弥山・八経ヶ岳〜執念で天女花
 
平成17年 7月17日(日)
【天候】晴れのち曇り
【同行】別掲
奥駈道から眺める弥山(右)、八経ヶ岳(左)


 7月初めから再訪を狙っていた弥山、八経ヶ岳の天女花。ずーっと雨に祟られて行きそ
びれていたが、3週に渡っての執念が実ってか、邪魔をしていた梅雨前線もほとんどフェ
ードアウト気味のこの連休、ようやくGO!。しかも、もう遅いかもなぁ、いや絶対遅い
よなぁの懸念にもかかわらず、目的の天女花はちゃんと期待の応えて待ってくれていたの
でした。おまけにショウキランも。(^o^/

 7時、道の駅「宇陀路大宇陀」集合ということで5時40分、自宅を出る。水蒸気が多
い白っぽい空。しかし、名阪国道高峰SAを過ぎる頃からガスが出て、フロントガラスに
付着した細かい水滴はワイパーが要るほどで、雨かと眉が曇る。
「あらぁ?大丈夫かいな?」
しかし路面は乾き気味。思うに高温で水蒸気をたっぷり吸い込んだ大気が、夜に冷やされ
て結露し、霧状に浮遊していたものと思える。針ICから下る頃には、空も明るくなって
ほっと安堵。

 集合時間5分前。無事、道の駅に到着。皆さんもうお揃いでいらっしゃる。スナフキン
さんとは初対面である。名刺を交わしたりなどして、早速、2台の車に分乗して行者還ト
ンネル西口へ向かう。

 順調に進んで登山口近く。駐車スペースは大丈夫かなと少し懸念していたけれど、杞憂。
花の季節は過ぎたと見てか、路肩にはまだまだ空きがある。それでもトンネル東口や西口
には10台ほどの車があり、名古屋を始め遠地のナンバーもある。流石、人気の山である。

 車を降りるとハルゼミだろうか。唸るような鳴き声。でもクマゼミの喧騒とは違って快
い。他のグループと前後しながら、行者還岳への登り口を左斜面に見て、小坪谷の右岸を
遡る。すぐに木橋が見えて急坂の登りである。ヤマアジサイの青紫がきれいだ。

 ナツツバキの白い花弁が散り敷いているのに目が行かない程のジグザグの急登は、標高
差約400mの一気の登り。まだエンジンがかからぬ体にはつらい。風もなく、汗が一気
に噴き出す。汗を拭き拭き登るに従って、シロヤシオからツクシシャクナゲに主体が移っ
ていく。こんなにも多かったか、北西の斜面はシャクナゲの林である。やがて、ブナも混
じるようになると涼風もそよぐようになって稜線が近づいてきたことを示す。そうして傾
斜も緩む頃、奥駈道との出合いに道標を見る。弥山2時間。まだ先は長い。小休止。

 ここから理源大師像までは、先程の急登とは似ても似つかぬルンルンの奥駈道である。
オトギリソウの黄花、ヤマトウバナが目立ち、時折、バイケイソウの緑っぽい花からガス
の様な臭いが風に乗ってくる。イワガラミが絡みついた岩の上のギボウシのつぼみに気づ
く余裕も出る。

 弁天の森を過ぎた頃だったろうか?前後関係が今一はっきりしないのだが、前方に先行
していた夫婦連れらしいハイカーが立ち止まっている。
「どうしたんですか?」
「面白い花があります。」
見れば、倒木にショウキランの花が二輪咲いているではないか。
「おお!あったぁ!」
もう、時機を逸したかと半分諦めていたけれど、健気に待っていてくれた。鼻を近づける
と柏餅に似たほのかな香りがする。他の皆さんは初めてらしく、興味津々。カメラに納め
る音が響く。
ショウキラン(画像提供:たらちゃん)

 去年は帰りにしか見えなかった弥山の姿が、奥駈道の林を隔てて、眼前に大きく立ちは
だかっている。山頂に小さく弥山小屋の赤い屋根。ひえっ!まだあそこまで登らないとい
けないの?の声も上がる。(冒頭の画像)

 最後の行者泣かせの難所を前に、碑伝が沢山置かれた理源大師像の前で小休止。大福餅
でエネルギー補給をしておく。つーさんからは良く冷えたりんごのお裾分け。旨い!

