風薫る赤ゾレ山北東尾根から木梶山
 
木梶山への道半ばから木梶山。遠くに高見山
平成19年 5月27日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 雪の残る1月に歩いた北部台高の木梶山付近は、近頃とみに脚光を浴びている山域だ。
それを緑滴る5月に歩こうという企画に6人のメンバーが集まって、バリエーションルー
トを辿ってきた。黄砂が飛んで視界は延びなかったが、シロヤシオ咲く尾根筋、ブナの新
緑、咲き残ったシャクナゲと、まさしく緑に染まる一日となったのだったが、最後に待っ
ていたのは、やっぱりアブノーマル?でした。(^^;

 例の如く7時に桃山台に集合して、榛原経由でR166を東行する。高見トンネルを抜
けて、林道に折れたら木梶三滝遊歩道の駐車地はまもなくである。9時過ぎの到着。早速
準備して木梶林道を進む。1月には凍っていた道も今は緑一色。ミズキやウツギ類の白い
花が目立つ。勢い良く流れ落ちる滝の音も今日は涼しげに聞こえる。

 車止めのゲートを越える。この辺りの山主らしい○○林業と書かれた大きな重機が道端
に放置されている。以前には無かったと思うが、何処か林道の修復に使うのだろうか。1
月に取り付いた杉の斜面の横の広場には数台の車がある。多分、釣り客の車だろう。その
先、冬には全貌を見せていた鳴滝も今は深い緑のうしろに隠れている。これは地蔵谷にも
言えて、一寸見には谷が合流しているとは見えないほど緑が覆い隠している。林道の山側
の法面がコンクリートで補強され、大きな岩が一つ、林道脇に転がっているのが目印にな
る。
地蔵谷出合の目印はこの大岩
山側はコンクリートの法面になっている

 尾根に取り付くにはまずは向こう岸に渡らねばならない。沢は水量豊富だが、飛び石伝
いに渡れそうだと石に乗った途端だ。滑ってすってんころりんといきかける。すんでのと
ころで何とか体勢を持ち直して右足首とズボンの裾が濡れた程度で事なきを得る。うーむ。
危ないところだったわい。

意外にいい道をブナのグリーンシャワーを浴びて

 ヒルがいるかもと覚悟していたけれども大丈夫。それより驚いたのは、思いもかけずえ
らくいい道がついているではないか。幅は1mくらいはありそう。林道ができる前は、こ
れが岨道の本道だったのではなかろうか。そんな感じがする。地蔵谷の右岸に沿って付け
られた道と木梶本流左岸の道の出合から本流左岸沿いに進む。100m程度進んだ辺りで
そろそろ斜面に取り付こうということで斜面を登り始める。地形図によれば、赤ゾレ山に
行き着くまでに3度急坂がある。その内で一番きついのがこの最初に現れる斜面。およそ
150mばかりを一気に稼ぐのだ。勿論、踏み跡もテープもなく、あるのは薄いケモノ道。
それでも、ヤブがなく何処でも歩けるので、歩きよさそうな所を選りながら高度を稼いで
いく。周囲はブナ、ミズナラ、ヒメシャラ、ハウチワカエデなどの自然林。乾いた風が吹
きぬけて、汗を掻くしりから乾いていくので心地よい。でもそのお蔭で顔は塩を噴いてザ
ラザラだ。(笑)

 次第に尾根がはっきりし始めた頃、左(東)が杉の植林となり、右(西)の自然林との
境い目を行くようになる。すると何処からか残置テープが現れる。我々は途中で斜面に取
り付いたけれども、もう少し先まで行くと、植林と自然林の境に沿って本来の踏み跡があ
るのかもしれない。

 さて、テープが現れるとけものみちだったものが明瞭な踏み跡となって、迷う心配も皆
無になる。山仕事でもされているのかどこからかチェーンソーの音が響いてくる。

 地蔵谷の方向には丸くカールしたフカフカ絨毯の鹿遊び場が見える。ゴロンと転がった
大きな倒木がある。尾根は次第に細まってシャクナゲ尾根になる。もうほとんど花ガラだ
ったが、まだ咲き遅れたピンクの花が数輪、枝先に残る。左手には木梶山が眺められ、笹
とカヤトの裸地尾根が目立つ。今日はあそこまで周回するのだ。

