五月晴れなり竜ヶ岳

北側の登山道から竜ヶ岳
平成26年 5月18日(日)
【天候】晴れ
【同行】別掲


 5月の山の会の例会は展望の良さで知られる竜ヶ岳。標高1100m。鈴鹿山脈の中央
に位置し、セブンマウンテンの一つだ。絶好の五月晴れに恵まれた週末。爽やかな空気に
包まれ、山頂は多くの登山者で賑わっていました。

 日の出頃。窓を開けると白っぽい光に輝く朝日に一点の雲もない青空である。これは絶
好の山日和だ。7時前にMさんをピックアップし、名神で八日市へ。石榑トンネル完成を
知らない3年前のナビは栗東IC下車を、それを過ぎると今度は彦根ICを指示する。集
合場所の宇賀渓には10時着だと。間に合わないじゃないの。 (^^;

 この状態は高速を降りても当然継続されたが一切無視し、R421で西に向かい、到着
したのは8時35分。驚いたことに駐車場はほぼ満杯。今しも団体さんが出発するところ。
何とか空きがまだあった。駐車料金500円也。

宇賀渓の駐車場から見上げる竜ヶ岳
 程なく参加メンバ9名全員が揃い、登山届を済ませて予定通りほぼ9時にスタートする。 前方に竜ヶ岳の笹に覆われた山頂部が顔を出している。高い!ここ宇賀渓キャンプ場の標 高は240mだから標高差850m。先週やっと標高差500mを何とかクリアしたとは いえ、近頃、標高差300mでもヒーヒー言っている我が身にとってはついて行けるか内 心不安は隠せないのだ。(^^;;  他の登山者に混じり、売店やロッジの間を抜けて宇賀渓谷を左に、舗装された北河内林 道を杉林の奥へと進む。川原には一張りのテントが見える。ワイワイと雑談がてら700 mばかり行くと「竜の雫」と名づけられた(なんだか純米吟醸酒の名前みたいだ)流れが 岩を伝っている。濡れた所が好きなチャルメルソウが目立たない花穂を立てている。  竜ヶ岳への数あるルートの内で最初に現れるのが遠足尾根登山口。ついで「鵜の巣」と 名づけられた東屋が現れると裏道(ホタガ谷)登山口はその向かいである。一昨年の豪雨で 土砂崩れがあり、去年の夏まで通行禁止のロープが張られていたという。のっけから厳し い斜面で、右に沿う谷(小端谷)深くから水音が響いてくる。林道で前後に見かけた登山 者は別ルートを採ったらしく、我々以外に人の姿を全く見かけなくなった。通行止だった 余波がまだ残っていて敬遠する人が多いのかもしれない。
裏道登山口。我々の前後に見かける人はいなかった

 亀山営林署の古い看板で小尾根に出る。尾根上は少し風が吹いていて、額の汗を何度も
拭う身にはありがたい。道はその小尾根をすぐに乗っ越し、今度は反対側の谷(これが本
命のホタガ谷だ)と並行して進むようになる。ほぼ水平の道は幅が狭い。桟道のような丸
太橋も二つ渡る。危なっかしい箇所には随所にトラロープが設置されているが、足を踏み
外せば怪我は免れない。やや緊張を強いられる。

緑に染まるホタガ谷の桟道を往く
 V字を呈してかなり深くにあったホタガ谷がどんどんせり上がってきて、ほぼ同じ高さ になると渡渉地点。指導テープや布が山側にも谷方向にも巻かれているが、30mばかり 先の谷筋で合流するのでどちらをとってもよい。  『瀬を速み岩にかるる滝川の....』を地で行くように大きな岩に流れを二分された滝も あって、そこからしばらくは流れに沿って踏み跡は左右するが、「左 山林作業道、右  竜ヶ岳」の看板の立つ辺りから、小規模な土砂崩れの跡のような荒れた斜面を急登する。 20mばかりの高さだが、ずるずる滑るから始末が悪い。なんとか登りきるとまた道は明 瞭になるが、崖を削っただけの細い道だ。踏み外さないよう岩壁側に心持ち重心を傾けな がら通過する。  チムニー状の岩の中を水が落ちていく。標識bQ9がある辺り。木橋がくの字に連続す る。少し朽ちかけて揺れるのがスリル満点。やっと通過して杉林を巻き登っていくと、ま た谷が右から近づいてきた。谷間をミソサザイの甲高い声がよく響く。  また山抜け跡がある斜面にやってきた。bQ4の標識が見える。さっきよりは規模が大 きい。通行止になっていたのはこの為だったのかもしれない。トラロープを補助に全員、 無事越えると、ようやくやや落ち着いた谷相になってくる。対岸の崖下には一輪草がチラ ホラ見えた。  水量も減ってきてついには石の転がる河床下に消えてしまった。杉林も消えて周囲は二 次林。見上げた斜面には鈴鹿特有の笹も一面に出てきて、もう山頂部が近いことが分かる。 小休止。鈴鹿の谷といえばヒルが代名詞だが、幸い今日は見かけることもなくここまで来 れた。もう大丈夫だろう。(笑)
五月晴の下、ホタガ谷源頭の鞍部へ

