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↑ 新緑に包まれた大蛇グラ
← 正木峠付近のトウヒの白骨林 |
平成10年 5月 23日(土)
天候: 晴れ
同行: 単独
毎年この時期になると大台ヶ原へ行ってみたくなる。去年6月1日に西大台を歩いた時
は、駐車場のシャクナゲが咲いていたのだが、今年は何処も花が早い。自宅の苗から育て
たシャクナゲは8年目の今年やっと花をつけたが、開花はなんと4/8。シオカラ谷のシ
ャクナゲはどうだろうか。大蛇グラから緑深き中を豪快に落ちる中の滝も眺めてみたくな
り、今回は三年ぶりの東大台。
例の如く6時出発。7:06、針インター。大滝でR169へ。
1年見ぬ内にR169は大きく変貌、新道が出来て離合ままならぬ場所もなくなり、従
来の秘境へ向かうイメージはもうほとんどない。便利になった反面、何か一抹の寂しさも
感じる。
9時前の大台の駐車場。その手前に早くも車がずらりと路上駐車。今年はえらく出足が
...。と思いつつこちらも空いた所へ駐車する。
準備を終えて駐車場へ向かうと分かりました。明日が「大台ヶ原山まつり」、その準備
で半分駐車場が塞がっているのである。しかも大台荘の売店新築工事もこれに重なったよ
うだ。
大台荘横から早速、日出ヶ岳へ出発。所々に置かれた解説板を眺めながらの林間散策で
ある。その一つがウラジロモミとトウヒについて。ウラジロモミはその名の通り、裏が白
っぽく、葉の先が二つに割れているという。早速摘んだ葉っぱはウラジロモミであった。
途中、立ち枯れのトウヒが目立つ。根元は鹿の食害で綺麗に表皮がない。金網を巻き保
護された樹も多いがなかなか追いつかないようだ。
道が沢を絡みだすと
バイケイソウの群落が現れてくる。
マムシグサは花も終わり。それ
に変わって
シロヤシオがそこここで満開。こんなにもシロヤシオが多かったのか。
あれっ?日出ヶ岳への階段が新しく作られている。ここもサンダルで来れるようになっ
てしまったか。(^_^;
頂上にはコンクリート製の展望台の北側に一等三角点。その奥にシャクナゲの群落があ
るのだが、散った後のめしべのみ。かわりにブナやナナカマドの新緑が綺麗。
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正木嶺から日出ヶ岳、頂上には展望台 | 台高の山並みと日出ヶ岳頂上の一等三角点 |
山頂を一回りして、奈良地方気象台の地域雨量観測所の横から展望台に登る。展望台の
柵に貼られた大峰の眺望図と見比べて展望を楽しむ。
相変わらずの素晴らしい眺め。手前に吉野川の源、三津河落山を始めとする大台の峰。
彼方には大普賢岳、弥山、山上が岳、釈迦が岳等の大峰の山々が青い屏風の如きパノラマ。
北は果てのない波の様に続く台高の山々。更に南は海山町方面のリアス式海岸が淡い墨絵
のように靄でかすみ、その右の正木嶺の新緑と美しいコントラストをなす。
こんな360度の眺めを楽しんでいる内、なんだか小腹が空いてきたのでおにぎりを一
個頬張る。旨い。
ザックを肩に、パイン飴を一粒放り込んだ頃、丁度ワイワイと団体さんが上がってきた。
敬遠させてもらってそろそろ大蛇グラへ向かうとするか。
正木嶺、正木峠、正木が原と続く道は、下草のミヤコザサとイタヤメイゲツ、シロヤシ
オ、ブナなどの落葉樹、トウヒ等の針葉樹の混交林の中の快適な道。所々にあるピンクの
アクセントは
アケボノツツジだ。けものみちを伝って写真を一枚。近くにいた数頭のニホ
ンジカの怪訝そうな眼が印象的だった。
正木が原では鹿の食害で残るトウヒも枯れ、次第に白骨化していく。以前は鬱蒼とした
森だったという。
大台ヶ原はこれで5度目の訪問。そういえば年々荒れていくようだ。始めて訪れた時は
苔ももっと生き生きしていたように思える。
牛石が原では発信器をつけた人慣れした鹿の群。唯の観光地になり果てないよう環境庁
の必死の保護対策が実を結ぶ事を祈るのみ。
尾鷲辻は駐車場へのエスケープルートと尾鷲への踏み跡が交差する。確かここには東屋
があったはず。初めて訪れた時、雹が降り出してきて避難したのを覚えているのだが。
「あら?」無いはずだ。なんと柱が腐食して倒壊してしまっていた。
尾鷲辻から15分程の牛石が原には、神武東征伝説の神武像と、その横に以前は高層湿
原だったであろう御手洗池、そして一本タタラの発祥の地でもある牛石がある。ぬた場に
は鹿の足跡。30年程前はササももっと丈高く、しかし鹿が増えたため現在のようになり、
やがてはそのササの消失も懸念されている。その後は一体どうなるのであろうか?
