焼山・西鎌倉山〜冬枯れの低山を愉しむ |
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JR福知山線藍本駅からR176を南に歩くと、蛇行する武庫川を二度渡るが、南側の 波田橋辺りから東を望むと、大峰の行者還岳に似て、南方向に首を傾げる三角形の山が自 ずと目に入ってくる。焼山と呼ばれる四等三角点の山である。二年前に三田市北部の須磨 田三山に登った時は駅から歩いたのであるが、肝腎の須磨田三山よりも相対してそびえる 焼山の特異な姿をした存在感が気になっていた。今回はその焼山と尾根続きの西鎌倉山を つないで登る計画。藍本駅の西側にある虚空蔵山の人気に比べ、知る人ぞ知るという存在、 思いの外、植林も少なく、それこそ人っ子一人とも遭わない、まことに静かな低山歩きを 堪能させてくれた。 8:47 藍本駅着の丹波路快速は若干遅れて8:50着。降り立ったのは今回参加す る電車利用組のメンバの3名だけである。駅前で待つうちに定刻9時には参加予定の8人 全員が集まってくる。ちらっと飛雪が舞う中、車2台に分乗して、起点となる波田集落の 墓地近く、村道の路肩が広まった部分に車を置かせてもらう。
六地蔵が出迎えてくれる。墓石の間に背の低い茶の木の植わるささやかな墓地の背後の笹 むらを掻き分けると、雑木の枝が少々うるさいが下草もない歩きやすい尾根が現れる。よ く見れば獣道然とした薄い踏み跡もあり、"山"と刻まれた境界石もある。左側は雑木に隠 れているが崖っぽいようだ。元々マツタケ山なのであろう。松が目立つが枯れて倒れたも のも多く、最近は全く収穫はなさそうである。 尾根の傾斜をゆっくり上がっていくうちにどこからきたのか、良く踏まれた古い道が現 れた。しかし、しめしめと安心しているとうっかり尾根芯を外して下っていってしまうか ら要注意。適当な所からやや藪っぽい尾根芯に出ると、重ね餅みたいな大きな露岩が鎮座 している。ここは右から巻いてやりすごす。 所々で見かけるアセビの蕾も大分はっきりしてきている。寒の入りで冬真っ只中とはい え、もう一ヶ月もすればセツブンソウや沈丁花が咲き始める季節なのだ。と思ううちにや や傾斜が増してくる。 四等三角点『岩倉』はやや倒木が目立つちょっとしたピークに置かれている。全く欠け のないきれいな標石は瓦で周囲を保護されているのが珍しい。立ち木に何か仕掛けられて いる。野生動物の調査用のカメラのようだ。そういえば途中に狸の溜め○があったが、同 様に我々も野生動物にカウントされているかも....。(笑) 一息入れる。
尾根は一旦、高度を下げる。右前方に焼山らしい三角の姿が見えてくると、その方向へ またぐんと高度を下げていく。ややコースを外したのか踏み跡がなくなったが、枯れ葉に 滑りつつもかまわず降っていくと鞍部に出た。南北に踏み跡が見える。日出坂から越良谷 を経由して、岩倉の五葉院や本庄の駒宇佐八幡宮への参詣に用いられた間道なのかもしれ ない。鞍部から東方向へ登るとまた尾根に出て、そこで褪せてオレンジ色になった大柿布 らしい布切れを見つける。 藪もなく歩きやすい尾根が続く。ただ展望はあまり良くなく、千丈寺山らしい山蔭がち らと見える程度である。それで自ずから淡々と歩は進む。鞍部から20分ばかりで小さな 高みに出た。このCa410mのピークが焼山分岐に当たる。一見変哲も無い小さな裸地で あるが、よく注意すれば立ち木に私設の小さな案内板が打ちつけてあるのが分かる。(迂 闊にも小生は焼山へ往復し戻ってきた際に気づいた。(^^; )
地形図でも分かる通り尾根の左右ともかなりの傾斜がある。でも展望は木々に邪魔されて ほとんどなし。途中で左手に上本庄らしい民家と冬枯れの田畑がちらりと覗いたのみ。そ うこうしている間に麓で想像するようなきつい登りもなく、行く先は行き止まりとなって、 そこが焼山のネコの額ほどの山頂である。先の『岩倉』同様、保護石の代わりに瓦が使わ れた四等三角点がある。違うのはこちらは角が少し欠けていること。ここも惜しいことに 展望に恵まれないので小休止を兼ねて記念撮影を済ませて、分岐のCa410mへ戻るとす る。登れる露岩でもあればさぞかし素晴しい見晴らしだろうに....。
