天然サウナでバテバテ〜残暑の愛宕山

愛宕神社へ向かう参道の杉木立
                          平成11年 8月 9日(月)                           天候:晴れ一時曇り                                同行:単独         
 今年の夏、天候が安定しないのは主役がいないからだそうだ。この時期、暑くて低山に はなかなか行く気がしないもの。大峰の山上ヶ岳でもと思っていたのだが、近畿南部は天 候が悪そう。そこで一度は参詣がてら登らねばと思っていた愛宕山に白羽の矢。      嵐山からだと結構な標高差なので、sagamiさんちのHPを参考に、一番標高差の ない樒原からのコースを選択したのはいいのですが、天然のサウナ状態にバテバテもいい とこ。夏の低山を甘く見てはいけません、飲料水は充分にというのが今回の教訓です。   午前9時という私にゃ一寸早い?出発。摂丹街道で亀岡に出、R9で八木町、R477 で山懐を三俣川沿いに周山方面へ向かう。この路は十年一昔、国道に昇格する前に周山へ 抜ける際、4t車との対向に苦労したことがあり敬遠していたのだが、相変わらず狭い所 があって、カーブでは対向車に気を使う。                       信号のないT字路、右(南)に国道より立派な舗装路が伸びている。嵯峨越畑から水尾  へ抜ける府道だ。クネクネと高度を上げていけば、隠れ里のような嵯峨樒原の集落へ出る。  原のバス停迄進んでみたが適当な駐車スペースがない。取りあえず、通りかかった地元 の方に愛宕山への登り口を尋ねる。                         「もう少し行くと、石の鳥居がある所がそうや。」                  道の状況はと聞くと                                「登ったことないからなぁ。車は神社横の広場に停めればええよ。」          というわけで、神社横の広場まで戻って駐車させてもらうことにする。          とても京都市内とは思えない樒原の集落である。バス停横には市役所の支所と診療所の 建物。診療所と云っても民家と変わるところなし。                   七谷川にかかる橋を過ぎると、ほんに道路右手に石の鳥居が見えてきた。民家の横の石 垣に愛宕山登山口の標識があって、ほの暗い幅1m程の石ゴロ道が延びていた。    
樒原からの参道口にある愛宕神社の鳥居
 道は杉の植林帯を右に曲がり、松の倒木が潜るとすぐに地道の林道に合流する。バイク など進入禁止の木札がある。                                山腹をジグザグにしかもかなりの急登の林道である。加えて異常に蒸し暑い!風もない。 早くも汗が噴き出し、眼鏡が曇る。こりゃぁ車は4WDでないと登れんなぁ等と考える余 裕があったのはほんの初めだけ。予想以上の暑さに次第に周囲にも無関心となる。道は所 々で傾斜が緩むがまた急登に。行けども行けどもという感じである。次第に脱水状態で疲  れが溜まり、休憩が多くなる。早くも1Lのペットボトルのお茶は半分に。これはいかん。  もう5百cc持って来るんだったと臍を噛むが後の祭り。心なしか眩暈がする様な...。  戻ろうかの思いもよぎる。その内、左から沢音が聞こえ出し、まもなく関電巡視路の火 の用心標識が目に入ったが、この辺が暑苦しさのピークであったようだ。ええいっ。まま よと残りのお茶をまた半分飲み干してしまった。                    もう少し行ってみようとやおら腰を上げ、ヨタヨタと登るとようやく傾斜も緩み、どう にか尾根の端に乗った按配だ。杉林の下草にササが現れだした。             と、前方に道標らしきもの発見。右から小道が合流してきている。神明峠からの道らし  い。その辻には地蔵さんが立っており、横の古い石標には「右あたご、左あのう」とある。  写真を撮っていると神明峠道から人声が近づいてきた。現れたのは中年男女3人組。挨 拶を交わし、話を伺っていると地元の方のようで、愛宕山には何回も登られている由、三 角点のことをお聞きするとそこまで同道して頂けると云う。甘えることにする。      気がつくと、頭上が明るくなっている。杉の植林帯が途切れ、周囲はササ原にアカマツ や、ソヨゴなどの雑木が茂る高原地帯となっている。昔はスキー場だったと男の方。何と なく中葛城山の風景に似ている。ヒグラシの鳴き声に混じってウグイスの声。風も爽やか に吹き出し、ようやく人心地がついた。                         気がつくと右側(南から西)にパノラマが広がっている。近くに優美な形をした牛松山。 ということは亀岡盆地を隔てたあの山塊がポンポン山?深山のドームもよく見える。剣尾 山や半国山はこの方向から見るのは初めて。新鮮。                   再び、杉の植林帯に入る。小さなアップダウンを繰り返し、竜ヶ岳への分岐を過ぎてす ぐの三角点への入り口は、道は広いのだが一寸分かり難い。後で小さな木札がぶら下がっ ているのに気づいた。(原方面から歩いて来る場合は見えないのです)          だらだら坂を暫く登ると、アンテナが見えてくる。これが工事中に三角点を破壊したと いう噂のモトローラのアンテナだろう。そしてポッカリと前が開け、絶景が眼前に展開す る。                                        真正面に比叡山。山肌の一直線の筋は八瀬からのケーブル線路。その左には一際大きな 比良山系。そして北山がうねり、真北に見えるドームは峰続きの竜ヶ岳とのこと。     南に目を向けると京都市街。その中を保津川が蛇行し、架かる橋は嵐山の渡月橋。その 近くの大きな甍は天龍寺だろうか。広沢の池も指呼の感。まるで2.5万図を覗いている 様な錯覚を覚える。                                 左のザレ場を登った所に三角点があるというので行ってみると、基準点のような丸い金 属が埋まり三等三角点と刻されている。いつもの石標でないので少々拍子抜け。でも一応 頭にタッチ。                                  
