平成11年 6月13日(日)
天候:うす曇り
同行:単独
梅雨入りしたもののいい天気が続いている。この週末も天気が持ちそうだという。テン
ションの方も久方ぶりに高まってきた。さて何処へ繰り出す?奈良方面へでも足を運んで
みようか。毎年行く大台ヶ原はどうだろう?でも今日は混んでいそうな予感。しかも名う
ての多雨地帯。予報も梅雨前線に近いほど天気悪しと云っていたっけ。それならと、同じ
台高でも北部の明神平を再訪してみることにする。帰りに温泉も入れるしねえ。(^^)/
前夜は阪神のサヨナラ勝ち。気分良く6時半前に家を出る。
渋滞もなく順調に西名阪針インター、菟田野経由で鷲家から県道に入る。鮎釣り客の車
点在するも、やはた温泉には人影無し。更に進んで四郷川沿いに東吉野村大又から林道に
入る。以前より狭くなった感じがするのは、緑が繁って道の両側から押し出してきている
せいだろう。
8時半前、無事林道終点着。だが、早くも数台の車。やっとこさUターンして30m程
戻った所の路肩へ駐車。ここにも2台ほど先着車あり。去年車上荒らしがあったとか耳に
入れていたので、貴重品は車に置かないようにして、そそくさと支度を整えいざ出陣。今
日は楽だ。すぐに登山口だもの。 (^_^)v
ところで登山口の様相が変わっている。山の復旧工事が始まっており、重機が入って倒
れた杉の撤去作業をしているようだ。でも文字通り復旧だけにして、余りコンクリートで
固めないで欲しいものだ。パッセンジャーのエゴですが...。
幸い大きな変貌箇所はここだけ。ここを過ぎるとすぐに岩ゴロの登山道に戻った。二階
滝、ヨコグラ谷を過ぎ、鉄橋を渡って右岸に出ると、すぐにあしび山荘。山荘付近の杉も
かなり撤去されている。登山道を覆っていた杉の幹もチェーンソーで切断されており、か
なり歩き良くなってはいるが、全体を元に戻すには、まだまだ時間が掛かりそうである。
もう一つの山荘を横目にキワダサコ谷出合へ出る。ここで小休止。ローソンおにぎり一
個とゼリー、お茶少々。
谷を渡り返して、左の小さな沢のそこここからは、ゲロゲロと京大演習林でも聞いたヒ
キガエルの声。谷沿いにはガクウツギが白い花を開いている。去年の秋に訪れた際は裸だ
った木々も滴るような緑が盛り上がる。その高い梢からハルゼミだろうかヒグラシに似た
声が降ってくる。名も知らぬ野鳥の声があちらこちらで。が、カッコウとウグイスの声だ
けは良く分かりました。
一際水音が高くなると明神滝。その滝を巻いて登山道はジグザグに高度を稼ぐ。周囲に
ブナが増えてきた。下草はバイケイソウと花の終わったテンナンショウ。去年もあったヒ
メシャラの倒木もチェーンソーで切断されている。
小さな沢を渡る。ガマでも居るかと石をひっくり返したらびっくり仰天。なんと鉛筆ほ
どの太さのミミズが飛び出してきた。光線の加減で青色に反射するのも不気味。早々とお
引き取り願ったのは勿論である。
一旦平坦になった路が再び傾斜を増すとまもなく水場である。塩ビのパイプから、勢い
良く水が溢れている。手に掬う。飲む。冷たい。旨い。ここの水の味はまた格別だ。帰り
に少し汲んで行くことにする。
ここを過ぎればもう明神平は近い。最後に一あえぎすると広々とした台地へ。あずまや
には数人が早くも憩っている。こちらも近くでザックを下ろし暫し景色を愛でる。
枯れ木のようだったブナ林も光るような新緑。スキー場跡はバイケイソウと、クサソテ
ツだろうか、丈の低い浅黄色のシダの群落が覆っている。遠目にはこれが黄緑の絨毯に見
えるのだ。もう最高っ!体が緑に染まりそう。来た甲斐があったというものだ。(^^)/
心地よい風に汗も一気に引いて一寸寒い位。ゼリーを2つ、お茶少々。一息ついた所で
国見山へ。
シモツケの類の潅木が白い花を付けている下一面は、去年は気づかなかったのだがバイ
ケイソウの群落。所々に花穂を延ばしているものもある。が、雨不足のせいか葉の縁が茶
色に変色しているものも多い。
かなりの斜度の中、灌木帯に入り、それを抜けて振り返ると、明神平の素晴らしい光景
が広がる。あずまやの下に豆粒のような人間。いつ見ても飽きない景色だ。
ザレ場を過ぎると、はっきりとした尾根筋に出、再び、イタヤメイゲツ、ミズナラ、ブ
ナなどの灌木帯に入る。素晴らしいプロムナードだ。東側、三重県側にシャクナゲの群落。
花は終わり、その痕跡が残るのみ。残念。