 その二次林もなくなって一面の笹原に出た。その笹原の中を一筋、大石がゴロゴロ転が
る幅1mくらいの枯れ沢(多分雨が降れば川になるのだろう)が前方の鞍部へと伸びてい
る。振り返ると、山と山の間、ホタガ谷の源頭部分の鞍部の向こうに、伊勢平野と伊勢湾
が広がり始めている。それは登るに従ってどんどんワイドになっていく。地面にへばりつ
きながらも濃い青紫の花を咲かせているキランソウに目をやっていると、左手の木立の中
から、珍しやカッコウの鳴き声が聞こえてきた。カッコウといえばもっと深山でなくもの
とばかり思っていたからちょっと意外であった。

 右の遠足尾根からやってくる登山者とほぼ同じ高さになった。もう一息と足に力を込め
るとようやく遠足尾根ルートと合流、立っている案内標識は行先板が破損していて『道』
としか分からない。左手にはドーム状の女性的な山容を見せる竜ヶ岳が初めて姿を見せる。
山頂の人影はまるでゴマ粒である。シャリバテの身にムチ打って、ホダガ谷の源頭の鞍部
からP1042の斜面を上がると金山尾根出合だ。以前初めて竜ヶ岳に登った時にこの辺
りまでやって来たのを思い出す。

 残念ながらシロヤシオの開花時期には若干早かったようである。金山尾根出合から静ヶ
岳分岐にかけてのシロヤシオの林。枝先にびっしりついているのがほとんど蕾なのである。
咲けばさぞや圧巻なのにと溜息しきりの皆さん。それでもチラホラ咲きの個体もあってそ
れなりに予告編を楽しめる。台高のものよりも数は多い代わりに若干花は小さいような気
がした。

 食事は竜ヶ岳の上でと衆議一決して、P1053の南斜面から最後の60mほどの登り
を我慢する。ここを耐えれば食事だと思うとあまりつらくならないのはなぜだろう。(笑)
めっきり増えた登山者と行き違いながら、やや強いが爽やかな風が吹き抜ける竜ヶ岳頂上
へ。そこで見た360度の大パノラマはまことに目を見張るものがあった。

 北に巨大な航空母艦の御池岳、その右横に無残に斜面を削られた藤原岳。養老山地が長
く延びた手前には員弁川の蛇行する姿がある。遠足尾根の向こう側に見える伊勢から濃尾
にかけての平野の先は伊勢湾だ。海に浮かぶ貨物船が二つ三つ。その彼方に長々と青く延
びるのは知多半島らしい。そして地平のはるか彼方にはなんと雪を被った白い山並みが時
に濃く時に薄く見える。左から白山、乗鞍岳、御岳らしい。もっと澄んでいれば富士山の
姿も拝めたのではなかろうか。南に目を移せば釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳と鈴鹿の主稜
がたたなづく。手前には石榑峠のKDDIアンテナの跡地のコンクリートが白い。そして
谷筋の木立の隙間に宇賀渓の駐車場がある。車がほんの米粒のようだ。ついで西側に場所
を移すと、琵琶湖が寝そべり、比良山系が比叡山から蛇谷ヶ峰まで一望できたのにも驚い
た。

 山名柱の前で記念写真を撮ったり、食事をしたり、もう下山するひともいればどんどん
上がってくる人もいる。草原状の非常に広い山頂なのであまり窮屈感はないけれど、10
0人以上はいるだろう。今日はどこの山も鈴なりなのではないか。それにしても若い女性
が増えたものだ。服装もカラフル。一昔前には考えられなかったことだ。(^o^/

 遠足尾根を下ろうとしばし往路を戻る。竜ヶ岳北面から眺めると、P1042辺りの笹
とシロヤシオの柔らかい曲線が織りなす風景はまるで日本庭園。台高の桧塚一帯とよく似
たそれだ。花が咲くとこれが羊の群れに見え、一転、牧場風景に代わるのだそうだ。その
シロヤシオは五月の日差しの中で、午前中よりも花を開いたものが増えたらしく、少し華
やかさを増した感じだ。午前中に歩いてきた裏道との分岐を過ぎると、再びシロヤシオの
林の中になる。珍しいピンクの絞りが入った花を咲かせる木もある。誰かが呟いた"ロゼヤ
シオ"の声に座布団一枚だ。落ち葉が分厚く積もった林床にはなんとカタクリの花がチラホ
ラ。まだ花をつけない幼苗も多く見られるから、数年後はより多くの花が期待できそうで
ある。
珍しいピンクがかったシロヤシオ
 尾根に沿って大きく迂回しながら、右手遥かになった竜ヶ岳に別れを告げて林の中へ入 る。今まで見かけなかったコイワカガミが露岩に張り付いている。目の覚めるほど綺麗な 若葉の林に盛りを迎えたヤマツツジの朱色が目立つ。
遠足尾根途中の展望地から南東方向

