倒木累々竜王山

                          平成10年11月23日(日)                           天候: 晴れ                                   同行: 単独        
   穏やかに晴れ上がった勤労感謝の日、かみさんはトールペイントで家にいないとか..。  で、こちらはのんびり日溜まりハイクと洒落こむことにした。でも能勢近辺は猟期に入り、 少々危ないしなぁ。幸いラジオの道路情報では高速道路は順調らしい。そこで一寸遠出を して奈良の竜王山。                                 ゆっくり10時の出発。順調に西名阪道天理で降りてR168を南へ。風もあまりなく 大和盆地には霞がかかっている。三輪山はうすぎぬを纏っているようだ。         天理の市街地を越えて暫く行くと長岳寺の案内板。標識通り左折する。カラー舗装で立 派な道にビックリする。10年ほど前に訪れた時は農道みたいだったのだが...。     長岳寺の駐車場に車を駐めさせてもらい、支度をして寺へ。今日はズボラして地図なし。  そこで受付で志納料3百円也を支払って、竜王山への道を聞くことにした。         受付のおばさんから民家の横を右手へと聞いたが、不得要領。とりあえずもっとも近い 道を曲がると農家の庭先に出てしまった。ご主人がたまたまおられたので軒先を通らせて もらう。柿畑の横の農道に飛び出した。                        「竜王山探勝線歩道」という奈良県と環境庁の道標がある。左は柿畑、右は林。畦に名 もない石仏。                                    山裾に取り付くと道は狭まりすぐに二股に分かれる。何となく右の方が太いのでそちら へ行きそうになるが、ここは真っ直ぐ左の笹の茂った道をとる。             暫くすると、石仏が現れた。もともと長岳寺の奥の院の参道だったのだろうか。町石の 替わりに置かれているのかも知れない。その横には「竜王山城跡」へと示す新しい道標。
登山口横の草むらに坐る石仏
 結構広いが日の当たらぬ道は、時々丸木の階段が現れる。今一風情がない感じがするの は、ずっと杉檜の植林帯だからだろうか。しかもあちこちで、この間の台風7号の為に吹 き倒されており、或る所では登山道に天井のように覆い被さっている始末。台風直後は全  く歩けなかったことだろうが、幸い障害部分は切断されてあり通行には支障なし。しかし、 風がまともに当たるところではクヌギ迄もがぽっきりと折れているのには驚いた。     葛籠折れや小尾根の上などを通り過ぎ、右に折れると石のお不動さんが鎮座。ガイドに ある石不動はこれかいな。柿の赤い実が一個供えてある。ここで一服。相変わらず展望は なし。                                       ようやく植林の間から垣間見える周囲の山並みも低くなって、下界の家並みもわずかに 眺められるようになってきた。前方に再び道標、右にそま道があり、長岳寺奥の院分岐と ある。帰りに寄ってみることにするかな。                       また丸木の階段が現れた。これが延々と続く。一つ一つは低いのだが、数百段位あろう か、それがやっと終わったと思いきや、周囲を見回してまた驚き。なんだかビックリハウ スに入ったような錯覚に陥ってしまったのだ。というのは杉という杉が全て山側に傾いで いるのである。これは相当な被害であろう。                      ようやく前方が明るくなる。林道出合だ。ここには立派なトイレと案内板が設置されて いる。それによると、城は南と北に分かれていて、土地の豪族十市遠忠が整備したが、そ の子の遠勝の時代に、松永弾正に水の手を止められ落城したとある。その怨念か火の玉が 出る等の伝説も二三書かれてあって面白い。                      さて、ご多分に漏れずここも倒木だらけ。ふと見ると道標にハイキングコースは倒木の 為通行禁止との天理市のビラ。下にも張らないとねぇ。でも下になかったから今日はここ まで来れたのだ。天理市の粋なはからい?に感謝、感謝。  (^^ゞ          
台風による杉の倒木(林道出合付近)
