竜神に化かされた?茨木竜王山

                                 平成9年11月 2日(土)                                  天候:晴れ                                          同行:単独        



 竜王山という山名は妙見山等と並んで各地に存在するようだ。北摂にも三草山の西に同名の山があ  るが今回は茨木市の竜王山。                                   ここのところ、明が田尾山、外院尾根と近場ばかりを巡っている。今日も昼からの自宅出発である。  2時丁度、車作クラブバス停へ到着。路肩に車を置いて出発する。T字路を左へ進むと直ぐに皇大  神宮そして真宗の法林寺。錆びた標識に従い、集落の中の路から幅1m程の農道を登っていくと、横  に勢い良く流れる水路が現れた。これが深山水路であることが上の案内板にある。江戸期の宝永年間、 車作の庄屋畑中権兵衛が苦心惨憺完成させた水路とのこと。その近くには車作(くるまつくり)集落  の地名由来の立派な標識も立っている。                              それによれば天智天皇の御代、当地の民が特産のケヤキで御所車を献上したことに由来するという。 そして直ぐ、竹藪下に清水廃寺、経塚。キリシタン大名高山右近が仏教寺院を焼き打ちした際、経文  を隠した所と言い伝えられる。数々の歴史に彩られた中、感慨に耽りながらの山行である。       忍頂寺へ向かう広い農道を横切り古い風呂釜が転がる廃屋を右に見て、道なりに進むと工事中の砂  利の林道。植林の幼木越しに南側に眺望が広がる。生駒山が遠くに霞んでいる。            漸くここから本格的な山道である。                               山腹を巻くようにしてしばらく進むと、左に大きな岩が見えてきた。開成皇子が修行した跡といい、 真ん中が縦に割れ、胎内くぐりもできるようだ。頂上には弁財天が祀られているという。        なんだか、水音が聞こえてきた。上を仰ぐと古い神社造りの建物があり、その隣の樋から水が流れ  落ちている音であった。滝に打たれて修行する場所のようだ。                    右にカーブすると程なく穴仏・負嫁岩への分岐。ここへは帰りに寄ることにし、パスして直登路へ。  この葛籠おれの路が案外きつい。ちょくちょく小休止を余儀なくされる。肩で息をしつつ、エッチ  ラオッチラ。すると前方から人の声。パッと視界が開けるや、関電の高圧鉄塔下に出た。先程の声は  弁当を広げておられた中年夫婦の方のものだった。                         ここは東側が開け、安威川の谷を隔ててポンポン山方向の山並みが広がる。やや紅葉には早いが、  ツタの葉であろうか点々と錦に染まる部分も。                           再び登り出すとやがて傾斜が緩み、程なく山頂に出た。だだっ広い感じで、トイレや錆びた滑り台  等の遊具もある。コンクリート製の二階建ての展望台があるので早速登ってみることにする。      ガイドブックには素晴らしい眺望とあったが、木々が成長したのか南方向が一部木の間越しに伺え  る程度。むしろ途中の高圧鉄塔下や、工事中の林道付近の方が好展望が得られるようだ。期待はずれ。  展望台下のベンチで、出がけに買った缶コーヒーで口を潤し一休み。                さて、息もつけたことだし、展望もないしで、早々に山頂を後にして下山、穴仏、負嫁岩に向かう  ことにする。標識に従い、先程の分岐を左へ、緩いアップダウンを繰り返して岩ゴロの沢を横切ると  間もなく説明板。字が剥げて読みづらい。                               負嫁岩。崖状に張り出した大きな岩の上に大きな岩が乗っている感じで、何だか人の頭のようにも  見える。その上には沢山の落ち葉が降り積もる。仕事の嫌いな嫁が神の怒りに触れ落命したとの伝説  と相まって、少し暗く寂しい感じがする。                             穴仏も直ぐそば。10m程の岩で戦国時代の戦火を逃れて忍頂寺の薬師如来を隠した所という。石  仏でも安置してあるのかと思い、藤蔓に掴まって岩の割れ目を覗いたけれども、供え物は有ったもの  の他には何もありませんでした。                               
竜王山山中の穴仏
 さて、もと来た路を引っ返す。案内に従って左に折れ、しばらくして気づいた。          「んっ?」                                          なんだか見覚えがない。それでも踏み跡をつたい、竜王を祀った岩の横を首を傾げつつ通過するが、  落ち葉が積もって人が通った形跡も無い。やがて踏み跡も消えているではないか。          「おかしい。」                                        とりあえず、元へ戻ることにする。しかし、標識に従えばやっぱりこの路のようだ。再び、竜王横で  踏み跡を捜すが無い。日が陰り、だんだん暗くなってきたしで、ちょっと焦りだす。         「しょうがない。山頂へ戻ることにして忍頂寺へ降るか」と諦めて山頂方向へ戻ることにすると、見  覚えある標識が向こうに。なんと、穴仏への標識が2カ所にあったことをてっきり忘れていたようだ。 うろうろしたのはほんの五分程だったろうが、竜王山に棲む竜王に化かされたような、狐につままれ  たような...。                                        ともあれ、内心ほっとしつつ復路を車作まで戻る。西日が傾き、柿の実を照らす中、皇大神宮の畑  中権兵衛の大きな顕彰碑を見つつ、車作クラブ前へは16時過ぎの帰還でした。          
車作の里、こんな近郊に山里の原風景が...
      【タイムチャート】       13:10     自宅発       14:00     車作クラブバス停前(約170m)       14:10     案内板(車作、深山水路)       14:35     岩屋       14:40     穴仏、負嫁岩分岐       14:50     高圧鉄塔       14:58     竜王山山頂(510m)       15:10     下山       15:22     穴仏、負嫁岩分岐       15:30     負嫁岩、穴仏       15:50     穴仏、負嫁岩分岐       16:05     案内板(車作、深山水路)       16:12     車作クラブバス停前



    竜王山のデータ
    【所在地】大阪府茨木市
     【標高】 510m
    【備考】  大阪府茨木市の中央部にあり、東の山脚は安威川に浸食され竜仙峡
         を形成しています。周辺は奈良時代から開かれた地域らしく寺社が
         多く、忍頂寺、千提寺等の地名にその名残を見いだせます。又、北
         摂山系は山岳信仰にも関係深く、竜王山にも竜王を祀る宝池寺他、
         勝尾寺、本山寺ゆかりの開成皇子に関連する言い伝えも聞かれます。
         尚、竜王山には忍頂寺から東海自然歩道を登り、車作に抜ける方が
         楽でしょう。JR、阪急茨木市駅からバスが出ています。
 
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