さんだからというわけでも無かろ うが、巫女さんが綺麗な人ばかり。(^^)/ そして、参拝者がこれまた神社に珍しく若い 女性が多い。芸能人も詣でるという天河社。「気」が呼ぶのだろうか。本殿で瞑想してい る女性も清楚でした。                                ススキの穂波にアキアカネ。ツリフネソウにトリカブト。仲秋を迎えて、本格的な大峰 の秋はもうすぐである。                             
    【タイムチャート】       6:15     自宅発       8:45〜8:55  みたらい遊歩道前(一旦駐車)       9:00     虻トンネル横駐車場(約740m)       9:10     観音峯山登山口      9:18     遊歩道出合の道標       9:30     第一展望台       9:54〜10:05  神社跡      10:15     観音の岩屋      10:30〜10:40  観音平展望台(1208m)      10:54     Ca1280mピーク      11:08〜11:15  観音峯山頂(1347.4m 三等三角点)      11:29     Ca1280mピーク      11:40〜12:37  観音平展望台      12:52     神社跡      13:15     第一展望台      13:30     みたらい遊歩道入口      13:32     虻トンネル横駐車場



   観音峯山のデータ

    【所在地】 奈良県吉野郡天川村
    【標高】  1347.4m(三等三角点)
    【備考】  大峰山脈の北部、山上ヶ岳の西側の支脈に属する山です。
          当山中の岩屋で、南朝の後村上天皇の夢枕に観音菩薩が
          立ったことから命名されたと云われます。
          中腹の観音平からは、稲村ヶ岳、弥山、八経ヶ岳、頂仙
          岳等、大峰北部の山々から金剛、葛城、更に紀北の護摩
          檀山迄望める大パノラマが展開します。
          最近、登山道が整備され、観音平までは歩き易くなりま
          した。
    【参考】  エアリアマップ 山と高原地図『大峰山脈』


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