焼山分岐のCa410mピークからはしっかりした尾根道がある。それもそのはず関電の 巡視道になる。bR6の火の用心標識、更に小さな鞍部にあるbR6、37の火の用心標 識に従って、急登する。ここも高度差は50mくらいか。しばらく我慢すればまもなく緩 い登りに変わる。 尾根上の伐採地が現れた。ここまで展望の開ける場所があまり無かっただけに新鮮であ る。南東に天神岳、茗荷谷山、遠城寺山と続く須磨田三山の目の前、とりわけ天神岳のピ ラミダルな姿が端正である。その向こうにわだかまるのは多分、千丈寺山で、有馬富士も こじんまりと姿を見せている。先ほど歩いた焼山もすぐそこにある。その辺りからはもう ほとんどアップダウンは無く、なんなく東播線bR6の高圧鉄塔の横の木立の中の、鉄塔 建設の為の造成を辛うじて免れたような小高い部分に立つ。少々の藪と聞いていたが、木 々が間引きされたのか隙間だらけで、内一本に西鎌倉山の山名板を見つける。460mの 標高点ピークで三角点はない。北方向に展望が開けるのみで、海見山や白髪岳の東にある 松尾山らしいピラミダルな姿が望める他、鉄塔があるからといってそれほどの見晴らしは ない。が、静かである。頃合いもいいのでここでランチタイムとする。気温は4℃。じっ としていると汗が冷えてやはり寒い。サーモスの熱いお茶が美味い。
おり、北へは明瞭な踏み跡は無いが、よく見ると立ち木にテープが巻かれているのが見つ かる。立ち木にすがりながら蕾をつけたミヤマシキミが目立つ急斜面を下るとまもなく鞍 部に着く。ここで左(西)に進路を変えて再び急斜面を下る。しかし下る距離は短く、ほん の標高差20mばかりで越良谷の源頭部分に出られる。古い炭焼き窯の石組がひっそりと 残っている。
越良谷の源頭は葉を落とした細いが高さ20mはありそうな喬木が生える明るい場所だ。 右に左にと、歩きよい部分を選りながら谷筋を行くに従って、いつの間にかチョロチョロ と水音がし始める。敷き詰められた落ち葉にゴロゴロした石が隠れ、滑って歩きにくかっ た谷筋も徐々に広がってくると、周囲は雑木林から所々植林に変化する。関電の火の用心 マークが出始めると小道が現れた。支えが落下して揺れる木橋を渡りしばらくすると、対 岸に古いロッジ風の小さな小屋が現れた。雨よけなのか大きな防水シートがテラスを覆っ てある。枯葉が溜まり、最近はあまり使われていないようである。 ここまで来るともう林道と呼べるくらい道は広がって、アベマキの大木なども現れて、 里が近いことを示す。今度はしっかりした橋を渡ると、右手に最初の溜め池。薄いエメラ ルド色の水面にちょうど日が射した対岸の雑木林が映りこんでなかなかの風情。さらに下 ると、今度は左手に大きな溜め池がある。そうこうする内に木の間越しに民家の屋根が見 えてきた。雑木のトンネルからひょこっと飛び出ると、舗装路の横、民家の庭続きみたい な場所である。
に行くとやがて武庫川沿いとなって、対岸にR176、JR福知山線が近づいてくる。東 は往路の三角点『岩倉』のある山塊。そし右前方に藍本駅の跨線橋が小さく見えてきた辺 りで、途中、帽子を落としたことに気づいたUさんが探しに戻ったのを待つことになる。 無風で日だまりは3月はじめの早春のような暖かさだ。急に空腹を覚えてコンビニお握 りを食べ終えたところで、先行していたMさん達の車がやってきた。おやおやUさんも便 乗しているではないか。結局帽子は見つからなかったようだ。 摂丹国境に近くの焼山と西鎌倉山。行者還岳に似たその姿から少なからず気になってい た山だったが、誰一人とも遭わない静かな冬枯れの低山の捨てがたい味を久々に賞味させ てくれた。歩く機会を与えてくれた皆さんに感謝です。
■同行:裏人さん、くーちゃん、幸さん、たらちゃん、二輪草さん、水谷さん、 モグさん(五十音順)■今回のルートはこちら
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