桑谷山〜巨杉と石楠花の南北尾根縦断 |
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五月晴れが予想されるこの週末。京都北部方面の桑谷山は如何とのお誘いに、しばらく 佐々里方面にはご無沙汰なこともあって出かけてみることにした。新緑したたる中、ダイ スギ、シャクナゲの群落と、最後はにわかサイクリング。なかなか密度の濃い予想以上に 愉しませてくれる面白い山でありました。 桑谷山といっても知らない人の方が多いだろう。京都市最北の集落、久多の西南にある 三角点峰で、京都府では十指に入る高峰?(第9位)なのである。これを南から北へ抜け ようというのである。まずは到着点の久多峠に自転車をデポする。ここは以前、フカンド を歩いた時にやって来た所だ。ついで能見方面に下って出合の府道を左折し、桂川に沿っ て南下する。5kmほど行って東から寺谷川が合流する地点が大悲山口。本山修験宗の峰定 寺への取っ付きである。府道から分かれて峰定寺へと通ずる車道を500mばかり進めば、 左から地道の林道が合流してくる。これが桑谷林道で、角に瀟洒な民家があるから目印に なる。声をかけ、家の前の空き地に駐車させて頂くことにした。
は桑谷沿いのダート林道だがそれほど荒れていない。杉も良く手入れされ明るい。しかし 両側は見上げるばかりのかなりの急峻さ。標高差も久しぶりに500m。体力不足を痛感 する今日この頃、登るとなるとかなりしんどいかも....。早くも弱気の虫が頭をもたげる。 (^^; 歩くこと20分。右手の小尾根先端に関電のお馴染みの火の用心マークが現れる。立ち 木に古い桑谷山のプレート板もあって、いい踏み跡が小尾根を上がって行く。エアリアマ ップ「京都北山2」にもある桑谷ルートの登山口に間違いない。
なだらかそうなのは最初の見てくれだけで、小尾根は思ったとおり一気登りの胸突き八 丁である。振り返っても下の斜面の先が見えない。登りだからいいものの、下ってくる場 合、果たして上手く降りられるだろうかいささか不安になるだろう。エンジンが温まる前 だけにきつかったが、そこは関電道だけに、落ち葉に埋もれてはいるが黒プラ階段が設置 されており、また僅かでもジグが切られているのが有難い。お蔭で短時間でぐんと高度を 稼げる。 やや傾斜が緩んだところで小休止。額に滲んだ汗を拭き、チョコパンとお茶で一息入れ る。これで周囲を眺める余裕が出たところで驚いた。大きなアシウスギが幾本もあるでは ないか。きつい登りで足元ばかり目が向いていて気づかなかったらしい。芦生の赤崎中尾 根ほどの巨樹はないけれど、それでも幹周り5mはありそうなのがあちらこちらに見られ るダイスギの台地だったのだ。幹の窪みには異なる種の樹木を宿して、豪雪にも負けず伐 採にも遭わず数百年。その営みは感動ものでさえある。
登りはまだまだ続く。桧の葉を大ぶりにしたような落ち葉が一杯落ちている。アスナロ とも呼ばれるヒバだ。フカンドへ登った時も多かった気がする。そんな広針混交の林の中、 展望は全くない。再び厳しくなった登りにはプラ階段。頭上に見える高みを登らねばなら ないのかと覚悟していたら、踏み跡はやや右にトラバースをはじめる。すると周囲が明る くなって古い伐採斜面の下に出た。前方の林の向こうに高圧鉄塔の姿が現れる。この地域 によくあるネコ鉄塔である。巡視道はここで高圧鉄塔に向かってジグを切りながら斜面を 登りはじめる。 高圧鉄塔には若狭幹線山側乙102、S44.4と表示がある。初めて展望が広がった のは南方向だ。中でも城山のように頂が平な片波山(湯槽山)が目立つ。アシウスギの群 生地として有名だが、その横は井ノ口山だろうか。建設に不評のあった広域林道も山腹を うねっているのがわかる。 この辺りから新緑の美しい二次林の樹林である。ツツドリやコゲラのドラミングが遠く から聞こえてくる。広い尾根はやや荒れているが歩くに支障はない。踏み跡を外したが、 登るうちにすぐに復帰する。やがて開かれた所に出て若狭幹線山側甲100の高圧鉄塔下 に立つ。今度は西方向も開けて堂満岳、武奈ヶ岳、蓬莱山の比良山系、南東にカマクラ、 峰床山など京都北山の名山が望める。