藤無山〜懐かしのオフデビューの山へ

藤無峠西の伐採尾根付近から藤無山(2013/5)
平成27年 5月 2日(土)
【天候】晴れ
【同行】単独


 山歩きを始めたのはかれこれ20年近く前になるが、その頃はインターネットはまだま
だ走りで、山好きの情報交換はもっぱらニフティやビッグローブなどのパソコン通信だっ
た。その中で早々と立ち上げられたのがAさんが主宰するHP。情報量が多く、たびたび
ROMさせてもらっていた。それから投稿したりするようになるのは自然の成り行きだっ
たけれど、時々行われるオフミーティング参加にはまだまだ二の足を踏んでいた。それが
99年の秋だったか、恒例のオフミが奥播磨の藤無山で行われるというので、今回こそは
ドタ参してみようという気になった。参加の方々の名前は知っているので、その点の不安
はなかったものの、一度も訪れたことのない山に期待半分、不安半分のオフ・デビューだ
った。そんな藤無山へドライブを兼ねて16年ぶりに登ってみる気になった。

 2日はGWの渋滞ピークとの予想に久しぶりに5時起き、6時出発である。そういえば
去年の鉢伏山行きも5時起きだった。 (^^; コンビニに寄って中国池田に来ると山口J
N先頭にもう7kmの渋滞表示。宝塚から乗るつもりだったが、去年と同じく三田まで地道
を採ることにする。そして、新三田に出たところで、渋滞なんか嘘のようなR176を見
て、いっそ篠山まで下でと切り替える。後は綺麗な緑の中をスイスイ。養父ICから大屋
町に出て西へ。本当にGWなのか?疑うほど車なんかほとんど通っていないではないか。
なんと自宅を出て2時間40分で見覚えある大屋スキー場に到着だ。

 スキー場はオフシーズンはオートキャンプ場になっていて、GWということで下の駐車
場はそこそこ車で埋まっている。それを横目に取付け道路を道なりに上がって行くと前回
も車を置いた覚えのあるロッジふじなしの前に出た。