赤ゾレ山北東尾根の1176mピークにて。針葉樹の古木に
生えた大きなサルノコシカケに座る(画像提供:なかいさん)

 二つ目の厳しい斜面を乗り切った先の1186m標高点ピークは、針葉樹の大木と座る
に手頃な大きなサルノコシカケがある一寸したピークである。この辺りからシロヤシオの
古木が目立ち始める。少し盛りを過ぎてはいたがそれでも木全体が白い星に散りばめられ
たようだ。
木漏れ日に浮かぶシロヤシオ

 ササが目立ち始めると赤ゾレ山の頂はもう直ぐだ。相変わらずいい踏み跡が続き、時折、
ヤマツツジが鮮やかな朱色を見せる横を進む。三つ目の登りはもうスカイラインが直ぐそ
こに覗いていて、あと少しと思うのだけれど、シャリばてと風邪気味の体には些かつらい。
それでも何とか体を持ち上げていくと、薊岳に続く山並みが視界に入って、高い木とてほ
とんどない赤ゾレ山の山頂に着いたことが知れる。

赤ゾレ山から緑に包まれた国見山
奥に明神平と前山が顔を出す

 赤ゾレ山の山頂は台高縦走路から外れているので、登ってくる人は少ない。今日も昼食
の間は我々だけの空間であった。カラマツの下で食事。目の前に展開するジョウブツ山、
薊岳、木ノ実ヤ塚、前山、国見山などの青い山並みを肴にしばしの休息だ。

赤ゾレ池にて(画像提供:たらちゃん)

好天に恵まれ至福の道を木梶山へ

 モリアオガエルなのかカエルの鳴き声がする赤ゾレ池の端を通って、馬駈ヶ辻へ向かう
台高縦走路は、雪にまみれた4ヶ月前の姿とは大きく様変わりしている。今は緑一色に覆
われ、ミズキの白、ミツバツツジの類の赤紫、ヤマツツジの朱色、レンゲツツジの橙色、
メギの薄黄色がその中に目立ち、風に翻る若葉の葉裏が白く光る。1年中で最高の季節と
いってもいいだろう。ここまで来ると、ちらほらハイカーの姿を見かけるようになる。満
腹で重い足を引きずってブナの林を馬駈ヶ辻で左(東)に折れる。ほぼ水平の道で緑のシャ
ワーを浴びながらルンルン気分で歩ける。右手に時折覗く桧塚奥峰に続く稜線を眺めて、
馬駈ヶ場。プレートのあるのは地形図の標高点よりやや西の辺り。その先で左(北)にほぼ
直角に折れる。
馬駈ヶ辻の東付近から桧塚(中央奥)

 林を抜けると低いカヤトの尾根で往路の赤ゾレ山北東尾根から眺められたザレ場が見え
る。黄砂で遠望が利かないが高見山は判別でき、振り返れば伊勢辻山や赤ゾレ山の山並み
が起伏している。スケン谷の源頭にあたる風の通る尾根筋で小憩。羽化したばかりなのか
草にしがみつくオオミズアオがいた。

 この尾根もシロヤシオの古木が多いが、風の通り道の為、花が傷むのも早いようだ。「
花の命は短くて...」のフレーズが思わず口の端に浮かぶ。

 時折、ササユリの草姿も見られる尾根を一登りで木梶山の山頂。勿論、我々以外には誰
もいない。一息つく。

 さて、木梶山は山頂から西へ向かうのが通常周回ルート。シャクナゲ尾根を経て木梶林
道終端へ下りるルートであるが、今日は東方面に向かい、途中から尾根を外れて北に振り、
しばらく下った後に、等高線に沿ってトラバースして木梶林道から分かれて上がってきて
いる林道へ出よういう趣向。林道も近く、今日こそは終始ルンルン道だなと思いきや、な
んのなんの、やっぱり待っていたのは道なき道なのでありました。(^^;

最初は歩きやすい良い尾根だったのですが...。

 木梶東尾根は「梅尾」に向かう尾根筋で最初はやや広い尾根でヤブもなく何処でも歩け
る為か、はたまた歩く人が少ない為かあまり踏み跡らしきものはなく、せいぜいケモノ道
程度だが、先行者のテープと黄色のプラ杭がある。フカフカの落ち葉を踏んで進み、梅尾
に向かう尾根が馬の背状になった辺りで、北に進路を変えて斜面を下ろうという事になる。
地形図で等高線が鳥の頭に似た形状を示す辺りである。