 二次林から杉の人工林下の道となって、石灰岩の小さな針の山を越えると、傾斜は一気
に増してくる。X印をつけられた大日向への道(積雪時の下山で遭難騒ぎがあって以後
立入禁止にしたらしい)を見送って、道標の立つ直角にルートが曲がる地点で小休止。こ
の辺りから美しいジエビネが見られるようになる。ことに小休止した地点から急降下を始
めた杉林の斜面にかたまって咲いているのは素晴しい。ミスミソウも二株あって、花の周
囲を囲む人為的な石積みから判断すると、多分、山主さんが集めて世話しているのだろう
が、「やはり野におけ蓮華草」ではないけれど、わが自宅で育てているジエビネより花弁
の白がはっきりしていて綺麗である。カメラに収めようと行き倒れ状態?になっている人
がひきもきらなかった。
単調さを紛らわせてくれたジエビネ
 この先も延々と急斜面を折り返しながら下る。その内にこれとよく似た光景が蘇ってき た。そう、比良で御殿山から坊村へ下った杉林の斜面だ。行けども行けども人工林の変化 のない同じ風景が続いてうんざりしたものだが、ここも同じ。全く面白みがない。だから 風に騒ぐ木々の音に紛れて、下から水音が聞こえて来た時には正直ほっとする。しかし、 それからも結構長かった。浮石の多いザレた道に爪先も痛くなってきた頃、やっとのこと で北河内林道に飛び出した。山頂から花の観賞や休憩をいれながらも2時間強。800m の下降に膝が笑っていた。(^^;
遠足尾根登山口。裏道登山口の約100mキャンプ場寄りだ
 小休止後、湧き水「竜の雫」で手を洗って戻ってきた駐車場には、まだ大半の車が残っ ている。振り返れば、ほんの2時間前まで立っていた山頂が高く遠くにある。思えばこの 短い二本足も大したものである。(笑)  シロヤシオの満開時期には若干早かったが、エビネ、カタクリ、コイワカガミ、キラン ソウ、ヤマツツジなどの花々にも出遭い、ミソサザイやカッコウの美声も聞け、そして何 より、快晴の下、白山、御岳など3000m級の雪山も拝めた眼福の一日。幹事のSさん、 そして参加の皆さん、ありがとうございました。

【タイムチャート】
08:40〜08:55
宇賀渓キャンプ場駐車場(駐車地)
09:12竜の雫
09:20遠足尾根ルート登山口
09:22〜09:23ホタガ谷(裏道)ルート登山口
09:58〜10:00ホタガ谷出合
10:50〜10:55ホタガ谷源頭(小休止)
11:40遠足尾根/ホタガ谷ルート出合
12:06〜12:37竜ヶ岳(1,099.6m 二等三角点『竜ヶ岳』(昼食))
13:06遠足尾根/ホタガ谷ルート出合
14:00〜14:10竜ヶ岳/宇賀渓道標(小休止)
14:55〜15:02
遠足尾根ルート登山口
15:20宇賀渓キャンプ場駐車場(駐車地)

■同行:さかじんさん、幸さん、たるるさん、二輪草さん夫妻、ハム太郎さん、
    ひろぴぃさん、水谷さん (五十音順)
■今回のルートはこちら


竜ヶ岳のデータ
【所在地】三重県いなべ市
【標高】1,099.6m (二等三角点『竜ヶ岳』)
【備考】 鈴鹿山脈のほぼ中央部に位置します。端正ながら女性的
な姿をしていますが、北側が石灰岩、南側が花崗岩とい
う複雑な地層の山でもあります。山頂部分は笹原で遮る
ものはなく、西に琵琶湖、東に伊勢湾、北に御池岳、藤
原岳、南に釈迦ヶ岳、御在所岳。遠く白山や御嶽、乗鞍
岳まで望め、鈴鹿の展望台と呼んでも過言ではありませ
ん。登路はホタガ谷、石榑峠からがメインです。
【参考】
エアリアマップ『御在所・霊仙・伊吹』



竜ヶ岳からの展望
南東方向。釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳方面。伊勢平野の奥に伊勢湾や知多半島がが見える
西から北方向。中央に静ヶ岳、右に御池岳、藤原岳。画像でははっきりしないが白山の姿も。左奥は琵琶湖と比良、湖西の山並み
竜ヶ岳を北へ下る。中央はP1053とP1042。右へ向かうと遠足尾根で笹原の中に点在するのがシロヤシオ

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