丹波に春来にけらし向山
 
平成17年 4月17日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲
向山連山はタムシバ、ヤマザクラでパステル色


 丹波のたぬきさん夫妻のお住まいの裏山、向山連山は名にしおうヒカゲツツジの名所。
以前は知る人ぞ知る程度であったのが、最近はインターネットの普及で、その素晴らしさ
が一気に巷間に広がったように思える。それはこの時期のJRのハイキング募集にも名を
連ねていることでも分かる。

 かく云う小生もヒカゲツツジの実物を見たのは、山を歩き出した8年前の1997年。
西多紀アルプスの三尾山で見たのが最初であったが、それが群生している所があると、た
ぬきさんに教えてもらったのが6年前。翌年の2000年に案内して頂いたのだが、「こ
れは半端じゃないな」が偽らざる印象であった。そして2002年のオフでの再訪では、
花の表作、しかも満開。一面のクリーム色に感激したものである。そんな時、偶々眺めた
たぬきさんのブログ。17日、登られると知り、あの時が思い出されて、3年ぶりにお邪
魔することに。期待に違わず、清々しい快晴の下、丹波の山を満喫した一日となったので
した。

 ブログによれば集合は9:15、例の水分れ公園駐車場。遅れてはならじと9時前に着
くと、もう参加の面々が三々五々集まっておられる。それにしても、いつもながらの低徘
メンバーの集まりの速さよ。(笑)

 今日のメンバは9名。定刻には全員集合。恒例の自己紹介の後、父たぬきさんの先導で
出発。当初、ややマイナーな分水界コースからとたぬきさんは考えていたとのことだが、
今回が初めてのメンバーもいて、二の山のミツバツツジも捨てがたく、結局、メインコー
スの観音堂から取りつくこととなる。

 観音堂横から鹿除けネットの張られた道を登っていく。二の山まではややきつい登り。
道は訪れる人も増え、ますます踏み固められていることもあるだろうが、来る度に整備さ
れて歩きやすくなっている。昨年は台風の当たり年で倒木も多かったろうが、今は全く支
障はない。ちょっと整備しすぎとの声もあるが、訪れるハイカーにけが人でも出たらとの
地元の方々の配慮であろう。林に入ると早くもプーンとヒサカキの匂い。そして、やや酸
っぱいような日向の松林の匂い。茂るウラジロにコシダ。この時期の丹波、北摂の山の匂
いだ。この匂いを嗅がないと春が来た感じがしない。(^^;

 滝山古墳のある尾根筋の、あの大きなミツバツツジは健在。やや花の盛りを過ぎていた
ようだけれど、相変わらずなかなかの美形である。そのつい先の二の山を過ぎると右手か
ら尾根が合流してきて、五大山でも見かけた『分水界のみち』のオフィシャル道標が立つ。
これが前述の分水界コースで、見れば綺麗な尾根筋が下っている。合流点を左に折れて5
分も登れば岩座展望所だ。地中から湧き出したような岩に登れば、出発地点の駐車場や、
石生(いそう)の町並みが眺められ、遠く高見城山、弘浪山、篠ヶ峰が青い。

松の台展望所から五台山方面。
中央奥は親不知

 お目当てのヒカゲツツジに逢うには、もう少しアルバイトせねばならない。三の山を越
え、亜炭展望所から一旦下って、四の山への急登を登り返す頃から、クリーム色に彩られ
た姿が目立ち始める。今年は裏作とのことだが、それでも立派なものである。そして松の
台展望所の岩棚に立てば、四の山の切り立った北面や足下に無数のくすんだクリーム色が
貼り絵の如く点在しているのに気づく。それは深坂北峰付近ではトンネル状を呈し、見事
というほかはない。撮影モードで自ずと皆さんの足は遅くなる。

クリーム色のヒカゲツツジ

 そこを抜ければツツジが岡展望所。歩いてきた尾根筋が一望。もうあんなに歩いてきた
かと思えば、その内、そろそろお腹もすいてくる。先行していた団体ハイカーが食事を摂
る向山三角点をパスして、我々はその先の向山平で食事を摂ることにする。いつもの助六
ではなく、今日は弁当自作。(^^; 玉子焼、ウインナー、焼きタラコに香の物。なかなか
美味いじゃないの。小生の腕も捨てたものではない。これからも偶に作ってみるかぁ。(笑)