細い尾根筋をトレースして、やや尾根が西にふる辺りに水無山の表示板が懸かる。この
水無山、これから行く国見山より高いのだが、三角点は無し。県界を現すプラ杭が2本並
んでいるのみ。展望も無し。前進。
|
緑の包まれた水無山の明るい山頂風景 |
要所に東吉野村の設置した北部台高縦走路の標識が設置された道は、一旦50m程降っ
て再び登り返す。さらに小さなアップダウンを繰り返して、灌木の茂るやせ尾根からやや
大きな尾根に出て、暫く進むとウシログラの標示がある。左の開けた部分に出ると、「ク
ラ」というだけあって絶景が広がる。帰りにここで食事とすることにしよう。
戻って再び縦走路。埋もれた岩を巻いてやや急傾斜を登っていくと、前方に見慣れた国
土地理院の白い標識が現れた。国見山である。
角が取れた二等三角点と周囲に賑やかに山名板がぶら下がる。流石、人気の山。でも名
前に偽りあり。ガイドブックに書かれているような展望がほとんどない。僅かに西方の伊
勢辻方面が垣間見えるのみ。でも広さは20畳程度だろうか、白っぽい大きな石が転がる
明るい山頂だ。私は嫌いではない。
|
国見山山頂。伊勢辻方面はここを左に |
山頂周囲を歩いてみる。西に伊勢辻山方面を示すテープ、南には天高ルートを示すテー
プがある。こちらは踏み跡がやや不明瞭の様子だ。
汗を拭く為、カメラを枝に架けようとふと見上げると、なんと
サラサドウダンが咲いて
いるではないか。なかなか綺麗。色の変化が多いと云うが、この木はベニドウダンに近い
程の色の濃さだ。思わずパチリ。
20分の休憩後、先程のウシログラに戻り、一寸早いが景色を愛でながらの昼食とする。
緑に包まれた深い山並みがたたなづくウシログラからの展望。視界が良ければ台高山脈
南部が一望できそうだ。明神谷の鬱蒼とした木々の緑を隔てて向かいには、前山から尾根
を辿って薊岳。その奥は木の実や塚。はるか西の谷底に霞んでいるのは大又の集落だろう
か。そして奥に大台ヶ原、白髭岳。一際高く鋸状の山は大普賢岳らしい。東には尾根続き
の水無山が意外に優美な姿をしている。
カッコウの声がするので今度は崖の突端に出て下を覗いてみる。樹海が広がっている。
が、垂直の崖は足がすくむなぁ。
カップラーメンを食べていると「こんにちわ」と単独おじさん。高見山の大峠から3時
間かけて縦走してきたという。ここまで一人の人にも会わずに来たと静かな山歩きを堪能
されている様子であった。
食事の後始末を終えて、水無山を中腹まで降りてくると、大又方面から、中年ハイカー
の団体さんが上がって来るのが見えた。昔の姐さん連中の賑やかな声。山の静寂が台無し
だなぁ。
そんな理由もあり、明神平からそのまま三つ塚方面へ登り返し、スキー場の小屋跡付近
で今日のトレース跡を確かめる。ウシログラは?と。あったあった。国見山の右に岩の崖
がある。と云うことはあそこで食事したんだなぁ、フムフムと、へんな感慨にふける。
こちらの顔も緑に染まると言っても過言ではない初夏の明神平。混まない内に、やはた
温泉で汗を流さねば。そんな次の予定を立てながら、名残を惜しみつつ明神平を後にした
のである。
追伸:風呂上がりに、川向かいにある古い小学校を改造した宿泊施設「ふるさと村」へビ
ールを買いに行くと、偶然ロビーで「明神平へ登る人はクマに注意」との張り紙を
目にする。でもあれだけの人出ならクマの方が恐れをなして出て来ぬだろうな。特
に今日のような団体さんが来ればね。(^_-)
帰路、「大豆生」の西の「小」の集落で名水豆腐発見。高い方は売り切れだったが、
安い方を購入し、帰宅後、冷や奴で冷酒。たまりませんなぁ。(#^_^#)
妙に豆腐が好物になった今日この頃であります。
◎秋の明神平の感想記「
落ち葉サクサク明神平」
を読む
【タイムチャート】
6:25 自宅発
8:30〜8:35 大又林道終点(駐車地)(約705m)
8:48 にかい滝
8:52 ヨコグラ谷
9:00 あしび山荘
9:10〜9:15 キワダサコ谷
9:25 明神滝
10:00〜10:10 明神平
10:26 水無山(1441.3m)
10:39 ウシログラ(1416m)
10:45〜11:00 国見山(1418.7m 二等三角点)
11:05〜11:50 ウシログラ
12:06 水無山
12:24〜12:47 明神平
13:20 明神滝
13:35 あしび山荘
13:52 大又林道終点(駐車地)