落ち葉サクサク、晩秋の明神平

                           平成10年11月15日(日)                            天候: 晴れ                                    同行: 単独        
  関西ハイキングにも取り上げられ、インターネットでも何かと話題に登る明神平。行こ  う行こうと思いつつ、なぜか今まで訪れる機会に恵まれなかったのだが、快晴の14日、  先週購入したJ.Wolfskinの29リッターのザックの使用初めを兼ねて、念願の扉を叩き  に行ってきました。                                  午前7時過ぎ出発。いつものように、西名阪針インターから菟田野町でR166に。天  誅組終焉の地、鷲家で大又方面に右折する。以前、やはた温泉に訪れた道だが、こんな狭  かったかな。でも、やはた温泉の駐車場は前より広くなっていました。           大又川渓谷にへばりついた大又の集落を抜け、川沿いに林道は延びる。杉の植林帯を過  ぎると山肌は雑木となり、錦織りなすの表現がぴったり。黄色や紅に彩られた林道歩きも  良かろうと、路肩が若干広くなった所へ駐車させてもらう。                 ひんやりとした清冽な空気。渓谷の瀬音だけが響く。家を出るまではおっくうなのだが、  この静寂に浸ると、来て良かったの満足感にまた出かけたくなってしまうのだ。麻薬みた  いなもんです。 (^^;;                              クラマエ橋を渡って暫く行くと、右に碑が立っている。前を行く賑やかな4人ずれのお  ばちゃんハイカー                                  「いややわー。」とのたまわっている。                         雪の薊岳で遭難した若者の慰霊碑のようだ。今更ながら自然の怖さを思う。近くには季  節遅れのツリフネソウが手向けの花のように咲いていた。                 登山口に着く。案内地図の横に東吉野村が立てた立入禁止の看板があるが、目をつむっ  て入山。                                       暫く行くと大又川の対岸に杉の倒木が折り重なっている光景が目に入る。表面の土壌は  薄くその上、杉の根は浅い。しかも風の通り道の谷筋と条件が揃っている。何十本の幹が  累々。                                        アベック滝を眼下に見る。凄みを感じるほど青い淵。鉄橋を渡ってヨコグラ谷を過ぎる  と前方にあまたの倒木が立ちふさがる。否、寝ふさがる。                 紀伊ハンターさんの情報でかなりひどい姿とは聞いていたが、聞きしにまさる惨憺たる  ものである。馬酔木山荘は倒木に完全包囲されている状態。トタンの庇が曲がっている。  よく直撃されなかったものだ。従って登山道はずたずた、元の道を捜しつつ、一抱えもあ  る倒木を乗り越えたり、潜ったり。まるでフィールドアスレチック状態。どっちへ行った  らいいのやら迷うことしきり。以前の登山道と思しき付近には、倒木に赤テープが巻いて  あるものの、初訪問者には分かりづらいものがある。遥か上に人影、           「こっちは駄目!、そっち行けますかぁ?」と問いの声が降ってくる。           「テープありますよー。」と小生。それに従ったつもりで木の根に掴まりよじ登っていく。   しかし、どっちへ進むべきなのか次のテープを捜すがみつからん。撤退の二文字がふい  に頭をよぎる。おまけにカメラのキャップまで落としてしまい、ついとらんと思っている  と、沢伝いに下山してくる人の姿が...。何処を通るのかと思えばそのまま下を通過す  る気配。                                      「こら、間違うたわい。そやけどラッキー。」と滑る足元に注意して慎重に引き返す。    その方と挨拶を交わし、ついでに状況ヒアリング。撮影に来られたというその方曰く、  「ここは酷いけど、明神滝付近の登りがきつい以外は傾斜も楽になるよ。」        この言葉に励まされアスレチック再開である。                      悪戦苦闘の倒木帯をほうほうの体で抜けた所がキワダサコの谷で天高ルートの起点。こ  れをやり過ごし、沢を渡って岩伝いに明神谷を遡る。                    ここでもまた道を誤る。テープはあるのだが、水害でやられた旧道らしくザレ場である。  ここは新道がすぐ上を通っておりすぐに復帰出来たが、我ながら不注意の極み。       新道に出てみると、先程追い抜いた男女の方とばったり。               「これ落としませんでしたか?」とカメラのキャップを取り出された。          礼を言いつつ有り難く受け取る。                            山肌は傾斜を増し、道はジグザグにスイッチバックを繰り返す。その内に明神滝が見え  てきた。20m程のなかなかの名瀑ではないか。                     何度目かの沢を横切り、桟道、丸太の橋を渡る。振り返れば明神谷が眼下、例の倒木現  場が痛々しいが、国見山、薊岳も姿を現してきた。道は落ち葉が重なるパノラマ道。気が  つくと木々はいつの間にか1枚の葉っぱもない裸木に変わっている。ヒメシャラの赤肌に  ブナ、苔むした倒木。三抱えもあるヒメシャラの大木が根毎ひっくり返っている。キツツ  キの開けたと思しき丸い穴もある。                           