北摂オフは墨絵の世界〜千丈寺山

平成12年 1月30日(日) 
天候: 小雨のち曇り     
同行: 別掲        
三田市小野からガスに煙る千丈寺山


 自宅近くのコンビニで食料を仕入れ、北摂オフの集合地を目指す。昨日とは一転、今に
も泣き出しそうな曇り空。しかも今日の北摂オフのターゲットは三田市の一等三角点を持
つ雨乞いの山。案の定、伊丹空港の地下道を抜けた途端、フロントガラスに雨粒が当り出
した。やがてワイパーが必要になる程になり、路面には水溜り。大丈夫かなと少々不安に
なる。

 猪名川町から羽束山の麓を抜け、予想より早く10時前に青野ダム記念館横の駐車場に
着く。青いCR−Vが先着している。島田さんであった。想像した通りの初対面とは思え
ない人懐こい人である。

 しばらくするとdameさんの緑の車。千丈寺山は雨乞いの山、過去のHPや小生が偵察し
た時も雨だったなどと雑談するうちにあきゆきさん等、皆さん定刻に集合。

 自己紹介の後、まず東浦公園の駐車場へ。ここに車をデポ。更に3台に分乗して乙原の
林道大根谷線の十字路東の駐車地へ向かう。その頃には心配な雨も小降りに。そして装備
を整え出発する頃には、雨も上がって山はガスに包まれだし、思わぬ墨絵の世界に。晴天
の山歩きもいいが、清冽な冬の雨上がりも風情があって又良し。

 永沢寺へ通ずる林道を横切って、がれた一間幅の道を西へ歩く。やがてその道も白い木
肌の綺麗な雑木の林の広場で消えて、疎らについているテープに沿って雪の消え残る沢沿
いに進む。そのテープも途切れ、炭焼窯跡の石積みが現れる頃には、踏み跡自体も不分明
になってしまった。どうも峠へ出る積りが、その手前で大きな沢に誘われてしまったよう
だ。先頭は佐竹さんとかねちゃん。時折、地形図を見ながら歩きやすい部分を選んでもら
う。我々はというと、それに導かれながらカラスザンショウの大木に驚いたり、鹿の糞を
発見したり、島田さんやたぬきさんとギャグ合戦に興じるなど他愛無い。

 それにしても葉を落とした雑木は油断がならない。大丈夫と思った枝がポキリと折れて、
慌てることになる。張り出した枝を払いのけ、残雪の足元に注意しながら、沢を詰めれば
いつかは稜線へ辿りつけるだろうと一歩一歩と高度を稼ぐ。

 やがて沢の窪みも消え、稜線への最後の急登となる。これがきつい上に足元が悪い。木
々の枝を掴みながら体を持ち上げ、ようやく千丈寺山北峰の東の稜線に乗る。そこには2
本の木に赤いテープが門柱の様に巻かれてあった。

 尾根に乗ればはっきりした踏み跡があるかと思いきや、見事に予想は裏切られた。アカ
マツやツツジ、リョウブなどが混じった林の中を尾根沿いにコンパスを見ながら微かな踏
み跡を西へ辿る。こんな中にも時折テープが現れ心強くなる。しかし、尾根は徐々に広が
りを見せ迷いやすくなる。冬で木々が葉を落とし見通しが利くから良いが、葉のある季節
はさぞやルート捜しに苦労するに違いない。

 やがて、徐々に尾根は南方向に振りだし、前方を確かめに行った島田さんが小さな池を
見つけたとの声。スワッ。高層湿原の発見か?一寸大袈裟?池の表面は凍っていました。

 まもなく前方に倒木を横にしてゲート状にしたものを発見。巻かれたテープには「禁止
兵庫」と読めた。どうも兵庫登山会が迷いやすいので通行禁止にしたもののようだ。

ここで右から本来の上青野・乙原の峠へ向かうらしい主尾根の道が合流し、南方向に今ま
でとは見違えるほどの明確な道が現れた。

 ほとんど高低差の無い道を進むと、小さな広場がすぐ眼下に。広場の周りを円形に丸太
が据えられ、その前に石の素朴な祠が鎮座する。時間も頃良し。ここで一同昼食となった。
千丈寺北峰の竜神の祠。この前の広場で昼食

 たぬきさんから地酒の『小鼓』、芳村さんからは外国製の焼酎、小生の安物の白鶴パッ
ク。皆さんの健康を祝して乾杯。竜神さんにも酒を献上して三々五々食事を済ませる。 

 南方にはこれから向かう千丈寺山本峰がどっしりと構えている。時折ガスに隠れ、深山
の風格。そこだけ見れば大峰の高峰。東下方には乙原の集落が小さく見える。

 後片付けを終え、1時前、本峰に向かって出発。雑木に包まれた素晴らしいプロムナー
ドだ。若葉の頃も良さそうだわいと考えていると、いつしか始め広かった尾根も次第に痩
せてきて、東西が見渡せる様になってくる。益々細まってくると、地衣類が付着した露岩
が前方に現れた。雨で濡れている上に雪も残っているので、滑らぬように注意して越える
と立派な一等三角点の鎮座する山頂であった。
千丈寺山山頂の綺麗な三角点

