曽爾高原


    近畿のマッターホルン?と言われる高見山、その秀麗な山裾も、さぞかし美しい錦をま   とっているだろうと出かけて見るつもりだったが、娘も行くとのこと、それならと一度足    を延ばしてみたかった曽爾高原に向かうことにする。     9:00出発。阪神高速から西名阪に乗り継いで針インターでR369へといつものル   −ト。なぜか針付近で渋滞。工事のようだが...。時刻は丁度10:00。      いつもは赤瀬で右折するのだが、今日は直進する。R165を少々西進してR369を   進む。この道は何度か通ったが、工事が進み道幅も以前より拡がっているようだ。左に仏   隆寺への道標、ワゴンが停まっており、おじさんがポリタンクを持っている。右に湧水が   ある。内牧の湧水なるものらしい。帰りに汲んで帰ろうと考えつつ通過。      室で室生寺からの道と合流。廃屋あり。石庭跡らしきものがあり、家は檜皮葺きの様で   誰かの別宅だろうか?栂坂峠を過ぎると曽爾村である。掛で曽爾川と並行するや、前方に   鎧岳、兜岳の鋭鋒が姿を現してくる。左の家並みの向こうには屏風岩が見え隠れしている。   何度眺めてもその柱状節理は素晴らしい。曽爾中学校を過ぎる。以前は運動会をやってお   り、全村全ての人が集まっているのではないかと思う位盛大だったのを覚えている。     太郎路(たろじ)で右、曽爾少年自然の家の標識に従う。1.5車線の舗装農道を進む。   所々に藁葺きの農家が点在し、のどかな風景が見られる。    登り切ったところが駐車場。たくさんの車がすでに停まっている。500円を支払い、準   備をして高原へ向かう。時刻は丁度11:00。二時間とは順調である。     さて高原は死火山の火口の中のようである。飛行機から見るとそれがよく分かる。しか   もその内側は木がほとんど無く、一面の人間の背丈ほどもあるすすきの原である。陽光を   浴びて、すすきの穂が銀色に輝いている。風がその穂を揺らし、まるで犬に逃げまどう羊   の群のようだ。
ススキの穂にに囲まれて
    石で固められた小道を進む。蟻の如く人々が火口壁?を登っている。そのあとに続き、    まず亀山(849m)を目指す。二本ボソと亀山の鞍部に案内板がある。兜岳、鎧岳、屏    風岩、その奥には住塚山(1009m)、国見山(1012m)が顔を出す。ここからの    鎧岳は鋭鋒ではなく牛の背のようだし、住塚山の稜線は人の横顔の様だ。その麓には太郎    路、葛、伊賀見の集落が散在している。桂林に比す人もいるとのことだ。     お亀池が黄色い草に覆われてその全貌を現している。干上がっているとのことだったが、    この前の雨のせいか少し水も溜まっている。下の人たちが蟻のようだ。     亀山をピストンして、稜線上の広くなった所で、室生火山群を愛でながら、少し早いが    おにぎりの昼食とする。時刻は11:40。     風が強い。丁度風の通り道になっているようだ。早々に昼食を切り上げて、倶留尊山を    目指す。娘と父は麓のベンチへ戻るとのことで、一人登りだす。     良く整備されているがやや急な岩場を、一歩一歩体を持ち上げていく。暫く登ると、路    は雑木林となり湿り気を帯びてくる。舗装路ではない土の路は靴底に心地よいものだ。     10分程で、小屋が見えてきた。二本ボソ、倶留尊山自然管理料500円徴収とある。    因みに缶ジュースは200円也。そこを過ぎるとすぐに二本ボソ(996m)の頂上であ    る。
二本ボソより紅葉の倶留尊山
    この頂上からの展望は陳腐だが絶景の一語に尽きる。東北に倶留尊山(1038m)の    錦をまとった鋭鋒。名張、伊賀上野の市街。青山高原の笠取山、遠くには御在所岳、北に    先の鎧岳、兜岳等の群峰。 西に今来た亀山とそれに続く古光山。西南に目を移せば、遠    くに大峰の山脈、重畳たる山陰の向こうから大台の日出ケ岳が顔を出す。一際目立つのは    今日行こうと思った高見山(1249m)の秀峰。南に台高の雄、三峰山(1235m)。    東南に局ケ岳(1029m)。東は遠くに伊勢湾が霞んでいる。指呼の位置には、大洞山    (985m)の柔らかい山容と、それとは対照的な尼ケ岳(伊賀富士)(958m)のコ    ニーデ型の姿。麓には太郎生ののどかな集落が日を浴びている。これらのオールスターの    山裾に、雲が影を落とす姿は何とも雄大である。
二本ボソ中腹よりお亀池と亀山。その奥の 古光山の肩に高見山が顔を出す
    70歳位の主の如き老人がハイカーに説明をしている。太郎という地名も、昔この辺り    の大地主に由来する名だという。小生も仲間に入る。春はこぶし、コバノミツバツツジ、    石楠花、秋は紅葉、四季折々の美しさがあるという。四日程前の冷えた日の朝には富士山    も見えたそうな。大台より富士に近いし、「さもありなん、ウンウン。」と納得する。頂    上南側に大蛇ぐらに似た岩の張り出しが在ると教えられる。ここからの池の平の姿は箱庭    みたいで素晴らしいものだった。     もっと景観を楽しみたいのだが、下では娘が待っている。後ろ髪を引かれる思いで、二    本ボソを後にする。来春又来たいものだ。13:30頃下山、お亀池近くのテーブルまで    戻る。     娘と植物図鑑で野草の同定、チカラシバなる野草の名が分かった。収穫、収穫。     14:00茶店でコーヒー、14:20帰途につく。どんどん下から車が上がってくる。    後ろは1時間位待たないと駐車出来ないのではと要らぬ心配をしてしまう。片側にズラリ    と駐車してある為、前方のバスが動けず30分程浪費してしまった。途中、来る際に目を    付けた湧水をペットボトルに詰め、収穫多きワンディハイクを終わる。                               平成8年10月20日(日)  
   曽爾高原のデータ     【所在地】 奈良県曽爾村     【標高】  亀山 849m、二本ボソ 996m     【備考】  奈良県と三重県の県境。赤目や香落渓の南側に位置し、もとは室           生火山群の古い火口の跡と思われます。秋、一面のススキが銀色           に輝く様は美しいの一語に尽きます。秋のシーズンの時は混むの           で、車の場合は早めの現地着が無難です。  
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