ツツジが岡展望所から三の山、四の山

 まさしく春爛漫。ヒカゲツツジ以外にも多くの植物が春を謳歌している。クロモジ、シ
キミ、ミヤマシキミ、アセビ。タムシバは盛りを過ぎて登山道に花びらを散らす。足元に
はタチツボスミレやシハイスミレと見飽きることがない。向山連山の最高峰の五の山から
一旦、大きく下って岩混じりの尾根を登り返した蛙子展望所は、向山連山では最も展望が
よく、小生の気に入っている場所。岩の上に立てば、視界がよければ弥仙山や若狭の青葉
山まで望めるのだというが、今日は幾ら快晴とはいえ、黄砂と春霞でそこまでは望むべく
もない。直下では折りしも春日ICと氷上ICを結ぶバイパスが完成し、今日が開通式だ
という。そういえば、一昨年だったか、暑い盛りに黒井城跡に登った時に向山の山裾で工
事をしていたのを思いだす。そんな中、列車のガタゴトいう車輪の音。福知山線の二両連
結のローカル列車がおもちゃのようにゆっくりと走っているのが長閑だ。

眼を西に転ずれば石生の集落と集合地の駐車場やため池が手に取るようで、更に目の前
の清水山辺りの中腹はタムシバの白と山桜の薄い臙脂色の若葉、若緑が渾然一体となって、
何とも綺麗なパステルカラーである。

 そこへ珪石山から登ってきたというNさんとともに、皆で記念撮影。詳細はたぬきさん
のブログでご覧あれ。

 植林の中の譲葉山分岐を過ぎて、10分も歩くと清水山・珪石山分岐。今回は清水山に
廻らず、珪石山から直降下のコース。分岐を右に折れると、地形図にも記載のある、珪石
採掘跡の赤茶けた大きな凹地が左にする。その崖に点々とスミレのアメジスト色。ちょっ
とした高山植物のイメージである。その先に珪石山の小さな頂があって、そこからは一気
の斜面下りである。虎ロープも用意されている。同じ丹波の三岳や白髪岳の斜面の方がき
つい位であるが、土の斜面なので滑りやすい。メンバーの内にも、幾人か犠牲者?が出た
模様だ。(笑)

 一旦緩んだ傾斜が再び増す。風が通らない日差しの下は暑い。が、それも植林下の日陰
になると流石に涼しい。ジグザグ道になってしばらくすると分水界展望所がある。ここは
西に開けた小さなテラス状の広場で、向山の尾根筋や、城山の尾根筋など国中分水界を形
作る尾根や高谷川が見渡せる。尚、この辺りには戦国時代に砦があったらしく、曲輪の跡
らしき地形もあるが、よく分からない。

 小休止の後、再び歩き始める。丸木の階段が整備されていたらしいが、風雨で今は普通
の坂に戻ってしまったような道は再び植林の中へ。傾斜も緩やかになって、桧林を抜ける
と鹿の糞が転がる草の原に出る。その中で桜が2本、最後の艶を競っている。

 全員、降りてくるのを待って、やや荒れた林道を下手に行く。一台の軽ワゴンが止まっ
ていて、見れば水を汲んでいるのだった。飲んでみるとなかなか円い柔らかい感じがした。

やや薄暗い中、右手に分水界コースの登山口を見送って進むと、何やら大峰の女人結界
門みたいな頑丈な門が現れた。鹿除けを通過する林道の通用門らしいが、何とも立派過ぎ
るものに思える。その門を過ぎると、もう水分れ公園の中になり、初夏を思わせる陽気に、
流れの中で遊ぶ子供たち声が聞こえる。散り初めの桜に小田原提灯が揺れる中、山歩きは
ここで無事、大団円を迎えた。

水分れ公園は桜が散り初め

 さて、ちょっと名残惜しいなぁというので、この後、たぬきさん家に寄っていこうと衆
議一決。高谷川の土手でNさんと再会した一行は、駐車場から向山の山裾を進み、たぬき
さん家へ。冷たいものをご馳走になって、1時間ほど寛いで帰途に着く。

 丹波の山はこの季節が最高ではなかろうか。春の息吹が一気に膨れる様はまさしく山笑
う。たぬきさん、同行の皆さん、有難うございました。


■同行
 大西さん、GORYUさん、MXFさん、谷口さん、たぬきさん夫妻、たらちゃん、
 なかいさん(五十音順)


【タイムチャート】
7:15自宅発
8:50〜9:30水分れ公園駐車場
9:53〜10:00二の山手前(滝山古墳)
10:10〜10:15分水界の径出合い
10:20〜10:25岩座展望所
10:33三の山
10:37〜10:40亜炭展望所
10:45〜10:49四の山手前
10:52四の山
11:05〜11:11松の台展望所
11:25〜11:27深沢北峰(521m)
11:35〜11:36ツツジが岡展望所
11:38向山(569.0m 三等三角点)
11:40〜12:20向山平展望所(昼食)
12:33五の山(591m)
12:46〜13:05蛙子展望所
13:10蛙子峰
13:12〜13:15譲葉山分岐
13:26〜13:35清水山・珪石山分岐
14:02〜14:11分水界展望所
14:20珪石山登山口
15:00水分れ公園駐車場

向山のデータ
【備考】貴公子花紀行〜ヒカゲツツジの向山を往く』を参照下さい。
【参考】2.5万図『柏原』



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