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餌のササを食べるニホンシカ |
足がすくみそうな大蛇グラの先端に立つ。新緑が滴りそうだ。中の滝、西の滝が指呼の
感。蒸籠グラには点々とアケボノツツジやシロヤシオ。しかも背景は大峰の高みが青く彩
る。何時来ても素晴らしい景観に時間を忘れ暫し陶然。
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大蛇グラからの大峰山脈(山上ヶ岳、弥山、
右は行者還岳)の絶景 手前は竜口尾根 |
大きなミズナラに挨拶し、再び戻って今度は左、シオカラ谷へ向かう。
この辺りが有名な
ツクシシャクナゲの群落地。しかし、矢っ張り花は無し。残念!と思
いきや、
「ンッ?」たった一枝、咲き遅れたハミゴが...。
「シメシメ (^。^) 僕を待っていてくれたのね。」早速撮影モードに切り替える。
シャクナゲ林を抜け、ハルゼミの鳴き声の中、谷へ向かって石ゴロ道を急降下、この辺
もシロヤシオが満開。しかも結構太い樹になるもんだ。直径10cm程のものもある。
水音が近づいてきたらまもなくシオカラ谷。吊り橋手前で河原に降りる。先客の人達が
が三々五々昼食中。失礼して一寸離れた岩に腰を据える。
EPIGASのストーブでカップヌードルとコーヒーの湯を沸かす。そしておにぎり。
緑に囲まれての食事は旨いの一言。ご馳走なんて要りません。
デザートの夏みかんを片付けて、やおらザックを肩に吊り橋へ。その脇に奈良県の立て
札。ここが滝見尾根の起点の様だ。赤テープも巻かれてあり、東の滝の展望台(400m
)迄は行けるようだが、その先が通行止めの為か余り歩かれた形跡はなかった。
吊り橋を越えると今度は急登が待ち受ける。と云うことはシオカラ谷はかなりのV字谷
なんですね。ここは黙々と歩くしかありません。
山の家が見え出す頃、左手に直径1.5mもある大きなミズナラが立っていた。なんと
直径1m程の枝が元から折れており、ぱっくりと空洞が見えている。折れてある程度時間
が経っているようなのに、折れた枝の若葉はまだ萎れておらず、何時折れたか、何故折れ
たか不思議な感じ。
と思っている間に売店横に飛び出した。沢山のバスが駐車。土曜でこれならさぞかし明
日の日曜は...。
売店の300円也の缶ビールを飲み干して、下山は二時過ぎ。まだ早い。上北山村の薬
師の湯の露天風呂でひとっ風呂浴びて帰るか。入の波温泉の山鳩湯か五色湯もいいね。と
思案の末(大した思案じゃなく唯気が向いただけ)結局、伯母が峰の長いトンネルを越え
て、上北山温泉に向かったのであった。
湯上がり一服、四時過ぎ、再び下界へ。
註)上北山温泉については、「いで湯の落とし文の『
上北山温泉〜薬師湯』」の項をご覧
下さい。
【タイムチャート】
06:00 自宅発
08:50 大台ヶ原駐車場
09:36〜10:00 日出ヶ岳山頂(1694.9m 一等三角点)
10:15 正木峠
10:37 正木が原
10:45 尾鷲辻
11:00 牛石が原
11:10〜11:35 大蛇グラ
12:10〜13:20 シオカラ谷
14:00 大台ヶ原駐車場