まだ5月だというのに31日の大阪は真夏日。1日はそれに輪をかけた暑さだという。
これではそんじょそこいらの低山はとても歩けたものじゃないだろう。やっぱりスタート
地点が1000m近くないと...。(^^; と贅沢を言って今回はちぐさ高原近くの駒ノ
尾。この時季の山の幸スズコ目当ての山行きである。そしてあわよくば、以前雨で断念し
た後山までと目論んでいたのだが、季節先取りの強力高気圧に炒られて唯でさえか弱い体
力を消耗し、生来の意志薄弱と相まって、またもや途中で断念するという恥ずかしい体た
らくだったのだった。(^^;;
7時過ぎに出発。宝塚・山崎間¥1430。因みに7月からは3割引と割引率が改悪さ
れるそうだ。高速道路無料。民主党のお題目、あれは何だったんだろう?考えてみれば信
じた自分の不明さに忸怩たる思い。金輪際、民主党には入れまい。
閑話休題。山崎から西に向かい、千種川沿いに北上し千種町で左折したらR429であ
る。難所志引峠を越えて後、広域林道で後山連山の南麓を走り、愛の村パークの道を見送
ったのでそろそろと思われる頃、ダルガ峰林道の入口が現れる(大きな地図入り看板あり)。
一車線だがこんな林道あっていいの?と思えるくらい高規格の舗装路だ。ぐんぐん高度を
上げるとハルゼミの声が聞こえてくる。今年はどこも花の当たり年だけれど、ここのタニ
ウツギも半端じゃなく花つきが良い。木全体がピンクになっているのを初めて見た。上り
詰めた黒岩峠にはトイレ舎つきの立派な駐車場があり、もう既に5、6台の先行車が止ま
っている。
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西粟倉村側の駒ノ尾登山口。熊出没注意の看板があるが
大阪の豊能町にも現れる位だから、最近は現実味がある |
陽射しが強く、もっと涼しいかと期待していたのに暑い。靴を履き替えザックを背負っ
たら直射日光を避けるべく急いで林の中へ入る。山頂までは2kmの行程と道標が教える。
この辺りの広葉樹林はすばらしい。標高950mでももう若葉の季節は過ぎ、木々は青
さの度を増している。モチツツジ、ハウチワカエデ、コナラ、シデ、ブナ、ナナカマド。
鈴なりのサラサドウダンが目の前にある。ヤマボウシは細い包が薄緑色をしている、これ
でシロヤシオでもあればいうことないのであるが...。(笑)
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カッコウが鳴いていた駒ノ尾の自然林。明るくて実にいい |
風がないので休憩舎が建つ辺りで早くももう顔は汗みずく。標高はまだ1100mだか
ら、150mばかり登っただけなのにこの体たらく。木陰に入って眼鏡を外しゴシゴシ顔
を拭う。すると、ほんの近くでカッコウの声がしたのに驚く。先ほどからツツドリの鳴き
声が遠くから聞こえてはいたのだが、まさかカッコウとは。今年は鈴鹿の竜ヶ岳以来、こ
れで2回目になる。山頂近くではホトトギスがしきりに鳴いていたから、これで”託卵三
兄弟”の揃い踏みだあな。あとはジュウイチか。(笑)
休憩舎から10分ばかり歩くと今度は展望台の空き地。この付近で約半分の行程である。
道は坂、平坦を何度か繰り返す。枯れかけた池の縁を巻いて上がっていくと、そろそろネ
マガリタケとも呼ばれるチシマザサが目に付き始める。この筍がスズコと呼ばれる熊の大
好物なのだ。因みにクマ除けに鈴を鳴らして筍を採ったのでスズコと呼ばれるようになっ
たという説がある。さて真偽のほどは定かでない。そしてヒノキの林。今日初めて歩く人
工林である。歩く内に傾斜は大分緩んで台地状になり、やがてネマガリタケ以外ほとんど
何もない斜面となる。東粟倉への道を右に見て、緩い傾斜を登り詰めたら、左手に案内板
