福田頭はトトロの森〜広島遠征オフ第二日
 
午後から顔を出した福田頭(毛無山)[福田上の運動公園から]
平成19年 6月10日(日)
【天候】曇りのち晴れ
【同行】別掲


 第1日目の天狗石山のあと、Oさん宅ではゆっくり休ませて貰った。枕が替わると寝つ
きの悪い小生だが、すぐに寝付いたようで5時前後に目覚める。ウグイスの声がすぐ近く
で聞こえる。いい目覚まし時計である。更にうとうとして6時頃起床。朝食までご馳走に
なる。ご迷惑をおかけました。m(_ _)m

 さて今日は今回の広島遠征の本命、福田頭(毛無山)。天狗石山への登りに比べれば、
標高差もあり、歩行時間も長いのでH君はMさんとお留守番だという。屋外に出ると青空
が広がるいい天気。7時半、車2台で勇んで出発だ。

 今日こそはピーカンだぞ。気分上々だ...と思いきや、R375を北上し三次市内か
ら庄原市内へと移動するに従って、またまた何だか灰色の雲が空を覆いだしたではないか。
R432で比和川沿いを遡行する内についにぱらついて来た。北の方の山並みは軒並み雲
の中である。おい、おい、大丈夫か。全く昨日の二の舞、誰か雨雲を引き連れてきてはい
ないか。(笑) 

 それは兎も角、比和町に入り福田の集落を抜けて、やがて県道沿いの新しい登山口標識
の所にやってきたが、案内図のコピーを見ながらではいまいち現在位置がはっきりしない。
車を登山口と下山口にデポしなければならないので、正確な現在位置を知るにはとりあえ
ず運動公園に行くのが良かろうとそちらへ向かうことにする。運動公園から見る福田頭の
山並みも中腹以上はやっぱりガスの中だ。

福田上集会所前の駐車地から眺める福田頭はは分厚い
ガスの向こう(冒頭の画像と比べてください)

 ようやく現在地も把握できて運動公園から東に降りていくと田園地帯に出て、北上する
舗装路横に福田上区集会所と福田頭登山口の大きな看板を見つける。とすると、この車道
を登っていけば案内図の下山口のはず。白いガスの流れるワインディングロードを10分
ほど登る。数台の車が置ける広場の横に案内板と共に下山口がある。小さな谷沿いだ。

 再び集会所に戻って来る。北九州bフ先行車が1台。これも遠征組か?(笑) 準備し
ていると、さっき下山口で話しかけてきたご夫婦の車が通り過ぎてゆく。この天候に登山
を諦めたようだ。地元の人だろうか?でも我々は遠路はるばるやってきて、少々のことで
は諦めることは出来ないのだ。(笑) 昨日よりはいいコンディション...のはず。雨も上が
ったこととて、さあ、とりあえず出発である。

 井西谷(いざいだに)沿いに舗装路を進む。田植えの終わった田んぼをツバメが行き交
う。防護柵に等間隔に並んだ嘴の黄色が抜けないツバメは飛行訓練の最中らしい。立派な
黒松のある最後の民家を過ぎると、道標は右を示す。橋を渡って田圃の中の農道をしばら
く行くとまた舗装路に出くわすが、これは最初に車を止めた県道沿いの登山口からの道の
ようである。

 左に折れて地道になった林道を進む。スイカズラ、ウツギ、ヤマツツジが咲いている。
とりわけ目立つのはエゴノキの白い花だ。林道は杉林を抜けて再び谷川沿いとなり、沢音
も高い。いつの間にか空も青い部分が覗くようになる。日差しがまぶしい。いいぞ、いい
ぞ。気分も明るくなってくる。
クリの巨木の林道終点の広場。ここから本格的な山道だ

 歩き始めてから40分位か。良く手入れされた杉林を左に見て林道の終点の車両回転場
に着く。ここには登山ポストがある。左手にはクリの大木。芝栗らしくやや樹勢が弱って
いるように見受けられたが、枝先には穂状の花も見られる。小休止。先はまだまだ長い。
この頃定番にしている一口アンパンを頬張って小腹を宥めておこう。

 ずっと右に見ていた井西谷に架かる丸木橋を渡る。まだしばらくは杉林の中だ。再び左
手に井西谷が姿を現す。植林を抜け出すと辺りは自然林。近畿周辺に見られるものよりも
自然度が高いというか、手が入っていない感じがする。流れる水もまるで青く染まってい
るかの如く、緑滴るという表現がぴったりだ。その中をしばらく歩いて、沢を渡った向こ
う岸がT字路になっていて、右に行けば一ノ滝らしい。50mも沢を遡ると、勢い良く岩
をほとばしる一ノ滝へ出る。

