落ち葉降り敷く羽束三山 |
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平成12年11月19日(日) 天候:晴れ 同行:単独 |
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三田市の千苅付近の県道を車で走っていると、羽束山のぐるりによく似た山が並んでい るのが認められる。何か名前でもついているのかしらと地形図やエアリアマップを眺める が見当たらない。ところがひょんなことでメールのやりとりをし、相互リンクをお願いし た地元三田の山喜多さんのHPを見て氷解した。羽束山の西の三角点ピークが『さんしょ う山』、南の前衛峰が『甚五郎山』と呼ぶのだそうだ。羽束山は数年前に登ったが、生憎 の雪で視界がゼロだったこともあり、山喜多さんのHP情報を参考に、再訪して三山巡り でもしようかと思い立った。 今日は遠出でもないので遅い出発。千苅の貯水池を横目に、1時間程で右手に目当ての 羽束山が見えてくる。道標に従って北に折れ、農家が点在するのどかな香下の里を登って いくと、突き当たりがこぢんまりとした真言宗末寺の香下寺。その駐車場をお借りする。 3年前に来た時は、生憎の雪が降り出し、椿などの常緑樹の葉をカサコソと叩く雪の音 が聞こえる中を登って行った覚えがある。が、今日は好天、山上は好展望と聞いているの で楽しみだ。 準備していると、駐車した車の後に石碑がある。摩滅しているので詳細は不明だが、ど うも西国三十三カ所成就記念の碑らしい。一番上に梵字が彫られていたが、例の石仏の本 を持ってくれば良かったなぁ。(^^; 道標に従って、八王子神社の前から右の山道に入る。杉桧の植林の鬱蒼としてやや暗い 中を、自然石を積み上げた階段が葛籠おれで続いている。周囲に竹が混じりだすと明るく なる。一丁毎に小さな丁石が角々に立っている。 少し疲れてきたなと思う頃に六丁峠に着く。三田の中尾喜六寄進の丁石がある。小広く なっていて、誰が持たせたのか竹の杖を腰に当て、前掛けをしたお地蔵さんがある。その 前を通って踏み跡が桧の植林の中にいざなっているが、甚五郎山にはここから入るらしい。 黄色いテープがあって、すぐに分岐。羽束山頂方向を示す小さな標識だけがぶら下がって いる。左は伊丹の野外活動センターから木器方面への車道に出る道らしい。甚五郎山へは、 桧林の中に、テープはないが何となく踏み跡らしいものがあるので、これを直進する。倒 木や雑木もあるが、植林された桧が若木なので案外明るい。小さな尾根上についた踏み跡 を辿るとすぐに山頂であった。 座るに適した岩と雑木の茂る狭い山頂からの眺望はない。木々の隙間から南方向が少々 見えるのみだが、山名プレートもなく静かなものだ。お茶で喉を湿らせ、来た道を戻る。 六丁峠からは道も平坦になり、ようやく時折右に、南や東方向が眺められるようになる。 大きな樅の木が岩をうがち根を張っている。コナラや山紅葉の落ち葉が道に降り敷き、し っとりとしたいい雰囲気である。 道は巾が狭まると同時に再び傾斜を増す。ジグザグの間隔が縮まってきて、索道のケー ブルの下をくぐるとすぐに山頂に飛び出す。 質素な羽束神社の鳥居前から南の展望所へ向かう。大葉のカエデの木から紅葉が時折、 空に舞っている。誰もいない。静かな山頂。 展望所には三田市が設置した案内図がある。有馬富士と福島大池が綺麗だ。左にロープ の手すりがついた遊歩道があるので、誘われてついていったらびっくり。巨大な露岩が平
したので全く気づかなかったなぁ。 露岩の上を先端まで進んでみる。役の行者らしい石仏が置かれている。高さは50p位 だろうか。その前にクライミング用のリングが打ち込んであった。
景色を肴に昼食を摂る。ビールを持ってくるべきだったなぁと後悔。 時折、風が吹くが南向きで暖かい。一望に広がる景色を改めて愛でる。大きな六甲山塊 から大峰山。千苅貯水池、ゴルフ場のカートが豆粒。先程登った甚五郎山がこんもりと直 下に。遠くに雄岡山、雌岡山。北西には千丈寺山、西光寺山、白髪岳、とんがり山、霞み の中には、七種山や笠形山と思しき峰も見える。東に転ずると、妙見山、高代寺山、箕面 連山。大阪市街の高層ビルも視界に入る。初日の出登山をする山とはさもありなん。聞き しに勝るいい眺めであった。 眺めを堪能した後は、音色が良いとの噂の釣鐘が下がる鐘楼横から観音堂の方へ廻る。 正面から堂の中を覗いたが暗くてよく見えない。側の大きなイチョウが黄色く色づいてい る。縁側では緑色のナナフシが日向ぼっこの最中であった。 観音堂の斜め横に山道がある。観音堂のぐるりを周回してみたが降り口はここだけのよ うだ。山の北側に当たるのか周囲はほの暗い。しかもジグザグの急坂で、トラロープの用 意された露岩の箇所が2カ所。 ぐんぐん降っていくと、木の間越しに眼前にピラミダルな山容が迫ってくる。これがさ んしょう山らしい。かなり登り返さんとなぁと弱気に。(^_^; ようやく鞍部に着く。手元の高度計で400m。風の通り道なのか冷たい風が笹を鳴ら して吹き通る。右は木器へ、左は香下へ通ずるのだが、何となくうら寂しい雰囲気で、今 降りてきた道が一番明瞭。さんしょう山には直進とのことだが、一見なんとなく踏み跡有 りという感じのみ。しかし、踏み込んでみると赤テープがあり、雑木の中に人が一人通り 抜けられる位の空間と、やや明瞭となった踏み跡がクネクネとある。 一気に急登をこなすと小さなコブに出、今し方降りてきた羽束山が姿を現した。帰りは 羽束山を目印に鞍部へ降りればいいだけなのだが、一応気休め、コンパスで方向を確認し ておく。 倒木をくぐったり、いばらに服を引っ張られたりしながらも、やや不明瞭になった踏み 跡を高みを目指して再び急直登すると、ぽっかりと山頂に飛び出した。四畳半ほどの狭い 山頂には、三等三角点と、なぜか一等三角点と書かれた地理院の例の木杭のみ。三角点ピ ークなのに珍しくプレートもない。 高木は無いがここも眺望はあまり良くない。北に大船山、東に羽束山、南に三田市街方 面が垣間見えるだけである。水を補給して息を整えたところで下山にかかることにする。 鞍部から南の香下へ向かう。クヌギやナラの落ち葉が分厚く敷き詰められたやや湿った 明瞭な道が現れる。やがて道はゴロ石の小さな沢となる。雨が降れば川底だろう。その沢 が徐々に大きくなると、道はその左岸に沿う。所々に炭焼き跡があるとのことだったが見 落とした。
水面に映しだされたさんしょう山の円錐形の山容が優美である。再び休んで水を補給する。
あった。 香下寺の清々しく手入れされた境内から駐車場へ廻る。寺の前は蓮池で、朽ちた蓮が間 近い冬の到来を暗示しているかのようである。今回で2度目の羽束山。同じ山でも季節や コース、その時の気分によってもこうも感じが違うものかと改めて思う。 麓の農家の庭先の紅葉は真っ赤。取る者とて無い軒先の柿の実も朱色に近くなっている。 落ち葉が時折風に舞う晩秋の北摂路。短いが充実の里山山歩でした。
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