錦繍の日だまりハイク〜馳渡山から大峰山

平成13年11月17日(土)
天候: 晴れたり曇ったり
同行: 単独
カエデの華麗な深紅の舞いが西日に映える
(桜の園の東屋付近にて)



 自宅の通天楓の盆栽が赤く色づき始めた。そういえばこの間、福知山線の廃線跡を歩い
た際に眺めた桜の園の入口。涸れ沢沿いに大きなイロハモミジが枝を広げていた。あの時
はまだ青かった葉だが、朝夕の冷え込みに連れて各地のモミジ便りが多く聞かれるように
なった今日この頃、さぞかし色づいたことだろう。桜の園といえば大峰山の西からの登山
口でもある。気になっていた馳渡山も合わせて訪れてみようというのが今日のプラン。例
によって昼近くブラッと出掛ける。

 R176の生瀬橋東詰から右折して武田尾へ向かう。採石場があるのでダンプの往来が
繁く、しばらく道は埃っぽい。が、大峰山の東側の登山口、十万辻へ出る頃には、山々は
黄葉で渋い色合い。珍しい金網のトンネルをくぐり、T字路を左折(西)して検見山の裾
を抜けると十字路。左、武田尾の標識に従って狭い舗装路に入る。僧川沿いに蛇行する道
にはハラハラと落ち葉が風に散る。やがて武庫川沿いに明るく開けた武田尾の集落に入り、
山際に新設された舗装路の広くなった路肩を借りて車を止める。

 準備をして馳渡山のとりつきを捜す。車道を僧川沿いに北に歩いていったが分からない。
山側に注意しながら引き返すと、道の曲がり角のコンクリート壁の上部に関電の巡視道に
よくあるプラ階段があるのを発見する。試しに辿ってみると、背丈ほどの笹藪を抜けた辺
りに古い貯水槽があり、その横から頭大の石が転がる急斜面の小沢然とした微かな踏み跡
となる。赤プラ杭が見つかったのだが、左右から枝が被さっていて今は歩かれた様子もな
い。ここは一旦降って、何処かで確かめてみることにする。

 武田尾駅に向かう旧道に古い食料品店があった。たまたまおられた主人に尋ねる。
「馳渡山って山知りませんか?」
「うーん、知らんなぁ」
「武田尾のトンネルのある山ですけどねぇ」
「ああ、『駅の山』ね。それやったら子供の時に行ったことあるなぁ。岩だらけやで」
「どこから登れます?」
「あそこの上から行ける」
「古い井戸ありますか?」
「あるある」
取り付きには井戸があると聞いていたから、これは間違いない。かくして、主人の指さす
方へ歩を進める。
馳渡山取付きにある古井戸

 再び舗装路に出てみると、阪急田園バスの武田尾停留所の横付近に古井戸。これだ。腰
ほどの高さの笹藪をかき分けると、先程とは全く違って明らかな踏み跡が続いており、す
ぐに杉の植林の中の道になった。

 手入れが滞った杉林はやや暗い。かなりの急傾斜を葛折れに登っていく。稜線に近づく
と傾斜も緩み、やがて杉林を抜け出て折り返すと。ツツジ主体の雑木のいい道となった。
赤い境界プラ杭が現れ、コシダが生い茂るのを抜け出ると、小さな鞍部で分岐がある。こ
こで初めてテープを見る。北へ行く踏み跡は玉瀬の方へ向かっているようだ。更に進むと
ザレ場。南が開けて、遙か下には、武庫川と青い鉄橋、歩く人が眺められる。東に大峰山、
西には馳渡山らしき高みが目に入る。
 
 再び、雑木のトンネルに入って進む内に左への分岐。これを過ごすと、今度はリョウブ、
コナラ、ヤブツバキ、キハダなどが茂る北摂によくある樹林帯に入る。尾根が広くなり、
のっぺりとしてくるが、先まで皆無だったテープが要所に目立つようになる。イノシシが
掘り返した跡を眺めながら進む内に、まもなく国土地理院の杭が見えてきて、綺麗な三等
三角点(点名大平山)が見つかった。
馳渡山の綺麗な三等三角点(点名大平山)

 雑木林の真ん中で展望とてない山頂は、山名プレートが一つ架かるだけの静かなもの。
三角点にタッチしてデジカメに納めた後は、腹拵えを先程のザレ場でするべく引き返すこ
とにした。
馳渡山の稜線上のザレ場から見る大峰山

 クヌギが明るい茶色に色づく下で赤飯にぎりを頬張る。廃線跡の賑やかさとはうって変
わって、時折、JRの列車の響かせる音以外は聞こえてこない。こんなマイナーな山にわ
ざわざ登ってくる酔狂も少ないだろうなぁ(笑)

