秋の静けさに酔う半国山

                          平成11年10月30日(土)                           天候: 晴れのち曇り                               同行: 単独        
久しぶりに北摂方面の山に足を向けてみたくなった。そこで選んだのが純粋に云えば北  摂ではないのだが、去年の春に登ったことのある丹波亀岡にどっしりと構える名山半国山。 幾つか有るコースの内、今回はるり渓の奥の杉ヶ沢からのコースを採ってみたのだが、先 週の大和葛城山の賑わいとはうってかわって、意外や、お会いしたのは山頂での単独おじ さんと初老の御夫婦だけという静かな山行となりました。                コンビニで私の定番の助六弁当を探すが見つからない。4軒目(リニューアルした府民 牧場近くのローソン)でやむなく稲荷寿司を買う。こんな道草を喰っている内に杉ヶ沢着 が11時になってしまった。(^_^!!                           早速支度をして出発。杉ヶ沢は山間の盆地で、元は数軒の農家があるのみだったようだ。 そこに別荘分譲地が出来て一時は賑わったらしいが、それも今は昔の感がする。      標識に従って東へ向かうと、りんご村ログキャビンの表示の横にテニスコート。使われ なくなって久しいのかコート面がめくれあがっている。                 二軒並んだログハウスの横を道なりに進む。ピンクのテープが結んであるので、それに 誘われて登って行くのだが、建物は荒れ、舗装路は両横から雑木の枝が飛び出し、ひび割 れたアスファルトの隙間からは雑草が生え放題、何か荒涼とした感じである。       おかしいなと思ったのは登り始めて20分ほど経ってから。道がなかなか東へ向かわな い。あげくにグルッとカーブして下って行くではないか。しようがない。こう云う時は一 旦、振り出しへ戻るに限る。                             というわけで二軒のログハウス横に戻ってみると、そこに南に向かう地道があるのに気 づく。試しに進んでみると『半国山』の標識と園部町の案内図が目に入った。山頂まで約 4Km。やっと見つかったか。30分ものロス。登る前に疲れてしまった(※註 帰途、 地道の入口の木の陰に隠れて、『半国山』の標識がぶら下がっているのを発見)    
園部町が設置した案内図。ログハウス横にも欲しいね
 この道も元来、別荘分譲の為に造成された道らしく、所々に区画案内板と消火栓、路肩 にはU字溝迄ある。しかし、今はゴロ石が転がる地道に変わり、ここも両脇に雑木がはび こって寂寥とした感じ。                                 5分ほどで最初の標識発見。ザックの再度ポケットからペットボトルを取り出し水分補 給。一息入れて左の山道へ突入する。                         雑木の明るい道だが、真ん中がえぐれてやや粘土質で滑る。時々蜘蛛の糸が顔にかかっ て鬱陶しい。しかし、ということは今日はここを誰も通っていない?かすかに心細さがよ ぎる。                                       真っ直ぐ登っていくと、大きな岩が踏み跡の両脇に門柱の様に控えている場所に出た。 京都営林署の古い注意書き等があり、岩の向こうは鬱蒼とした檜の植林帯。あたかも異空 間の入り口を彷彿とさせる。                             一気に周囲が暗くなった。踏み跡は大した勾配も無く山腹をトレースしていく。そして 一旦、植林帯の中をもったいないが3、40m下って右へ。再び緩勾配のアップダウンを 繰り返し、山腹に沿って続く。所々に、イノシシだろうか土を掘り返した跡がある。思わ ず『シシ神』が出て来はせぬかと周囲を見回す。そして左の谷が源頭に近づく頃、俄に水  音が高まってきて、八田川の上流と思しき沢を3つほど越える。ヌタ場状の部分があって、 ここにも掘り返しがあちこちに。そういえばまもなく猟期だ。              周囲はいつの間にか雑木の林に変わって、シバ栗のイガが転がりだし、アセビの木が増 えてくる。静寂そのもの。時折、名も知らぬ鳥の声の他は、落ち葉を踏みしめる自分の足 音とザックの熊除けのベルの音のみ。かさっと落ち葉が落ちる音にも振り向くほどだ。