芦生の森のトロッコ軌道跡(芦生奥付近にて) |
平成10年10月4日(日) 天候: 晴れ時々曇り 同行: 単独
土曜から日曜にかけて今年初めての秋晴れが続くという。一寸遠出をしてみようか。最 近何かと話題に上る事が多い芦生の京大演習林のトロッコ軌道跡はどうだろうか。一度は 行ってみたかった憧れの場所。 6時に出るつもりが起きたのが6時20分。なんやかやで出発は7時過ぎになってしま った。この頃は予定通りに行かないことが多い。反省だけなら猿にも出来るが反省。 美山町へ向かう途中の道は、以前訪れた長老が岳と同じくR27から升谷大橋で府道1 2号。静原で一旦R162を南下して府道38号。由良川沿いに南、中、北と集落が点在、 中でも北の集落は茅葺き屋根の民家が数十軒。「茅葺きの里」と呼ぶそうな。帰りに写真 なぞ撮って帰ろう。
緑を背にした茅葺きの里の風景(美山町北集落) |
美山町自然文化村の綺麗な建物とテント群を右に、江和、田歌の集落を過ぎると由良川 の谷が深まり車道は崖にへばりつくようになる。崖からは小さな滝が流れ落ちている所も。 対向車に注意、一寸緊張。 標識に従って府道から左折、芦生の集落を過ぎた須後の京都青少年山の家の駐車場に車 をとめる。20台は駐車可能、トイレもあり、無料なのが何とも嬉しい限り。 事前に一人静さんにお聞きした情報とか、新聞、雑誌にも良く掲載されることなどを総 合して、もっと混んでいるかと思ったが、都会からの交通事情が悪いせいなのか、まだ紅 葉には早い為なのか、先着の車は10台足らず。静かな山歩きには幸いです。(^^)v 準備を整え演習林構内へ。長治谷作業所方面へ向かう林道前のポストに備えられている 用紙に仮入山届を書く。一人静さんが云っていたのはこれだな。でも届を書くなんて初め ての体験、少し緊張するなあ。
風格のある京大演習林管理事務所 |
さてと、トロッコの線路は何処だろう。案内図で確認して資料館、事務所前に出ると錆 びたレールが地面を横切っている。それに導かれて進むとすぐに由良川の鉄橋。レールの 間に敷かれた板を渡る。ここのところの雨で水量が豊富、瀬音が心地よい。 右は杉の植林帯、左に由良川を見つつ軌道跡は奥へ。日向にはゲンノショウコのピンク、 日陰にはアキチョウジだろうか青紫の花が咲き乱れている。その中にミズヒキも混じる。 左に大きな農家が一軒現れた。現在では由良川最奥の民家であろう、白い犬が畦をその 家に向かって走って行った。と、右に墓地、墓石は自然石を積んだだけ。日頃、四角い墓 石を見慣れているだけに何か不思議な感じがした。昔は普通みんなこうだったのでしょう。 砂糖の焦げたような甘い匂いが漂ってきた。これが雑誌にあったカツラの木の葉の匂い だなと納得する。 やや空間の開けた感じの灰野廃村跡に着く。説明板には江戸時代初期に集落が出来たと いう。佐々里峠からの峠道も有ったようで、最盛期には民家8軒を数え、田圃、宿もあっ たというから驚き。昭和35年の廃村からの時の流れは人間の営みを自然に帰し、トチの 巨木横の祠、雑木が茂った石垣に往時を偲ぶのみである。
灰野廃村跡に立つ道標 | 灰野廃村跡の説明板 |
灰野谷の橋を渡って木地師も住んだという芦生奥を過ぎる。線路は所々、この前の台風 の影響か、倒木、流木、ごろた石にかき消されている所もある。よっこらしょっと。 由良川本流が左に大きく蛇行しているが線路は支流沿いに。しばらく行くとレールと別 れて木橋を渡る仮歩道への標識。エアリアマップではカヅラ谷迄線路沿いに行くはず。た またまその木橋に腰掛けて同じくエアリアマップに見入っているおじさん二人組に尋ねる。 が、良く分からないようだ。そこで通行止めを無視して100m程行ってみると軌道の木 橋が朽ちて落下しているではないか。そして支流が二股になっている。これで氷解。現在 位置は赤崎谷。あの仮橋はトロッコ道へのショートカット。案の定、対岸から登って行く とレールが現れた。一安心。因みにエアリアマップにある赤崎作業所は建物がありません でした。 再び薄い藍色を帯びた由良川の清流を左に見て歩く。岩を噛む瀬音が猛々しい。対岸の 原生林も美しい。でも紅葉はまだまだ。そして右手の濡れた岩にはイワカガミが繁る。春 は咲き乱れるのかな?イワウチワもあるようだ。足元にはクラマゴケ、スギゴケなどの苔 の絨毯。それにしても水が豊富。至る所に清水がある。それはあるいは石清水となり、あ るいはナメ滝となり沢となり...。それだけ自然林は水持ちが良いということだろう。 空が開け、前が明るくなると、左手に小屋が見えてくる。小ヨモギ谷作業所。といって も廃屋ですが...。裏に廻ってみる。誰が植えたのか大きなイチョウの木が聳えている。 トイレには白い便器の破片が...。その代わり「建物の廻りはトイレでありません」と の京大の張り紙がありました。
