タイタン尾根から初秋の奥駈道周辺山歩

廃林道に放置されて何十年のタイタン(実はE2500)
平成26年 9月28日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 以前、山好きの人のHPやブログを見るともなく見ていたら、山の中に放置され、今で
はシンボルのようになっている古い車の画像(マツダのタイタントラック)を見つけた。
場所は大峰の行者還岳の南、1458mの標高点ピークから東側の天ヶ瀬へと延びる清明
ノ尾と呼ばれる尾根(私的にはタイタン尾根と呼んでいる)だ。そんなわけで気になって
いて、6月の行者還岳オフの際も清明ノ尾方向にいい踏み跡があるのを確かめていた。自
然林がなかなか良いらしく、途中に大普賢岳の絶好の展望地もあるそうで、行者還トンネ
ル付近のR309からなら標高差も400m程度、スタミナ不足の小生でも何とか持ちこ
たえられるだろうと、今回の9月オフの舞台に選んでみた。さて、実際はどうだったのだ
ろうか?詳細は以下をご一読頂くことにしよう。(笑)

 夏の天候不順を補うかのように好天が続く。日曜の今日も素晴しい空。午前7時、北摂
組はいつもの千里中央駅上のコンビニに集合して出発。近畿道、南阪奈道を経て橿原中心
部に出て南下、吉野川沿いにR169を進む。渋滞もなく、川上村道の駅で休憩を挟んで
も2時間半強で行者還トンネル東口に到着した。路肩には2台の車、思ったより少ない。

