山頂広場は大賑わい〜秋爽やか大和葛城山

                          平成11年10月24日(日)                           天候: 晴れ                                   同行: 単独        
気になっている山というものが幾つか有るものである。余りにポピュラーな為か、今迄 足が向かなかったのだが、いつか一度は足跡を残さねばなるまいと思われる山。そんな山 の一つが大和葛城山。                                  阪神高速から西名阪柏原ランプ、R165と乗り継ぎ、県道30号を南下、櫛羅で右折してく ねった道を登って行くと葛城山下の駐車場。駐車料金 800円也を支払い、車を置いて準備 する。                                       既に先着が十数台。案内板に従って車道を登って行くと、すぐにロープウェイ登山口駅。 右に曹洞宗の不動寺がある。その手前に笹に覆われたコンクリの階段。通行禁止の看板が 立っていて何かいやな予感。                             舗装路はすぐに地道に変わり、ジョウモンの谷を左に見て山懐へ入って行く。沢が道を 横切っている。色の白い砂の上を透明な水が滑って行く。そう云えば岩も白い。全山、花 崗岩質の岩で形成されているらしい。                         まもなく砂防堰堤に出て、その横を階段道はジグザグに高度を上げていく。落石注意の 看板。アキチョウジの青紫の花が風に揺れる。                     再び、水音が高まってきたと思えば道標があって、登山道から20m程入ったところが櫛  羅の滝。弘法大師が印度のクジラの滝に似ているところから命名したそうだが、「供尸羅」 の字が不吉だというので現地名になったという。昭和57年の台風で滝壷が埋まったのを平 成元年に修復したものだという。そういえば明快な滝壷が無い。ここで小休止。    
櫛羅の滝
  ここから登山道は、沢沿いに橋で右岸に出たり左岸に出たりと忙しい。岩が湿っており、 靴が滑る。右から小さな沢が合流してきて、橋で再び右岸に移るとすぐに二の滝である。 行者の滝とも言うそうで落差は10m弱。二条に分かれて霧の様に落下する。ここも花崗岩 の石が転がるのみで滝壷なし。                             鬱蒼とした桧の植林帯に入る。ロープウェイを頭上に見て、息を切らして歩を進めると、 再び沢が右から近づき、又雑木が主の林の中の道になる。一見、ユキノシタのような白い 花が目にとまった。花弁が「人」の字に見える。ジンジソウ。写真に納めておく。     「行者の水」を過ぎ、再び桧の美林の中をいく。きつかった傾斜が緩やかになると、下 草にササが現れてきて、頂上が近いことを物語る。しばらく進むと庭園風の小さな広場ら しき辺りに出る。石碑があり、「大阪開通講」と読めた。前にはベンチも有って休憩する には格好の場所だ。                                 道標があって左、葛城ロッジ、右、ロープウェイ山上駅とある。とりあえず山上駅方面 へ向かう。ササの間の最後の坂を登れば、駅と山頂を結ぶ広い道に出る。目の前に自然研 究路の分岐。後で歩いてみることにしよう。右の社は葛城天神社である。          ブナの木にヤドリギが寄生しているとの解説板を読んでいるとワイワイと人の声。丁度、 山上駅にゴンドラが到着したようだ。爺さん婆さんのグループがやってきた。吟行の会だ ろうか、句碑の前でひとしきり話に花。きょうびのご老人達は元気です。           それにしても車がすれ違えるほどの広い道が続いている。やがて左側が開けて、白い靄 に包まれた奈良盆地が眼下に。ようやく目にした本日初めての眺望である。           まもなく右手に現れる建物がビジターセンター。ここはすべての道が集まってきている、 いわば葛城山のヘソ。即ち、建物入口の右にはダイトレの二上山方面の道。入口の前には 大阪側の青崩道と弘川寺道。そして、センターの玄関にはスタンプ台と杉の子さんの尋ね ビラ。                                         センターを辞して広い道を南に向かう。と、スピーカーを通して何やらギターの音が聞 こえてきた。掲示されたビラを見れば「ススキ祭り」を開催中で、今日は「葛城山ミニラ イブ」の日なのだそうだ。そのリハーサルの真っ最中。この近辺には売店も並んでおり、 四季を通して人気のある山である事が伺える。その分、静けさは望めない。        白樺食堂の横を西に折れ山頂へと向かう。だらだら坂を少し登れば、ススキとササの山 頂の南のピーク。そこからやや低まった部分を越えるとすぐに二等三角点の埋まる山頂で ある。                                         眼前に大パノラマが広がる。広場風になっている為、360度遮るもの無し。遠方はや や霞んでいるものの、北に二上山、生駒山。西は大阪平野から大阪湾、関空。東に目を移  せば大和三山に三輪山、遠く高見山の鋭鋒をはじめとする台高の峰々と一際高い大峰山脈。 しかし何といっても指呼の間の金剛山が雄大だ。湧出岳のアンテナがすぐそこに見える。 いやぁ想像以上の展望、見飽きること無し。山座同定マニアには格好の山である。   
山頂からススキ越しに金剛山
