天狗石山〜広島遠征で登る天女花の山
 
下山中、ようやく顔を出しかけた天狗石山だったが...。
平成19年 6月 9日(土)
【天候】曇り時々小雨
【同行】別掲


 3月に広島転勤になったOさんから広島の山に登りませんかとオフ会の誘いが公開され
た。新築なったOさん邸にお世話になって土日に山に登るという趣向。広島に限らず、中
国地方の山は、関西に比べて手垢のつかない自然が残されている感じがするのは、小生の
少ない体験でも証明済み。なんだかんだで意思表明が遅れたけれど、やっぱり、行ってよ
かった広島オフ。今回は島根との県境にある花の山である天狗石山とブナ林が残された備
北の名山、福田頭(毛無山)。それではまずは天狗石山の山行記から。

 予報は二転三転して豊中では土曜未明から雷鳴轟く悪天。これはどうなることと気が揉
めるが、西へ行くほど天候は回復傾向なのでオフは決行と連絡が入る。幸い雨の上がった
5時にMさんに迎えに来てもらい、中国道を広島へと向かう。Oさんとの合流地点は江の
川PA。手前の庄原では本降りの雨に唖然とするも、その先に進むと青空が広がってきて
更に唖然。梅雨前のよく分からない天気模様である。

 9時過ぎ、Oさんの赤い車がやって来て無時合流。久闊を叙す。二世のH君ももう二歳。
10sを優に越える体重に、いつも背負って登るOさんは大変だ。(笑) 

 さて本題に戻ろう。実は土曜の行き先はなんとこの時はまだ決まっていなかったのだ。
天狗石山に決めたのは西へ行くほどいいだろうということと、Oさんの二世のHくんも背
負子で登れる山だから。というわけで天狗石山の最寄である戸河内ICを目指し、中国道
を更に西へ向かう。

 戸河内ICを降りた所の道の駅付近で食料を仕入れ、R186で浜田方面へ北上する。
ところが北へ向かうに従い、良かろうはずの雲行きがまたまた怪しくなる。北からの寒気
が悪さをしているらしい。北広島町に入り、才乙(さいおと)の集落を抜けて天狗石山の
麓に来ると、なぜか本格的な雨脚となり、山は中腹以上はすっぽりガスの中だ。それでも
ここまで来たからにはと一車線の道を上がって登山口のある来尾峠。ここは芸石国境の峠
で北はもう島根県浜田市だ。東側に今回登る天狗石山、西には元はアイヌ語という説もあ
る一兵山家山(いちべいさんかやま)という面白い名がついた山の登山口がある。しかし
雨は一向に衰えず、切り開かれた駐車広場でしばらく様子見をする破目になる。

来尾峠の天狗石山登山口。このときはまだ雨が...

 ところで天候ほど山行の気分を左右するものは無い。日が射さぬと全くテンションが上
がらぬが、青空が広がると俄然気分も晴れやかになるのは不思議だ。Oさんの携帯電話で
確めると嘘か誠かこの付近だけ雨雲が流れているらしい。地元のKさんが登っている備北
の山ではピーカンなんだそうだ。誰だろう。雨を運んでくるのは...?(笑)

 車中で30分ほど待っていると、灰色の空は変わらないが、幾分、小降りとなり代わり
に周囲はガスに包まれはじめる。その内に少し風も出てきて、ホトトギスをはじめ色々な
鳥の鳴き声が聞かれるようになる。ドアを開けるとほとんど上がったようだ。しかし、今
回は幼児同伴なのでムリは禁物。じっとしていると寒いくらいなので林道周辺を散策など
して、体を動かしながらもう少し様子を見、まあ大丈夫だろう、これ以上大降りもなさそ
うと判断して、とりあえず行けるとこまで行こうかということになる。

登山道で鈴なりだったアカモノ。ツツジ科の常緑超低木

 樹林に包まれたトンネルのような道である。そこにヤマツツジ、レンゲツツジ。コナス
ビの黄色い花がある。なかなか花の多い山だ。と、至る所にササユリ。但し、まだ年数が
経っていないらしく蕾がない個体がほとんどだ。代わりに登るに連れて目だって増えてく
るのがアカモノ。ツツジ科の超小型植物。1センチにも満たない風鈴型の薄紅い花を文字
通り鈴なり付けている。
傘を持ってブナ林の中を急登する
先頭はH君をボッカするOさん

 道は登山口付近の小さな植林の横を抜けて右にカーブすると一気の登り基調になってい
く。今回で一番厳しいのはこの辺り。軟弱な足元の中、また雨が降り出す。傘をさしなが
らなので少し不安定。ズルッと行かないようにせねば...。(^^;

 登山道にはテープはほとんど無い。要所に布切れが巻かれてあるだけといたってシンプ
ル。関西じゃこうは行きません。(笑) 樹林を抜けると背丈ほども無い潅木と低いササの
原。が、展望が良いはずがまるでガスの中で、左前方のうっすらとした影が天狗石山の前
衛の斜面らしい。それにしてもホトトギスの声が頻りで、空を見ているとあちこち横切る
姿がある。ウグイスの鳴き声もそこかしこで聞こえるが、巣を空にして鳴いている場合じ
ゃ無かろうに。(笑)

