笠形山〜昔登った山にまた登ろう

笠形山山頂の一等三角点
平成27年 6月 7日(日)
【天候】うす曇り
【同行】単独


 「昔歩いた山にまた登る」シリーズと銘打って、昔懐かしい山にまた登り始めている。
藤無山、高見山と続けて第三弾は播磨の名山、笠形山である。先々週に標高差600mを
バテずに登れて、ちょっと自信回復。というわけで今回は標高差700m。果たして思惑
通りバテずに登れるかどうか。(笑)

 中国道滝野社ICを降りて県道34号に出、野間川沿いに西北方向へ。低山だが目立つ
山が左手に見える。ナビで確かめると角尾山らしい。どこか聞き覚えのある名前だと思い
帰宅して調べてみたら、昔、滝野社IC近くの光明寺から、尾根伝いに辿ったことのある
山だった。へぇー。こっちから見るとこんな山だったんだ。(@O@)

 淡々とした田園風景の中を進んで次第に山が近づいて来ると、舟坂峠のトンネル。通り
抜けると笠形山登山口の看板が出る。右折すると寺家(じけ)の集落で、昔はなかった、
十数台は停められそうな立派な登山者用の駐車場がある。

 準備して歩き始める。集落内を北に歩いてY字路を左に。田植えから間もない早苗を見
つつのんびり坂道を歩いていけば、まもなく笠形神社の大きな石鳥居が見えてくる。砂防
堤の大規模工事が行われていて、登山道が付け変わっているとの注意書きが掲げられてい
る。獣除けの扉を開けて登山道を兼ねた笠形神社の参道を進む。舗装林道笠形線が横を走
る。湿り気を帯びた薄暗い杉林の下、ゴロ石が転がる道ばたには、丁石を兼ねた石仏の柔
和な横顔がある。

 10分ばかりのウォーミングアップの歩きで笠形寺への道が分岐する。谷川を渡ると休
耕田なのか耕作放棄地なのか草ぼうぼうの棚田を左に、一見、民家のような笠形寺の建物
を見る。寺らしい建物といえば、蔵王堂と弁天池の前のお堂くらいだろうか。境内散策は
帰りのことにして先へと進むと、弁天池の北側が大きく切り開かれ、巨大な砂防堰堤が現
れた。

 百m四方は伐採されて赤土剥き出し。二段に構えた堰堤が建設中である。笠形山へは堰
堤の向かって右の、付け替えられた林道を進むようにと表示がある。コンクリート道の傍
に丁石仏も移設されて、なんとなく居心地が悪そうである。