愛宕山三角点から京都市街を見る
 同行頂いた3人組の方に神社に自販機があるとのことを聞き、ここでお茶を全部飲み干 す。                                         もと来た道を引き返し、神社へ向かう。左に鞍馬から比叡山へ続く山並みが見え隠れし、 さっきとはうって変わっていい気分。一旦鞍部へ下って再び出てきた杉の植林帯の中に地 蔵さん。地蔵の辻というそうだ。ここから首無地蔵から高雄へ出るという道が分かれてい る。                                      
地蔵辻の赤い前垂れをかけたお地蔵さん
 そして、右手の高みに老杉が現れてくるとすぐに月輪寺経由の裏参道が左に見え、白髭 社の参道を過ごすと右に石灯籠が見えてきた。それを進むと愛宕神社の本殿への石段横で あった。脇に蕾みのウバユリが一本。                         創建されて1200年の古社は全国800社を数える火伏せの神の総本山。7月31日 の千日参りは有名。                                 「火迺要慎」と書かれたお札を買い求める。権祢宜がお札を包んでくれるのを待ってい ると何だか足が痛痒い。思わずふくらはぎを叩くと蚊とは異なる手応え。ポロッと黒い虫 が落ちた。ブヨらしい。そういえば周囲をぶんぶんうなっている。こらかなわんと代金払 って早々に退散したのだが、それにつけても、ここの権祢宜は愛想が悪く一寸慇懃無礼で した。 (-_-#                                   石段を下りてすぐの社務所に備え付けの自販機でお茶を2缶購入。社務所前の広場の床 几で昼食にする。杉木立の間から一望できる京都市街を眺めつつ持参した缶ビールを開け る。サウナの後だからバカ旨。アッという間に一本。ロング缶にすりゃ良かったとまた後 悔。                                           さて、30分も過ぎたろうか。そろそろ落ち着いたし下山するかと腰を上げるが何だか 体が重い。うーん、発汗でかなり消耗しているようだ。下り坂に気をつけねばと気ばかり が...。案の定、下りのザレ場で足を滑らした。                     汗と一緒に冷や汗もかきつつ降ってきた登山口。鳥居の際に咲き遅れのホタルブクロが 二輪。登山口横の民家には「樒あります」の張り紙。                  駐車地までの道々、山側から綺麗な水が溝を走っているのを見つける。手を漬ける。冷 たい!思わず顔を洗い、タオルを浸して首筋を拭う。やっと生き返ったなぁ。       のどかな夏の昼下がり、樒原の集落を歩く。原のバス停の時刻表。バス便僅かに日に3 本。七谷川を渡るとまもなく小じんまりと原神社。その横の広場に愛車を見つける。    靴を脱ぐ。Tシャツを着替え、車のクーラーを入れて残った茶を飲み干す。カーラジオ の甲子園も熱戦だ。帰宅して又ビールを飲んだのは勿論のことでした。          それにしても今日は疲れた。飲料水は1Lもあれば充分かなと思っていたのだが、今回 摂取した水分は、1Lのペットボトルとレギュラー缶2缶のお茶。ビール1缶と帰宅途中 にジャワティー1缶の都合2.4L。天候、コースを考えて増減する必要性を痛感した次 第。落語にも出てくる軽い山と思いきや、やはり六甲山級の標高を有する山、冒頭に書い たように甘く見てはいかんなぁとつくづく悟った今回の残暑の愛宕山参りでした。   
    【タイムチャート】       9:00     自宅発      11:00     神社横広場(駐車地)(約420m)      11:24     原登山口      12:03     関電巡視路分岐      12:16     神明峠コース出合      12:45     三角点分岐      12:50〜13:00  三等三角点(890.1m)      13:07     地蔵辻      13:12     月輪寺コース出合      13:15〜13:30  愛宕神社      13:35〜14:05  昼食      14:16     地蔵辻      14:23     三角点分岐      14:42     神明峠コース出合      15:13      原登山口      15:35     神社横広場(駐車地)



   愛宕山のデータ

   【所在地】 京都府京都市(三角点は北桑田郡京北町)
   【標高】  924m(三等三角点 890.1m)
   【備考】  京都盆地西北に一際大きな山容を持つ独立峰。比叡山と
         共に京都を代表する山で、麓から望むと頂上が鶏冠の形
         に見え目立ちます。
         頂上には火伏せの神で有名な愛宕神社があり、本稿で紹
         介したコース以外に、最もポピュラーな清滝コースや高
         雄、水尾など多彩なコースがあり、京都市民に親しまれ
         ています。南麓には有名な嵐山があります。
              ■日本三百名山■近畿百名山■関西百名山
   【参考】  エアリアマップ 山と高原地図『京都西山』


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