貴公子花紀行〜春を呼ぶ雪割草、猿山再び

雪割草の道案内板(深見地区)
平成20年 3月30日(日)
【天候】曇り
【同行】別掲


 能登半島の西端に近い輪島市門前町にある猿山岬。少々聞きなれないかもしれないけれ
ど知る人ぞ知る雪割草の群生地である。一度訪れたことがあるのだが、今年も満開を迎え
たというニュース。幸いMさんが企画してくれ、3年ぶりの訪問と相成った。早朝からパ
ラパラくるはっきりしない天候にやきもきしたが、東に進むほど良くなり、金沢に入ると
うっすら青空も現れるほどに回復。そして深見地区から遊歩道を辿ると、お目当ての雪割
草の花で斜面一面が覆われるほどの満開の時期に出くわし、下山して戻り始めた途端に雨
が降り出すというタイミングの良さには一同ビックリ。片道5時間という長旅を補って余
りある花紀行となったのでした。

 前日。ビールと焼酎のお湯割りで午後8時には寝込んでしまったものだから、深夜12
時頃に目が覚める。それからはうとうとまどろみの繰り返し。気がついたら4時20分。
そろそろ起きなきゃ。なにせ集合は千里中央朝6時。コンビニでの食料調達を考えたら江
坂5時半の始発に乗りたいところ。寝ぼけまなこを擦って用意をし、まだ暗い5時15分、
おりしも新聞配達のバイクが通る頃、家を出る。歩く内に白々明け。しかしどんよりした
雲が空を覆う。雨は大丈夫か?東へ行くほど崩れるのが遅れるはずとここは信じるしかな
い。(笑)

 千里中央のコンビニ前で車2台に分乗し、深草バス停で2名が合流、総勢9人。一路北
陸道をひた走る。金沢東ICから能登有料道路へと辿って穴水ICから北へ向かう。期待
通り東に向かうにつれ、晴れ間も見え薄日も射してくる。ヒャッホー!

 門前町に入る。昨年の能登半島地震で大きな被害を受けた地域だ。今も仮設住宅での生
活を余儀なくされている人々がいるという。建物はほとんど修復が終わっているようで外
観からはうかがい知れないが、海岸沿いに走ると到る所に残る崖崩れの跡が地震の激しか
ったことを今も物語っている。

 海沿いの狭い平地に軒を寄せ合う深見地区。海岸沿いの取付け道路を走って最奥の路肩
に車を止める。時刻は11時前だから片道5時間弱かかった勘定だ。嗚呼遠かった。(笑)
先着の観光バスが止まっており、運転手ものんびり手持ち無沙汰そう。気温10度以下と
いう冬に逆戻りの予報だったから寒いだろうと用意してきたのだけれど、風もほとんどな
く暖かい。かえって暑くなりそうなので予めアノラックを脱いでザックの中へ入れておこ
う。全員準備が終わったら勝手知ったる川沿いの遊歩道入口へ向う。

深見地区から3km余り。1時間と少しのプロムナード

 地区集会所の玄関口前のコンクリートもヒビが入り、川の堤防も重機が入って今も改修
が続けられている様子だ。その遊歩道入口では地元の人が雪割草の保護協力金を徴収して
いる。300円也を払ってパンフレットを貰って路地を抜けるとジグザグの山道だ。南に
開けた山肌は暖かそうで、スミレサイシンだかタチツボスミレだか、しかとは同定できか
ねるのだが、スミレの類が満開。黄色の花はミツバツチグリだろうか。白いトキワイカリ
ソウの花ももう元気一杯に鈴なりでそこへウグイスの鳴き声。うーん、春らんまんももう
すぐそこだ。
トキワイカリソウ(白花)

 一気に40、50mを登って雑木の台地を進む。一見冬枯れの姿そのままと思えるが、
良く見れば枝先がやや赤く色づき芽吹き寸前である。そして最初の谷を横切る手前。キク
ザキイチゲが現れる。白花以外に薄青い花もある。花が大きい。概して日本海側は例えば
イワカガミのように全体に大きい個体が多いものだが、キクザキイチゲも例外ではないよ
うだ。カメラに残す花は誰も同じ個体を選ぶらしく、靴跡が掘れて窪みが出来ている。願
わくば、余り踏み固めないようにしたいものだ。

キクザキイチゲの白花、青花のコラボレーション

 幾度か小さい谷に下り沢に架かる橋を渡って登り返すのを繰り返す。雑木林の向こうは
日本海。所々に小さな漁船が浮かぶ。山腹にはおびただしい数の行者ニンニクの芽がニョ
キニョキと山の斜面に顔を出している。地元の人々が保護しているのか、かなり量も増え
ているように思える。ベンチや案内板のある辺りが第一の雪割草群生地だ。腕章を巻いた
地元のおばさんたちが談笑中。ここは赤っぽい雪割り草が多い。赤紫、ピンク、ピンクの
覆輪、白。正式にはオオミスミソウというそうだ。木々の芽だしに先立って葉を出し花を
咲かせ、結実の後、夏は他の木々の葉陰で暑さを避け、雪の頃は落ち葉の下で寒さを防ぐ。
スプリングエフェメラルの一種だが、まことに春の妖精そのものだ。あちこちデジカメに
納めているとほとんど歩が進まない。(笑)