小さな沢を過ぎてしばらくするとふいに明神平の標識。最後の一登り、パァーと目の前  が開ける。あずまやがある。よっこらしょ。やおら、台に腰をおろし水分を補給する。    これが明神平か。丈の低い草とヒメザサの広場。テントも3張りほどある。周囲はブナ  の自然林。北には水無山の伸びやかな山容。その斜面をグループが降りてくるのがよく見  える。南には三つ塚と前山。西に薊岳の特徴のあるピーク。青空と相まって、すがすがし  い気分に浸る。                                    だが、今日の計画ではここはまだ途中。国見山まで行くつもりだったのだが、倒木潜り   に思わぬエネルギーを消費してしまったようだ。一旦腰を据えるとおっくうになってきた。  今日は明神岳迄でにしておこうと例の安直がまた顔を出す。 (^^ゝ             でもその前に腹ごしらえ。天理大学の山小屋横に場所をとる。       1時間の大休止後、スキー場の跡地という草っ原を南へ向かう。所々に鹿の糞。登るに  つれ国見山とウシログラが顔を出す。                          老杉が数本生えた岩場が明神岩。明神平の由来となった穂高明神が祀られていたのだろ  うか。が、今は何もない。                               ひとしきり登り切って東西に延びる尾根に達したところが三ツ塚(1408m)。 薊岳、明  神岳、明神平への三叉路である。ここを左へ折れる。                   大きなトウヒが根こそぎ倒れている。あとはブナ林。右側が崖なので一寸注意はいるも  のの、尾根上の素晴らしいプロムナード。愉しむ内にあっと言う間に明神岳に到着。     飯高山岳会、紀州わらじ会等の山名板がぶら下がるが、なければ見過ごしてしまう只の  尾根上のコブだ。しかし10m程行くと、標高点らしきものが埋まっている。何か刻んで  あるが判然としなかった。                               眺望は南西側のみだが、木々が葉を落としている為、意外といい。大台方面や遠く大峰  と思しき山塊もけぶっているようだ。もやっていなければ重畳と続く台高の山並みできっ  と素晴らしい事だろう。                                気づかぬ内に、風が出てきた様だ。時折ごうごうと木々の枝を鳴らす。気温は手元の温  度計で15℃。                                    午後2時前、明神平に戻る。先程は10数人はいたハイカーも、今は2,3人。テント  もなくなっている。小生も下山開始。                          再びパノラマ道を愉しむことにする。薄暗い植林帯と違って、やっぱり自然林は最高。  その中の葛籠折れの道は落ち葉の絨毯。サクサクと心地よい音がする。さぞかし春は若葉  と花々で美しいことだろう。                              川の水量が増してくると登山口も近い。駐車の車も半分ほどに減っている。         再びブラブラと充実感に浸りながらの林道歩き。今年は全国的に色づきが悪いそうだが、  ここはなかなかのもの、西日を受けた黄葉、紅葉が輝いている。それが風に吹かれてひら  ひらと清い川面に舞い落ちる姿も美しい。名残を惜しみつつ後にする。          今度はブナの芽出しの季節に再訪を期したい明神平である。            
     【タイムテーブル】      7:10     自宅発       9:40     大又林道途中(駐車地)      10:10     林道終点(登山口)(約770m)      10:21     ヨコグラ谷      10:32     馬酔木山荘      11:05     キワダサコ谷      11:15     明神谷      11:55〜13:00  明神平(1323m)      13:13     三ツ塚分岐(1408m)      13:25     明神岳(1432m)      13:55     明神平      14:29     キワダサコ谷      14:45     馬酔木山荘      15:00     林道終点(登山口)(約770m)      15:25     大又林道途中(駐車地) 



    明神岳のデータ

    【所在地】 三重県飯南郡飯高町
    【標高】  1432m
    【備考】  台高山脈の北部の奈良県と三重県にまたがる山です。
          余り目立たず、登山道の途中のコブのようで、山名板が
          なければ見過ごすほどです。
          北麓の明神平はブナ林を伐採して作られたスキー場の跡
          地で、水無山、前山、明神岳の鞍部にあたり、天理大学
          の山荘と、東吉野村が建てたあずまやがあります。周囲
          はブナの天然林で、若葉と紅葉の季節、また冬の霧氷も
          その美しさに定評が有るそうです。
          登山道は所々ザレ場や狭い崖道があるので少々注意が必
          要です。
          尚、大又近くの大豆生(まめお)には、村営やわた温泉
          があります。
          交通は近鉄榛原駅から奈良交通バスで大又下車です。

                   晩秋の明神平の写真集を見る

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