銃声?にビックリ湯谷ヶ岳

    
平成9年11月30日(日) 天候: 晴れ一時にわか雨 同行: 単独
湯谷の里の玉依神社の御神塔とたわわに実る柿の木

 先週、偵察のみに終わった湯谷ヶ岳に登る。偵察に終わったという顛末はこうだ。    先週の勤労感謝の日の昼過ぎ、湯谷ヶ岳に行こうと府道豊中亀岡線を北上し、茨木市下 音羽で左折、豊能町余野へ向かう。                          途中、大円でハンタ−を見かける。これが偵察になった第一の伏線だったのである。   2つ先の阪急バス湯谷口バス停付近に駐車し、ガイド通り北への農道を進む。落ち葉の クッション、道端にはマムシグサの赤い実、なかなかしっとりした道ではないかと思って いた内は良いのだが、鬱蒼とした杉林を行くに従い、道が狭まってくる。地図には太い線 があるのに何かおかしい。                               前方に先程追い抜いていった軽四輪が止まっている。地元の方らしいので道を尋ねると、 湯谷方面へは何とか行けるが踏み跡程度の道になるという。               礼を言って先に進むにつれ、確かにけものみちのようになってきた。先程のハンターの 事が頭をかすめ弱気だったのと、登山口迄にこんなにかかるようじゃという訳で別ルート を採ることに即決してしまった。 (^_^!!                      戻る途中、先程の人たちに又出くわした。何か掘っているようだ。          「何を掘ってるんですか?」と小生。                        「ヤマノイモですよ。」                              これと見せられたのは長さ50cm程のヤマノイモ。                 「良かったら、これ途中で折れた奴やけど...。」ということで1本頂戴する。     晩御飯に食べたけれど、粘りがあって、一寸、懐かしい土の味がしたのは後刻譚。    さて、車に戻って、地図を開く。R423で北上して、柚原から東へ、湯谷ヶ岳の北側 からアプローチすることにして、京都バス倉谷口バス停付近に駐車し湯谷へ向かうことに する。                                       湯谷川沿いの道をうねうねと登ること小一時間。忽然として湯谷の集落が現れた。湯谷 ヶ岳の山腹にへばりつくように30軒程の民家が固まっている。そしてその裾野には田畑 が棚状に広がる。しかも豊かな感じの大きな農家が多い。家々の軒先には柿の実がたわわ に。山々に囲まれた隠れ里の雰囲気、以前に読んだ白洲正子氏の「かくれ里」をふと思い 出す。                                     
鄙びた湯谷の里とどっしり構えた湯谷ケ岳
  ところで肝心の登山口である。玉依神社はすぐ見つかったのだが、福泉寺が見つからぬ。 地元の人に尋ね、やっと探し当てた時にはもう3時近い時刻。そこでその日は諦め、偵察 に切り替えたという次第なのである。                         前段はここまで。本日の山行である。                        今回は湯谷まで車で入り、玉依神社手前の広くなった路肩に駐車させてもらう。     玉依神社を過ぎ、用水池のところで山側へ入るとトタン葺きのこじんまりした福泉寺。 分からぬはずだ。民家と見まごうばかりの小ささ。無住寺とのことだが、地元の人の手入 れがよく行き届いている。小さな庭も清楚だ。                      その横に小道がある。これが登山口らしい。標識無し。但し、赤テープあり。左は竹藪。 貯水槽を左に、右にシイタケのホダ木の見つつ登っていく。               のっけから狭いけものみち風の踏み跡。こりゃ夏はヤブで歩き難そうだ。        踏み跡はクマザサや雑木の間を緩やかに山腹を巻く感じに続く。所々消えかけたところ も。しかし、テープに助けられる。                          なおも辿っていくと、突き当たりの様な感じで北へ90度折れ、やや傾斜が増す。昨夜 来の雨で湿ったクヌギ等の広葉樹の落ち葉でフカフカとした地面。そこここには岩が顔を 出す。                                       ジグザグになった踏み跡を滑らぬように注意しつつ登り詰めると、大きな岩が現れた。 踏み跡は見えなかったが、左に行けば熊野権現跡のようだ。ここは岩沿いに右へ進む。   しばらくすると杉の植林帯に入る。10m以上に育った美林、地面は杉の枯葉で自然の クッションである。その間を縫っていくと前方に木札がぶら下がっている頂上。案外呆気 なく行き着いた。                                  マイナーな山だと思いきや、結構山名板が掛けられている。山ユリ、関西独標会、関西 大学の同好会のものらしき紙も、瓶に入れられて祠の中に。その間に三角点石標。   
