今年の春は甚だ天候不順。予報士によれば4月は20日までで雨が降らなかった日は確
か二日しかなかったとか。その上、山菜の時季でもあってしばらく山はご無沙汰。これで
は行かぬと久しぶりの週末晴天予想に一念発起して、出かけた先はヒカゲツツジの名所、
調べてみれば5年ぶりの向山。山を始めた頃、ジモティのTさんご夫婦に案内して頂き、
それ以来何度か歩いた山でもある。しかし、花見がてらお気楽に登るつもりが、想定外の
疲労困憊ぶりに唖然呆然。下山後、悲嘆にくれる?小生なのでした。(笑)
なんかボケた日であった。折角出したカメラを玄関に忘れて引き返すはめになり、遅い
出発が更に遅くなるし、車で走れば赤信号に引っかかりまくりだし...。水分かれ公園
に着いたのはかれこれ10時15分。明日は雨予報だし、みんな今日しかないと思うだろ
うとの予想していたが案の定、駐車場は満杯のよう。が兎に角、駐車場に入ったら、今し
も出発準備中の1台のワゴンの後ろ側にスペースがある。ということで最後の一台ぎりぎ
りセーフ。これはアンラッキーから開放されたかな?(^^;
道端には柱に藤が這わせてあるが、まだまだ蕾。畑仕事のご夫婦の横を通って観音堂へ。
鹿ネットの扉を2回通ると、本格的な斜面登りになる。テープがほとんど無い。代わりに
地面近くの随所に「向山連山登山道」の標識がある。とかくテープは美観を損ねるとの不
評もあるが、これは景観に溶け込んでいて良い。真っ青な空、うらうらと眠たくなる陽気。
どこかでシジュウカラらしい鳴き声。木洩れ日にミツバツツジの薄赤紫の花。いつもヒカ
ゲツツジと同時期に咲く花である。
ところがなんだか体が重い。尾根筋にある古墳にも行き着いていないのに、もう気息奄
々の体たらく。早くも立ち止まって、花を愛でる風を装って弾む息を整える。この後、元
気一杯のおかみさんに置いてけぼりにされた姫路から来たという小父さんと抜きつ抜かれ
つ。(といってもデッドヒートではなく、休憩毎に後先が入替わるだけなのだが。)(^^;
雑木で作った梯子も残っているから置かれて間なしなのだろう。二ノ山には新たに四等
三角点が置かれている。が、石でなく金属標識というのはなんとも有難みが無いものだ。
標高300.0m。わざとキリのいい所に置いたのだろうか。(笑)
尾根道には山桜の花びらが散る。相変わらず体は重くピッチは上がらない。上げる必要
も無いのであるが、一ヶ月と少しのブランクがこんなに響くものなのか。唖然呆然。忸怩
たる思いである。
ようやくのことで岩座展望所。岩の上で幾人かが景色を楽しんでいる。馬蹄形の向山連
山が見渡せる絶好の場所だ。降り口のある鳳翔寺の甍が若緑の中に浮かぶ。駐車場に並ぶ
車の列も見え、その向こうは石生から柏原と続く街並み。遠くに見えるのは篠ヶ峰だろう
か。ほっと一息。適度にひやりとする風が吹き汗は額に滲むくらいだが、一口水分を補給
しておく。
三ノ山まで来ると、ようやく尾根筋に出て反対側の春日町方面が視界に入る。そこから
桧林を一旦下ると亜炭展望所。名前の元になった黒い地層も以前はもっと豊富にあったよ
うに思うが気のせいだろうか。この辺りまで来ると目当てのヒカゲツツジがポツポツ現れ
る。やや盛りが過ぎて変色しはじめているものが多いが、花数は例年と遜色ないようだ。
今年は桜も咲き急いだのでヒカゲツツジもそうではないかと一抹の不安があったけれど、
これならばもう少し標高が高くなれば最適のタイミングに行き当たりそうである。
そろそろ昼食時。どこかいい場所はと探すうちに四ノ山や先客のいる松ノ台展望所を過
ぎて100mばかりやってくる。尾根筋から一歩離れた所にちょうど一人分ほどのテラス
状の岩があった。岩の下は切れ落ちていてヒカゲツツジが満開。左手には松ノ台の峰。眼
下は春日町。城山から五台山へと続く山並みを背景に、碁盤の目のような水田が美しく、
車輪の音高く福知山線を行く二両編成のローカル列車がある。まことに箱庭を見ているよ
うである。
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ヒカゲツツジB
松の台展望所辺りから北東方向、五台山方面 |
さて、今日のお目当てヒカゲツツジは向山三角点から最高峰、蛙子峰辺りがハイライト。
この間、向山平付近を除いて、小刻みなアップダウンがきついが、その分、上下からヒカ
ゲツツジを楽しめる。俄然、立ち止まることが多くなる。予想通りこの辺りは正に開花た
けなわの状態である。風に揺れる明るいクリーム色に虫が群れる。この沢山の明るいクリ
ーム色がサワテラシの別名をもたらしたのであろう。これで微かな香りでもあればむせ返
るようであろうにと想像を巡らせる。
譲葉山の分岐まで来るとさしものヒカゲツツジも一段落。硅石山の鉱山跡を経て、植林
の間の下りを進む。