起点のロッジふじなし
 1Fの食堂は準備中のようだ。2、3の人影が厨房の中を行き来している。その一人に 声をかけ、宿泊施設の前の広場への駐車の許可を得る。ついでに藤無山の登山口のことを 確かめると、ロッジ横の林道をずっと登っていけばよいとのことである。確かに大音量で BGMが流れるゲレンデの奥の高い箇所に、白いガードレールが伸びている。    まずはテクテクと林道を辿る。16年前の前回にはこんな林道は無かったように思う。 あの時はゲレンデを直登して尾根を乗っ越し、雑木林の中に入り込んだように思う。大き く回り込んだらグラススキー場の上に出た。高さ10m位の優美な滝がある。その前の濡 れた道路上を何か黒っぽいものがうごめいていると眼を向けたらカラスヘビである。  早朝、三田周辺を走っている時は一桁台だった気温も20℃近くに上がっているのでは ないか。日向を避けてなるべく日陰を探す自分が居る。立夏ももうすぐなのだ。  最初のY字路は右を採る。岩屑の中に背丈ほどもある石が転がり、大きく崩れた崖が現 れる。ダートながら普通車でも走れそうな路面はここまでである。土石の間を抜けてやが て再びY字路。ここは直進する。気をつけていると、いずれのY字路にも、消えかけてい るが「ふじなし山」と書かれた標識が立てかけられているのが分かる。そのY字路からお よそ50m、開削間無しのような赤土むき出しの道を進むと峠に出て、ようやく登山口を 見つける。時計を確かめると、出発からここまで40分ほどの道のりである。
林道終点の峠にある藤無山登山口。左上へ急登だ
 目の前の桧林の急斜面を登ると藤無山、その右側の浅い谷筋を下ると道谷へ出ると道標 が指す。道谷は若杉峠の西の集落だが、以前、三久安山から北尾根を辿って荒れた県道に 降りてきた時、藤無山の登山口があったのでそこへ続いているのだろう。谷筋は枯れ枝な どでやや荒れ気味に見えたが、地形図を見ると県道とは直線距離にして300mと離れて いないから、藤無山への最短コースになるだろう。ただ、県道はやや荒れていたので、普 通車が登山口まで来るには少ししんどいかもしれない。  さて、小休止して桧林の斜面に取り付く。最初だけ土止めの丸木階段が見えたが、すぐ に落ち葉や枯れ木で覆われてしまう。左右にジグが切られた踏み跡を辿る。のっけからか なりの胸突き八丁である。すぐに息が弾み、汗がこめかみ付近を流れだす。一気に標高差 50mばかりをあえぐと、桧林が途切れて周囲が明るくなり尾根に出たことがわかる。踏 み跡も明瞭となって東へと伸びていく。やれやれ、一息入れて汗を拭う。
P982から藤無山(右奥の峰)左奥はP1076
 しばらく平坦だった踏み跡を少し登った小さな高みが982m標高点。bS6の杭があ る。前方に藤無山の前衛らしいピークとその奥の峰がようやく姿を現してくる。ここで明 瞭な踏み跡は南に振る。無意識に道なりに進むと下り始めるが、その先の枝を張った桧林 の間をすり抜け加減で急に怪しくなった。ちょっと変だと先程のピークまで戻ったら、曲 がらずとも直進方向に踏み跡があるではないか。軌道修正して後はひたすら尾根芯を進む ことに専念する。というか、ここ以外は問題になるような箇所は無い。(^^;  概ね北(左)の養父市側が植林、南(右)の宍粟市側が雑木の播但境界だ。『兵施公界』と 四文字が記された杭が打ち込んである。昔は笹が茂ったヤブ山だったそうだが、今はその イメージは全くない。ムシカリの純白の花が盛りで、足元ではタチツボスミレやニシキゴ ロモだろうか、うす紫系統の花をつけている。
ニシキゴロモ
 小刻みなアップダウンで徐々に標高を上げていく。坂の途中で振り返ったらいつしか氷 ノ山の姿が見えた。それを口実にまた小休止。調べたら1020m等高線付近。お茶を一 服。この頃、単独の気楽さ、休憩ばかりしている。(笑)  前方に道標が現れた。地形図で云えば1050m等高線の突端付近だ。道谷と表示があ り、登山口に上がっているのと同様、県道からのものに違いない。
山頂へ続く明るい尾根。芽出し間もない木々が初々しい(道谷分岐付近にて)
根性ブナ。どうしたらこんな形に?
 気が付かなかったがブナが増えている。あまり大きなものは無いが、洗面台のトラップ のついた排水管に似た形に上から押さえつけられたような根性ブナがあって面白い。10 76m標高点ピーク、岩のミニピークを越えると、前に控える斜面の向こう側にはそれ以 上に高い部分が無く、いよいよ藤無山の山頂に近づいたことが分かる。露岩が埋まる部分 に登ると、そこは南北に長い藤無山の山頂の北端である。山頂部での展望はここが一番良 く、といっても北方向のみだが。蘇武岳や鉢伏山、杉ヶ沢高原、西北に谷筋に雪を頂く氷 ノ山の長大な姿を見ることができる。
藤無山山頂
