高見山〜久々の標高差に顎を出す

木津トンネル東出口付近から望む高見山
平成27年 5月17日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独


 最近、とみにスタミナがない。2か月近く山らしい山に登っていなかったからか、すぐ
にバテバテ。(^^; これではならじと、標高差3、4百mの山から再開したが、たまには
ある程度登り応えのある山に挑戦してみようという気になる。さて、どこにするか。

 実はこのところ、昔、登って印象深かった山にまた登り始めている。GWは16年ぶり
の藤無山。それにならうと高見山なんてよさそうだ。山を始めて間もない頃、始めて登っ
た台高の1000m峰だったように思う。杉谷から登れば標高差はほぼ800mある。と
勇んで登ってみたのはいいけれど、やっぱりスタミナ不足は如何ともし難いものがありま
した。 (^^;

 もう少し早く出発するつもりがやっぱり8時半近く。いかん!気合が足らん! 駐車ス
ペースはあるかしらんとやや不安があったが、杉谷のお寺下の路肩に2台のみ。そこを少
し行き過ぎた辺り、路肩が少し広まったスペースには1台もいない。準備をして登山口へ
向かう。昔、草餅を買い求めた屋台店ももうやっていないようだ。

高取山の杉谷登山口
 民家の間に往時の伊勢南街道を利用したコースの登山口がある。初めて高見山に登った のがこの杉谷からだったのだが、つい先日のような気がするけれど、調べてみたら実に1 9年が経っていた。つくづく光陰矢のごとしとあらためて思う。
山ノ神に供えられた山道具と尾頭つき
 左に杉谷の集落、右に杉林を見て歩いていくとすぐに山ノ神の祠。山の精霊や道具に感 謝を捧げるのであろう、張りぼての鎌や斧、鋸など山道具が飾ってあるのが面白い。そこ から道は折れて、しばらく九十九折れで登っていく。今は枯れてしまった大木『撞木松』 の下を抜け、ゴロ石が敷き詰められたほぼ一間幅の道は、時には深く洗掘されたりしなが ら尾根に出て、後は尾根に忠実に徐々に高度を上げていく。  ツーリングのバイクの爆音が上がってくる。300mほど離れた谷間をR166が走っ ているのだ。左の植林側には延々と鹿除けネット。ピンクのモチツツジとアセビに囲まれ た道沿いの平坦地が『古市』と呼ばれる所。一息入れるにはいいところである。昔は物々 交換の市が開かれていたというが、こじんまりとしたものだったのだろう。そんなに広い スペースはない。説明書きを見ながら立ち休憩、一口水分を補給する。
木漏れ日の伊勢南街道。時代劇のロケに使えそう
 『虱とり』一日中日当たりがいいので、巡礼が着物にたかった虱をここで退治したとい うが、確かに南側は遮るものはなく、青空の下、景色のいいバルコニーといった場所だ。 古街道はゆるゆると登って行き、次いで『雲母曲(きららひじ)』で大きく曲がって、伐 採でやや荒れた場所を越えると、斜面が大きく崩壊し、登山道が流された地点に来る。少 し上の迂回路を辿ると、よく手入れされた人工林。車も通れそうな広いダート道となり、 まもなく前方に木の鳥居が見えてきて、林道との合流点に傾いた小峠の標識を見る。近畿 自然歩道、大峠1.7km、杉谷登山口2.3kmとある。それよりも熊注意の派手な看板が 良く目立つ。  ガイド本を広げた単独兄さんがやってきた。「暑いですね」と挨拶しながら大峠の方へ 向かおうとするので「その鳥居の石段から登れますよ」と声をかける。こちらは持参の三 色団子を一串食してから、やおら腰を上げる。 「きくかこと まこと高見の山ならば わか里見せよ雲ゐなりとも」本居宣長 説明板の和歌。そういえば宣長の生地は伊勢の松阪である。  本コースで最も急斜面の小峠−平野出合の標高差は120mくらい。前回もしんどかっ たが今回はなお一層えらい。当時は四十代、やっぱりどこか違うのだろう。周囲を見回す 余裕もない。それでも足を前に出し、ジグザグにつけられた踏み跡で一気に高度を稼いで いる間に、林道も遥か下になり、今まで見上げていた南側の山々ともいつしか同じ位の高 さになっている。露岩の間に設けられた鎖場を抜けると『乳岩』の看板が出る。人声がす る方向に目を向けると、出合の道標の前で地図に見入る男女3人組がいた。
杉谷・平野分岐。直進方向が杉谷、右が平野道
 3人組は下山途中らしく平野方面へ消える。こちらはしばらく残って動悸を鎮めてから ザックを担ぐ。どこからかコジュケイの声が聞こえてくる。今盛りのヤマツツジの朱色が 一年中で最も美しい緑の中に良く目立つ。
ヤマツツジの花粉集めに忙しいクマバチ
