薫風そよぐ多紀アルプス〜西ヶ嶽

西の覗から西ヶ嶽を望む

                          平成11年 5月23日(日)                           天候:うす曇り                                  同行:単独         
 篠山市街の北側に屏風のように立ちはだかる多紀アルプス。その主峰三嶽には、以前、 オオタワからお手軽山行した事がある。でも一度は下から正当派?登山を敢行しなければ なるまいと思っていたのだが、今回は未踏の西ヶ嶽から稜線伝いに三嶽へが狙い。距離的 には短いアプローチなのだが、その分傾斜は厳しく、しかもとんだアクシデントに見舞わ れた山行に相成ろうとは...。←ちと大袈裟(^^);;                  R173から藤阪に入り、本郷の交差点を西へ鼓峠を越える。暫くすると起点の栗柄奥 そして栗柄口。その登山口の標識前に20名程の団体さんが集まっている。ほほう。さっ きの神姫バスから降りて今から登るんやな。賑やかになりそうや。            さて、駐車は何処にしようか?んっ?いいとこがあった。宮田川の横の田圃の中に排水 処理施設があって、3台程度の駐車スペースがある。しめしめ。             5分で準備を整え、標識に従って茅葺き農家の庭先を通して貰って茶畑を抜ける。おり しも団体さんも出発、そのお尻に付いていく格好となった。               谷の右岸沿いに南に向かうのだが、柿の木などから昔は民家があったであろう雰囲気の 所からすぐに杉の植林帯に入る。木に似せたコンクリの丸太で階段が作られている。谷な  ので風もなく、早くも息切れ、汗が噴き出す。予想外にきつい登りなのか体力がないのか。 道端でマムシグサが鎌首をもたげている。                       沢を詰めると道は直登気味に一気に高度を稼ぎだす。欅の木の下にフタリシズカらしい 白い穂を見つける。汗が眼鏡を伝う。                         まだかまだかと喘ぐとやがて三岳←→矢代という道標が立つ鞍部。やっと尾根筋だ。で も矢代って「ユニトピア篠山」の向こうではないか?ヤブの様だし、かなり健脚向きのコ ースとお見受けした。                                ここまで来ると周囲は雑木林に変わり、新緑のプロムナード。所々にミツバツツジの紫 がアクセント。やや平坦になったお蔭で廻りを愛でる余裕も出てきた。 (^_-)       再び現れた急傾斜を乗り越え、木々が途切れたと見るや、目の前に露岩が現れ中年男女 のトリオが休憩中。                                「ここ頂上ですかねぇ?」と聞くので「違うでしょう。向こうの方が高みになってるし、 山名板も無いですもの」と小生。しかしここの展望は抜群。西の鋸山、三尾山などの西多 紀アルプスが直線状に波打つのが良く分かる。暫し休憩、カラカラの喉にお茶で水分補給 とザックを開けて愕然!                               無い!お茶のペットボトルが...。ガビーンッ (@o@)→(T_T)           ということは、持参した水はカップ麺とコーヒー用にと持参した500ccほどしかな いことになる。自分のドジさ加減が情けない。仕方無い。ここは二口程度で我慢。     このショックが尾を引いたのか、山頂へ至る道でタオルを落すやら、今仕舞ったばかし のコンパスを何処に入れたか捜すやらで、暫くはてんやわんやでありました。       藤岡からの登山道(合流点付近は一寸荒れ気味に見えた)出合を過ぎるとやがて山頂で ある。さっきのトリオとまたしても合流。お互い記念撮影と相成った。          さて、楽しみの昼食。が、カップ麺は作るわけに行かず、お結びだけの淋しさ。意地で 食後のコーヒーだけは沸かしました。                         岩が埋まる南北に狭い頂上からは、さっきの展望岩に劣らぬなかなかの好展望が得られ る。東に見える三嶽が特に雄大。更に南側も見渡せ、篠山市街から八上山が確認できる。 視界が良ければ北摂の見なれた山も望めように、如何せん靄がかかっている。     
西ヶ嶽山頂から眺めた三嶽の雄大な姿
 と、北東側の山腹に動くもの発見。どうも人間らしい。ということはあの辺りが「覗」 かな?険しいところやな、えらいとこ歩いてるな、と妙に感心。             食事道具を片付けている間に、あの西宮の団体さんが到着したので、狭い山頂、場所を 譲る事にして東へ出発。でもその前に呼び止められて記念写真を撮らされる羽目に。(^^;  ところで三嶽へはえらいヤブ道である。踏み跡は比較的しっかりしているのだが、背丈 ほどのクマザサが左右から覆い被さり、足元が見にくい。雨上がりの時なぞ全く御免蒙り たいところ。テープも所々にあり、忠実に尾根をトレースすればいいとは云うものの、単 独の時は一寸不安にもなるところだ。そんな中に町界石標が隠れている。旧西紀町の「シ ャクナゲを大事に」との壊れた看板まで埋もれていた。木の根に躓いたりしながら幾度か のアップダウンをなんとか前進。                           そんな折、前方から声が聞こえてきた。ちらちらと人の姿も。先行した男女トリオに追 いついたようだ。                                 「すごいヤブですねぇ」と声をかける。「ほんとに」とおねえさん。           パッとヤブから飛び出すと小さな峠。西ヶ嶽と三嶽の丁度中間地点で、愛染窟から栗柄 奥への分岐がある。