 登山口に戻り、今度は大峰山へ向かって僧川を渡り廃線跡を歩く。長尾山第一、第二ト
ンネルを抜ける頃である。カメラの三脚を抱えた人が上を見上げているので視線を追うと、
そこには陽を受けた素晴らしい紅葉。こちらも思わずパチリである。

 桜の園の入口に出る。少しわくわくしながら木の階段を登ってみると、オオッ!期待通
り色づいている。透明な赤、橙。色とりどりに色づいた葉に地面が染まるほど。小学唱歌
「もみじ」が思わず口をつく。
「秋の夕陽に照る山紅葉 濃いも薄いも数ある中にぃ...♪」しかしこれも序の口であ
った。山道を登って東屋のある辺りは息をのむ美しさである。東屋に居たおばさんペアも
喚声を上げていた。

桜の園入口のカエデ。地上が赤く染まるほど

 沢山のハイカーはほとんどが廃線跡を歩く人達だ。ここまではほとんど上がって来ず静
かなもの。大峰山道と書かれた標識に従ってゆくと、遊歩道はようやく山道となる。アカ
マツについての説明板を過ぎたところでT字路。右に折れる。更に進むとテラス状の場所
に出て三叉路となる。ここでは左右の山腹を巻く道ではなく、中央の尾根筋の道を採る。
これがまたよく踏まれた、ツツジ主体の雑木のいい道。急登はないが徐々に高度を上げて
いく。やや大ぶりの露岩があったので上がってみた。周囲の山が低くなっていて、西の山
越に六甲山の最高峰。北には羽束山らしき姿も垣間見えている。

 雲が出て、周囲が暗くなってきたので自然、足が早まる。510mピークや他のピーク
に何回か騙されながら、三等三角点のある山頂に漸く行き着く。ここへは十万辻から登っ
たことがあるが、標高差はこちらの方があり、前者よりは少しく骨だった。(^^;)

 ここものっぺりとした広い山頂で展望は皆無。ただ南方向だけが窓のように開けていて、
宝塚方面の市街地を透かして、遠く大阪湾が光るのが見えた。

 誰も来る気配がない。時折吹く風が枯葉を揺らすのみ。5分ほど憩って戻ることにする。

 510mピーク付近で単独小父さんとすれ違った以外は、もう誰も登って来ない。とっ
とと降って、桜の園の敷地内。東屋で小休止。青空が戻って、西日に照らされたモミジは
さながら夕照モミジ。これを一人独占しつつコーヒーを湧かして飲む。ある意味では非常
に贅沢な一杯のコーヒーではないか。傍らにノートが置かれてあったので記帳しておいた。

 園内は木々にプレートが架けられてあって植物の勉強が出来る。黒い実が付いているの
はヒサカキ。カラメルに似た甘い匂いがするのはカツラ。アラカシ、コナラ、シャシャン
ボ、アオダモ。名前と木を見比べながら遊歩道を降って行くのだが直ぐ忘れてしまう。あ
の木の名前なんだっけ?

 傾いた陽は西の山に向こうに隠れてしまった。薄暗くなった線路跡。まだ、散策する人
が散見されるが、駐車地点に戻ると、沢山並んでいた車も流石に減っている。秋の宵は何
故か寂しい。これで今年の紅葉も見納めかなぁ。柄にも似合わず少々感傷的な気持ちにな
りながら車中の人となる。が、それも束の間。宝塚駅付近の渋滞で直ぐに現実に引き戻さ
れたのである。



【タイムチャート】
11:30自宅発
12:40武田尾駅東の車道路肩(駐車地)
12:45〜13:10馳渡山東麓付近うろうろ
13:10馳渡山登山口(Ca110m)
13:29〜13:34馳渡山(289.4m 三等三角点)
13:40〜13:50ザレ場(昼食)
14:00馳渡山登山口
14:12桜の園入口(Ca110m)
14:25東屋
15:05〜15:10大峰山(552.3m 三等三角点)
15:41〜15:58東屋
16:07桜の園入口
16:20武田尾駅東の車道路肩(駐車地)



馳渡山のデータ
【所在地】兵庫県宝塚市
【標高】289.4m(三等三角点)
【備考】 武田尾の裏山です。中腹は植林ですが尾根に乗るとツツ
ジが多い雑木林の中の歩きが楽しめます。また山腹をJ
R福知山線が貫き、武田尾駅は珍しい半トンネル式です。
麓には武田尾温泉が有ります。
大峰山のデータ
お手軽ピークハント〜北摂大峰山』を参照下さい
【参考】2.5万図『武田尾』




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