蝉時雨降る高取山

近鉄南大阪線壺坂寺駅付近から高取山
                           平成10年 8月 8日(土)                            天候: 曇り時々晴れ                                同行: 単独        
  低山好きにとって夏は辛い季節。でも行けば清々しく、暑くても来て良かったとなるの  ですが・・・。でもやっぱり一念発起が必要。今日は久しぶりにその一念発起で低山行き  を敢行する。目的地は歴史探訪?も兼ねて大和の高取山。                 帰省ラッシュのはしりか、思いの外の渋滞に手間取って壺坂山の茶店の駐車場に着いた  のは出発から2時間後の10時半過ぎ。                         早速準備し車道を山側へ。左の谷に浄瑠璃「壺坂霊験記」で有名な西国札所の壺坂寺の  境内が広がる。右には金剛山からも見えるという高さ20mの巨大な大理石の観音立像。  が、早くも汗は滝のよう。こりゃ先が思いやられるわい。              
西国札所壺坂寺遠景
  5分程登ると、左手に勝尾寺の町石と似た石柱がクズなどの繁った草むらの中に半ば埋  もれている。その横に踏み跡。草を払って杉木立の中へ。                 樹齢3、40年の吉野杉の美林のに囲まれて、しっかりした踏み跡を町石に導かれて羅  漢岩に到着。普通、羅漢といえば多くの石像が並んでいるものだが、ここのは大きな岩を  キャンバスに浮き彫りにしてある。千像如来、三像弥陀、二十五尊と説明板。1596〜  1614年の間に高取城主、本多因幡守が彫らせたものという。捜せば自分に似た像があ  るというが、見つかりませんでした。                       
草に埋もれた町石が導く高取山登山口
大岩に彫られ苔むした五百羅漢
  標識があって、左は羅漢遊歩道から高取城跡。右からも行けるようだが、左を選択。岩  に彫られた数々の像を見ながらの急登である。                      セミがバサバサと地上に落ちては飛び去るのに何回か驚く。向こうも突然の来訪者に驚  いているのでしょうが、突然間近でジージーやられるとこちらもビックリであります。    羅漢岩の上のピークを乗越すと右からの道と合流。先程の右の道と出合いのようだ。    支尾根に出た。両側は杉また杉。枝打ちされた整然たる吉野杉の姿である。        ブッシュの草を払い、再び山腹を巻くと突然墓石の群に出くわす。高取城にゆかりの人  々の墓でしょうか?古い墓石が点々と、傾いたものも見受けられた。            ここで1組のハイカーとすれ違う。暑いのに低山ハイク。物好きは小生だけじゃありま  せんでした。(^^;;                                  道は一旦NTT高取送信所の取付け道路に出合い、再び山の中へ。すると大きな石碑が  建っている。「高取城跡」。旧城主の末裔の人の筆になる立派な碑である。          更に進むと、梵語で書かれたような石碑。微かな踏み跡もある。帰りに寄ることにする。   再び林道との出合いから案内板の横の山道に入るともう旧高取城内となる。        壺坂口門を通り、芋が峠への分岐を見過ごして進む。意外にも立派な石垣に驚く。さぞ  かし立派であったであろう在りし日の遺構が忍ばれる。しかも草いきれと降るような蝉時  雨。所々にポカリと浮かぶ大きなウバユリの白い花。気がつけばあちらにもこちらにも。   強者どもが夢の跡。ふとそんなイメージが脳裏をよぎる。                木製の階段から大手門跡と、石垣の間をくねくねと引き回される感じで進む。姫路城の  大手への道に似る。途中、東屋がえらい藪の中にぽつんと取り残されている。そして間も  なく山頂の本丸跡の平坦地に出た。2、300坪はあるであろうか。南側の高さ1m程の 石垣の上に地元の方々による方位盤が設置されていて、そこに先着の方が2名。入れ違い  に芋が峠方向に下山されるとのことだった。                       その石垣に腰掛け、お茶で一息入れ周囲を見渡すと、向かいに天守台の標識があり、少  し高みになっている。とりあえず見学に行ってみることにする。              石垣を乗り越えると、小さな木にどこかの山の会の記念プレート、583.9mと書か  れてある。と言うことは三角点でも...?と周囲を見回すと、草むらに埋もれてちょこ  んと頭を出した石標。                                「ん?」                                    
山頂の高取城天守跡。この上に三等三角点が...
  周囲の草を薙いで覗き込むと「三等」の文字。思いもかけずの三角点でした。         昼食はいつものように助六寿司。小生以外誰もいない山頂でミンミンゼミ、アブラゼミ  の鳴き声のみが馳走である。                              肝腎の展望は廃城後の実生の木々が成長したのか思いに任せない。僅かに南側が開け、  下市、吉野の街並とその奥に重畳と重なる大峰の山々。一際高いのは山上ヶ岳だろうか。   場所を移すと東側が若干開け、霞の中に現れた秀麗な山容は竜門岳のようだ。       さて、下山は宇陀口門、芋が峠から栢森を目指したいところだが車の加減でそうもいか  ん。もと来た道を少しずつ道を変えながら引き返すことにした。              先程の梵字の石碑の踏み跡を辿ると、降り積もった落ち葉の中に八幡神社の社。そして  下った所はあの立派な石碑の横。そして、羅漢遊歩道との出合いを左にとると、岩を巻く  桟道まがいの部分を経て、急降下して羅漢岩の前に思った通り出くわした。         小休止の後、足元から飛び立ったヤマドリに最後に驚かされつつ登山口へ降り立ち、往  きには気づかなかった畝傍山が眼下遠くに霞んでいるのを愛でつつ、ブラブラと駐車地へ  向かう。途中、壺阪寺に一寸立ち寄り、駐車場前の茶店では「生中」を注文。これは旨か  った。最高!たまりましぇーん。 ^O^v                         はやツクツクボウシの声が混じる今年の夏。何か短そうで一抹の寂しさを残す夏の日の  低山行でした。                                 
  【タイムチャート】     8:30     自宅発    10:35     壺坂寺前駐車場(約290m)    10:45     出発    10:50     登山口    10:55     羅漢岩    11:17     NTT取付け道路出合   11:23     林道出合    11:30     壺坂口門跡    11:40〜12:05 高取山山頂(583.9m 三等三角点)    12:21     八幡神社    12:25     NTT取付け道路出合    12:39     羅漢岩    12:42     登山口


    高取山のデータ

    【所在地】 奈良県高市郡高取町
    【標高】  583.9m(三等三角点)
    【備考】  西国霊場壺坂寺の東、竜門・音羽山塊が西に派生した部
          分に位置します。
          山頂には広大な山城跡があり、越知氏、本多氏と移り、
          明治維新まで高取藩植村氏2万5千石の居城でした。
          この高取城跡、壺坂寺については、司馬遼太郎の「おお
          大砲」、「街道をゆく7〜大和・壺坂みち」で取り上げ
          られています。
          交通は近鉄南大阪線壺阪寺駅から奈良交通バス。車は橿
          原市からR169号線を吉野方面へ南下し、清水谷交差
          点で左折します。
          
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