中年カップルが汗を拭いておられたので伺ってみると、栗柄奥から登 ってこられたとのこと。鎖場が随所にあって傾斜がきついが、しっかりした道があるそう だ。水も残り200ccを切っている。残念だがここから下ることに決める。そうこうし ている内に例の団体さんも到着、小さな峠は満員御礼。挨拶して北向きに降る。      雑木の中を急降下するとすぐにテラス状の岩、展望申し分なし。栗柄の集落が一望、足 下は切れ落ちた崖で、その下は緑を深めだした木々の樹冠で覆われている。所々に露岩が 白い。背筋が冷えてくるのが分かる。それにしても多紀アルプス、総じて北側は急峻であ る。                                        ここが「西の覗」かと思っていたが、馬の背状の部分を進むと 立ちはだかった岩に「 西の覗」の看板が出ており、中年の御夫婦が休憩中。覗かして貰うが迫力はさっきの岩の  方が凄みがある。しかし、こちらは南面しており、三嶽、西ヶ嶽の峻険な姿が眺められる。 (※註 ここで三岳ロッジへの踏み跡が分岐していますがかなりのヤブのようです)  
展望岩から急峻な西の覗。遥か下には県道が...
 650mピーク(ろくや嶽)を登り返すと再び踏み跡は一気に急降下する。鎖場が出て きた。木の枝を掴むが、慎重に足元も確かめる。                    やがて杉の植林帯に入ると、白いガクウツギが薄暗い中に浮いているのが印象的。滲み 出した水でじくじくした箇所を越えると愛染窟の標識が目の前。苔の生えた壊れたベンチ が三つ。窟は高さ4m、奥行き3m程の岩屋で水の滴が反響する中に暗くて判然としない が愛染明王の石像か何かが祀られていた。                       愛染窟から下っていくとやがて細流が現れ、丸木橋を渡るとまもなく左にログハウスが 現れた。近くにロッジ風の建物も有り別荘地かなにかのようだ。タニウツギやノアザミの 咲く道も、舗装路に変わってすぐに栗柄の集落に到着である。              このまま県道へ出ても面白くないので、集落内の村道をぶらつく。小さな鳥居があって 八柱神社。境内では何かの寄り合いがあるようだ、談笑が聞こえる。             そこから暫く行くと酒屋。慶佐次さんの「兵庫丹波の山」の西ヶ嶽の項に書かれていた 酒屋はきっとここだろう。その向いに流しがあって水が溜めてある。三嶽から流れてくる のだと、酒屋の親父さんが教えてくれる。自販機で淡麗生を購入、栗柄奥のバス停横のベ ンチで、例によってプシューッ。今日は喉が渇いているから一際旨いねぇ! (^_^)/    ところで、この栗柄奥からのコースは「甘辛しゃんコース」と命名されているらしい。 愛染窟もTVに出てきたそうな。ふ〜ん。                       ここからは県道沿いに元小学校の校舎を工場にしている所などを見学しつつ栗柄峠から の道との交差点に到る。そこに谷中分水界の看板があったので読んでみると、なんでも宮 田川と杉ヶ谷川がほんの100m程度で並流しているのに、かたや日本海、かたや瀬戸内 海と流れ込むのだそうである。また、東の鼓峠も西は瀬戸内海、東は日本海に流れる分水 界とのことで、珍しい地形なのだそうである。それに誘われた訳でもないが、倶利伽羅滝 を見物に行く。                                   観音堂から左に折れて行くと杉ヶ谷川の小渓谷が現れた。そこの高さ4m程の水行用の 滝がそれらしく、注連縄がかけてある。自然の滝を想像すると少し期待はずれ。      山裾に「蛇の枕」とかいうものもあったので見てみると直径1m程の饅頭様の石であっ た。いずれ何かいわれがあるのだろうが詳細は不明。                  こんな道草を喰いながら、心地よい疲れの余韻を楽しんで駐車地の栗柄口へ戻ったのは 3時過ぎであった。                                   久しぶりに訪れた多紀アルプス。麓にはムラサキツメクサやレンゲが咲く中に、早くも 作付けされた早苗が薫風にそよぐ、長閑な丹波の里の風景がありました。       
    【タイムチャート】       9:15     自宅発      11:05〜11:10  栗柄集落排水処理場横(駐車地)(約260m)      11:48     道標(矢代−三嶽)      11:55〜12:00  展望岩(Ca700m)      12:10     藤岡コース出合      12:22〜13:00  西ヶ嶽(727m)      13:20〜13:25  栗柄コース分岐      13:28     展望岩      13:35〜13:40  西の覗      13:55〜14:00  愛染窟      14:22     愛染窟・三嶽コース登山口案内板      14:30     栗柄奥バス停      15:10     駐車地


     西ヶ嶽のデータ

   【所在地】 兵庫県篠山市
   【標高】  727m
   【備考】  修験の山、東多紀アルプス三山の一つで、主峰三嶽の西
         に位置します。以前は余り歩かれていなかったようです
         が、栗柄口からのコースが整備され登る人も増えたとの
         事です。但し、西ヶ嶽から西の覗への分岐迄は、踏み跡
         は割合はっきりしているもののブッシュです。
         多紀アルプスへは篠山口からバス便がありますが、本数
         が少なくマイカーが便利です。      
   【参考】  二万五千図 『宮田』

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