実りの秋、紀北路〜竜門山

                          平成9年10月12日(日)                            天候:晴れ時々くもり                               同行:単独         



 行きたい所に適当に行っているようで、どうも節操のない山行きが続く。       先日は湖南の太神山、今回は逆方面の紀北を訪ねる山行である。しかし、日帰りという範 疇でくくれば何ら問題なし。 (^_^;                         さて、8時半自宅発。紀見峠を越えて橋本市でR24、粉河で左折、竜門橋の鉄橋で紀 ノ川を渡る。ガイドにあるY字路の案内標識を探すが見つからず、道を間違え小学校の側 へ出てしまった。元へと引き返す。                          ガイドにある森田商店を目印に東杉原の集落を抜けると、視界が大きく開け、目指す竜 門山の裾野は一面の柿とミカンの畑。その中をコンクリートの狭い農道がウネウネと急勾 配で蛇行する。対向車が来れば避ける場所も無さそうで、とりあえず、手書きの朽ちかけ た木製標識の前のやや広まった所で車を駐め、準備開始。                 思ったより大きな山容、「あそこまで登るんかいな」といつものようにうんざりするが、 しかし山頂に立った時の爽快感が忘れられず、又登ってしまう。低山ハイクといえども一 種麻薬みたいな所があるようだ。                           果樹の手入れをしている農家の人を横に見る。徐々に高度が増すに連れ、振り返れば雄 大な景色が眼下に拡がる。和泉山脈を背景に粉河の町並み、紀ノ川は白い竜が横たわって いるようだ。そして見渡す限りの柿とミカン畑。雲の影が地表に斑模様を呈す。      農道が地道となると間もなく一本松。土がむきだしの荒れ地のそこここにバンガロー風 の建物が建っている。途中には廃校になった自動車教習所の建物もあった。何となく荒涼 とした雰囲気が漂う。その中に竜門山の大きな案内板。少し登ったところに登山コースの  分岐標識。左、田代峠コース、右、中央コースとあるが、とりあえず中央コースへ向かう。 中央コース登山口はここから800m。                        山腹を巻く農道が林道に変わり漸く灌木が迫ってくる。路が大きく左にカーブすると中 央登山口を示す標識とキイシモツケの案内図。                     登山道は柿畑の隅を通っている。何となく柿畑へ潜り込むという形容がピッタリの登山 口だ。                                       雨でえぐれた石ころだらけの急坂である。柿畑が尽きると、モチツツジ、アカマツ、リ ョウブなどの雑木のトンネルのようになる。山の北側の為か、やや湿った径沿いにギボウ シ、シロヨメナの白い花が目立つ。ヤブコウジも色鮮やかな赤い実をつけている。が、羊 腸の径とはこの事か、見通しの利かない山腹をひたすら登っていく。           この登りを30分程も続けたろうか、明神岩・風穴へ50mの標識を見いだす。左へ向 かう。                                       大きな岩が北側に突き出している。高さは20mはあろうか、眺望絶佳。景色を楽しみ ながら昼食でも摂りたくなるところだ。小休止、水を補給。               どこからか人の声がする。見回せば岩の端にハーネスとカラビナに緑のザイル。おそる おそる覗くと下に学生風の2人。登り方の相談でもしているのであろうか。声をかけて挨 拶。                                        さて、風穴はと探すと、岩の横にぽっかりと口を開けている。小石を投げると反響を残 して落ちていった。昔は蚕の貯蔵に使われ、楠木正成も隠れたという言い伝えもあるそう な。                                        再び登山道に戻る。相変わらずギボウシが多い。アケビの実も落ちている。クマザサが 増えてきた。辺りも明るさを増し路の傾斜も緩やかになったようだ。頂上間近?と喜んだ のも束の間、再び急登。がっくりきたためか足が急に重くなる。             喘ぎながら足を引きずっていると再びクマザサが現れだした。ススキの穂、木々も疎ら となり周囲が芝状の草に変わってきた。今度こそ頂上だった。              山名板が立つ。その奥に三等三角点が埋まっている。思わず撫でる。その横で昼食を摂 ることに決め、カップラーメンの湯が沸くまで眺望を楽しむことにする。         ガイドでは360度の展望とあるが、南は木々が成長して、その間から生石高原や紀州 の山並みがチラッと顔を出すのみ。しかし、北側は雄大な眺めである。紀ノ川がゆったり と流れる向こうに東から和泉山脈の主峰岩湧山、東ノ燈明岳、レーダードームのある三国 山、その西はブナ林で有名な和泉葛城山であろうか。                
山頂からの紀ノ川流域と和泉山脈の眺め
 先着の10名程の中年男女のパーティの記念写真を頼まれる。            「撮りますよ。1+1は?!」と大声を上げると思わず全員「2!!」。間髪入れず「パ シャッ」。これが大受けでした。                           食後の熱いコーヒーを楽しみながらの展望を済ませて、今度は田代峠へ、途は頂上の尾 根を東に向かっている。アカマツとリョウブなどの疎林越しに北に和泉山脈、南に紀州の 重畳とした山並みが垣間見える。爽やかなプロムナードである。              突然出現、磁石岩。高さ4m程の岩がゴロンと他の岩の上に乗っている。解説に因れば、 岩の北側がS極、南側がN極の巨大な磁石だという。因みに岩の周囲は17m。    
巨大な磁石の磁石岩
 またまた突然、ぽっかりとした空き地に飛び出した。田代峠とある。大きな岩が埋まっ ており、その周囲にはススキとチカラシバ。風も当たらず、憩うには絶好の場所だ。     左に折れると漸く下り路となる。路傍に祠、中にお地蔵さんがひっそりと鎮座している。 ハイカーが供えていったのか、キャンディーが幾つか置かれていたのが印象的であった。   暗い杉の植林帯を抜け、再び雑木林になり路の湿り気が増すと、小さな沢に出くわした。 岩の間から水がチョロチョロと湧き出しており、ここにも小さな石の地蔵さんが座ってい た。                                        最後の急坂を下って、石垣の横をすり抜けると登山コースの分岐。爽やかな風に吹かれ て果樹の間を駐車地を目指す。おりから、杉原では秋祭りの山車巡行が終わった後であっ た。                                      
西側の打田町竹房付近からの竜門山
   【タイムチャート】     8:30    自宅発    10:45    東杉原(駐車地)(約100m)    11:10    一本松(登山道分岐)    11:20    中央コース登山口    11:55〜12:00 明神岩・風穴      12:13    勝神登山コース分岐    12:15    竜門山山頂(757m 三等三角点)    13:28    下山    13:36    磁石岩    13:54    田代峠    14:06    道標(田代峠へ30分の表示)    14:14    沢側の石地蔵    14:30    不動寺本坊    13:30    一本松(登山道出合)        14:55    東杉原(駐車地)(約100m) -
   竜門山(紀州富士)のデータ
    【所在地】和歌山県那賀郡粉河町    【標高】 757m(三等三角点)     【備考】 和歌山市の東、紀ノ川を遡った粉河町に位置し、紀ノ川を挟んで和泉山脈          と相対しています。和歌山側からの姿が富士に似ているところから紀州富          士とも呼ばれますが、東西に長い山容から正面から見るととてもそのよう          には見えず、船を伏せた形に似ています。          ギフチョウの南限生息地としても知られており、又、5月には県天然記念          物のキイシモツケの白い花が咲き乱れます。          最寄り駅はJR和歌山線粉河駅、一本松迄ほぼ1時間弱の行程です。
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