 準備をしている間に、Nさん夫妻の車も到着。総勢9名全員集まった所で、簡単に今日
のコースを粗々説明して早速取付きへと移動する。取付きはR309の距離ポスト90の
標識の前、即ちR309の起点(R169の分岐)から9kmの地点(行者還トンネル東口
からならほぼ1km)にある道路法面に設置された鉄製階段である。常なら車道歩きは敬遠
するところだが、1km程度なら丁度いいウォーミングアップになるだろうとここは歩くこ
とにした。
タイタン尾根の取付き
 歩くと車では気がつかないことに景色に気づいたりするものだ。赤い艶々した実(名前 は教えてもらったが失念、食べたら渋かった(笑))がなっていたり、橋の下がザレた急峻 な谷だったりする。雑談しながら10分ばかり歩いて左に大きくカーブすると、法面に鉄 製の階段が見え、向かいの路肩には先着の1台の車がある。大方、行者還岳へ向かったハ イカーのものだろう。  階段を10mあまり登ると左(西)方向、崖に沿ってよく踏まれた小道が続き、すぐに右 へ鍵状に折れてヒノキ林下を通る作業道が分岐する。どちらを採っても同じ所へ出ると聞 いたが、置かれた枯れ枝が暗に通行禁止を示唆しているようでここは直進する。すると踏 み跡は右手に斜面を上がり始めて、すぐに意外や落ち葉に半分埋もれた丸太階段が現れた。 もっとワイルドなコースかと想像していたけれど、案外、知る人ぞ知るメジャーな道なの かもしれない。(笑)
意外や、こんないい道があった
 ほぼ右手が人工林、左手が自然林の境目を登っていくと、徐々に尾根らしくなってくる。 かなりの急登と思われるが、踏み跡はヒメシャラ、ブナ、野生のヒノキやミズナラの大木 を縫って、急峻な部分はジグザグに、緩ければ直登と、あまり傾斜を感じさせないで高度 を稼がせてくれる。この辺りにも針金で固定した丸太階段がある。やがて中央の斜面に主 のような巨木が見えてくる。姿は京都北山近辺に多いアシウスギに似ているが、近づくと 幹周りが4、5m、樹齢数百年は経ていそうな根上がり株立ちのヒノキである。  昔はクマザサの生い茂っていたであろう斜面をジグザグに上がると明快な尾根に出る。 右手が大きく開けて大普賢岳の峨々たる山並みが姿を現した。今まで展望がなかっただけ に目の前に開けた光景は余計に素晴しく、小普賢岳、日本岳、孫普賢岳などが立ち姿の仏 像のように居並び、南から陽を受けて秋に向かって複雑さを増していく緑で装っている姿 は素晴しい。一休憩して頂いた菓子を口しながら展望を愉しむ。(下のパノラマ画像参照)  展望地から低い茂みを乗り越えると、左方向が平坦になって続いている。これが廃林道 らしい。と、かねて目当てのものがあると先行メンバの声がする。声の方を振り返ると、 タイタン尾根の主、くすんだ青色のマツダ製のタイタントラックが、倒木に運転席の屋根 を直撃された姿で、やせた雑木に半ば埋もれるように放置されているではないか。発見で きなかったというブログもあったが、前ばかり見ていたら確かに見落とす可能性はある。 近づいてみるとE2500というエンブレムはあるが、TITANの表示はどこにもない。 荷台はなぜか新明和製で、このレトロな姿は間違いなく昭和の時代のものだろう。という ことは30年以上もここに鎮座していたのだろうか?雑草が生えた荷台には、誰だか剥が した赤や青の指導テープが多数捨ててあった。 ※備考 帰宅して調べてみると、放置されていたのはマツダE2500というトラックで、     マツダタイタンが発売される前のS42〜S46に販売されたキャブオーバーの     ディーゼルトラックである。従って、厳密にいえばタイタンではないが、タイタ     ンの前駆となるモデルといえる。
清明ノ尾にあった廃林道
 廃林道は草生しているもそれほど荒れてはおらず歩きやすい。時折、北側に行者還岳が 山容を見せる。それも木々の向こうに没して明るい広葉樹林の中となる。シロヤシオの古 木も多く、初夏は見事なことだろう。そして林道が右に湾曲する頃、接線方向の潅木に指 導テープを見る。奥駈道に良く見られるヒメザサに覆われた斜面に踏み跡が一筋。早くも 色づき始めたカエデが陽に透ける。傾斜を増した斜面を息を切らせて登ると、そこは14 58mの標高点ピークで、弥山と行者還岳を示す古くて黄色い鉄製標識が立ち木に設置し てあるのが目印になる。  やや強いが乾いた心地良い風が吹き抜ける。ちょっと早いがここで食事。尾根の東側に 少しばかり下りて風を避ける。見上げれば白骨木と青空がいいコントラストだ。
抜けるような青空をバックにもう紅葉を始めた木々が
奥駈道にて。とても稜線上とは思えないたおやかさだ
 P1458から一ノ多和までは6月の行者還岳オフの際に辿った奥駈道である。厳しい 岩場もあれば、稜線上とは思えないたおやかなヒメザサ原もある。あの時はまだみずみず しかった木々の葉も今は渋みを加えて、所々には早くも真っ赤に色づいたカエデがある。 薄桃色に熟したヤマボウシの実。初秋の青空をバックに真横に見える弥山、八剣山、鉄山 が澄んだ空気にくっきりとしている。シナノキ分岐、一ノ多和の廃小屋を過ぎて少し登り 返すとトンネル東口への分岐だ。そこから100mばかり奥駈道を南下すると、小さなピ ークの手前で奥駈道は西へ折れていく。上北山村の古いトタンの案内標識が地面に置かれ ていて、直進は三本栂・小谷林道方面で、高塚山への分岐でもある。ちょっとこちらにも 踏み込んでみる。  尾根に細いが明快な踏み跡がある。更に小谷林道と書かれた道標が出るとやがて下降し ていく。辺りはブナも見られるが栂やモミの木が目立ち、タイタン尾根などと比べると針 葉樹が比較的多い所為かやや暗い印象がある。最初はもう少し先まで行く気でいたのだが、 地形図を見ると100mは下らねばならず、ということは帰りはそれを登り返さねばなら ない。これは一寸しんどいかもということで後日の宿題とはなった。(^^;  元へと返して一ノタワからトンネル東口へと論所ノ尾につけられた道を下る。ここは6 月の行者還岳オフで使った道で大方の勝手が分かっている。ただ、8月の大雨や台風の影 響がないかが懸念されたのだが、幸いにも事前に収集していた情報通り、雨の影響は全く 見られない。やはり山腹に無理やりつけた道とは異なって尾根道は雨に強いらしい。(笑) 途中に光沢を帯びた灰褐色の大きなキノコ(コテングダケモドキかもしれない)を見つけ たりして、自然に戻りつつある丸木階段を追う。
コテングダケモドキと思しき光沢のあったキノコ
 論所ノ尾をひとしきり下るとトンネル東口への登山道は直角に左に折れる。直進はアメ ゴ谷。かなり下のアメゴ橋でR309と出合うらしい。標識に所要は1時間半となってい るけれど、R309を車で走るとアメゴ橋までは優に5km以上はあるはずで、にわかに信 じられない思いがするが、地図を見ればさもありなん。車道は斜度を弱める為に大きく迂 回しているのだ。
魁偉なトチノキの大木
 東口に向かって等高線にほぼ平行に踏み跡を進む。大きく枝を四方に広げたトチノキが ある。落ちた殻の中は空。実を収穫したのは何者だろう?(笑) 遠くでバイクの音が聞こ え、10分ばかりで下に石だらけの白っぽい荒れた林道が見えてきた。  ここで少し寄り道。登山口から荒れた林道を奥に100mほど進むとアケボノソウの群 落がある。星型の白い花、花弁の特徴ある模様を未明の星に見立てた優雅なリンドウ科の 花である。覗いてみると、もう盛りを過ぎて実をつけているものが多かったが、まだ幾ら か咲き残っているものがあったのは幸いであった。  東の方向に遠く大台の山並みを眺めながら、トンネル東口へ戻ってきたのは午後2時半 過ぎ。行程的に一寸短いかと思われたが、なんだかんだでいい時間になった。久しぶりに 天候に恵まれた大峰奥駈道周辺山歩。またいつの日にか先の宿題を終えるべく遊ばせても らいに来ましょう。
【タイムチャート】
07:00千里中央駅ローソン前
09:35〜09:45行者還トンネル東口(駐車地)
10:00R309距離ポスト90(取付)
10:44〜10:50大普賢岳展望地
10:51〜10:56
廃林道出合(マツダ「タイタン」放置地点)
11:03廃林道分岐
11:21〜11:55P1458(奥駈道出合)(昼食)
12:28廃小屋(一ノ多和)
12:30トンネル東口分岐
12:38〜12:50小谷林道分岐付近
12:58〜13:00トンネル東口分岐
13:55〜14:02ナメゴ谷分岐
14:13〜14:25行者還トンネル東口登山口
14:35
行者還トンネル東口
■同行: 幸さん、高やんさん、たらちゃん、二輪草さん夫妻、水谷さん、蓮さん、      SACHIさん (五十音順)
■今回のルートはこちら


P1458のデータ
【所在地】奈良県吉野郡上北山村、天川村
【標高】1458m
【備考】 大峰奥駈道の行者還岳と一ノ垰の中間位置にある標高点
峰で、この峰から東に派生する尾根を清明ノ尾と呼びま
すが、放置された四輪トラックからタイタン尾根と私的
には呼んでいます。白骨木と黄色の古い案内標識が目印
です。北の行者還岳方面へ向かうとクサタチバナの群落
があり、初夏には白い花園になります。
【参考】
山と高原地図『大峰山脈』



展望地から眺める荒々しい大普賢岳の山並み

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