 かなりの急斜面だ。50mほど下った辺りでそろそろだというわけで、斜面を平行に進
む先には、杉の植林帯と鹿ネット。しっかり張られたネットだが、なんとか下を持ち上げ
ると人一人くらい潜れるくらいの隙間ができた。やれやれと思うのはまだ早かった。その
先に広がるのが、植えっぱなしの杉の幼木の密集地。高さが2mと中途半端で前が見えな
いところに持ってきて、枝打ちも間引きもされていないものだから、歩きにくいことこの
上なし。おまけに急斜面。ノイバラやモミジイチゴ、サルトリイバラもはびこって、腕や
手はそこいらじゅう引っかき傷だらけ。150m進むのに30分くらい要したのではない
だろうか。もうそろそろ林道がでてきてもと思う地点までやってきても、いっかな現れて
くれない。それでも少し高台に出ると林道らしいものがかなり下ではあるが前方50mく
らい先に見えているのでそちらに向かえばいいので少し安心。そうなると高見山や三峰山、
はるか下の国道などの雄大な広がりを眺める余裕も出る。現金なものだ。(笑) そうこう
する内に、先頭から林道に出たという声が。但し、眼鏡を落としたという悲痛な叫び?も
加わっている。最後に降りた際に雑木の枝に撥ねられたそうだが、皆で捜すうちに林道の
地面に落ちていたのが見つかる。ツルが痛んでいたがレンズも割れておらず、なんとかか
けられるとのことでやれやれ。安心すると急に首筋に痛みが。杉の枯葉が首筋から入って
チクチクするのだ。家に帰って調べてみたら、なんと棘が四つも手の平の皮膚に食い込ん
でいるのだった。
悪戦苦闘した植林ヤブを振り返った所。中央奥の杉木立付近
から進む。150mに30分位の速度だ

こんな所からやっと林道に降り立つ

降り立った付近の林道の状況

 林道は軽四輪がようやく通れるくらいのダート。あとは豪雨や台風による土砂崩れなど
で通行不能になっていないことを祈るばかりだが、道脇に生えた山菜に摘み取った跡があ
るので、下まで通じていることは間違いないことが分かって安堵。所々、法面が崩壊して
いる部分はあるものの、車はいざ知らず人間ならば問題なし。下っていくうちに道も徐々
にしっかりしてきて、崖を流れ落ちる清水を口に含んだりしながら下っていく。それにし
ても今日は喉が渇く。空気がよほど乾燥しているに違いない。ああ、コーラが飲みた〜い。

 やがて、流れの音が高くなる。木梶川だ。コンクリートの沈下橋を渡り、ジグザグに登
りきると木梶林道に合流。フーッ。でもここから駐車地までが疲れた足には長かった。風
邪気味で咽喉が少しいがらっぽく体調もいまいちだから余計そうなのかもしれない。駐車
地が見えた時には、正直、あちこちの節々の凝りがどっと押し寄せたきた感じ。今度の風
邪は関節に来るのかな?

 文字通り緑一色に染まった一日、まことに台高は何度でも訪れたくなる所だ。爽やかな
風に吹かれ、忘れられない思い出がまた1ページ刻まれました。



■同行:幸さん、たらちゃん、なかいさん、水谷さん、もぐさん

【タイムチャート】
7:05桃山台駅西ロータリー(集合地)
8:20〜8:30榛原駅(集合地)
9:10〜9:15キワラ滝前(駐車地)
10:30〜10:35地蔵谷出合
11:31〜11:321176mピーク
12:07〜12:46赤ゾレ山(Ca1,300m)
13:05馬駈ヶ辻(1,320m)
13:39〜13:45馬駈ヶ場(1,316m)
14:10〜14:20木梶山南500m
14:35〜14:40木梶山(1,230.2m 三等三角点)
15:35〜15:45林道出合
16:42木梶林道合流
16:58キワラ滝前(駐車地)


 木梶山のデータ
【所在地】三重県松阪市(旧飯高町)
【標高】1,230.2m(三等三角点)
【備考】木梶山〜北部台高の静寂の山へ」を参照ください
【参考】
2.5万図『高見山』



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