清水山の登りはこんなきつかったかな。距離は短いがつま先上がり。桧の林の下をまた
またゼィゼィフーフー云いながら頂に出ると、登りで前後していた男女グループが先着し
ていて、思いがけず小母さんからコーヒーゼリーを差入れして頂く。「冷えてないけど」
とおっしゃるが、なんのなんの、山の外気温は低く、結構冷たく、美味でありました。
ここにも四等三角点が設置してある。関電の巨大な反射板の柵の手前。二ノ山と同様、
雑木の梯子もそのまま残してある。頂周囲のミツバツツジはまだ蕾で、ほんの少しの標
高差でこんなにも差が出るものか不思議なほどである。
さて、コーヒーゼリーの礼を言い、10分ばかり休憩して鳳翔寺へと下山開始。丹波
の山は山頂付近の斜度がきつい傾向があるが、ここも例外ではない。万一石車に乗って
も大丈夫なように立ち木を掴んでおく。ほぼ尾根を忠実に下りるコースには途中、標識
の行き先が南多田と変わる部分があるので注意。その標識から50mも進めば南多田へ
分岐がある。というより、本来、南多田への道が正式ルートだったのだろう。鳳翔寺へ
の道より良く踏まれている。
その分岐から5分ほどで剣爾山に到着する。北側が素晴らしい展望で、歩いてきた行
程を見渡すのに良い。運動不足が堪えたが、眺めてみればさもありなん。結構なアップ
ダウンなのだ。(^^;;
この辺りもミツバツツジが多いのだが、ちょうど満開の時季に行き当たったらしい。
高さ3mくらいの木はさながら藤紫の花束である。
このコースにはイルカ岩、亀岩、天狗岩など所々に大きな岩が点在する。中でも天狗
岩は麓のいそ部神社(いそは山偏に石)の磐座ということで、麓からも眺めることが出
来る。登ってみると西側の田園風景が一望される。戦国時代は加古川沿いの街道の監視
所になっていたのではないだろうか。
九十九折れを下ると植林下となって、南へトラバースした後、浅い谷に出て、ガラガ
ラと大きな石が累積した中を進むと鳳翔寺の屋根が見えてくる。だが、その前にぐるり
と鹿ネット。これが難所?だった。扉の手前が出水で完全にえぐられて、その上にアル
ミの脚立が橋渡されているのみ。前を進んでいたグループが停滞しているなと思ったら
原因はこれだった。(^^;
今日は寺には寄らず車道へ。馬蹄形を成し緑が濃くなった向山連山を右手に見て、5
分ばかりでスタート地点の駐車場に戻る。少々お疲れモード。バイオリズムが良くなか
ったことがあったかもしれないが、それにしても一ヶ月のブランクは、想像以上に影響
が大きなものだった。
とはいえ気分は爽やか。午後三時半。駐車場の車は減ってほぼ四分の一くらいか。車
にザックを置いて山を見上げると、さっきの天狗岩に人影がちらちらしている。その上
空には予報通りうす雲が出てきて白っぽくなっている。明日は妙見山で恒例BBQオフ
だが、少し怪しくなってきたなあ。日中だけは降らないことを祈って帰路に着く。コー
ラを求めて途中立ち寄ったコンビニから望んだ清水山の反射板が「またおいで」と挨拶
しているように思えた。また来年も宜しく。
【タイムチャート】 |
8:40 | 自宅発 |
10:15〜10:25 | 水分れ公園駐車場(駐車地) |
10:28 | 観音堂登山口 |
10:56〜10:58 | 二の山(300.0m 四等三角点『二の山』) |
11:19〜11:23 | 岩座展望所 |
11:32〜11:36 | 三の山(470m) |
11:50〜11:52 | 四の山(511m) |
12:00 | 松の台展望所 |
12:13〜12:53 | 小テラス(昼食) |
13:02 | 深沢北峰(521m) |
13:15〜13:17 | 向山(569.0m 三等三角点) |
13:35 | 五の山 向山最高峰(591m) |
13:46〜13:47 | 蛙子展望所 |
13:54 | 蛙子峰(562m) |
14:20〜14:30 | 清水山(545.3m 四等三角点『清水山』) |
14:44 | 南多田コース分岐 |
15:10〜15:12 | 天狗岩 |
15:20〜15:25 | 鳳翔寺 |
15:32 | 水分れ公園駐車場 |
■今回のコース軌跡は採取していません
向山のデータ |
【所在地】 | 兵庫県丹波市 |
【標高】 | 591m(三等三角点569.0m) |
【備考】 |
石生奥山、八幡山とも呼ばれる中央分水界にある山です。
ヒカゲツツジの群落があり、4月下旬は黄色に染まりま
す。近年、地元の方々の尽力で縦走路が整備されました。
麓に式内社のいそ部神社と、日本最低の中央分水界を記
念する水分れ公園があります。最寄はJR福知山線石生
駅です。 |
【参考】 | 国土地理院電子地図 |
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