静かな秋を独り占め〜高岳

平成13年10月 7日(日)
天候: 晴れたり時々曇り
同行: 単独
猪名川町清水付近から望む高岳(中央の赤白鉄塔の山)


 風邪をひいて気分が重い。山歩きで気分一新したいが、さりとて厳しい山は...。そ
こで心に浮かんだのは先週、大野山から見た高岳。前回訪れたのは2年前の2月。雪が時
折舞う寒い時期だったが、囲炉裏村のしぇるぱさんと初対面した山でもある。

 山頂で食事とコーヒータイムを摂る事にして、登山口までは1時間あまりで行けると計
算して9時半に家を出る。道がやや混んでいたが、何とか11時前に駐車地の猪名川変電
所に到着する事が出来た。

 変電所へのゲート横の広まった部分に車をとめる。準備を整えて歩き出すと意外に暑い。
1枚余分に着てきたのだが、早速脱ぐことにする。鎌倉川沿いに歩いていくと山側の側溝
でガサガサ音がする。すわっ、蛇かと驚いたが、何か10cm余りの灰色の動物が逃げて
いく。モグラだ。生きたのを見たのは初めてである。早速カメラに収めようとしたらデジ
カメの電池切れ。その間にも敵は逃げる。慌てて写したのでフェンスの網の影になってし
まった。
側溝で見つけたモグラ。慌てて撮ったので
フェンスの網の影に

 鎌倉不動尊への参道はススキやクズがはびこって少し歩きづらい。が、それに混じって
ミズヒキ、アキチョウジ、ハギ、ヨメナが咲いて、季節は本格手な秋を告げている。

 30分程歩くと不動尊の境内。無住なのか荒れている。しかし境内のあちこちに置かれ
た石仏には蝋燭やシキミが供えられているので、信者の方が時たま訪れているようだ。

 登山口は不動尊への橋の手前右。関電の鉄塔巡視路でもある。以前は消防署の火の用心
の丸看板があったが別の箇所に移されており、木に幾つかテープが巻かれているのが目印。
最初は石ゴロの歩きにくい道だが、すぐに良く整備された道になる。不動の滝の上に出て、
左に鎌倉川を見ながら進む。澄んだ水が流れる沢を数回渡る。朽ちかけた作業小屋を過ぎ
た左手の林の中に炭焼き窯跡があるのを見つける。数年前までは現役だったのか、煤の着
いた石が転がっていた。

 やがて、雑木の広場。数本の沢が合流する。道はここで右に曲がりようやく山腹に取り
付く。ここが、今日一番の急登。といっても長くは続かないが...。

 暫くジグザグに登っていくと丹後幹線の鉄塔下に出る。ここは小さな尾根の突端。南が
開けて、堂床山、反射板のある丸山が全容を現してくる。

 一汗かき、小休止していると何やら話し声のようなものが切れ切れに風に乗って運ばれ
てくる。誰かがやってくるのかと耳を澄ませたが、それっきり。どうも谷向こうのゴルフ
場でプレーしている人の声だったらしいが、ちょっとミステリアス。

 ここから丈の低い松やツツジの生える尾根沿いの道となり、丁度、人が歩ける位の空間
がある。東側は結構深い谷である。小さな岩場やザレ場を越えて行くと丹後幹線の隣に並
行する丹波線の鉄塔に突き当たる。西の稜線越しに、先週訪れた大野山が大きな山容を現
してくる。アンテナや新しく造成された部分が目に付く。降り返れば堂床山もいつの間に
かこちらより低い。進行方向には高岳の山頂部の赤白鉄塔が大分大きくなってきた。

丹波線の鉄塔bW8から望む大きな山容の大野山

 右側に鹿除けネットとビニール紐。マツタケ山の標識だろうか。しかし、それらしい匂
いもせず、少々荒れ気味に思える赤松林で、マツタケが採れる雰囲気はあまりしない。

 一旦、小さな鞍部に降りてやや急な登りをこなすと山頂直下の台地である。その台地か
らひょっこり飛び出す様に高岳の山頂部がある。木々が伐採された台地はススキや小灌木
が伸び始めている。そして何よりも南の展望がいいのだが、残念ながら霞がかかって視界
は余り伸びない。しかし大船山、羽束山、六甲山、五月山連山、妙見山、能勢三山等が綺
麗。かすみながらも三草山の棚田と長谷辺りの集落が望めた。

