岡山林道(槻の木グリーンベルト)を辿る

                         平成9年12月13日(土)                            天候: 曇り時々晴れ一時しぐれ                          同行: 単独         
 徒然なるまま、山と高原地図の「西山周辺」を眺めていると、北摂山系から流れ出す芥 川と安威川の間に南の阿武山から続く高みがあり、林道がその尾根を縫っている。岡山林 道である。「槻の木グリーンベルト」なる別称も書かれている。それを指でなぞると地獄 谷峠。その奥に金比羅山の三角点印。金比羅山は四国が有名だが、元来、バラモン教の神 で、ガンジス川のワニであるそうな。転じて海上安全の神となったらしいが、こんな山中 の目立ちそうになく、しかも海からも見えない山が「金比羅山」とはどんないわれがある のだろうか。それに地獄谷峠。                             なんとなく名前に興味をそそられ、近場でもあり、ブラッと日溜まりハイクと洒落て辿 ってみることにした。                                起点の萩谷へ向かう。R171で高槻へ、大畑町で左折。摂津峡、花の湯温泉への分岐 を右に、関西大学高槻キャンパスを左に見て北上する。月見台の新興住宅地を過ぎて山が 迫るに従って、道は蛇行を繰り返し、山懐に抱かれるようにして目指す萩谷の集落はあっ た。                                        萩谷は、東海自然歩道、武士(もののふ)自然歩道などが集まっている集落で、竜王山 からの道、ポンポン山への道が出入りする。昔は銅山があったという。          車は林道奥まで入れる様だが、とりあえず、中萩谷バス停付近の路肩に駐車させてもら う。                                        用意を整えて谷川沿いに車道を北へ向かう。左に阿武野小学校の萩谷分校、高槻市営バ スの終点、萩谷バス停。お宮さんの鳥居、土壁の民家、鶏小屋の匂い。何となく昔を思い 出す風景である。                                   道なりに進んで行くと岡山林道の標識。14トン以上は通行不可。思わず笑ってしまう。 こんな狭い所、14トン車が通れるかい。                       しばらくして、よく手入れされた杉の植林帯を抜けると、舗装が途切れ、いい雰囲気の 地道にかわる。標高が上がるにつれ東側の眺望が開けてきた。ポンポン山のどっしりした  山容がやさしい。南東側には市街地の向こうに、生駒がいつもとは違った方向で横たわる。    再び木々の間に入り雑木と杉桧の植林が交互に現れる中、前方に高槻市が建てた林道の ゲート。左に降る道が分かれている。手作りの案内板が立っている。どうもここが地獄谷 峠らしい。何もないのっぺりした峠である。案内板がなければ見過ごすところだ。     さて、立派な林道を更にトレースしていくと、左手が明るくなり、竜王山の綺麗な姿と 遠くに阪神方面の市街地、そして海の光が見える。野鳥の鳴き交わす声。しばし休憩。   再び林道。教育造林事業地への分岐を過ぎ、林道(原・桧尾谷線)分岐を右に見る。     前方におっちゃん。谷を覗き込んでいる。                     「何かあるんですか?」                              「シシがおるんや。」                               「...。」側に鈍く光る猟銃が...。よく見るとおっちゃんの帽子に日本猟友会の文 字。                                       「10人で囲うとんのや。今、無線で犬離した云うとる。シシがこっち来るから危ない。 早う行き。山に入るのは危ないで。」                         またまた猟に行き当たった。今度はその現場のまっただ中。心穏やかならず、内心ビビ リながらも先を急ぐ。                                100m程行くと、山側に又銃を持ったおっちゃん。                「危ないで、早よ行き。」                              今にもイノシシが出てきそうな雰囲気。                      「ムムッ。これはヤブに入るのはやばそうやなぁ。」                  更に先を急ぐ。                                  と、道が右にカーブし、前方に関電の鉄塔が見えてくるとパァ−と視界が広がった。摂 丹の山々とその山襞に集落が散在する。この前行った湯谷と冬景色の湯谷ヶ岳、その奥に 鴻応山の円錐形の姿が美しい。                          
湯谷ケ岳(左)と鴻応山(右)
湯谷ケ岳の左肩に妙見山が覗く
 しばし見とれていると、「ほーいっ。」静寂を破る大きな人声。と同時にガサガサと音 がしたと思いきや、鉄塔下から犬が現れた。その犬が消えたと思ったその瞬間、     「バーンッ」  そして続け様に遠く近くで5,6発の銃声。あの犬は猟犬だったのか。        「ほーいっ」のかけ声はまだ続く。                          また銃声。                                   「こらほんまにヤバイぞ。手負いのイノシシ怖いやろな。」               北から雨雲、小雨も降り出したからヤブを歩く気力も消え失せて、もう一つの目的、金 比羅山へは、登り口らしきものを確認するだけになってしまった。           「トホホ...。」 (^^;                             「しかし、戻って大丈夫かなぁ?、迂回するとしたら車のデポ地迄遠いしなぁ。」     とつおいつ考えを巡らしながら、結局ハンターの声が遠ざかるのを待って引き返す事に する。                                         おっかなびっくり、枯れ葉の音にもびくつきながらさっきの所まで戻ると、くだんのお っちゃんが立っていた。                              「惜しかった。でかい奴やった。林道横切ってあの崖、駆け上がりよったわ。」      なんでも大小3頭がハンターの包囲網から脱出したらしい。銃もホルダーに仕舞われて おり、一安心、と思ったら急に空腹感。しかし、雨がアラレに変わったようだ。同時に寒 さも増したようで、とりあえず先を急ぐ。                       地獄谷峠を過ぎ、ようやく雨も上がった。いつもの如くおにぎり、デザートはみかん。 コーヒーを湧かしてやっとの事で人心地。                       さて、再び萩谷。お宮さんに向かう。諏訪神社。折しも、地元の方が御神塔の火袋の張 替えの真っ最中。正月準備のようだ。その上は真宗寺院の西方寺。無住寺らしいが、地元 の方々の手入れが行き届いている。狭い寺への参道の両側には南天の木が続く。いっぱい 成った深紅の実が美しい。                            
西方寺への小径沿いの南天の実
 初冬の雨上がりのしっとりした山里風景の中、焚き火の白い煙がゆっくり立ち昇って行 ったのが印象的であった。                              
     【タイムチャート】       10:10     自宅発       11:10     萩谷(約235m       11:40     地獄谷峠(440m)       12:02     教育造林事業地分岐       12:25     林道 原・桧尾谷線分岐       12:35     府民参加の森造成看板       12:40     高圧鉄塔       13:45     地獄谷峠       14:00〜14:20  食事       14:50〜15:10  萩谷散策       15:15     駐車地

  岡山林道(槻の木グリーンベルト)のデータ

   【所在地】 大阪府高槻市
    【標高】  約300〜500m
   【備考】  正式には林道萩谷・岡山線で、全長ほぼ9.9km、高槻市萩谷か
         ら樫田まで続く林道ですが、尾根を縫っており、東西両サイドの展
         望が楽しめ、日溜まりハイクにも、マウンテンバイクでの走行にも
         最適です。しかし、猟期は本文にあるように要注意です。
         交通機関は南からは高槻市バスで萩谷、北からは同じく樫田から入
         るのが便利です。

       関連情報 「思わぬ吹雪〜北摂こんぴら山」 を見る
         
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