こ のしっとり感が秋山の好さでしょう。                         と、前方に白い板がぶら下がっているのを発見。『杉ヶ沢』とある。さらに向こう側に 『赤熊』と書いた板。思い出した。赤熊コースとの出合の小さなコルだ。去年ここで一服 したっけ。懐かしい。今年もここで一本入れるにする。それにしても土曜だというのに誰 にも会わんなあ。                                   さて、道はここから右(南)へ。ここからは縁が白くなった丈の低いササが下草となり、 黄色や、赤になりかけた雑木の中のいい雰囲気の急登の道となる。そうだ途中に偽ピーク があったんだったなぁ、と思い出しつつ小一時間のアルバイトで、フーッと傾斜が緩むと 三等三角点の埋まる半国山の頂上である。                     
半国山山頂より亀岡市街と愛宕山。手前は行者山
 誰もいないかな?と顔を出すと、単独おじさんが一人。本日初めて出会った同好者。   「今日は」と挨拶を交わす。二人だけなのと、話好きな方と見えお互いの山行に花が咲く。 東北に見える愛宕山、その肩から覗く比叡山、手前の牛松山、三郎ヶ岳、行者山、霊仙ヶ 岳などとやけに詳しい。それもそのはず伺ってみると亀岡の方で、亀岡近辺を中心に活躍 されているとのこと。半国山へは5、6度目だそうで今日は井出からだという。近々名田 庄村近辺の若丹国境のブナ林へ行こうと思っていること、牛松山にはイノシシが多いが、 猟期になると忽然といなくなること、愛宕山から白山が見えた時は感激したことなど、興 味深い話を聞かせてもらいました。                          熱いシジミ汁を啜っていると、下から女性の声。やがて初老の夫婦の方が上がってこら れた。京都北区の方で、こちらは宮川から。帰路赤熊へ降りる予定だという。       面白かったのは、くだんのおばさん。ザックから小さいビンを取り出したと思ったら、 おもむろにシャボン玉を吹き出したではないか。いつまでも童心を失わない方でした。   山頂には結局、都合四人のみ。アキグミの小さな実をつまみながら、縁があれば、又の 再会を約して別れる。                                赤熊出合のコルでエアリアマップを見ると、千ヶ畑コースから分岐した道が、杉ヶ沢コ  ースと合流することになっている。帰途、探してみたのだがそれらしい出合が見つからず。 又の楽しみとしよう。その代わり、『公山』と書かれた石柱が道端に立っていたのを見つ けました。                                     そんなこんなで、帰りはアッという間に杉ヶ沢の里に下りついた。稲刈りの済んだ田圃 をぶらりと。ゲンノショウコのピンクの花。集落の入り口の墓地にある小さな六地蔵を眺 めながら薄日の中、駐車地へと戻ったのである。                    人気のある山なのでもっと人が多いかなと思っていたのだが、思いの外、しっとりとし た秋の静寂とした雰囲気に酔わせてくれた半国山。また今度違うコースを歩いてみたいと 思わせるなかなかいい山であります。                       
    【タイムチャート】       9:20     自宅発      11:00〜11:10  杉ヶ沢別荘地(約465m)      11:15〜11:45  りんご村別荘地域内を彷徨      11:46     登山口      11:50     分岐(半国山道標)      11:58     二つの門柱岩      12:14     最も大きい沢(八田川源流)      12:32〜12:35  赤熊コース出合い      12:50〜13:50  半国山山頂(774.2m 三等三角点)      14:05     赤熊コース出合い      14:20     最も大きい沢(八田川源流)      14:35     二つの門柱岩      14:40〜14:43  分岐(半国山道標)      14:48     登山口      15:10     杉ヶ沢別荘地



   半国山のデータ

          『春霞立つ半国山』を参照下さい

    【参考】  エアリアマップ 山と高原地図『北摂の山々』


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