と立派な花崗岩製の山名柱、ストーンサークル(腰掛石ですね)が設置された駒ノ尾の山頂
である。
晴天の日曜だというのに意外や誰もいない。景色は独り占め状態だ。しかも三度目の正
直、初めて晴れた日の駒ノ尾なのである。だからこんな景色なのかと思う。東に鍋ヶ谷山
から船木山、後山が並び、笹原に一筋の道がうねっている。なんだかデジャヴを伴う風景。
そう、台高や鈴鹿で見た風景に似ている。やや左の高いのは三室山でそのまた左手奥にあ
るのは氷ノ山らしい。北はダルガ峰から長義山。北北東に見える三角形の山は東山だろう
か。西には那岐山が一番目立つ。その他は北西の鳥取の山や南の播磨の山々でどれがどれ
だか分からない。視界が良ければ瀬戸内海も見えそうだが、季節外れの黄砂が災いして空
気はうす黄色い。
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駒ノ尾から順に鍋ヶ谷山、粟倉、船木山、後山
すべてチシマザサの笹原 |
一息入れて石のひとつに座ってアンパンを頬張りながらお茶を飲んでいると、後山方面
から単独兄さん。南麓にある後山キャンプ場から上がってきたそうで、私と同じく暑い暑
いを連発している。案内板を前に下山路に思案投げ首。未踏なくせに無責任にも駒ノ旺山
荘に降りて周回したらと適当なアドバイスをする。(^^;
小腹にアンパンが納まったのでちょっと元気が出てきたかな?チシマザサ原はこれから
が本命。とりあえず後山方面へ出発。防火帯も兼ねているような幅広の道の両側は深い笹
の海である。ダルガ峰方面の道を分けると、以前、雨を避けて食事した経験のある避難小
屋。ここにも熊注意の看板がある。最近は出没していないらしいとはいうものの、単独の
場合はやはり不気味には違いない。ザックのクマ避け鈴を思わず鳴らしてみる。(最近、
大阪の豊能町で熊が捕獲された。今までどこか他人事と思っていたけれど急に現実味を帯
びて感じられてくる。)
Ca1250mピークからぐっと下って鍋ヶ谷山との鞍部付近で振り返ると、駒ノ尾が存
外大きな山容を示している。裏腹に帰路に登り返すのがしんどいなとの思いが湧いてくる。
林立する太いブナが美しい林の付近が鍋ヶ谷山だろう。高い繁みの奥にホトトギスが何
羽かいるようであちこちから独特の鳴き声が聞こえてくる。笹のブッシュでは托卵相手の
ウグイスだ。因みに托卵して無事に成長する確率は思いの外低いそうで10%程度だそう
である。
だいぶ船木山が近づいてくる。鍋ヶ谷山からのだらだら下りから、ブナとハウチワカエ
デの林に入ると右の道端の少し小高い所に四等三角点『粟倉』が置かれている。いい按配
に風が吹き抜ける。今は風が一番のご馳走だ。ちょっと早いがもう完全なシャリバテ。ど
うするか考える前にもうザックを下ろしていて、また担ごうと言う気はとっくに失せてい
た。(^^;
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四等三角点『粟倉』ここで昼食
旧東粟倉村の集落と日名倉山が展望できる |
南が窓のようにぽっかりと空間があり、眼下に東粟倉村の町並みと日名倉山が良く見え
る。それを眺めつつラーメンの湯を沸かす。見覚えのある人が歩いてきたと思ったら駒ノ
尾で遭った単独兄さん。駒の旺山荘方面の林道へ降りずにピストンに切り替えたといい、
船木山方面に戻っていく。後は一組のご夫婦がこれは駒ノ尾方面に行かれたぐらいで静か
なものだ。閉口したのは蝿が多いこと。羽音がブンブン耳に付く。エイッ!裂帛の気合も
ろとも我が手にかかって一匹が昇天した。ざまは見ろ!全く大人気なし。
食事が済んだら気合が戻るものだが、もう先へ行く気はさらさらなくなり、スズコを採