P813。芦生や若丹の山々でよく見かける小さな プレートが雑木に架けてあった。 もう枯れて久しい板取りされた杉の木の株を見る。近在に杓子屋の地名もあり、一帯は 木地師や山仕事の人々が活躍したのだろう。それにしても重さは100キロ近くはあった だろう。よくぞ背負って運んだものである。 ここまであまり花は見かけず、ムシカリの白い花が暗がりで目立つくらいがめぼしいも のだったのだが、ようやく足元にイワウチワが見かけられるようになった。惜しいことに 花期はもう過ぎて花ガラが多く、たまに咲き遅れが一輪、二輪見かけられるのみだ。そこ へ突然、左の斜面に満開のシャクナゲが現れる。葉裏にビロード状の毛が目立たない。ホ ンシャクナゲである。今年は花色のピンクが濃く、花自体も大きい。丹波のヒカゲツツジ も綺麗だったし、今年はどこも花の当たり年のようである。 この辺りから左手に桑谷山の西峰らしい三角形の高みが見え隠れし始める。尾根も狭ま ってきてもう一息。そしてタヌキの溜め糞を見かけた頃だったか、どこかに鹿か何か獣の 死骸でもあるのかひどく臭気が強くなった。突然、出現してギョッとするのもいやだった が、幸いしばらくで悪臭は消える。やがて最後の急登をこなすと稜線の上、鹿ネットが現 れた。桑谷山の東峰から30mばかり西の地点になるようだ。「立入禁止 動植物の採集 禁止 奥山保全トラスト」白い立看板が目の前に立っている。帰宅して調べると、里山保 護を行っているNPO法人らしい。暫時、お目こぼしいただこう。 桑谷山は地形のはっきりしない北山では珍しく、西の三角点峰と東峰からなる双耳峰と されているが、相互で500mばかり離れているので別々の山といえばそうともいえる。 ま、それはそれとして、まずは西の三角点峰へ。石灰岩質らしい破片の散らばる斜面を下 って尾根を進む。鹿除けネットが北側にずっと張り巡らされている。といっても支柱が朽 ちたのかあらかたはもう地面にへたり込んで用をなさなくなっている。しかしこれがかえ ってくせものである。油断すると靴やストックがからめ取られるのだ。何度かつんのめり そうになる。さっきまでと違って低木が茂って枝が張り出し歩き難いものの、踏み跡は思 った以上にしっかりしている。途中に北側が見渡せる箇所もある。10分ばかりで最後の 登り返し。なんなく西峰山頂の小広場に到着する。四角が削られた無残な三等三角点標石。 展望がない所為で人気がないのか、山名プレートは意外に少なかった。
東西両峰を結ぶ尾根に出た時から強かった北よりの風は収まる気配がない。曇りがちで もあって、気温を確かめたらなんと9℃。風の強さから体感温度は2、3℃ではなかった ろうか?朝が早かったせいかいささか舎利バテ気味なので、早めの食事をと風を避けて雑 木に囲まれた場所に陣取る。でもまだ10時半。今までで最も早いランチタイムではなか ったか。(笑) 往路より帰路は短く感じるもの。思ったより早く東峰に戻る。標高は931mで三角点 峰より高く、本来ならこちらが本峰だろうに、だだっ広い広場という感じの頂には山名板 さえもない。(笑) ここで巡視路は直角に折れる。(赤い矢印の案内板が置かれている) 桑谷山への標高差が最も小さいのでメインルートになっているらしく、巡視路はよく歩か れている。左手、木々の向こうに桑谷山の姿もちらつく。二次林の明るい新緑は気分がい い。そしてまもなく再び高圧鉄塔下に飛び出した。たぶん若狭幹線甲100だと思うが確 かめていない。東方向比良山系の展望がいい。
再び林の中で、結局、高圧鉄塔が最後の展望地となった。もうそれほどの坂道もなく、 淡々と降りていく。雷の直撃を受けて、内部が黒こげの杉がある。京都北山付近は雷雨の 発生が多いのかもしれないが雷杉をよく見かける。でも大体、杉ばかりなのはなぜだろう。 杉林の中を最後に急降下。眼下に府道の白い路面が見えてくる。南北縦走もフィナーレ。 久多峠はもう目の前である。
■今回のルートはこちら
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