小ヨモギ谷作業所。裏に大きなイチョウの木 |
それよりもここは建物の南側のケヤキ林がハイライト。以外と樹肌は白い。白樺と見ま ごうばかりとは一寸言い過ぎかな。明るい林の中、テンナンショウの実はまだ青い。 大ヨモギ谷、フタゴ谷の標識を見送る。刑部谷を越え、由良川の川原が広くなるとカヅ ラ谷の作業所が見えてくる。やっぱり廃屋のよう。でも雨露しのぐには充分。 エアリアマップでは軌道跡はここ迄とあるがカヅラ谷を跨いでまだ奥へと続いている。 七瀬迄続いているのかしら?数百m辿ってみたが、腹も減ったし12時だ。戻ることにし た。地図によれば、ここから七瀬迄は40分だそうです。 作業所横から由良川の川原に降りる。ここまで遡行してもまだ水量は豊富で川幅もある。 それもそのはず、結構歩いた割には手元の高度計では7、80m登っただけなのです。 川原では先程の二人組が昼食を広げている。そこから一寸離れて、ザックをおろすこと にする。 澄んだ水が心地よい音をたてる中、今日のランチはレトルトのきつねうどんと田舎おむ すびの豪華版?うどんの準備に湯を沸かしている間にサーッとにわか雨が通り過ぎた。 食後のコーヒーを飲みながらいつものように辺りを散歩する。水たまりの中、イモリが 数匹息をひそめている。川原にはササに巻き付いたヤマノイモだろうかムカゴが二つ三つ。 家へ持って帰って植えてみるか。芽が出るかな? 午後一時。川原にはあと二組、パーティが増えていた。 にわか雨が来る前に下山とする。その前に作業所を覗いてみる。 10畳程の板の間の床は、小ヨモギ谷の作業所よりもしっかりしているようだ。洗面所 跡と思しき部分の横には五右衛門風呂の釜がひっくり返っていた。 陽が陰ってきた。気温は17℃。ナメコが生えるという苔むした大きな朽ち樹をくぐる と、アサギマダラがフワリと飛び立った。【タイムテーブル】 7:10 自宅発 9:55 京都府青少年山の家駐車場 10:05 京大演習林事務所 10:30 灰野廃村跡 10:44 芦生奥 10:50 赤崎谷 11:10 小ヨモギ谷作業所 11:20 大ヨモギ谷標識 11:30 フタゴ谷標識 11:35 刑部谷 11:40 カヅラ谷作業所 12:00〜13:00 昼食 13:20 フタゴ谷標識 13:35〜13:45 小ヨモギ谷作業所 14:15 灰野廃村跡 14:40 京大演習林事務所 14:45 京都府青少年山の家駐車場小ヨモギ谷の作業所前で小休止を挟みながら、あっちこっち眺めつつ15時前、駐車場 着。ペットボトルのお茶で一服、今日の余韻に浸る。途中で会った山菜取りのおばさん連 中も戻ってきたようだ。 15時きっかり帰途へ。途中の無人の百円野菜売場で、お土産にミョウガの漬け物と大 きなシシトウ、サツマイモの蔓を買って美山町を後にする。若葉の季節に又来たい憧れの 芦生の森散策でした。 【注意】 美山町芦生では生ゴミの収拾はなく、ビン、空き缶の収拾も月1回だそうです。 マナーを守り、自分のゴミは持ち帰りましょう!
ナメコが生えるという大きな朽ち木
京大芦生演習林のデータ 【所在地】 京都府北桑田郡美山町 【標高】 約300〜960m 【備考】 京都府の東北端、滋賀県と福井県に接する由良川の源流 域、約42平方キロに及ぶ京大農学部の演習林で、大正 10年から100年間の契約で地元から借用しているも のです。演習林のため開発から免れ、熊、狐などの動物、 日本海と太平洋相それぞれの代表的な植生と相まって動 植物の宝庫と呼ばれ、世界遺産への登録も論議されてい ます。 また地元の美山町は茅葺き民家が多く保存されているこ とで有名です。 交通アクセスは京都駅からJRバス、和知町営バス、美 山町営バスなどを乗り継ぐ必要があり、本数も少ない為 車が便利ですが、途中かなり狭い部分もあり注意が必要 です。
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