 そうこうしている内に見る見る人が増えてきた。登山客よりピクニック客の方が多そう  だ。黄色い歓声が上がったと思ったら、いつの間にか子供会のパーティがやってきていて、 「ネズミの足跡」をやりだした。大きな山名板に登って記念撮影のカップルも。町中と変 わらない大賑わいの山頂広場である。                         南のピークに戻って、一寸早いが大峰山や金剛山を肴に食事とする。こちらもあちらこ ちらで昼食の人が多い。風が強い。じっとしていると寒くなってきた。手元のフィールド シスコムでは気温は9℃。道理で寒いはずだ。トレーナーを重ねる事にする。       ツツジ園を示す道標があったのを思いだし、食事の後片付けを終えて見物に行くことに する。葛城高原ロッジ、研修センターの建物を過ぎると、葛城山の南側の斜面に出る。丈 の低いツツジが一面を覆っている。春はさながら赤い絨毯を敷き詰めたようになるに違い ない。その中をダイトレがうねっていて、水越峠へ続いている。こりゃ春は絶対水越峠か ら登るべきだろうなぁ、と想像しつつグルッと一周して、白樺食堂前に戻る。       広い道を次々と観光客が上がってくる。まるでシーズンの箕面の滝道のようだ。ビジタ  ーセンターを過ぎた所で左に自然研究路が分岐していたので入る。先程の喧噪が嘘のよう。 鬱蒼とした自然林、昼なお暗し。やっといい山道を見つけた感じだ。           山腹を巻いた研究路には、所々に解説板があって、勉強になる。葛城山にツツジが多い 理由?。(答)花崗岩質の土砂は酸性で通常の樹木には適さない為、酸性を好むツツジが 増えたのだそうだ。「フムフム。」さらにイカリソウは淫羊角という漢方薬になること。 「そうだったのかあ。」                                進むうちに道は狭まり、しかもつづらおれでぐんぐん下っていく。やがて水音が近づき、 やや朽ちかけた吊橋が現れた。「危険なのでゆっくり歩いて下さい」とかいった風な注意 書きがある。そんなことあらためて書かれるとビビルなぁ。へっぴり腰で渡る。      さてと、ガイドによれば、この橋の下辺りから下山道があるはずだが..。      「んっ?」                                    橋のたもとに不動寺下の看板と同じ「通行禁止」の看板があるではないか。土砂崩れか何 かで通れなくなっているのだろうか。残念。往路を戻るしかないかぁ。それにしてもここ まで高度にして100mは下ったはず。アチャァ!登り返すの大変だぁ!         案の状、大台のシオカラ谷を彷彿とする感じで急坂がジグザグに続く。ドッと汗。トレ ーナーを脱ぐ。                                   でも心地良い静かな道だ。両側にササが茂って狭いが良く踏まれた尾根道。朽ちたベン チ。木の間越しに垣間見える奈良盆地。                        くずおれた廃屋が左上に現れ、ウィーンと唸るような音が近づいてくるとロープウェイ の山上駅は近い。思う間もなく人声が響いてきて、例の広い道に合流。ガイドには所要1  時間とあったが、約40分の行程であった。葛城山に来たらここは絶対歩くべきでしょう。  小休止後、「婿洗いの池」を見学して往路を下山する。                ところで、もう2時を過ぎだというのに、まだ登ってくる人が居るのに少々驚く。そう かぁ、帰路はロープウェイという手があるもんなぁ。納得。                 下山後は不動寺に少し寄り道する。役の行者が開山だが今は曹洞宗だという。作務衣を 着た住職らしい方に挨拶。奥方は庫裡の玄関前で草むしりの最中。古い土塀横でホトトギ スの花が満開であった。                                役の行者が修行をし大峰まで橋を架けたという葛城山。一度は登って損のない山である。 そして、不動寺境内から眺めた明日香の里は、鱗雲の下にありました。         ※註 99/10/24現在、自然研究路の吊橋下から登山口バス停への新登山路は本文にあるよ    うに通行止です。                             
    【タイムチャート】       7:40     自宅発       8:40〜8:46  登山口駐車場(約275m)       8:49     ロープウェイ登山口駅      9:03〜9:07  櫛羅の滝      9:25〜9:30  二の滝      9:51 行者の水      10:05〜10:08  大阪開通講石碑前ベンチ      10:25〜10:35  ビジターセンター      10:40〜12:20  大和葛城山山頂(959.2m 二等三角点)      12:35     ツツジ園      12:50     自然研究路分岐      13:08     吊橋      13:30     ロープウェイ山上駅      14:09     二の滝      14:30      不動寺      14:35     ロープウェイ登山口駅      14:45     登山口駐車場 



   大和葛城山のデータ

    【所在地】 大阪府南河内郡千早赤阪村・奈良県御所市
    【標高】  959.2m(二等三角点)
    【備考】  金剛・葛城山系の一方の盟主で、神武天皇の東征の舞台
          となった山でも有ります。全山花崗岩質の山で、山頂は
          高原状を呈し、360度遮るものの無い大パノラマは圧
          巻です。御所市側からロープウェイで山上まで登ること
          が出来、春のツツジ、秋のススキ、冬の霧氷と一年を通
          じて親しまれています。
          近鉄御所線御所駅から奈良交通バスが出ています。
          ■日本三百名山■近畿百名山■関西百名山
    【参考】  金剛葛城自然歩道ダイヤモンドトレール地図


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