早春の多紀アルプス〜三嶽、小金ヶ嶽


    今日は去年、草山温泉への途上、後日訪れようと思っていた多紀アルプスへ向かうことに
   する。峠まで車で行ける事を確かめてあるので、ゆっくり、10:44家を出る。
 
    草山行きと同様、R173で北上し西紀への分岐を左折、多紀アルプスの北から大撓(本
   来は山扁に定と書くのだが、撓の当て字らしいので、PCの辞書にも無いことだしこの字を
   使う。)へ向かう。途中、山菜採りの人が路肩に車を停めている。そう言えば、そろそろ土
   筆の季節だ。山の木々も芽を膨らませている。
    大撓へは葛籠おれの道、高度を上げるに従って山肌のみならず路肩にも雪が残る。まもな
   く視界に入ってきた三嶽の山腹も、日の射さない北側は所々まとまった雪がまだらに残って
   いる。そうこうするうち、予報では晴れなのに灰色の雲が空を覆い、時雨模様となってきた。

    大丈夫かいなと不安が頭をよぎる。この予感が皮肉にも後に的中することになる。
 
    大タワの駐車場に車を置く。まず、大きく山容を見せている多紀アルプスの盟主、三嶽に
   向かうこととする。

大タワから三嶽を仰ぐ
    踏みならされた明瞭な登山道である。両側は熊笹、冬は良いけど夏は大変かなぁ。早くも    大野山方向が垣間見える。と思うまもなく丸太の階段である。これが非常な急登、あっと云    う間に高度が稼げるが、その分心臓は踊り出す。横には掴まる為のロープまである。熊笹に    残雪、スリップに注意する。振り返ると、「おっ。」小金ヶ岳がその全容を現している。結    構険しそうな姿に、修験道の山であったことを思い出す。      
三嶽稜線からの小金ヶ嶽
    ところで、小休止の間隔が次第に短くなってきた。運動不足をまたまた痛感する。       小さな岩場を抜けると径がやや平坦となって、リョウブ、ミツバツツジ、ヤマツゲなど、    木々も目に入り出し頂上もまもなくだろうと独り合点するが、これがすぐ失望にかわる。次    のこぶを見てがっくり。     これを繰り返すこと数回の後、やっと前方に岩室。左から火打岩(ひうちわん)からの登    山道と合流する。下には避難小屋もある。又帰りによる事として、とりあえず山頂へ向かう。       30m程で西紀町の通信施設が見えてきた。直径1.5m程のコンクリート製の方位盤が    あり、腰掛ける事もできる。その横に一等三角点がひっそりと埋め込まれていた。岩室の所    より眺望は良くないようだ。木の間隠れに南と北方向が眺められるのみ。       誰もいない山頂で昼食とする。野外で食べる握り飯は何物よりも旨いことを実感。       一服後、撮影モードに入る。一等三角点を写した後、戻って岩室横の岩場から北方向、南    方向の山の同定をする。時折の時雨に視界は良くない。草山温泉近辺とその奥の名も知らぬ    山並みが見えるだけ。南は、篠山の市街の向こうに大野山、弥十郎ヶ岳、遠くに大船山の鋭    鋒、能勢の山並みが一望できる。あの山がこの前訪れた高城山かなぁ。深山の雨量観測施設    はと探すが、視界のせいかよくわからない。       一時間程うろうろ、岩室の中も見てみる。ガイドブックには不動明王とあるが、よく見れ    ば役の行者である。大峰での修行の前はここで修行したそうだが、葛城山もそうだと言うし、    忙しい人だったようだ。       下りは心臓に負担がかからぬものの、その分、膝にこたえる。小金ヶ岳を遠望しながら大    撓へ戻る。       小休止の後、地蔵堂前を鬱蒼とした杉の植林帯へ入る。枯れた沢沿いに進む。10分程で    雑木の林に変わる。木々に銘板がぶら下げられている。ほおじろと思しき小鳥が案内を勤め    るように前を行く。カメラを構えると逃げてしまった。三嶽と同じ急な階段が現れる。流石    に足は重い。しかし後ろには三嶽の大きな姿。三角形が美しい。       やっとのことでそこを乗り越えると前方に岩場が見えてきた。ここからが、本にあった「    蟻の戸渡り」か。径はその岩の北側を巻いている。大したことはないじゃないかと思ったの    が、大間違いだった。徐々に径は岩場を這うように上り下り、曲がる。前方に下山する二人    のパーティが岩に張り付いている。「あんな所行くのか」と不安がよぎる。       岩場をよじ登り、岩を巻き、残りおよそ300m、高低差50m程迄のところで、雨がポ    ツポツ落ちてきた。岩場の頂上から北を覗くと、足がすくむ。大台の大蛇グラのミニチュア    版の様だ。風も出てきた。このまま雨が強くなれば危険が増す。残念だがここで断念するこ    とにした。       少し戻った岩場のややひろいところで振り返ると、「北壁」と銘板が崖にぶら下がってい    た。どうもすっきりとしない、初の敗退を味わった一日であった。                                 平成9年3月9日(日)   
   三嶽のデータ    【所在地】兵庫県多紀郡篠山町    【標高】 793m    【備考】 篠山盆地の北側に位置する多紀アルプスの主峰。昔は修験道の山だった。         東の小金が嶽と西の西ヶ嶽とを縦走できる。多紀アルプスはニフティの         山のフォーラムでも話題に上るそうです。北側の西紀町の草山には観音         湯という温泉があり、露天風呂もあります。湯は有馬と似て鉄分が多い         様です。   
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