 さあ、弥山の最後の登り。青々とした木々の間では野鳥の囀り。元来、鳥屋のつーさん
達に、あの野鳥の声はミソサザイ、ルリビタキだ等と教えてもらうのだが、如何せんすぐ
に忘れてしまう。聞き分けの世界、これはもうアプリオリの世界だ。小生がいくら知識を
つけても所詮、聞き分けは困難と思い知った次第。(笑)

 木製階段、鉄梯子をこなして、自家発電のエンジン音がし始めれば山頂は近い。まもな
くバイケイソウに囲まれた弥山小屋が見えてくる。腹も空いたことだし、まずは左に折れ
て国見八方睨で昼食。女性陣は日陰を主張するが、日陰には至る所に鹿の糞が転がる。日
向でも涼しい風が吹いてきて暑くはない。ど真ん中の草っぱら、思い思いに座り込む。

 手製弁当の蓋を開けていると、ややっ?むむっ?ツーさんのザックから保冷パック。出
てきたのはなんと数個の缶ビール。飲ませていただけるという。程よく冷えたビールが喉
をツツーッと。うーん、なんともいえない味わい。聖宝の宿跡でのリンゴといい、ビール
といい、つーさん、有難うございました。

 国見八方睨からの展望は名前から想像するほど大絶景というわけではないが、行者還岳、
大普賢岳、和佐又山、山上ヶ岳、稲村ヶ岳、大日岳など北大峰の山々が居並ぶのが見渡せ
る。早くもナツアカネかアキアカネか。赤とんぼの大群が広い空を乱舞していた。

 1時間くらいゆっくりしたあと、草原から八経ヶ岳への登山道へショートカットした時
である。防護ネットを被せた一角があって、ふと何気なく見たところが白いものが...。
あら?咲いているではないか。もう無理かと思っていたオオヤマレンゲ。なんとか間に合
ったらしくこれなら群生地にも咲き残っているのではないか。期待が持てそうだ。

 ウラジロモミやトウヒの林を、鞍部に向かって気は急くばかりだ。そして、鞍部の鹿除
けの扉の向こうに、茶色く色変わりしたのに混じって、まだ点々と、白い花が緑の中に浮
かんでいるように咲いているのが目に入った。ぎりぎりセーフ!白無垢を探すのは難しか
ったけれど、なんとか、たらちゃん、目的を果たしたのではなかったかな?

咲き残っていてくれた天女花

 サンカヨウの青い実を摘んでみる。種が多いが結構甘酸っぱい味である。カラマツソウ
には白い線香花火のような花。

 花園の鞍部を抜けて登り返し。針葉樹の中、岩がちの道を上がれば八剣山、仏教ヶ岳と
も呼ばれる近畿の最高峰、八経ヶ岳の狭い頂である。去年は雲の中であったが、今回はい
い展望。仏性ヶ岳、孔雀岳の向こうに釈迦ヶ岳の姿や、大台ヶ原も眺められる。弥山から
こちらへ向かってくる登山者の姿もはっきり。それにしても山また山。今年もふわふわ飛
ぶアサギマダラを見る。

八経ヶ岳から弥山。手前のトウヒの右に
弥山小屋が見える。右手奥は大普賢岳

 午後2時も過ぎた。北の方からガスが湧き出したようで、稲村ヶ岳の姿も消えた。そろ
そろ腰を上げましょう。

弥山から八経ヶ岳。左奥に釈迦ヶ岳が覗く


 いつの間にか青空が無くなり、灰色の雲が空を覆い始めた。あろうことか遠雷がなる。
天気予報は夕方、山沿いでにわか雨の所もあると云っていたっけ。奥駈道からトンネル西
口への下りは雨が降るといやな道。もう2時間待ってくれろと祈る。そうして少し急がね
ば...。

 夕方のように暗くなり、ガスも出たけれど、幸い、降られることも無く西口へ。木橋の
架かる取り付きの小坪谷の沢で顔を洗う。暫く漬けていると、かじかむほどの冷たい水で
ある。生き返った心地。

 5時半。道端にはもう2、3台の車しか残っていない。車道の崖にコオニユリが揺れて
いた。

 無事に戻った大宇陀の道の駅で解散。長丁場ではあったが、目当てのものにも出会えて
充実した1日だったのではないか。1週間後には再び上北山村からのアプローチが土砂崩
れで不通になったという。皆さん、お付き合いありがとうございました。


■同行 スナフキンさん、たらちゃん、つーさん、然ちゃん

【タイムチャート】※今回はかなりゆっくりめのコースタイムに
          なっています。
5:40自宅発
6:55〜7:10道の駅宇陀路大宇陀(集合地)
8:25〜8:35行者還トンネル西口(駐車地)
9:35〜9:45奧駈道出合
10:15弁天の森(1600.1m 三等三角点『聖宝』)
10:52〜11:05聖宝ノ宿跡
12:05〜13:05弥山(国見八方睨)
13:43〜14:15八経ヶ岳(1,914.6m 二等三角点)
14:42〜14:47弥山
15:30聖宝ノ宿跡
15:58〜16:00弁天の森
16:10石休ノ宿跡
16:22〜16:25奧駈道出合
17:15〜17:25小坪谷の木橋
17:30行者還トンネル西口(駐車地)



弥山・八経ヶ岳のデータ
【備考】弥山、八経ヶ岳〜天女花舞う近畿の最高峰を参照ください
【参考】
2.5万図『弥山』、エアリアマップ『大峰山脈』





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