山頂直下の台地から見る能勢三山(左から三草
山、龍王山、堂床山)と丸山(右端)

 高岳の山頂へは高度差30m程の急登。再び灌木が繁る中を登る。右に見える鉄塔の巡
視路(ナルタキ山方面の手書きの→あり)と分かれると、三等三角点と頭に「界」と刻ま
れた府県界石標の埋まる狭い山頂。視界は木に覆われほとんど無し。以前来た時にあった
登頂ノートはなくなっていた。三角点の横に小さなママコナ、ピンクの花二輪。

府県境界標と三等三角点のある高岳の狭い山頂

 赤白鉄塔へ出てみる。こちらもそれ程の視界は得られない。北方向に巡視路が伸びてい
て、関電の「火の用心」の標識に「杉生新田へ」とマジックで書き添えられてあった。

 眺望の得られる台地付近に戻って昼食。しかし静かなものだ。双眼鏡を取り出して眺め
たりして1時間以上も山頂付近にいたが誰も来ない。カラスの声が耳障りなものの、名も
知らぬ野鳥の声。遠くで甲高い鹿の声も聞こえる。猪名川町の大島小学校辺りだろうか、
野焼きの煙が立ち昇っている。

 荷物を纏め、帰り支度をを終えて立ち上がると、からんからんとクマ除けの鈴の音。と、
単独の初老のおじさんが息を切らせて上がってきた。こちらはススキの間から、ぬっと現
れたから少し驚かせたかも知れない。挨拶すると三角点の位置を尋ねてこられたので、向
こうの鉄塔の横だと指し示すと、再びえっちらおっちら歩いていかれた。マツタケシーズ
ンで敬遠されたのか、今回出会ったのは、結局、往路、モグラ撮影中に追い抜いていった
単独兄さん(不動尊で引き返したと思われる)と帰路、変電所辺りですれ違った三脚を担
いだおじさんの都合3人だけという少なさであった。

 柔らかな陽射しが落ちる中、下りはアッという間。不動尊の境内をぶらつく。不動の滝
は高さ5m程でなかなか優美。弁財天と不動尊の祠が左右にある。沢沿いにある建物を覗
くが、廃屋独特のすえた畳の匂いとダンボールが転がっているのみであった。

 鎌倉川に沿って駐車地までコンクリ道をブラブラ。杉林の中の作業小屋の近く迄来ると、
大きなコナラらしき木の根元においしそうな茶色のキノコが群生しているではないか。(
写真)。如何にも美味そう。でもなあ。もしも..。諦める。

鎌倉不動尊の参道沿いのコナラの根元に
あったキノコ食べられそうでしたが...

 杉林を抜けると左右所々に大きな台場クヌギがある。中には直径1mを越える大物もあ
って、オオクワガタやカブトムシを探すマニアの仕業であろう、そのそれぞれの根元まで
踏み跡があった。

 両側からかぶさるススキの下に。長い物も2匹ほどお出まし。日が陰った道を変電所に
戻る。来る時見つけたモグラはもう土の中に戻っただろうか。

 都会にいれば鼻につく排気ガスやタバコの匂いもなく、少し甘酸っぱいような木々の何
とも云えない香り。願わくばこの静かな雑木の山が何時までも残っていて欲しいと思う。
風邪気味ではあったが、いささか汗をかいて気分も良くなったところで、穴場の山を後に
した。



【タイムチャート】
 9:35自宅発
10:50〜10:55猪名川変電所(駐車地 Ca265m)
11:20〜11:22猪名川不動尊
11:44〜11:50高圧鉄塔(丹後幹線bP10)
12:02〜11:06高圧鉄塔(丹波線bW8)
12:20〜13:30高岳山頂(720.8m 三等三角点)及び山頂直下の台地
14:26〜14:36猪名川不動尊
15:06猪名川変電所(駐車地)



高岳のデータ
不思議な邂逅に驚いたPart2〜高岳』をご覧下さい
【参考】2.5万図『木津』



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