猿山〜雪割草群れ咲く能登の岬へ
 
平成17年 3月19日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲
猿山の雪割草


 スプリングエフェメラルとは早春、他に先駆けて咲く花々のこと。イチゲ類やミスミソ
ウ等、キンポウゲ科の花が多いが、そのなかでも雪割草とも呼ばれるスハマソウの日本一
の群生地を訪ねようというお誘い。場所は能登と些か遠いが、未踏の地でもあり、十分日
帰り可能ということでお誘いに乗ることにした。

 午前6時前、集合地の水谷さん宅へ。既に呉春さんが到着していて、集合時間の6時1
5分、もぐさんの車が千里中央経由でやってきた。総員7名、水谷さんの車に乗り換えて
一路、北陸道で能登半島の門前町へ向かう。門前町のHPによれば、今日と明日、現地で
は雪割草祭りが開催されるという。混まないだろうかと些か心配。

 絶好の山日和。途中の車窓を彩る雪を被った比良山、鈴鹿、伊吹山、越前の山々、白山
連峰と、移り変わる景色に片道5時間の旅も厭きない。

 金沢西ICから能登有料道路に乗り換えて、2時間くらいだろうか。日本海に面した寒
村、深浦。ここから雪割草のメッカ、猿山へ遊歩道が伸びている。当地にあるのはスハマ
ソウと呼ばれる種類らしい。三裂する葉が尖り気味なのでミスミソウと呼ばれるのだが、
スハマソウはその葉が丸い感じのものをいうらしい。しかし、その中間的な個体もあって、
区別は明確ではない。

 車整理に門前町役場の職員が2名。しかし先行車は幸い2、3台。職員さんから案内図
を頂く。花の状況を聞くと咲き始めとのこと。さて、どんなものだろう。

 水谷さんが面白いものがあるという。深浦川を渡った左手の民家の庭先に棒杭みたいな
ものが立てられていて、見れば「巻町記念云々」の字がある。なんでも、巻町の住民のル
ーツがこの深浦らしい。「ふーむ、そうだったのか」耕す耕地も限られた集落から、日本
海を潮流に乗って移っていったのだろうか。

 さて、猿山岬への道は集会所横の路次から始まる。道標があって灯台までは3.4qと
ある。結構、遠いもんだ。民家の壁に雪割草保護の為の募金箱が設置されていたので、ほ
んの志だけれど入れておく。

 いきなりの急登。つづら折れの道である。登るに従って、潮騒というのだろうか、海岸
に打ち寄せる波の音が高まってくる。振り返れば深浦川河口の猫の額ほどもない平地に軒
を寄せ合いへばりつくように建つ深浦集落の家々の屋根が小さくなり、能登半島の海岸線
が海の青と相まって綺麗だ。まことに牧水の「白鳥は悲しからずや空の青海の青にも染
まず漂ふ」歌そのものだ。

展望地から見る深浦の集落と能登の海

 展望地を過ぎると尾根道で、海岸の崖沿いの道との分岐があるが、こちらは通行止めら
しく右側の道をとる。日当たりのいい場所ではフキノトウが至る所に顔を出し、アオイス
ミレの薄紫の花。林からウグイスの声。海流の加減か案外暖かいのだろう、雪もそれほど
多くはないそうだ。勿論、今日は雪は皆無。

ポカポカ陽気に足取りも軽く雪割草自生地へ

 一山越えると小さな沢が下に見え、そこを下っていくと、早くも花が見つかったらしい。
歓声が上がる。キクザキイチゲ。青い花が開き加減に風にそよいでいる。白い雪割草もあ
る。一行は一気に撮影モード。次々に花が見つかってはカシャカシャ。この分じゃ灯台ま
で行き着けるのか心配なほど。(^^; しかしこんなものじゃなかった。

 人間は勝手なもので沢山見つかると食傷気味になって美人の花しか見向きもしなくなる。
前方から地元のおばさん連がやってきたが、その頃にはもうあちこちに雪割草が咲いてい
て、どれを写そうか迷うほどである。立ち話によると、おばさん連は直ぐそこの簡易テン
トで管理をしているそうだ。大阪から来たというとキャンディまでくれた。

 もう一度沢を渉って向こうの山腹に取り付く。かなり深い崖上の狭い場所もあって、花
ばかり探していると、足元が危険で注意が要る。やがて、山道の横の広場に東屋を見つけ
昼食とする。ここで30分ばかし休憩をとる。