 登山道は一ノ滝を高巻いていく。ケヤキの大木を過ぎ、二ノ滝、三ノ滝と見物しながら
適当に小休止を挟みながら高度を稼いでいく。それぞれ表情の違う三つの滝である。最後
の三ノ滝の前を横切って、やや岩がちになった斜面を辿ると分岐。ここは左へ。すると急
に斜面が緩む。
滝三選(一ノ滝)

滝三選(二ノ滝)

滝三選(三ノ滝)

 案内図に『湿地の沢』とあったのはこの付近らしい。まさしくトトロの森か、もののけ
姫の森だ。大きなサワグルミ、ミズナラ。足元には大きなシダやヤグルマソウ。コゲラの
ドラミングが遠く、近く。とはいうものの草むらで見えない足元にはチョロチョロと水が
滲みだしており、マムシなぞが出て来ないかと実は戦々恐々でもあるのだ。やがて左に曲
って小さな支沢沿いに傾斜がきつくなるとブナとササが取り巻き、もう沢にはほとんど水
が流れなくなってきて、稜線が近い事を示している。その沢を示して、「水飲み場」の標
識があった。

湿地の沢はまるで「トトロの森」だ

 ガイドでは水飲み場まで来れば大波峠までは間もなくとのこと。その通り、しばらく進
むうちに前方の木の間越しに明るみが見え始めた。そうして急に傾斜が緩んでササに囲ま
れた稜線に出る。大波峠(おおはのとうげ)だ。ここでようやく向こう(東)側が俯瞰で
きるようになる。重畳と重なる山の波。良く通る風が額の汗に心地よい。因みに井西山へ
の尾根通しの道は、はっきりしていないようであった。

ようやく着いた大波峠。フーッ

登山道脇に立つブナの大木

 ここまでくればあと標高差150mの登りのみ。等高線の少し混んだ所も2箇所程度。
まずは1161m標高点ピークに向かっての登りである。辺りはすっかりブナ林。独特の
白っぽいしみのある黒灰色の幹が大小織り交ぜて林立する。ミソサザイが転がすような鳴
き声を交わす。そうして、もう一頑張りすると福田頭の南北に長い稜線で、ほとんどアッ
プダウンはない。コイワカガミ、ヤマツツジ、マイヅルソウが咲くプロムナードだ。岩陰
の濃いピンクのコイワカガミに気をとられている間に、いつの間にか伐採されて展望のよ
い福田頭(毛無山)の山頂だ。吾妻山、大万木山などの方角を示す標識が幾つか立ってい
る。それほど展望がよいのだが、土地勘の無い小生にも分かるのは保養施設のある吾妻山
のみである。(^^; 
福田頭(毛無山)山頂

山頂から南東方向。右手遠くは四国の山々だろう

 山座同定は後にして、何はともあれ山頂の東側の岩に陣取って食事。その内に、単独の
登山者が2、3人上がってくる。近畿じゃこんないい山にこんな人数で済むまい。(笑)

 景色を愛でにあっちの方へ行き、こっちの方へ行き。ナナカマド繁る山頂からはガスが
晴れれば、昨日登った天狗石山や、吉和冠方面も眺められるのだが、眺めている間にも見
る見る内にガスが周囲を蔽い尽くす。それを汐に下山にかかることにした。

 福田頭の山頂から北はブナを主体とする樹林である。足元をマイヅルソウの白い花の群
落が飾ってくれる。またガスが晴れ、日が当たり始めたブナの樹林帯を進むと、Ca134
0m峰がある。登山道から数m西が展望地になっていて南方向が開ける。間が良く雲が切
れていて、福田の集落や運動公園が手に取るように眺められる。こちらも周囲は山また山。
それにしても山が深いわア。(笑)