集しながら戻る気100%。手には早くも収穫を入れるレジ袋である。
ブラブラと右左と見回しながら来た道を戻る。見つかるとなるだけ下のポキンと折れる
ところから折り取るのだが、中腰や座り込んで作業をせねばならないからこれが案外疲
れるのだ。空からは容赦なく照りつける太陽。ボディーブローのようにスタミナを奪って
いく。木陰木陰で一息二息つきながら鞍部から見上げる駒ノ尾が、往路でも思ったことだ
がやっぱり高い。(ヘッ!あんなとこまで登り返すの?)眩暈がしてきた。(^^;;
鍋ヶ谷山の手前まで戻ってきた辺りだったと思う。前方の笹の中から何やらゴソゴソ、
ガサガサ。スワッ!熊か!登山口のクマ注意の看板が脳裏を掠めたその時、ラジオの音が
聞こえた。出現したのは熊ならぬスズコ採りのおっちゃんだった。フーッ。
往路で昼食中のパーティがまだ座り込んでいる。膝元を見るとなんとまあ皮が剥かれた
スズコがわんさか。5人ほどで手分けして採ったのだろう。2、3日はいやというほどス
ズコ料理だろう。(笑)
というわけで、駒ノ尾に戻るまでに、一応、レジ袋一杯のスズコが収穫できた。ちょっ
と硬い部分もあろうが、湯掻いた後でオリーブ油かなんぞで炒めれば柔らかくなろうって
ものだ。(笑) 駒ノ尾でまたまたアンパンで一息入れる。さーて、引き上げるとするか。
休憩舎でまたまた一息。鹿の食害から木の幹を守る金網ネットを丸めたのが座るに丁度
手頃。緑溢れる駒ノ尾を眺めながら、サーモスの熱い茶を飲む。端のテーブルでは食事を
終えた子供連れのお父さんがおられたが、帰宅してSNSでなんと旧知のKさんだと知る。
お父さんのイメージが全くなかったものだから、はなから初対面の方と思い込んでいたの
だった。失礼しました。m(_ _)m まだカッコウが近くにいるようだ。遠く近くで聞きな
がら、登山口に戻ったのは2時過ぎである。
ところで、登山口に湧水があることをすっかり忘れていた。登山口南側の木製のデッキ
に清水が導かれているのだが、タニウツギを摘んでいた女性が美味しい水だと教えてくれ
る。まずは顔を洗ったのち、口に含んでみると確かにまったりと薄い甘味さえ感じる美味
い水であった。気分をすっきりさせたところで山道具を車に積み込む。
今日のスズコをはじめ、今年はツクシ、カンゾウ、タラノメ、ヤマウドと色々な山や野
の幸をいただくことが出来た。今日も今宵の晩酌の肴のことを想像しながら山を後にした
のだった。
【タイムチャート】 |
07:10 | 自宅発 |
09:40〜09:55 | 西粟倉村側登山口駐車場(駐車地) |
10:18 | 休憩舎 |
10:30 | 展望台 |
10:54〜11:04 | 駒ノ尾(1,280.5m 二等三角点『大茅』) |
11:35〜12:12 | 点名『粟倉』(1,235.1m 四等三角点)(昼食) |
13:10〜13:24 | 駒ノ尾(1,280.5m 二等三角点『大茅』) |
13:50〜13:55 | 休憩舎 |
14:10 | 西粟倉村側登山口駐車場(駐車地) |
■今回のルートはこちら
駒ノ尾山のデータ |
【所在地】 | 岡山県英田郡西粟倉村、美作市(旧東粟倉村) |
【標高】 | 1,280.7m(二等三角点『大茅』) |
【備考】 |
岡山県と兵庫県の県境を形成する後山山塊に属し、岡山
第二の高さを誇ります。山頂は笹原で展望が広がり、奥
播磨や奥美作の山々を一望する事が出来ます。後山やダ
ルガ峰からの中国自然歩道を利用した縦走が一般的で、
直接の登山道は兵庫県と岡山県側からがありますが、岡
山県側の西粟倉村側が最も手軽です。 |
【参考】 | 国土地理院電子地図 |
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