酷暑にリタイア、青根ヶ峰

                           平成12年 7月16日(日)
                           天候: 晴れ
                           同行: 単独

 最近、天気予報が逆目に出る傾向がある。この日曜も曇り所により一時雨の予報。とこ ろが明けてみればいい天気だ。四国は梅雨明けだという。今日も暑くなりそうの予感。が、 この真夏を思わせる暑さは想像以上で、京都は36℃、東京では熱中症で12人が救急車 のお世話になるという騒ぎ。これが為に今回の山歩きを途中でリタイアする羽目になろう とは...。  一寸出遅れたが、心配した渋滞もなく西名阪針ICからR369、国栖から吉野川沿い に県道を走り、R169に出る。五社トンネル東側入口の手前を左折すれば川上村の森林 資料館山幸彦のもくもく館前。その前の駐車場に車を駐める。  車を降りると一気に暑さが押し寄せてくる感じ。準備しているだけで汗が出てくる。蜻 蛉の滝まで0.8kmの案内に従い、音無川沿いに南へ車道を行く。10分ほどで右手の 山が迫ってくる。  音無川に架かるあきつ橋を渡ると、そこは日本庭園風の公園で、左に茶室があるなと思 ったら、これがトイレ。『桜の香和家』なる洒落た名前が掲げてある。  そのまま道なりに進み、鳥居をくぐると苔むした石段が延びている。水音が次第に大き くなり、弁天堂を左に見て岩角を巡ると滝が見えてくる。落差40m、岩を水がくりぬい たような形状をしており、なかなかの水量。飛沫に濡れてギボウシが咲いている。左のあ ずまやから螺旋階段で滝壺ちかくに下りられるようだ。下ではアマチュア写真家がシャッ ターチャンスをねらっている。  雄略天皇がこの辺りで狩を催していたとき、アブがやってきて天皇の肘に噛みついた。 そこへどこからともなく蜻蛉が飛んできて、アブを喰い殺したことから、滝の名がついた という。別名虹光の滝。そういえば滝の飛沫が日の光に反射して虹がかすかに出ている。    遊歩道を登ると、滝の上部にお椀のよう壺があってそこからあふれた水が滝となって落 ちているのが分かる。実際の滝壺よりもこっちの方がよっぽど滝壺らしい。更に遊歩道を 登っていく。吊り橋を渡って音無川の対岸へ移って間もなく1m幅の道に出た。  遊歩道は左を指しているのでそちらに向かうと、すぐに舗装工事中の林道(県道?)西 河吉野山線に出くわした。ガイドには林道からすぐに山道とあるので、捜しながら登って行 くが、それらしきものがない。おかしいなと思うと同時にこの炎天下での無風状態。先程 のT字路を逆に行くべきだろうと判断し引き返すことにした。  戻ったT字路には「冒険より安全登山」と書いた川上村の救助隊の看板がある。草いき れの中を歩んでいくと、さっきの林道の真新しいコンクリート道床が近づいてくる。案の 定、道は林道下で消滅。林道の道床沿いに進んでみるが、路肩が崩れて進めなくなる。こ りゃ駄目だと元の位置に戻ると、なんと階段があるではないか。背後を見落としていたら しい。  再び林道へ。しかし続きの山道がない。整備中の広場らしき辺りも捜すが見つからぬ。 舗装したての黒いアスファルトの灼熱に耐えかねて、もうええかと諦めて戻ろうと思った が、もう少し進んでみるかと気を取り直して50m程歩いたら、なんと林道が終点になっ ており、1m程のよく踏まれた道が谷沿いに続いているではないか。ほっと溜めた息を吐 き出すが、ここまでに30分の浪費。これがボディブローの様に徐々に忍耐力を奪ってい た様だ。  吉野杉の中、右手の深い谷底の水音を聞きながら歩いていく。杉を切り出す為に使われ た木馬道だったという湿った道は、所々、桟道風になっているが木が朽ちて危ない所があ る。  足下に注意を集中していた時である。ガサッという音に驚いて音の方向を見上げると、 1頭の鹿が約20m斜め上の山肌を上がっていくのが目に入った。カメラをザックから出 す暇もなく、姿は木の陰に隠れたが、その尻の白さが印象的であった。  小さな支谷を幾つか越える。白いギボウシの花がアクセントになっている。  沢へ下る道を見つける。その先はと目で追うと山仕事の為のあずまやが建っている。  しばらくするとやや小広い分岐に出た。川上村の上水道源の注意書きがある。そしてす ぐにまた分岐。木橋があって、私設の道標からトビロ谷だと分かる。  谷が徐々に浅くなってきた。流れも痩せて来た頃、鉄板の橋が現れて道はここで本谷と 分かれ、右の支谷(竜ヶ谷)沿いになる(二股という地点らしい)。やがて、古い石標の ある辻に出た。もともと吉野への古道だったのか、石標には不明瞭ながら「みぎよしの辻 施主××」云々と刻まれているのが読める。
古い石の道標のある辻 吉野への古道だったのだろうか
 ここから杉林の山腹を絡む道は急登である。ゼイゼイと息を切らしつつ登る。道も細く なり、風もなく、眺望もない。ひたすら前進。雑木の枝が張りだし邪魔。中にはウルシも あるようだ。  しばらくするとやや傾斜がゆるんで背後が明るくなり、四寸岩山方面だろうか、谷を隔 てて見えるようになる。そして、左手の木々が途切れて、斜め右上方に高圧鉄塔がある伐採 地のような場所に出た。開放感はあるのだが、また炎天に晒されることとなった。ここを また登っていくんかぁ。  今から考えればあと100m程で尾根に出られたのだろうと思えるが、その当時は軽い 熱中症気味だったのかもしれない。妙に気力が湧かない。仕様がない。こういう時は無理 は禁物だと言い聞かせ、前進は諦めることにした。(T_T)  そうと決まれば、水の節約解禁。500tのペットボトルの残りを飲み干す。さてもう 12時だ。食事はやっぱり川際でと、先程の作業用のあずまやを思い出した。  トビロ谷を過ぎ、例のあずまや。川際の木陰の石に腰掛ける。川の水で顔を洗い、Tシ ャツを脱いで、水に浸したタオルで体を拭く。やっと人心地。  残ったもう1本のお茶のペットボトルを冷やそうと川の中の石の間に入れる。その瞬間、 石が動いた。「ややっ?」 石と思ったのは実は大きなヒキガエル。こっちも驚いたが、向こうも驚いたのだろう。や っこさん慌てて一目算に逃げていきました。  腹に物が入ると、気力も戻ってきた。ぶらぶらと木馬道を戻る。林道終点に出ると、東 に白倉岳であろうか高い山が青空に顔を出している。相変わらず日差しは強烈だが、風が 出てきてやや凌ぎやすくなった。公園まで戻ると、音無川で水遊びする子供の歓声が木霊 している。木陰でやれやれ暑かったと小休止。岩に刻まれた梵字の説明を読みながら、見 つけた自動販売機でお茶購入する。水分補給はこれに止まらず、車を置いたもくもく館で もまた購入。帰途で見つけたローソンでまた購入。この日飲んだ液体はゆうに4Lは越え ていたでしょう。  予期せぬでも無かったのだが、暑さという伏兵がこれ程まで強烈だとは予想外でした。 そこで教訓。    その@ 夏は水の補給を十分に。なお、塩分補給も忘れずに。    そのA 舗装路歩きは最小限に。出来ればしないこと。 夏は熱中症が大敵、やはり高原ハイクがいいようです。気候の好い時にでもリベンジした い青根ヶ峰撤退の顛末でした。

