平成11年初山行は縁起を担いで「金山」
鬼の架け橋。橋の間から鐘が坂峠付近のR176を見る

                           平成11年 1月16日(土)                            天候: 晴れ時々曇り                                同行: 単独        
  昨年の冬のこと、職場の同僚と香住方面へ蟹喰い旅行の帰りである。R176を鐘が坂  峠から南下していると、右手に○×山登山口と木で作った素朴な道標がある。数百m行く  と今度は同じ様な道標に金山登山口と書いてあるのがはっきりと目に飛び込んできた。    「金山?」どんな山かと家に着くなり道路地図で調べてみると、鬼の架け橋のある山と  判明。鬼の架け橋?そういえば、以前、JR柏原駅に掲示されていた写真を見たことがあ  る。                                            そこで念の為、囲炉裏村を検索してみると助役の山口さんの山行記があった。慶佐次盛  一著の「兵庫丹波の山」にも歴史に彩られた山と紹介されている。俄然興味が湧く。しか   も名前が良いではないか。遅ればせながら、今年の初山行は縁起を担いでこの金山に決定。  その名の通り今年は金運が良くなりますかどうか...? (^^;              猪名川町から千苅貯水池、千丈寺湖を抜けR176に合流、北上し、丹南町追入の集落  を抜けてすぐの居眠りパーキングのような路肩の広まった部分に駐車する。          思ったより暖かい。追入の集落を貫く旧道を歩く。元宿場町とあって細く家並みが続く。   右に追入神社を見てすぐ、愛宕山、大神宮と刻まれた灯籠横に登山口の標識がある。案  内板で金山のいわれを勉強した後、坂を登れば多紀郡三十三カ所札所の一つ赤坂観音堂。  無住らしく、お堂横の建物には白いカーテンが引かれ、地元の寄合い等に使われているよ  うであった。                                     観音堂を過ぎた辺りからようやく山道。山腹をジグザグにとり一気に高度を稼ぐ。が、  久しぶりの急登は想像以上に堪える。早くもあごが出る。                 いたる所に道標がある。しかもNHKのケーブル埋設標があり、迷う心配は皆無。良く  踏みならされた路は広葉樹の落ち葉で心地よい。時折、甘いカラメルのような匂いがする  のは近くにカツラの木でもあるのだろうか?                       一本とっていると頭上をスーっとよぎる影。喉元が柿色のつがいの野鳥がヒーヨヒーヨ  と囀る。(帰って図鑑で調べると、ウソという名の小鳥に似ていました。)         尾根に出て一旦平坦になった路は再びジグザグとなり、最初の分岐にあった古い朽ちた  道標には微かに園林寺道とある。暫くすると大乗寺からの路が左から合流してきた。そし  て、NHKのアンテナの立つ切開きとなる。ここは小さな見晴らし台になっており、「大  山荘園を望む」との標識が立つが、その通り南の眺望が良い。R176が灰色のテープの  様に南へ延びている。近くの山並みの向こうから白髪岳も顔を出してきた。      
切り開きから篠山方面
遠くの山並みは摂丹国境の山塊
  この切開きからは頂上からの尾根に乗ったようで傾斜も緩くなり、再び植林と雑木の混  交した中に入る。落ち葉にモミジが混ざるようになると、周囲に竹も見られ、以前、人の  手が入ったらしき形跡が現れてくる。                          崩れた石積みを左に見た後、平坦な場所に飛び出した。前方に南無妙法蓮華経と刻まれ  た石碑と石段。園林廃寺である。石碑によれば石段が出来たのが大正時代で、元は尼寺だ  ったようだ。跡地には柱らしい材木が散乱し、茂った藪が廃されてからの年月を物語る。  五右衛門風呂の釜も転がっていた。                           山城の馬場跡を過ぎるとすぐに道標。左に行けば鬼の架け橋だが、山頂での食事を先に  することにしてここは直進。                              灌木の中の緩い傾斜を進むとすぐに切開き。山頂である。城の建物があったであろう平  坦地の真ん中に金山城跡の立て札があり、夏にはカヤトが茂っていたのだろうが、今は綺  麗に刈られている。柏原高校のワンゲル部の山名板が灌木に一つ風に揺れている。   
金山山頂風景、向こうの山は三尾山(左)、黒頭峰(中央)