鬱蒼とした杉木立に囲まれた山頂
  周囲は植林が育って見通しは利かない。木々の間から鴻応山方面が伺えるのみ。しかし、 しっとりした杉木立の中の山頂風景もなかなか捨てがたいものだ。            さて、汗が冷えてきたからか、寒さが忍び寄ってくる。三角点を例によって撫でて、早 々に下山に移ることにする。                             観察モードに移り、周囲を見渡しながらの降り。クヌギ、リョウブ、ヤマツツジ、コウ ヤボウキなどなど、北摂の山々に共通の植生である。二股の大きな松がある。その下に綺 麗なヤブコウジの赤い実が目に留まる。早速、撮影モードに切り替え、マクロレンズに代 えて、シャッターを押そうとしたまさにその瞬間。                  「ダーンッ、ダーンッ。」と二発の銃声らしき音。山々に殷々とこだまする。どうもハン ターの猟銃の発射音らしい。                            「ンッ?こらヤバイかも...」思わず身をすくめる。獲物に間違えられては大事だ。撮  影もそこそこに先を急ぐことにする。大岩から熊野権現跡へも寄ろうと思っていたのだが、 命あってのものだね?又今度と端折ることにした。 (^^!                それっきり銃声らしき音はしなかったが、何か薄気味悪いものだ。狭い日本で猟なんか しなけりゃいいのに...。                             漸く登山口に戻ってきた。ホッと一息、福泉寺で一服。縁側に座らせて貰い、缶コーヒ ーを一口ゴクリ。                                    人心地が着いたところで周囲を見渡せばしっとりとした雰囲気。ピンクのサザンカが地 面に散りしいている。壊れた薬師如来と刻まれた灯籠、太平洋戦争の戦没者のものであろ  う一列に並んだ墓。寺の横にはユズがたわわに実っている。ここだけ時間が止まったよう。 カラスの鳴き声にふと我に返る。                             さて、まだ時間がある。乞食岩を見物することにして西へ向かう。             湯谷ヶ岳の裾野を巻くようについた舗装路である。一抱えもある台場クヌギが立つ。ム ラサキシキブの藤色の実も艶やかだ。道端の赤い実はフユイチゴの様だ。つまんでみる。 ちょっと渋味があるが甘酸っぱかった。                        左にロッジ風の建物、失礼してガラス戸を覗いてみる。誰もいない。何かの工房のよう だが、通路に置かれた皐月の盆栽も枯れている。暫く人の気配は無いようだった。     乞食岩は湯谷に住み着いた落人が居たところというので、穴でもあるのかと思いきや唯 の岩だった。一寸期待はずれ。(岩はこれ以外にはめぼしい物は見つかりませんでした) しかし帰路に気づいたのだが、東方面が開けており、真正面にはポンポン山らしきどっし りとした丸みのある山が座る。比叡山が以外に近く見えていたのには驚きだった。そして 大きな雉が前を飛びすぎていくのにまたまたびっくりする。               驟雨がひとしきり過ぎた後、天保年間の銘のある庚申塔を撮影して帰路に着く。途中、 阪急バス栢原バス停前の、古い昔懐かしいたばこ屋もカメラに収めて17時前帰宅。  
湯谷の里への入り口に立つ天保年間の銘がある庚申塔
栢原の古いタバコ屋さん。樋の落ち葉掃除に余念なし
    【タイムテーブル】      12:10     自宅発      13:05     湯谷(約415m)      13:10     出発      13:37     山頂(622.4m 三等三角点)      13:45     下山      14:05     福泉寺      14:10〜15:00  湯谷散策      15:00     駐車地



   湯谷ヶ岳のデータ

   【所在地】 京都府亀岡市
    【標高】  622.4m(三等三角点)
   【備考】  北摂山系の北東部に位置しますが、行政区的には丹波に入ります。
         北摂山系ではマイナーな山で、登山口の標識もありません。登山道
         も踏み跡程度で余り整備されていませんが、要所に赤テープが巻か
         れています。しかし、夏期はヤブ漕ぎの覚悟が必要でしょう。
         更に、猟期にはハンターに注意が必要です。
         又、南麓の湯谷の里は棚田が広がり、隠れ里の雰囲気を感じさせる
         ものがあります。
         交通機関は京都バス倉谷口バス停が最寄りと思われますが、出来れ
         ば車でアプローチしたいところです。
          
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