 田竜王社の横を過ぎ、林道終点にある案内板横をヘアピンして登ると周囲は雑木林に変 わり、徐々に周囲が見渡せるようになる。広くなったところには城の建物の礎石らしきも のも埋まっており、そこを越え一登りすると山頂であった。               台地にポツンと二等三角点。なぜか木で作ったアスレチック風の遊具が一つ。その周囲 には木のベンチが取り囲んでいる。そこで先着の一組の中年夫婦の方がラーメン作りに精 を出しておられました。                                空いたベンチで今日は手製のおにぎりをパクつく。下では風がなかったのに、やはり山。 風が強い。気温は11℃だが、体感温度はそれ以下。早速コーヒーを湧かし、紙コップを 手で包みつつ味わう。うーん生き返るなぁ。                      ところで、お目当ての眺めの方。噂に違わぬ素晴らしいものがある。今までの登山道の 彩りがもう一つであったのを差し引いてお釣りが来る程。特に西は大和盆地が広がり、大 小の古墳、古社の杜と家並みが手に取るようだ。遠くには生駒連山、二上、葛城、金剛と 連なる。南に三輪山(やっぱり台風で荒れているようだ)、一際大きい音羽山、東に貝が 平山、北には大和高原が広がる。流石、山城を築くだけあるわい。            南城を降りて再び林道出合。北城には本丸があったそうで林道づたいに馬池まで行った ものの台風で荒れており、植林帯で風情もないようなので早々に戻り、林道出合から道標 に従い、今度は奥の院から柳本方面に降りることにする。                   丸木の階段で急降下。その内にまたまたビックリハウスに入ったような錯覚に陥る。今 度はもっと酷い。倒木累々、まともな木は数えるほどだ。途中で通行止めになっていたら なんとしょう。                                   案の定、奥の院分岐には奥の院方向通行止めのビラ。見れば幾重にも倒木が重なり進む 気にもならぬ。風に木のこすれ合う音がギーッ、ギーッ。今にも倒れはせぬかと不気味だ。 思わず身震い、諦めて柳本へ急ぐことにする。                      結局、こちらの道は最後まで植林帯。通行止めに対する不安は山仕事の軽四輪を見る迄 納まらなかった。                                  右と左の沢が大きくなると道は林道と合流して広くなり、だらだら下っていくに従い、 植林が途切れて里山風景に変わってゆく。沢は谷になり、程なく不動の滝なる木札が懸か  った赤い鳥居に行き着いた。見れば一軒の家の奥に小滝がある。竜王山というだけあって、 北摂の竜王山と一緒でここで滝に打たれるようだ。                   民家が見えてくると下からの道と合流する。東海自然歩道である。崇神天皇陵、櫛山古 墳。多くのハイカーにレンタサイクル。先程の山中とは一変、賑やかだ。         長岳寺手前に新しいハイキング案内板があったので確認する。行きに使ったのが長岳寺 ルート、帰りに使ったのが崇神ルートと初めて知る。暢気なもんです。(^^;        長岳寺では折良く狩野山楽筆の大地獄絵の公開中。受付のおばさんに昼前の件を断って 入山見学。本堂前の楓は紅葉真っ盛りでありました。                  そうこうするうちに、早くも二上方面に日は傾く。うすい茜色の淡い日を受けた取り置 きの柿が艶やか。農家の藁を焼く煙がたなびく空を、カラスが二羽三羽と山に帰るところ へ長岳寺の鐘の音が響く。のどかな大和路。                     「柿喰えば鐘が鳴るなり法隆寺...いや長岳寺」                 
     【タイムテーブル】      10:00     自宅発      11:30     長岳寺(駐車地)(約80m)      11:50     石仏と道標(長岳寺ルート)      12:15     石不動      12:19     長岳寺奥の院分岐      12:40     林道出合      12:52〜13:35  竜王山山頂(585.7m 二等三角点)      14:05     林道出合(崇神ルート)      14:10     柳本・長岳寺奥の院分岐      14:40     不動の滝      14:55     長岳寺(駐車地)


    竜王山のデータ

    【所在地】 奈良県天理市 
    【標高】  585.7m(二等三角点)
    【備考】  奈良盆地の東にたたなづく若草山、春日山、巻向山、三
          輪山とともに大和高原を形成する山です。麓を古代の官
          道、山の辺の道が通っており、また、山上には中世の頃
          から土豪十市氏の山城がありましたが、戦国期の156
          8年、松永久秀に攻められ落城し破却されたということ
          です。
          西麓の古刹、釜の口大師長岳寺は、春のツツジとそうめ
          んが有名です。
          交通は近鉄大阪線桜井駅から奈良交通バスで上長岡下車。


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