   驚いたのがその眺望の素晴らしいこと。夏は多少木々が茂って見にくくはなるだろうが、  ほぼ360度の大パノラマである。東に西多紀三山の三尾山、夏栗山、黒頭峰。その奥に  三岳が座る。南東には奥能勢の山々、深山、剣尾山、大野山等々。南は白髪岳、松尾山、   西は若干木々の枝が邪魔だが千が峰方面の重畳と続く山々。北西に柏原の町並。高見城山、  安全山。遠く粟鹿山は雪を頂いている。更に、北に目を移せば大きく譲葉山が立ちはだか  り、北東の若丹国境の長老ヶ岳、頭巾山方面は雪で白く輝いている。直下にR176の難  所鐘が坂。流石、山城があった場所と納得する。しかも高見城、三尾山城、春日町の黒井  城、篠山の八上城。主な山城が全て見えるのである。戦国時代には波多野氏を筆頭とする  丹波勢が、これら山城で連携して、進入する明智勢に対して必死の抗戦を試みたのであろ  う。                                         ひとしきり景色を堪能した後は独り占めの山頂で遅い食事とする。いつもの助六寿司と  カップヌードルだが、今日は本年初山行ということでバドの500ML缶を特別に持参。  湯が沸く迄にプシュッ、ゴクリ、プハーッ。旨いっ!最高っ! (^_^)/           食後はビール缶片手に再びパノラマをしばし楽しむ。が、陽が翳り寒くなってきた。山  頂の北側から鬼の架け橋へ向かう。所々残雪が残る路から振り返れば、本丸跡には穴太積  の石垣が残っていた。                                 異様な光景が迫ってきた。幾つかの大岩が折り重なっており、一つが岩の間に橋の様に  乗っている。これが鬼の架け橋と言われる所以。物の本によれば1449年の丹波地震で  出来たともいう。岩をよじ登ってみるとこれまた遮るもの無しの大景観。しかし、北側は  スパっと切れ落ちており、足がすくんで震えるのを我慢する覚悟が必要である。       先程の大乗寺分岐を囲炉裏の山口助役さんと同じく南へ向かう。             こちらは道標が登山口以外に中途に一つのみ。尾根から山腹を小さくトラバースすると  ころもあり、やや分かり難い部分もあるが、大部分は素晴らしいプロムナード。あっと言  う間に沢沿いの林道に行き当たった。                          右に薬師如来を祀る真言宗の大乗寺。こじんまりしたお寺だが手入れが行き届き、小さ  いながらも裏山を借景にした庭園もある。                        東へ戻って大乗寺の山門を過ぎ、旧道に出合ったところに案内図。それに従い、追手神  社に寄ってみた。                                   御祭神は大山祇命。清らかな境内には天然記念物の高さ34mの千年モミ、夫婦イチョ  ウが佇立し、歴史の流れを静かに眺めているようであった。(橋本さんの「中国山地ヤブ  山案内」に紹介があります)                              旧道を再び追入神社。本殿前で今年の無事を祈り、社を後にする。            雑誌にも余り紹介されないマイナーな里山、金山。すれ違ったのは中年のハイカー1組  のみ。今年の新春初山行はこんな静かな山行で始まったのであります。        
     【タイムチャート】      10:00     自宅発      12:00〜12:10  追入(駐車地)(約255m)      12:15     追入神社登山口      12:20     赤坂観音堂      12:30     古い分岐道標      12:35     大乗寺路出合      12:45     園林寺(廃寺)      12:50     分岐道標      12:55〜13:50 金山山頂(540m)      14:08     大乗寺路出合      14:20     大乗寺登山口      14:30〜14:45  追手神社      15:00     追入(駐車地)
  金山のデータ    【所在地】 兵庫県多紀郡丹南町    【標高】  540m    【備考】  三尾山や黒頭峰の西南にあり、西多紀アルプスに属する          里山で、明智光秀が丹波攻めの際、ここにあった砦を攻          略し、黒井城攻めの拠点にしたといわれます。          鬼の架け橋は山頂直下にある灰色珪岩で、安藤広重も絵          に描いた奇観です。山頂へは道標も完備されており、歴          史にも彩られたファミリーハイクに最適の山です。又、          近くにアズマイチゲ、ニリンソウ等の群生地があります。          最寄駅はJR福知山線丹波大山駅、神姫バス「追入」で          す。    【参考】  2万5千図『柏原』
  トップページに戻る
inserted by FC2 system