 平野出合に出ればなぜだかもう大した登りはないものと思っていた。ところが標高差は まだ300m以上も残っている。実際、その後もズーッとほぼ一本調子の登りが続くので ある。シャリバテと相まって、根気が続かないので少し登っては立ち休憩を繰り返す破目 に。(^^; 国見岩や息子岩、揺岩などの看板がいい休憩ポイントとなる。  狭くなった尾根にヒメシャラやブナが目立ちだし、今まで目に出来なかった北側の峰々 が時折姿を現す。以前も景色を愛でた笛吹岩に立ち寄る。歩いたことのある台高の明神岳、 水無山、国見山、薊岳といったところがズラリと居並ぶ。その右奥には特徴ある大普賢岳 山上ヶ岳、大天井岳など大峰主脈の姿がある。流石にここまで来るともう山頂は目の前。 やっとこさやって来た。時計を確かめたら通常2時間程度の所要時間のところを2時間4 0分も要している! 駄目だ、こりゃ! (T_T) フーッ。大きな溜め息。  高角神社の裏手に行き、二等三角点を拝んで、今まで見えなかった東側、三峰山の大き な山容や大洞山、倶留尊山、鎧岳、兜岳、屏風岩といった室生方面の山々を拝んだ後は、 誰もいない避難小屋の屋上のベンチで遅い昼食とする。東のみは神社の祠があって見渡せ ないが、他はどっち向いても山また山。やや霞んでいるけれど、金剛葛城の姿も確かめら れる。それを肴にラーメンをすするとは贅沢の極みである。  食事中もしばらく誰もおらず寂しいくらいだったが、例によって食後のコーヒーを飲ん でいると、大峠から親子連れ、ついで西から単独小父さんが上がってくる。それでも静か なものである。1時間近く山頂にいただろうか。ちょうど2時。きりがいいので下山に移 る。登り返しがほとんどないと思うと気が楽だ。(笑)  秋冬以外には存外、登る人が少ないのか。もう誰も上がってこず、すれ違う人とてない。 3時を過ぎると流石に日も傾いて光も赤っぽくなり、斜めになった影は大きさを増して、 林の中は薄暗さを増す。茶色い動物がすばやく木の陰に隠れる。どうも日本リスのよう。 カケスがひとしきり不気味な鳴き声をあげて飛び去った。  行きは難渋した小峠−平野出合間(行程距離:500m)も滑ることもなく、降りるに従 って、白々とした林道の路面が近づいてくる。峠の往路と同じ位置でまたまた三色団子を 一串いただく。(^^; スタミナはないけれど、食欲はあるのだ。(^^;    往路で見落とした水準点を見て行こう。水準点は高さの基準となる点で道路沿いに設置 されていることが多い。タブレットのGPSを頼りに左右を確かめながら下って行くと、 洗掘された道からは上に見えるネットのそばに標識とともにあった。新しいのは金属製が 多いが、これは埋標が明治時代と思われる御影石製。頭部表面の中央が丸く盛り上がって いるのが特徴である。標高は667.4mだそうである。
珍しい花崗岩製の水準点
 やがてせせらぎの音が下で心地よいリズムを奏でているのを聞くと登山口は近い。山ノ 神の祠の辻を曲がると、急に国道を疾走する車の騒音が大きくなり、まもなく登山口に降 り立った。ロードレーサーの兄さんが1人、2人と疾走していく。いいウェアだなあ。こ う見えても、小生も独身時代は輪行車に乗って休日は近隣の歴史散歩を兼ねて走ったもの なのだ。でもその頃は、競輪パンツしかなかったなあ...。  なんとか挫折せずに凡そ800mの標高差をクリアはした。でもスタミナ不足を露呈。 初山行時より半時間以上、時間を要しているのではないか。それにしてもなんとかしない となあ。(^^; ※注意 登山届ポストの情報によると、H27/5/17現在、大峠、小峠間は土砂崩れの  為、伊勢南街道、旧国道とも通行不可で、いまだ復旧の見通しは立っていないとのこと  です。(大峠(高見峠)へは三重県側経由で可)  尚、ネット情報によれば、人は通行可能ですが落石等に要注意とのことです。
【タイムチャート】
06:25自宅発
10:15〜10:21杉谷集落(駐車地)
10:26杉谷登山口
10:43撞木松
10:52〜10:55古市
11:09雲母曲
11:29〜11:35
小峠
12:00〜12:05杉谷・平野分岐
12:29国見岩
12:55〜12:57
笛吹岩
13:10〜14:00高見山(1248.4m 二等三角点『高見山』)(昼食)
14:21国見岩
14:33杉谷・平野分岐
14:49〜14:50小峠
15:19
古市
15:35杉谷登山口
15:40
杉谷集落(駐車地)



高見山のデータ
【所在地】奈良県吉野郡東吉野村
【標高】1248.4m(二等三角点『高見山』)
【備考】
奈良県と三重県の県境、台高山脈の主峰で、R166の
木津峠からの姿は、近畿のマッターホルンの名に恥じな
い秀麗さです。隣の三峰山(みうねやま)と共に霧氷で
有名。その季節には近鉄榛原駅から奈良交通の霧氷バス
が出ます。
■日本三百名山■近畿百名山■関西百名山
【参考】
国土地理院電子地図




高見山パノラマ画像
笛吹岩から明神平方面。左に明神岳、中央は水無山、国見山。ちょこんと顔を出すのは薊岳。手前は雲ヶ瀬山。右手奥に大峰山脈。大普賢岳が凹凸する
三角点付近から曽爾の山々。左から兜岳、鎧岳、中央やや左が倶留尊山、その手前に古光山。中央は尼ヶ岳と大洞山。学能堂に右手が三峰山

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