 山中に入り、ようやく落ち着いた旧参道のつづら折れになってホッとする。マツカゼソ
ウがなよなよと群生している。しかし、なんだか顔の周りに虫が多くて鬱陶しい。流れが
近くにあるのでアブ類が多いのかも。神社まで30分の道標が立つ「休み堂」から勾配は
増して、東屋のある林道終点からは更に厳しくなる。「笠形神社へあともう少し」の案内
板に力を貰い、右に折れて急坂を登る。三十四丁だったか三十五丁であったか、光背に享
保年間の彫字がある石仏の笑い顔の前を過ぎると神社の境内入口。根元にニホンミツバチ
の巣が有る大杉の横をそっと通る。ブーンと羽音を鳴らせてミツバチが木のウロに消えて
いく。
笠形神社参道の柔和な石仏
 姫路城の心柱に供出された杉の株跡横に建つ社殿の縁側で一息入れ、小腹宥めに三色団 子を一串。最近、この三色団子が好みなのだ。(笑) それにしても見事な欄間彫刻である。 丹波柏原の宮大工の共同作品だとか。昔から地方にもこんな素晴らしい技術の持ち主がい たのだ。
立派な笠形神社中社。欄間が華麗
 神社を後にすると山頂まではほぼ1時間の道のり。鬱蒼とした杉林の中、左に谷を見な がらトラバース気味に遡る。露岩の間を抜けると左の谷が近づいてきて、その細まった流 れを渡ると、植林が途切れてベンチのある裸地に出る。南が開けて明るい。眼下の集落は 車を置いた寺家だろう。  この付近からはしばらく雑木林歩き。トラバース気味に山懐に入り、再び現れた杉林で 蓬莱岩コースとのショートカットコースの出合から直角に折れて、熊笹の切り開きを抜け ると一気に登り始める。頭上に見えた杉林辺りから『恐怖の土止め階段500連発』の急 登。(笑) これはこたえる。登山者の皆さん、階段を嫌がっているようで階段横には踏み 跡が出来ている。(笑) 
笠ノ丸手前の急坂
 ヒキガエルの鳴き声が右手から聞こえる。狭い襞みたいな谷底に少し水が流れているよ うだが、どこで卵を産むのだろうか?この程度の水分でオタマジャクシは生きて行けるの だろうか?  岡部川の水源の標識があって、その先の丸いピークが笠ノ丸。東屋にトイレ、蓬莱岩方 面コースとの出合にもなっている。木々の間に東屋を載せた笠形山の本峰がちょこんと顔 を見せている。そこまで約1km。20分の行程である。  笠ノ丸からはぐっと下った後、2、3の小ピークのアップダウンをこなしながら、神崎 町コースの出合を経て山頂へと近づいていく。雑木林はアセビが多いが、白い花もチラホ ラ目立ち、花の軸ごと沢山転がっているのはエゴノキ。花びら(実はガクなのだそうだ) がヒラヒラするのはガクウツギか。そんな中、小さい赤っぽいものが地面にばら撒かれて いるのが目に入る。見上げるとベニドウダンツツジが咲き残っている。アセビばかりと思 っていたけれどよく見ればツツジの木も多いのだった。(アセビもツツジ科の植物です)
台形状の笠形山本峰。東屋が見える(笠ノ丸より)
 人の声が聞こえてくる。木立の向こうに東屋の屋根。ポンと飛び出したのは二十畳ほど の笠形山頂。以前見かけなかった水色の金属製東屋が増えている。2、3あるベンチには 先客がいたが、幸い東屋が空いていたので隅に腰掛ける。東屋は改築されたようで新しい。 寒暖計があったので覗いてみたら18℃である。天候は下り坂のようで薄い雲が増えてき たが乾いた風が汗ばんだ額に心地よい。  食後のコーヒー片手に360度の展望を楽しむ。やっぱり北の千ヶ峰が目立つ。その左 手奥のなだらかな稜線は段ヶ峰だ。眼に入ってはいるのだろうが、暁晴山や雪彦山はどれ だか私にははっきりしない。それにひきかえ明神山はピラミダルな姿で存在をアピールし ているが、山体が意外なほど小さい。南方向に目を転ずると六甲の連山や雄岡山、雌岡山 らしい突起があり、淡路島や家島群島が瀬戸内海に浮かんでいるが、やや靄っている為か 明石海峡大橋は認められなかった。  気がつけば1時間以上も山頂にいる。夕方から野暮用。そろそろ、片付けにかかる。こ れだけの山だから登る人も多いだろうと思っていたが、笠ノ丸との鞍部で一組の男女にす れ違ったくらいで、あとは誰にも遭わない。遭ったといえば堰堤工事現場で大きな雄鹿を 見かけた。かなりの大物で体長は1.3mは優にあったと思う。堰堤下流の造成地から林 に入ろうしており、大きく一拍手すると、それまで気づいていなかったのか慌ててこちら に顔を向ける。そして10秒ほど睨み合って後、悠々と茂みに消えた。50m程度離れて いたのでいいものの、間近で出遭ったりしたら泡を食っていただろう。(^^; それにして も大物だった。  帰見山笠形寺。弁天池から蔵王堂の石段を下って、寺の小さな庭に咲き誇っていた薄紫 色のシャクナゲの花を眺めていると、ちょうど作務衣姿の住職さんが庫裏から現れた。現 在は天台宗の末寺だが、聞くとやはり丹波や播磨地方に多い法道仙人の開基だそう。天然 記念物の高野槙の巨樹があり、本堂の前には珍しいギンモクセイが植わっている。砂防堤 の工事現場で大きな雄鹿がいたというと、この辺りも畑の周囲に柵をしているが、難なく 飛び越えて作物を荒らすので困っているのだと苦笑いしておられた。  四方山話に天狗の言い伝えなどの話を聞いた後、おいとまして緩々と下る。大鳥居の駐 車スペースは虎ロープが張られて、砂防堤の工事関係者の車の専用の札が揺れている。駐 車しないで良かった。(^^;  午前中には見かけなかった村人もちらほら。畦を修理している小父さんがいる。幾年も ほったらかしの休耕田を甦らせようとしているという。田は水が抜けないように底を固め るというが、モグラの穴などの修復に、収穫期には野生動物の防御にと、復旧作業はほん と半端じゃなさそうである。
駐車場から。中央の鞍部がベンチのある台地
 戻り着いた駐車場で三色団子の残りを頬張りながら歩いてきた山の方を眺める。こんも り盛り上がった笠形神社の杜の上方に、山の地肌が見える部分がある。多分、神社から植 林帯を抜けたベンチのある裸地に違いない。その時、あの変な掲示物の存在目的が閃いた。 誰が取り付けたかは知らないが、廃CDやアルミ箔で作られた代物が幹に懸けられていた のだ。あれは日光を反射させて位置を知らせるものじゃないのか。何のために?だからど うなの?と言われればそれまでだが、とりあえず腑に落ちた気がした。(^^;  十数年ぶりに訪ねた笠形山。正面コースは神社の手前まで林道が延び、砂防堤工事で雰 囲気が変わってしまったが、山頂のパノラマはやはり素晴らしいものがあった。所要時間 も、初回とそれほど変わらず。少〜し、自信も回復だ。『昔登った山にまた登ろう』シリ ーズ。さて次はどこにするかなあ。
【タイムチャート】
07:40自宅発
09:14〜09:23寺家集落登山者駐車場(駐車地)
09:35大鳥居
09:48〜09:49笠形寺
10:00休み堂
10:26〜10:36笠形神社
11:10〜11:13
笠ノ丸(883m)
11:33〜12:48笠形山(939.4m 一等三角点『笠形山』)(昼食)
13:07笠ノ丸
13:35〜13:38
笠形神社
13:55休み堂
14:05〜14:17笠形寺
14:24大鳥居
14:33寺家集落登山者駐車場(駐車地)



笠形山のデータ
 【所在地】兵庫県神崎郡神河町(旧神崎町)・多可郡多可町(旧八千代町)
【標高】
939.4m(一等三角点『笠形山』)
【備考】
西播磨の名山で播磨富士とも呼ばれています。頂上は3
60度遮るものがなく、視界の良い日は大阪湾を隔てて
和泉山脈から明石大橋、瀬戸内海から四国、京都の愛宕
山迄見えるということです。中腹には法道仙人の創建と
いわれる笠形寺や姫路城の心柱を産出した笠形神社、北
麓にはレクリエーションゾーンのグリーンエコー笠形が
あり入浴も可能です。
■関西百名山 ■近畿百名山
【参考】
国土地理院電子地図




笠形山頂から北方。中央は入相山から飯森山、千ヶ峰と続く山並み。左奥の段ヶ峰の更に奥に氷ノ山が見えるはずだが...。眼下右に加美町、左に神崎、市川の集落が望める

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