展望地から福田の集落。運動公園が見える

 『兎舞台頭』と標識のある場所には四角い露岩がニョッキリとある。これを"舞台"に擬
しているのかも。道はここで尾根から外れて西に折れ、ブナの原生林をひたすら下ってい
く。老木、若木取り混ぜてまとまった数のブナが残っている。中には目通り周囲3m位の
大木も聳えている。木漏れ日にまだらに染まる美しいブナ林だ。歩いていると時折、北が
開け、ガスが流れる吾妻山や烏帽子山方面が雄大に広がる。今しも風が吹き抜けているが、
とりわけ冬は季節風と雪の重みがかなりの負担なのであろう、幾つかのブナの大木が倒れ
こんでいる。しかし、枯れたわけではなく根を露出しながらも新しい葉を出している。す
ごい生命力である。

ブナ、ブナ、ブナ

苔むしたブナの股から根を出した広葉樹

 植林に行き当たると道はまた左に折れ、斜面をジグザグに下り始める。ここにも大きな
ブナがあって幹の股から大きな5枚葉の植物が枝を伸ばしていて、葉が日に透けて美しい。
しばし見上げる。

 道はますます下っていくが、この辺りが一番の急坂だろうか。遠くから沢の音が聞こえ
始める。それは次第に大きくなって、ゴロゴロ、石の転がる沢に行き当たる。『昇竜の滝』
と標識があり、20m余り沢を登ると、数段に分れて落ちる滝がある。水量が多くないの
で昇竜というほどの迫力はなく、もっと優美な名前にすればと思うのだが、まあ我々野次
馬がとやかくいうこともないか。(笑)

 しばらく歩き難い沢を行くが、やがて右岸に上がるともう下山口はすぐそこで、一気に
明るくなったと思ったら、デポしたOさんの赤い車は目の前なのだった。登りに結構、時
間を要したように思うが、下りはあっという間で、いささか狐につままれたみたい。下山
口が登山口より300mも高いのだから当たり前か。(笑)

緑深い下山口。矢印を歩いてくる

 下山口から集会所まで、歩けば1時間近くかかるだろう。車とは便利なものでほんの1
0分足らずで登山口だ。そこへ戻ると山頂で出遭ったお兄さんが装備を解いている。えら
い早いなと思ったら、デポした自転車をすっ飛ばしてきたらしい。やっぱり。福山だった
かジモティのお兄さんでした。

 もうすっかりガスが晴れて、一体、朝の雲行きは何だったんだという感じ。最後に記念
に福田頭の写真でも撮っておこうと運動公園に戻る。井西山を従えた福田頭がくっきりと
スカイラインを描いている。さっきまであんな所にいたのだと感慨無量とは少々大袈裟か。

 Oさんとは名残惜しいがここでお別れ。といっても庄原のICまで先導してもらう。今
回の広島遠征では大いにお世話になった。お陰で二日に亘って手垢のつかない自然林を堪
能させていただいた。福田頭の登山口に立っていた案内板には『自然の素晴らしさを紹介
するとともに、自然の大切さを認識してもらうことを目的として開設しているので出来る
だけ人工的なものは加えていません』とあったが、その字句通り、テープやプレート類も
ほとんど無く、ゴミ一つ無い終始清浄な空間であった。よければまたブナの黄葉の季節に
またお邪魔したいもの。そんな思いを残して東へ戻る。マタタビの半白の葉が見送りに打
ち振られるハンカチのようでした。


■同行:大加茂さん、もぐさん

【タイムチャート】
7:30Oさん宅発
9:55〜10:10福田上区集会所(駐車地)
10:54〜11:05クリの巨木(登山口)
11:20〜11:25一ノ滝
11:42〜11:50二ノ滝
11:55三ノ滝
12:29水場
12:38〜12:48大波峠
12:581161m標高点ピーク
13:20〜14:10福田頭(1,252.7m 二等三角点)
14:24〜14:26展望所(Ca1240m)
14:34兎舞台頭
15:08〜15:12昇竜の滝
15:20下山口
15:30福田上区集会所(駐車地)

第1日目 『天狗岩山〜広島遠征で登る天女花の山』はこちら


 福田頭(毛無山)のデータ
【所在地】広島県庄原市(旧比和町)
【標高】1,252.7m(二等三角点)
【備考】 湖北の奥に根を張る山で、高月近辺から綺麗な双耳峰が
広島県北西部、比婆道後帝釈国定公園内に位置します。
この辺りは比婆山を中心とする1200m級の山々が馬
蹄状に連なり、雑木林やブナ林が良く残され県民の森と
して保護されています。福田頭にもすばらしいブナ林が
残され、また山頂からの眺望は素晴らしく中国山地の山
々だけでなく、遠く四国の山々まで展望できます。
【参考】
2.5万図『比婆山』



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