風花舞う歌垣山
平成11年12月26日(日)
天候: 曇り時々晴れ一時小雪
同行: 単独
倉垣から歌垣山を望む


 来年は辰年。しかしY2K問題で正月は出勤。という訳でもないが、一足お先に干支の 山に登ろうかと、それもマイナーな能勢町下田尻の里山、竜王山に向かう。        全国的に竜王山という名の山は多い。農業には雨が不可欠。その雨を降らせるという龍 神を祀る山なのであろう。能勢にも三草山の西や猪名川町など3、4箇所にある。下田尻 の竜王山は、平家盛んなりし折りにその犠牲となった名月姫の墓が麓にある。       平家伝説といえば、この近く、大ケヤキで有名な野間は、壇ノ浦から落ち延びた安徳天 皇が隠棲していた所との説もある。このように能勢にも平氏有縁の話が多いが、その一族 の荘園でもあったのかも知れない。                          箕面を抜け、豊能町高山からR423、府道で妙見山の肩を越え、野間に入る。夏は青 葉が繁り、千年歳ふりてさえ矍鑠たる大ケヤキも今はすっかり葉を落とし、灰色の幹が冴 え冴えとしている。                                  野間川沿いに西へ、一庫からの車道と合流して北上、府道4号で再び西へ進めば名月峠。 付近の路肩に車を停め、まず名月姫の墓に詣でる。以前は草ぼうぼうの中にひっそりと五 輪塔が佇んでいたのだが、今はこざっぱりときれいに整備されている。説明板に依れば、 摂津御園(現在の尼崎市)の住人三松刑部国春夫妻が大日如来に願を懸け、名月の日に生 まれたのが名月姫。能勢家包に嫁いだが、その美貌が清盛の目に留まり、福原に向かう途 中、自害したのがここだという。そしてバス停横には、昔の峠の名残か地蔵さんが彫られ た石の道しるべがポツンと建つ。それには左、さん田。右、ささ山とあった。     
悲劇のヒロイン名月姫の墓
 北西から冷たい風が吹き出したと思ったら、雨が落ちてきた。しばらく車に退避する。  雲が切れ雨が上がったようなので移動。府道の広くなった路肩に車を止めて、明月台な る新興住宅地の坂をあちこちの家の犬に吠えられながら登る。しかし、犬に吠えられると 云うのはいつでも気持ちのいいものではない。何となく後ろめたい気持ちになるからいか ん。                                        山際に到るとポンプ小屋らしきもの手前に石段があり、その先に薄い踏み跡らしきもの があるが、白いナイロンテープが行く手を遮っている。それを潜ると地主が書いたのか注 意書きが繁みに沈んでいた。                            「この山は留め山です。ハイキング、猟など入山には許可が必要です。」凡そそんな意味 の文字が書かれていた。敢えて禁を犯すのも憚られるし、さっきの雨で濡れたブッシュを 突破するのも億劫だなぁ。空には次々と暗い雲。またパラリときた。あっさり諦める。   だが、このまま帰るのも残念だし、というわけで、「歌垣山へでも...。」と寄り道 することにした。                                  歌垣山は堀越峠から登るのが初めから尾根筋に入れて楽。峠付近の路肩の広まった所へ 駐車する。                                     歌垣山周辺の道は大阪環状自然歩道に取り込まれてから良く整備されている。落ち葉折 り敷く中を進む。                                  俄に空が暗くなってきたような気がしたら、風に乗って何やら白い物が落ちてきた。雪 だ。梢から頭を出した鴻応山が見る間に霞む。気温も下がってきた。手元で2℃。      こんな寒い日は誰もいないだろうと思っていたら、変人?は小生だけでは無いと見える。 単独兄さんが上から降りてきた。挨拶を交わし別れる。                 火の用心の赤いドラム缶を過ぎて最後の坂を登れば、展望台とあずまやが現れ、三角点 のある男体山の山頂である。風が強い。飛雪が斜めに流れる。ここのあずまやで食事とも 思ったが、女体山の方が建物が充実しているのでそちらに向かう。            倉垣への下山路を左に見て、すぐに女体山。雪は強弱を繰り返しながら降り止まない。 北から次々に灰色の雲。剣尾山や深山は見えない。しかし南の阪神間の方は明るい。意外 や南に眺められる妙見山の肩から光る海が見えるではないか。こんな低山からも海が見ら れるとは知らなかった。                               歌碑の横の大きなあずまやで食事とする。持参した鍋うどんの湯気が昇りだしたら、薄 日も射してきた。そして暖かい食べ物を腹に入れたらようやく人心地がついたようだ。   後片付けをして、女体山の頂上を一周して帰途につくことにしたが、北方に見える変電 所新設工事が大分進んでいるようだ。そこから延びる高圧鉄塔も姿を見せている。     帰りは車まで少し遠回りになるが、久しぶりに倉垣へ降ることにした。         踏み跡が見えないほどの落ち葉である。滑らぬようにと思いながらも時々スリップ。何 度か手をつきかける。                                杉の植林帯から沢の源頭に出ると、左手にはすっかり葉を落としたきれいな雑木の林。  再び、植林帯に出るとチョロチョロと水音が聞こえだし、水は伏流したり再び現れたり を繰り返してだんだん流れが太くなっていく。小さな滝を眺めて間もなく、右手に小さな 祠。まだ新しい愛宕山のお札が中に祀られていた。                   いつしか道は舗装道に変わり、台場クヌギの林を過ぎると倉垣の民家が現れ、R477 へはすぐであった。                                   一足早い干支登山という当初の目的は達せなかったものの、今年の冬初めての風花舞う 能勢路を散策できた半日でした。                         



    【タイムチャート】
     10:30     自宅発
     11:40〜12:05  名月峠
     12:10〜12:40  明月台
     12:50     堀越峠(約370m)  
     12:57     歌垣山登山口(堀越峠)
     13:15〜13:20  歌垣山山頂(553.5m)
     13:24〜14:00  うたかいの広場
     14:02     倉垣分岐
     14:22     歌垣山登山口(倉垣)(242m)
     14:45      堀越峠



  歌垣山のデータ
        『秋はすぐそこ〜歌垣山から妙見奥の院』、
        『ササユリ求めて歌垣山』をご覧下さい。
   【参考】 二万五千図『妙見山』


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