 10人でもう満員という程意外に狭い。木々には兵庫登山会や関西独標会のプレートが
懸けられてあるが、流石に山頂、風が冷たく、ガスで眺望も利かぬので、記念撮影後、早
々に撤収、前山へ向けて進むこととなった。
狭い山頂で北摂オフの記念撮影

 山頂下の明快な道と合流してすぐに南方が開けた展望岩に出た。晴れていれば、六甲か
ら丹生山系、三田市街や北摂の山々が見渡せるのだろうが、今日はだめ。それでも飯盛山、
有馬富士、他の無名ピークが秀麗であった。

 ここでかねちゃんを中心に、地形図を見ながら分県ガイドにあった南の尾根に誘われぬ
ようにとのアドバイスを実際に視認。前山方面を確認して西南方向に向かう。

 露岩を三点確保しながら慎重におりて尾根沿いに辿ること10分。道の左側にナイロン
テープが現れた。マツタケ山によくあるもので、やはり後から、シーズン時の立ち入り禁
止を告げる山主の札が現れた。

 何時の間にか前山の裾をを巻いて過ぎてしまったようだ。東南に開けた崩壊地に出る。
小さな蕾をつけたアセビや五葉松に似た丈の低い松が疎らに生えて、まるで日本庭園の趣
である。東には先程の南の尾根が地形図そのままに台形の形状をなしている。ここで小休
止。芳村さん夫妻に入れて頂いた熱いコーヒーで暖をとる。

 ひとしきり雑談に花が咲くが、体が温まったところで下山再開。

 道が西に折れたところでは三角点に似た石標を2つ発見したり、タヌキの糞らしきもの
を見つけたりでワイワイと盛り上がっていると、突然、オカリナの音色。出ました島田さ
んの18番「コンドルは飛んで行く」。一同、聞き惚れる。「?」 

 またまた前方に露岩。ここも南方の展望よし。北浦の集落や湖、御旅橋がよく見える。

 ここで島田さんが散弾銃の薬莢を発見。そういえばタヌキや鹿の痕跡があったし、まだ
猟の時期だったのだとあらためて気づいた次第。

 さて、露岩を降りるとここからが急坂。しかもツツジやアカマツなどの雑木の枝が張り
出して歩きにくい。所々にテープがあるが、葉の繁る季節は見つけるのにかなり難渋しそ
うである。それでも枝を払いながらつづら折れを降っていくと、極楽寺の甍が垣間見えて
きて、砂防堰堤の左に飛び出した。囲炉裏の山口助役のHPにあったのもこれであろう。

 堰堤を巻いて林の中を潜り抜けると枯れ沢沿いに地道が現れ、北浦の天満神社の境内へ
と導いてくれた。

 天満神社はこじんまりとした神社だが、神輿も置かれ、良く手入れが行き届き清々しい。
地元の方の丹精が偲ばれる。賽銭箱が無いので、ガラス戸の隙間に賽銭をあげ、今日の無
事を感謝する。
下山地の北浦の天満神社

 そこからは車道を横切り、北浦の集落の中をそぞろ歩いて、車のデポ地迄はすぐであっ
た。

 芳村さんの車で林道に置いた車を回収し、再び東浦公園駐車場。全員顔を揃え、またの
再開を楽しみに散会。その頃には西の空も、明日の好天を約束するかのように雲が切れて
いました。

 一時は開催が危ぶまれた程の空模様でしたが、皆さんの精進の賜物か、竜神もお目こぼ
し。全員無事下山できオフも終了、ご尽力頂いたかねちゃんに感謝。終わり良ければすべ
て吉。お蔭で思わぬ幽玄の世界を満喫した北摂オフでありました。


【同行】:あきゆきさん夫妻、かねちゃん、佐竹さん、島田さん、丹波のたぬきさん夫妻、
     芳村さん夫妻、dameさん  (50音順)

   【タイムチャート】
    8:40自宅発
    9:55青野ダム記念館駐車場(集合地)
   10:30東浦公園駐車場(車デポ地)
   11:00 林道大根谷線十字路東(駐車地 約250m)
   11:50北峰(575m峰)の東肩の稜線
   12:10上青野峠への本尾根出合
   12:15〜12:55千丈寺山北峰の祠(昼食)
   13:05〜13:10千丈寺山山頂(589.6m 一等三角点)
   13:12〜13:15本峰南の展望岩
   13:40〜13:55千丈寺前山南の崩壊地
   14:05〜14:10展望岩
   14:20 砂防堰堤
   14:30 北浦天満神社
   14:45 東浦公園駐車場(車デポ地)



  千丈寺山のデータ
    【所在地】兵庫県三田市
    【標高】589.6m(一等三角点)
    【備考】 青野ダムによって出来たダム湖の名の由来となった山で
す。一等三角点を持つ山ですが、ガイドにも余り紹介さ
れないマイナーな山なので、静かな山歩きが楽しめます。
祠の旧参道を利用して乙原から北峰に登り、本峰を経て
前山から北浦へ下山するのが基本コースで、尾根には比
較的しっかりした踏み跡が有りますが、尾根に登るまで
にヤブがある為、葉が繁る季節の登山には上記のコース
以外はあまり適しません。また、マツタケの時期、及び
猟期にも注意が必要です。
JR三田から神姫バスで「乙原口」が最寄です。
    【参考】二万五千図 『藍本』



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