曇りという予報に相反して青空が広がる良い天気。今日は、朝日新聞の登山募集でもそ
の対象となる丹波の名山白髪岳を目指す。
登山口の丹南町住山地区は藁葺きの民家も点在する、丹波の山里の雰囲気をよく残す山
峡の集落である。黄金色の稲穂が垂れる田の周囲はヒガンバナの紅で縁取られコントラス
トを見せている。所々には茶畑もある。
舗装道をたくさんのハイカーが行く。道路沿いの空き地に車を駐めて、早速その中に混
じる。
あな、珍しや、火の見櫓がある。背景の山とともに撮影。近くでおばあさん二人が立ち
話。話しかける。
「あの山が白髪岳ですか?」
「いや。あれは松尾山じゃ。昔、寺があったところだよ。白髪岳はあの山の向こうでここ
からは見えんわ。」
というわけで、火の見櫓の背景の山は松尾山と判明。
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丹波の山里 住山の集落と松尾山 |
さて、ぶらぶらと田園風景を楽しみながら、天神川沿いに進むと左に案内板。そしてす
ぐに分岐。左、白髪岳。右、松尾山の登山道。左に折れる。ここから林道は地道となる。
明るい川沿いの道、「ヤマボウシ野外活動の森」なる標識を右に見て、しばらくすると左
に砂防ダム。桜が植えられている。その上流で道は左にカーブ。橋を渡る。1.5m程の
かわいらしい滝があった。
ようやく山懐に入ったようだ。林道が行き止まりとなり、左に白髪岳周辺整備推進会議
住山分会が立てた標識がある。白髪岳周辺は植物の宝庫らしい。くれぐれも盗掘なきよう。
本格的な登山道となってきた。植林帯の中の湿った道から水が枯れた沢際に出る。ヤブ
ツバキが多い。この付近には明治時代の廃鉱跡があるはずだが、残念ながら見落としてし
まった。
しばらくして登山道は沢に降り、10m程の遡行後、山腹にとりつくことになる。これ
がかなりの急傾斜。所々にロープもある。リョウブ、カラスザンショウの木に掴まりなが
らの登高。ここで息を切らしつつ一気に高度を稼ぐと、ようやく尾根にとりつけたようだ。
南側の眺望が現れる。
尾根のコブで3人連れの初老の方のパーティが一休みしている。失礼して先行する。
しばらくアップダウンを繰り返すと前方に岩壁。これが山頂前の難所の岩登り。眺望絶佳
なれど足下は絶壁。落ちたら助からん。三点確保で慎重に進む。この岩登りをこの後もう
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登山道途中の岩上より白髪岳 |
一度味わうことになる。その後すぐに頂上が現れる。
頂上は南北に長くなっており、その南部分に山名板と二等三角点が埋まる。展望は大き
な木もなく素晴らしいの一言。まず、東は恐竜の背を思わせる三嶽を主峰とする多紀アル
プス。その手前に篠山の町と舞鶴自動車道、多紀ニュータウン。北には、黒頭峰、夏栗山
その間には5月に登った三尾山が顔を出している。西は山また山の波。妙見山から西光寺
山、その奥には千が峰など1000m級の播州の山々が横たわる。北西に垣間見える町並
みは柏原盆地だろうか。
目を南に転ずれば懐かしい秀峰虚空蔵山と和田寺山に挟まれた立杭の里。はるかに六甲
連山も霞む。南東には、先週登った大舟山の秀麗な姿、北摂連山の大野山、深山さえもそ
の姿を意外な近さで見せているではないか。
一通り、目の保養をしたところで昼食とする。例によってカップラーメン、おにぎり、
食後のコーヒーである。
食事中に頂上はハイカーの団体で一杯となってきた。もう一度展望を楽しんで道が混ま
ぬうちに下山にかかることにする。
下山道も急傾斜。マンホールに落ち込むよう。ロープを頼りの急降下である。灌木のト
ンネルのような道が続く。689mのピークの山腹を巻いて再び尾根道に出ると、途中、
多紀アルプス方面が見渡せるところがある。そこでしばしの休憩。
30分程歩いたろうか。文保寺と松尾山への分岐標識がようやく現れた。松尾山頂上ま
で200mとある。標識に従い、右に折れて再び展望無き山腹を登り返す。これが又結構
な傾斜。テープを頼りに、10分程息を切らせてようやく頂上に出た。説明板がポツンと
立つ。それによるとここには酒井氏の山城があったようだ。こんな不便な所によく作った
ものだ。
一息ついて、標識に従って進む。前方に二股の大きな杉。千年杉である。そして仙ノ岩。
ここまで来ると先程の喧噪は嘘のよう。一転して寂しくなってくる。先の団体さんは文保
寺へ回ると言っていたっけ。テープを目印に進むのだが、それが途切れる所もあり、心細
くなってくる。
と、前方に青いものが動く。中年夫婦の方。内心ホッとする。
ジグザグに降りていくと、西南に開けた笹原に20基ほどの卵塔群。高仙寺の僧の墓と
伝える。笹に半ば埋もれた墓石に寂寥感が襲ってくる。
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高仙寺の僧達の墓といわれる卵塔群 |
とって返して、再び杉林の中を行く。愛宕堂には地蔵さんも立つ。その前のほの暗い中
に濃いピンクの花がそこここに咲いている。
ツリフネソウだ。思わず写真1枚。
阿弥陀堂跡を過ぎ杉林の中、道は沢沿いとなる。しばらくすると穴地蔵方面と不動の滝
方面の分岐。どちらも住山へ出るようだが、不動の滝方面は道が悪そうなので、穴地蔵方
面を選択。しかし後で気づけば不動の滝方面の方がよく利用されるルートだったのだろう
か、穴地蔵方面は倒木が多く、あまり踏まれていないようだ。道もダラダラとなかなか下
りにならぬ。いつしか灌木帯になったと思えば、左右から木が茂ってきて、下るほどかえ
って道が細くなるではないか。テープも見当らぬ。不安を隠して自然に足は速まる。「エ
ーイッどんどん下ったれ。」
すると下前方に白っぽい道が垣間見えてきたではないか。安堵の胸をなで下ろし、茶畑
横の最後のブッシュをかき分ける。足下の草むらに松尾山登山口のトタン製の標識が倒れ
ていた。これでは下の林道からは見えない。やはりあまり利用されている道では無い様だ。
さて、残った水を一気に飲み干し、一息入れて林道を下る。道端には赤紫の可憐な花が
群れ咲いている。ゲンノショウコ。ヒガンバナも其処ここに。
登山道分岐はすぐ。今は少なくなったカカシの顔や、地元の特産品の売る露店を冷やか
しながらゆっくり車に戻る。早春にでも又来ることにしたい。そんな5時間ほどの爽やか
な秋の丹波路探勝であった。
【タイムチャート】
8:40 自宅発
10:02 住山集落(駐車地)(約210m)
10:05 出発
10:26 白髪岳・松尾山登山口分岐
10:40 桜公園上部の橋
10:47 道標(白髪岳周辺整備推進会議住山部会)
11:11〜14 ピーク
11:40 白髪岳山頂(二等三角点 722m)
12:45 下山
13:20 文保寺・松尾山分岐
13:30 松尾山(高仙寺山)山頂(687m)
13:32 千年杉、仙ヶ岩
13:48 卵塔群
13:58 愛宕堂
14:01 阿弥陀堂跡
14:10 辻地蔵
14:26 松尾山登山口(林道合流)
14:32 白髪岳・松尾山登山口分岐
14:50 住山集落(駐車地)