 おばさん達の監視テントを左に見て山腹道を進む。木道横にはアラゲヒョウタンボク
ヤマエンゴサクの薄青紫の花はよく見るとなかなか精巧な作りだ。

 小さな沢でHちゃんが白い花を見つける。野生のワサビだという。なんだ、ダイコンみ
たいな白い十字形の花だ。葉を摘まむとピリッと辛い味がした。

 東屋を左に見過ごして右に曲って急坂を上がると、もう大きなアップダウンはない。大
分標高を稼いだのか、深見方面の海が視界に入る。猿山山頂へ向かう道と分かれて、灯台
へ方面へ向かう道。再びお目当ての雪割草がキクザキイチゲと共にぼつぼつ現れ始める。

 灯台へ向かう道と猿山から下りてくる道、トラバース道の出合から上の雑木林の斜面は、
落ち葉の茶色から一転、一面の華やかなお花畑である。当地最大の群生地である。昨年は
地震で建物も道路も被害を受け、『雪割草まつり』どころではなかっただろうが、それが
怪我の功名とでもいうのであろうか、しばらく人間が入らなかったことがかえって野草達
にはプラスに働いたのかもしれない。そして北の娑婆捨峠方面からやってきた人々も合わ
せて盛況ではあるが、混雑するというほどでなくほどほどの人出。もう1時間も京阪神に
近ければもう凄い混雑なんだろうなあ。不便なのがかえって保護にはプラス。ただし村お
こしにはマイナス。うーん、難しいところ。

 こちらの雪割草は白い花が主で赤いものは少ないが、ピンクの覆輪のもの、大輪のもの、
小輪のものなどが入り混じり、さらにキクザキイチゲも混じって大勢で春を呼んでいるよ
うだ。皆さんは早くもあちらこちらで這いつくばってカメラ小僧。これぞという株はロー
プの奥深くが多いものだからコンデジじゃあなかなかいいアングルが得られない。という
よりやっぱり腕なんだろうなあ。

 猿山が初めての人は灯台見物へ。それ以外の人は食事場所に決めた途中の東屋まで先に
戻ることにする。ここは前回も食事した所。実は東屋より少し灯台方向へ戻った所の突端
にある木製テーブルが置かれた場所が良かったのだが先陣がいるので遠慮だ。(^^;

 少し遅い食事を終えたら帰途へ。今度は海を右手方向に見ながらなので又違った感じが
する。曇り空でそれを映す海もニビ色というのだろうかまだまだ冬の海といった風情。だ
んだん雲も厚くなってきたか、キクザキイチゲも一斉に花を閉ざし始めている。

芽だし寸前の木々の向こうは日本海だ

 向こうから地元の監視のおばさんがやってきた。聞くとも無く聞く話。曰く先の24日、
25日が晴天に恵まれて最高だったのだとか。それからキクザキイチゲのことは地元では
イチリンソウと呼んでいるんだそうだ。「??」なんだかキクザキイチゲとイチリンソウ
の区別がつかなくなってきたぞ。でもこういうことだろう。キクザキイチゲはキクザキイ
チリンソウともいうので、頭の「キクザキ」が省かれたに違いない。また図鑑で見ると、
イチリンソウの所謂、花弁部分はキクザキイチゲより幅が広いので容易に区別できる。つ
いでに遊歩道入口で行者ニンニクを売っていた話で、何処を食べるのかと問うてみた。お
ばさん曰く、根は来年の為に残し、茎と葉っぱを食せば良いとかで1本摘んでくれる。口
に入れるとネギやニンニクで馴染みのある硫化アリルの匂いが口中にモワッ、拡がった。

 再びベンチのある雪割草群生地。こういう時のデジカメはうれしい。撮り残しのないよ
うにもう一度目ぼしいのを抑えて置こう。フイルムじゃ、こうはいかない。(^^;

 下山するともうバスの姿は無い。山道の途中ですれ違った20人くらいの団体さんのバ
スだったのだろう。清楚でいて且つ華やかな雪割草を見られて、なんだか満腹のような、
胸いっぱいのような、ゲップの出そうな気持ちで雪割草の里、深見を後にこちらも車中の
人となる。穴水へ戻る途中だったか、下山を待っていたかの如くパラパラ空が泣き始めた。
これも皆さんの行いがいいからなのかなあ。花一杯の一日でした。同行の皆さんに感謝で
す。

 ▼ユキワリソウ百花繚乱▼    とりどりの雪割草の姿をご照覧下さい









■同行 あかげらさん、呉春さん、幸さん、だめちゃん、たらちゃん、ハム太郎さん、
    みずさん、もぐさん

【タイムチャート】
6:00千里中央ローソン前
10:50〜10:55門前町深見(駐車地)
12:19〜12:20森林浴の森看板
12:23猿山分岐
12:35〜12:50猿山岬灯台分岐の十字路
13:02猿山分岐
13:10〜13:35東屋(昼食)
14:25門前町深見(駐車地)


猿山〜雪割草群れ咲く能登の岬へ を見る



猿山のデータ
【所在地】石川県輪島市門前町
【標高】332.5m(三等三角点)
【備考】 能登半島西部の低山部の一峰です。西から南の麓にはミ
スミソウの一種であるスハマソウやイチゲ類等、キンポ
ウゲ科の花々の群生が見られます。南の深見集落から遊
歩道が整備されており、また猿山灯台の取付け道路から
アプローチできます。
【参考】
2.5万図『門前』


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