   【タイムチャート】
    8:20自宅発
   10:05〜10:10森林資料館山幸彦もくもく館前駐車場(約240m)
   10:17公園
   10:20〜10:30蜻蛉の滝
   10:38遊歩道分岐
   10:40林道出会いa
   11:00遊歩道分岐
   11:10林道出会いb
   11:20林道終点
   11:45トビロ谷
   11:47二股(鉄板橋)
   11:52古い石標の分岐
   12:10伐採地(断念地点)
   12:30古い石標の分岐
   12:34二股(鉄板橋)
   12:37トビロ谷
   12:50〜13:15昼食
   13:25林道終点
   13:55公園
   14:05森林資料館山幸彦もくもく館前駐車場
 

 
  青根ヶ峰のデータ
   【所在地】奈良県吉野郡川上村・吉野郡吉野町
   【標高】857.9m(三等三角点)
   【備考】 吉野山の最奥部奥千本付近の位置にあり、山上ヶ岳へ向
かう大峰奥駈道が近くを縫って延びています。
東の麓の蜻蛉の滝は落差30m、別名虹光とも呼ばれ、
西行、芭蕉も訪れた名瀑です。付近は川上村の手で整備
され公園になっています。
■関西百名山
   【参考】 山と渓谷社CD-ROM『日本山歩 近畿U 奈良県の山』
阪急電車 『関西の山100』



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