 レンゲツツジの朱色、ガマズミの白花を愛でながら高杉山の分岐を右に見てまた樹林に
入る。今度はブナやミズナラの本格的な森である。だから雨が強くなっても樹冠が傘の役
目をしてくれて助かる。ただ、風が出てくると雫がバラバラと落ちてくるから安心は出来
ないけれど。(^^; 足元にはギンリョウソウやマルバフユイチゴ、ユキザサが多く、エン
レイソウはもう緑の実を膨らませている。道はゆっくりと左にカーブし、その辺りで高さ
20mはありそうな巨岩が姿を現す。その横を巻いてやや岩がちの道を登ると、どこから
か小鳥の雛の声。もう巣立ち寸前のように思えるが、我々闖入者に驚いて親鳥を呼んでい
るのか鳴くこと頻りであった。

 岩がちに変化した登山道を進むと、また大きな岩が樹間に垣間見えはじめる。岩の上を
透かすと、ガイドにも書かれていた木製の展望台が乗っているようで、ということは山頂
はもうすぐだ。佐々木新道と書かれた踏み跡を右に過ごし、島根県側から上がって来る道
と合流して廻りこむと展望台の前に出た。その展望台の横には天狗石山と書かれたプレー
トと共に三等三角点が岩の上に乗っている。これが山名の由来になった岩かもしれない。
よくあるのは天狗が空を飛んで羽を休める為に舞い降りた岩などという伝説で、ここもそ
んな感じのテーブル状の岩だけれど、来る途中にあった岩の方がなんだか立派に見えるな
あ。(笑)
天狗石山の三角点を抱いて
この岩の突端にオオヤマレンゲがある

 ところでガイドにも載っているオオヤマレンゲは何処だろう。三角点のある岩と岩の間
を伝って踏み跡らしきものがある。その先を見るとなにやら白いものがと思ったら、やっ
ぱりオオヤマレンゲの蕾である。一番花は数日後には咲きそうであったが、他の蕾の固さ
から見て、ピークは二週間程度先のように思える。とりあえず蕾をデジカメに納める。し
かしこの雨に濡れた蕾もなかなか清楚だなあ。(笑) 見渡すと幾本かのオオヤマレンゲ
が見つかるが、規模的には大きくないようである。

まだ蕾だった天女花、オオヤマレンゲ

 登山口で雨待ちしていた間に、車内で早々と昼食を平らげた人もいたようだけれど小生
ははらぺこ。雨が降らない内にと展望台に戻ってそそくさと腹中に納める。と、食べ終わ
るのを待っていたかのように灰色のガスが辺りを覆って雨が降り出す。

 H君が濡れると大変なので、そろそろ下山に。前述したけれど森に入れば梢が自然の屋
根。風がビュッと吹かない限りほとんど濡れることがないので有難い。耳をすませば葉っ
ぱを打つ雨の音の強弱もいい。そして森を流れるガスの濃淡が幻想的な風景を産む。一転
して雲の隙間から薄日が射すと、木漏れ日がこれまた綺麗。うーん、いいねえ。溜息が出
ますなあ。
ガスが流れて幻想的な山頂直下の森

 ササの原に戻ってくると天候がやや回復してきて、あれほど濃かったガスの切れ目から、
時折、束の間だけれど下界が広がるようになっている。向こう側の高杉山、スキー場や才
乙(さいおと)の集落がミニチュアの如く。振り返れば天狗石山の山頂付近が....。写さ
んとデジカメを取り出すやいなや、また姿を隠す。こんなやり取りが数回。きりがないの
で諦めた。その間にも、ホトトギスが行ったり来たり。これほどまでにホトトギスが多い
山は初めて。Mさんは「テッペンカケタカ」と聞こえると苦笑している。

束の間ガスが晴れて、高杉山やスキー場、才乙の集落が

 樹林に入れば雨上りの斜面を滑らないように下るのみ。H君を背負っているOさんは大
変だったろう。それでも無事、登山口へ。結局ここまで誰にも会わず。まあ、こんな天候
じゃ普通、誰も来ないわねえ。(笑) でも本当に手垢のついていない感じを新たにした天
狗石山。もっと近ければ何度でも来たい。ここもそんな気にさせる山域であります。

 帰途は島根県側に降りて浜田道・広島道経由でOさん宅へ。本日は有難うございました。
そして今夜も引き続きお世話になります。明日は晴れますように。



■同行:大加茂さん、穂高君、みーとさん、もぐさん

【タイムチャート】
5:10自宅発
8:40〜9:10江の川PA(集合地)
10:45〜11:45来尾峠(登山口)(雨宿り)
13:05高杉山分岐
13:20大岩
13:30佐々木新道出合
13:32〜13:55天狗石山(1,191.8m 三等三角点)
15:10来尾峠(登山口)


第2日目 『福田頭はトトロの森〜広島遠征オフ第二日』はこちら


 天狗石山のデータ
【所在地】広島県山県郡北広島町、島根県浜田市
【標高】1,191.8m(三等三角点)
【備考】 広島県北西部、島根県との県境にあり、西中国山地国定
公園に属する山です。幾つか登路がありますが、西のタ
ワである来尾峠からが簡便で冠山までの縦走などが楽し
めます。また中腹はたたら製鉄の為か高木が無いので眺
望が良く、また種々数多くの花々が咲く山でもあります。
【参考】
2.5万図『石見坂本』



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