 山頂部の新緑を濃くし始めた疎らな木々の間を南方向へ50mほど進むと、小広い広場 に三角点と山名板が立っている。ところが意外にも誰もいない。そういえばここまで誰に も出遭っていない。(結局行きも帰りも誰にも遭わなかった)  風の音と鹿の警戒音が遠く聞こえるだけの静かな山頂も全然記憶がない。多分、登山口 が違っていることもあると思うが、記憶も一昔半も経てばこんなものかなぁ。  意外に早く着いて食事するにも少し早いので、食事は適当な所で摂ることにして往路を ゆるゆると戻ることにする。再び立った山頂北端で写真を撮っていると、ブンブン、耳を 掠めるクマバチの羽音。もうそんな季節だ。  淡々と進んでいる間にいつの間にかもう植林帯が見えてきた。植林の急斜面を下りて、 食事は登山口の向かいのヘリポートのような四角い盛り土の台地が良さそう。日を遮るも のはないが、薫風が吹き上げてきて心地よい。40分ほどマッたりしていたが、やっぱり 誰も来なかった。  GW後半、ゲレンデは色とりどりのタープやテントが並ぶ。マットの上を滑るスキーヤ ーやスノーボードは隅のゲレンデを使っていて肩身が狭そう。(笑) ロッジの兄さんに駐 車の礼を述べてザックを下ろす。  山を降りてまだ時間がある。折角なのでオキナグサを拝みに別宮へ行ってみる。そのま ま北上できれば近いのだが、杉ヶ沢高原のある山並みが東西に走っており、迂回しなけれ ばならない。それでも30km足らず。GWが嘘のようにR9も車は少ない。2時過ぎには 別宮の中心にいた。  道の真ん中に山ノ神の石碑がある。そうそう、ここを下って行けばテニスコートだ。た だ問題は花が咲いているかどうかである。去年は5月3日に訪れたが、今年は花の旬が全 てにおいて10日から一週間ほど早い。空振りかも、一抹の不安を胸に道を急ぐと....。
オキナグサ。今年も花に会えました
 杞憂だった。もう名前の由来になった『オキナ』になった花もあって、若干、盛りは外 していたけれど何とか滑り込みセーフといった感じ。コスモスのような細かい葉に産毛一 杯の茎を伸ばし、赤茶の釣鐘型の花をうつむかせていて可愛いものだ。早速何枚かパチリ。 このオキナグサ、兵庫県では絶滅危惧種に指定されており、この場の個体は保存の為、種 を採取し播いたものだそうだ。願わくば種の絶えんことを。  ここまで来たら逆さ氷ノ山も拝みに行こう。鉢伏方面へ数百m走れば目に前にドーンと 氷ノ山が全貌を現す。ところが....。なんと田に水が入っていないのだ。今年は早めに推 移する季節なのに、田植えは例年より遅れているのだろうか。道路沿いの1枚にのみ水が 入っていて全く空振りというわけではなかったものの、氷ノ山は去年より雪が少なく迫力 が今いちだし、風もあって水面も鏡のようにというわけにいかず、そんなわけで少しもの 足らずである。しかもやや逆光。逆さ氷ノ山、やはり山襞が隈なく眺められる朝の順光時 が一番である。
逆さ氷ノ山。去年より雪が少ないようだ
 さて、そろそろ引き上げよう。道は相変わらず空いており、結局、往路を逆に辿って、 高速は春日から丹南篠山までの350円のみ。いつものGSで給油したら、622kmを無 給油で走っており燃費は19.4km/L。タイヤを新しいエコタイヤに替え、オイルを交 換した効果か、こりゃあ新記録だ。(^o^/  16年ぶりのオフデビューの山、藤無山を歩 いて、晩酌のビールが美味かった。 
【タイムチャート】
06:00自宅発
08:40〜08:55ロッジふじなし駐車場(駐車地)
09:34〜09:35藤無山登山口
09:50〜09:55P982
10:15〜10:20尾根1020m付近(小休止)
10:25道谷コース出合
10:30P1076
10:55〜11:00藤無山(1,139.2m 四等三角点『藤無山』)
11:15P1076
11:18〜11:19道谷コース出合
11:33〜11:36P982
11:45〜12:20藤無山登山口(昼食)
12:55ロッジふじなし駐車場(駐車地)

■今回のコースはこちら


藤無山のデータ
【所在地】兵庫県養父市(旧大屋町)・宍粟市(旧一宮町)
【標高】1139.2m(二等三角点『』)
【備考】
鳥取県境運に近い播但の境、氷ノ山の東に位置します。
かつてはガイドに紹介されているようなヤブ山だったよ
うですが、北麓にスキー場が出来、宍粟50山にも選定
された現在は、比較的手軽に奥深い山を愉しめます。
■近畿百名山
【参考】
国土地理院電子地図




藤無山パノラマ画像
藤無山山頂北部分からのパノラマ  左に雪を残す氷ノ山、中央の樹木左が鉢伏山、樹木右手前側が杉が沢高原、右、蘇武岳
藤無山山頂から南方向。段ヶ峰方面のパノラマ

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