登山道途中からは岩に砕ける白波が

 猿山への分岐を右に見て直進する。白亜の灯台がまだまだ冬枯れの林の向こうに見え始
めた。一旦、少なくなった雪割草が、灯台に近づくにつれ再び群れ咲くのが見られるよう
になる。見物の人数も俄然増えてきた。北の皆月の方からは車で直ぐそこまで登って来れ
るそうだ。某新聞社の旅行会のバスツアーや、地元門前町の雪割草ツアーの連中で、山道
は一部ごった返す状況である。案内板のある十字路から灯台の立つ台地に下ってみる。灯
台は高さ17m、灯が点ったのが1920年というから大正9年。海から機材を人力で担
ぎ上げて建設したというから恐れ入る。昭和60年まで係員が常駐していたらしいが、今
は無人化されているという。青空と海をバックに陽光に白く輝く灯台はなかなか美しいも
のだった。
白亜の猿山岬灯台

 十字路に戻る。ここまで来たのだから、猿山の三角点を踏まねばなぁ。(笑) 1q足ら
ずらしいので、足を伸ばしてみることにした。同行の皆さん、単独行御免あれ。(^^;;

 遊歩道が整備されていて、雪割草を見物しながらの登り基調で10分足らずでベンチの
ある小さなピークに着くが、ここまで来る人は殆んどいないらしい。さっきまでの喧騒も
うそのようである。それからはほぼ水平の道。前方に見える冬枯れの柔らかい高まりが猿
山らしい。グルーッと半円を描くように尾根を進み、今度は右に緩やかに曲がるとベンチ
が一つ。道はまだ続き、多分、灯台への取付け道路に繋がるのだろうと思われるが、下り
基調に変わるので、それと分かれて右の高みへ上がってみると、そこが山頂。「猿山山頂」
と記された標識と三等三角点の標石がササの切り開きの中に見つかった。

まだまだ冬枯れの猿山
笹に囲まれた猿山山頂

 展望もなく時間もないのですぐに引き返す。何の変哲もない山頂だけれど、三角点にタ
ッチすると何かしら充実感があるから不思議。10分位で十字路へ戻り、他の皆さんを灯
台まで戻って探すが、もう帰路に着いたようだ。少し急いで往路にあった猿山の分岐まで
戻ると、30m先になかいさんの背中とザックがあった。

 帰りはギョウジャニンニクやノビルを探しながらの戻り。往路は閉じていた花々も光を
浴びて、花弁(実はガクらしい)を大きく開いている。所々から見える日本海には貨物船
が行きかう。花に海に山。それに山菜。早く起きて来た甲斐があったというものだ。取付
きの深浦に戻ったのは丁度、3時頃であった。

 雪割草まつりは門前町役場前のメインストリートで開かれているというので、寄ってみ
るが、終了時間の3時を少し過ぎていたからか、意外と閑散としたもの。役場の前で手ご
ろな雪割草の鉢を買う。地酒を買った人もいたが誰かは押して知るべし。(^^;

 往路では雲を被っていた白山連峰も夕日に薄く染まって、その全貌を現している。片道
5時間の長丁場も、皆でワイワイいいながらだと早いもの。大した渋滞にもひっかからず
8時過ぎに帰着。酒を片手に、アップロードしたデジカメ画像でも眺めながら、また余韻
に浸ることにしようか。皆さん、とりわけドライバーを勤めた水谷さんに感謝です。

車窓からは神々しい白山連峰が



■猿山で見られた花々を写真集早春の可憐な舞にしてみました。ご覧ください。

■同行 呉春さん、すみれさん、なかいさん、法香さん、水谷さん、もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
5:55〜6:15水谷さん宅前(集合地)
11:00〜11:10深見集落
12:30〜12:55東屋(昼食)
13:20〜13:35案内板のある十字路から灯台付近
13:52〜13:53猿山(332.5m 三等三角点)
14:04案内板のある十字路
14:24東屋
15:05深見集落

猿山のデータ
【所在地】石川県鳳至郡門前町
【標高】332.5m(三等三角点)
【備考】 能登半島西部の低山部の一峰です。西から南の麓にはミ
スミソウの一種であるスハマソウやイチゲ類等、キンポ
ウゲ科の花々の群生が見られます。南の深見集落から遊
歩道が整備されており、また猿山灯台の取付け道路から
アプローチできます。
【参考】
2.5万図『門前』



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