秋を探して北摂大舟山

                              平成9年9月13日(土)                                天候:晴れのちにわか雨                                 同行:単独        
   台風接近、天気が良いのは今日だけとのこと、まだまだ残暑は厳しいが秋もそこまで来  ていそうで、北摂の名峰大舟山を目指す。(地図などでは大船山となっているが、地元で  の表記は大舟山の為これに従う。)                             三連休ということで、高速道路は各地で渋滞、それを尻目にR176バイパスから県道    川西篠山線を北上、川床口で左折、千苅貯水池を抜ける。                   志手原で右折して再び北上する。ここまで来ると、三田市とは思えない昔懐かしい田園    風景が展開する。その一つ、木器(こうづき)の集落から振り返れば、いつか登った羽束    山の峻峰が美しい。(羽束山は、神戸市立フルーツフラワーパークからも、北にそのピラ    ミダルな姿が望めます)                                  下槻瀬の集落に近づくと、右前方に目指す大舟山の大きな山塊。マイクロウェーブの反    射板が目立つ。                                  
三田市下槻瀬からの大舟山
   上槻瀬、高平と過ぎ、十倉のバス停付近に登山口の標識。公民館と思しき建物の前の広    場に車を停める。                                     やおら準備を終えて農道を進む。往く夏を惜しむかのようなツクツクボウシ、ミンミン    ゼミの合唱。と思いきや、道端にツユクサの藍が満開。その横にアレっ、もうヒガンバナ    が咲き出しているではないか。そう言えば、去年の秋、西国三十三カ所番外札所の花山院    への帰途、この辺りを通った時にヒガンバナが満開だったことを思い出す。             周囲を見廻せば、畦の柿の実は薄く色づき、田圃は稲刈りの真っ最中。ススキの穂がお    いでおいで。秋は確実に近づいているようだ。                          農作業のおじいさんが土手で一服。                            おじいさん「大舟山に登るんか?初めてか?さっき、女の人が登って行ったぞ。」       小生「道はしっかりしてますか?」                            おじいさん「うーん。みんなが良く踏んどるから...。」                   失礼して、曹洞宗東慶寺を左に見つつ歩を進める。幅一間程の地道。5分程で緑色の池    が二つ右に。スイレンと思しき白い花が印象的。更に、もう一つの池に出くわすと、綺麗    に草刈りされた土手を右へ。木々が頭上に覆い被さりだし、漸く登山道らしくなってくる。      朽ちた木橋を渡る。沢の水音を聞きながら檜の植林帯の中のガレ道を行く。            道端に斑点の目立つ花。ホトトギスだ。思わずパチリ。探せばあちらこちらに咲いてい    る。鞍部には天狗の羽団扇に似た葉を持つモミジガサの白い花序。今日はこの二つの植物    を覚えて帰ろう。                                     いつしか沢とも別れて、葛籠おれの深くえぐれた道は山腹を巻いていく。故に眺望はほ    とんど無し。無風。汗が全身を流れる。                             切り通しの様に前方が明るくなってきた。峠だ。真っ直ぐ行けば波豆川(はずかわ)へ。   右が頂上への道。ほっと一息、ここで小休止、水を補給する。                   一組の夫婦の方が下りてきた。                             「どの位かかりますか?」                                「20分位で下りてきたから、30分くらいだと思うけどなあ。」              礼を言って、登山再開、深くえぐれた道を行く。                       大きな杉の木を過ぎる頃から、道は胸突き八丁、かなりきつい勾配。リョウブなどの木    々に掴まりながら高度を稼ぐ。                               ロープの補助があるところを過ぎ、しばらくすると火の用心の小さな赤い標識。その後    ろは岩。その岩を巻いて道は低い灌木のブッシュの中をくねる。と、傾斜が突然緩くなっ    たと思ったら、頂上へ飛び出した。                               先客は男性1名、女性3名のグループ。挨拶して、まず水を補給。Tシャツを脱いで干    す。                                             先客のグループが下りられた後は、小生一人。キアゲハが数羽、乱舞している。アキア    カネもスイッと目の前を横切る。それにしても静かな山頂だ。                   食事して落ち着いたところで、観察モードに移る。                    
山頂風景 古い祠の後ろに三等三角点
   頂上は10畳程だろうか、真ん中に朽ちかけた祠、その後ろに三角点石標。三田市の説    明板が立つ。眺望は360度。と言いたいところだが、木々が邪魔して北方と西方の一部    が見えない。                                         東は重畳と続く北摂から丹波へ続く山並み。その中に懐かしい剣尾山、深山のレーダー    雨量観測所、大野山、高岳が一望。五月山から箕面の連山も煙っている。視界が良ければ    大阪方面も見えそうだ。南には中山から北摂大峰山と六甲連山、羽束山、有馬富士。西に    三田市街。                                                        眺望を楽しんでいる内に、いつの間にか雲行きが怪しくなってきた。下山にとりかかる    ことにする。                                         登る時にかなりの勾配とは思っていたが、下りる時になってこれほどの勾配とは思わな    かった。木で支えなければ落葉で滑って危ないほどだ。ロープの意味がこれで分かった次    第。                                             さて、にわかに暗くなったと思ったら、ポツポツと雨音。次第に雨の木の葉を叩く音が    高くなる。足下に気をつけつつ下りを急ぐ。                           池に出た所で雨は小止みとなり、再び薄日が射してきた。やれやれ。               さっきの所にくだんのおじいさん。「登ってきなさったかい?」                  徒然にこの辺りの話を伺う。目の前の山には城があったこと。東慶寺が以前焼けたこと。   大舟山にあった大舟寺が東の麓に移って真宗から黄檗宗に改宗したこと。マツタケが採れ    なくなったことなどなど。                                   ひとしきりの話の後で、柿を採っていけという。甘かったのだが、なんとなく遠慮して    しまう。でも色々な情報で満腹でした。                             雨が降った為か、畦のツユクサはその群青を見せ続けるのを惜しむかの如く花を閉じて    いる。畑にはたわわな秋茄子が揺れる。微かな秋を感じた北摂路。               14時半。登山口に戻る。                            
  【タイムチャート】    10:15    自宅発    11:45    十倉登山口(約185m)    11:50    出発    11:59    池    12:21〜25  鞍部    12:50    山頂(三等三角点 653.1m)    13:33    下山    13:54    鞍部    14:30    登山口



  大舟山(大船山)のデータ    【所在地】 兵庫県三田市   【標高】  653.1m(三等三角点)    【備考】  三田市東部、羽束山の北に位置する鋭峰。三上山と同じく古代には、神南        備山で、頂には磐座があったと思われます。        柿本人麻呂の歌に「あまれるひなの長路に漕ぎくれば明石の門より大和島        見ゆ」とあるのは、三田付近が海であった頃、島であった大舟山を詠んだ        ものという伝承もあるようです。         東麓に三田フィールドアスレチックがあり、こちらを起点にする事もでき         ます。アクセスは三田駅前から神姫バスが出ていますが便数が少ないので         注意が必要です。
 
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