八年ぶりに歩く古光山

みつえ高原牧場管理棟横のデッキから端正な後古光山
平成26年 9月21日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】単独


 そろそろススキの季節である。連想ゲームではないけれど、ススキといえば曽爾方面が
頭に浮かぶ。そういえばしばらくそちら方面には足を向けていない。久しぶりに出かけて
みようか。選んだ先は古光山。何年ぶりだろうか。調べてみたら最初が初見参が平成18
年だから8年ぶりになる。その当時と現在とどのくらい差があるのか。愕然とするかもし
れないが、ちょっと興味津々ではある。(^^;

 古光山は規模は大きくないが、その凹凸激しい山容は倶留尊山などから見ればよく目立
つ山である。前回同様、御杖村のふきあげ斎場を起点にすべくナビにセットして車を走ら
せて来たのだが、なぜか御杖村役場近くで「目的地周辺です。ナビを終了します」のアナ
ウンス。そういえばネットでふきあげ斎場を検索した時も役場近くを指していたっけ。ど
うなっているのかちょっとした謎ではある。(笑)

 タイミングよく目の前の古い民家の庭に小父さんが出ておられ、これ幸いと道順を教え
てもらう。国道に出ずに橋の手前を右へどんどん山の方向へと教えてもらった通り、道な
りに進む。人工林が開けて、うねるススキの原に肉牛が悠々と草を食んでいる。その向こ
うに赤い屋根の牧舎。前回来た時とは逆方向からみつえ高原牧場の建物前に出てきたこと
になる。高台にある牧場事務所の前を左手に200mも進めば、見覚えあるふきあげ斎場
のある大峠である。好天の日曜というのに先着車は皆無。斎場入口向かいに通行止と看板
のあるT字路端に車を置く。
古光山の取付きのふきあげ斎場(大峠)
 前回お邪魔した時とほとんど変わっていない。斎場入口の横に古光山登山口の標識があ って、古光山1.2km、後古光山は2.0kmとある。斎場敷地の境界沿いに先の桧林の中 へと登山道が伸び、斎場の敷地から離れた途端、一気に雑木とササの急登となる。しかも ザレ気味で滑るから、しっかりとした立ち木や垂らされたロープの力を借りなければ、登 るのに少なからず苦労するだろう。それくらいの急斜面である。お蔭であっという間に高 度は稼げるのだが、その代償の汗も半端でなかった。(^^;;  一度緩んだ傾斜がまた厳しさを増し、またロープを掴んでの今度は岩がちの登りをこな すとようやく尾根筋に出る。最初のやや小広いピークが地形図のP960か、南峰(五峰) がP960か?GPSを忘れたので判然としない。タブレットの地形図では前者のようだ が....。(^^; しかし、こと展望となれば断然、岩の重なる南峰に軍配が上がる。南峰か ら先は短いが今回のハイライトの岩稜歩きだ。この辺りはどこもほぼ360度の大パノラ マで、青空の下、行く手にはこれから向かう古光山に後古光山。左に鎧岳、兜岳。後方に 住塚山、国見山を見て、右手には長大な三峰山から学能堂山と続く山並みに亀山、倶留尊 山に抱かれた曽爾高原の薄茶色のススキ原が望める。  こんな展望を楽しみにやって来たようなものだが、景色ばかりに気を取られていると林 に隠されていてそれほど怖さはないが、切れ落ち気味の足元が危ない。そろりと下りに入 りかけたらなんだか人の声らしきものが、かすかに流れてきたように思えた。それは空耳 ではなく、南峰からの痩せ尾根下りから再びロープ場の急登に転じる頃、反対方向から4 名の小父さんグループがやってきた。今日出会った唯一のグループである。登り返して振 り向くと南峰の鋭い姿が印象的である。  雨宮分岐(「行止まり」とも書かれているが、行止まりなら分岐の標識は要らないので は....(笑))の標識の立つピークを過ぎる。この時期の山道には派手な花が少ないが、赤 紫に黄が混じるミヤマママコナが小さいにもかかわらず案外に目に付く。
古光山山頂。北東に倶留尊山と曽爾高原
が見える程度で展望は良くない
 小さなアップダウンをこなして、再び人工林が現れると、意外になだらかな古光山の山 頂は近い。南峰から20分。標識には南峰まで0.3kmとあるから、時速1km弱。早い のか遅いのか。(^^; 誰もいない。三角点がポツリと淋しげ。木々に覆われて展望はほと んどなく、曽爾高原方面のみがぽっかりと額に入った風景画のように望めるのみである。  一息ついたら道標に従って後古光山へ。まずはフカタワ。距離が0.5km、その間の標 高差200m、「急坂注意」と標識のある文字通りの深い峠である。前回、急傾斜に悪戦 苦闘した覚えがあって少しばかり気合を入れたが、当時よりもロープが至る所に用意して あって助かる。ことにタワへ降りる手前になる最後の岩がちの部分は、ロープがないと迂 回したくなるくらいなので大いに助かった。
後古光山名物?蜘蛛の巣ロープ
 周辺が雑木林から人工林に変わると、さしもの急斜面も終わりを告げて、縦走路の最低 鞍部のフカタワ。十字路になっていて曽爾村と御杖村を結ぶ峠道が横切る。直進して斜め 左側に傾ぎながら高度を上げると、名物『クモの巣ロープ』。高さ10mくらいの岩の斜 面に何本もロープが張ってあって、下手をするとザックやトレッキングポールを絡め取ら れる。足場を固めつつ潜ったり跨いだりしてなんとかクリアすると、次はほぼ一直線上の 岩場の登り難い道である。100m近く一気に高度を稼ぐと、後古光山の丸い円形状の狭 い山頂である。  木や草が密集気味なのだが、背の低い潅木がほとんどなので「山林境界基本三角点」な る標識が埋まっている小岩の上から見れば、360度いずれの方向もよく見える。そこで 写真を撮って電源を落とそうとすると「あらら?」電源が落ちない。しようがないのでバ ッテリーを外してリセット。あらためて電源を入れ直すと素直に落ちた。「???」
後古光山から眺める古光山と南峰(左)
 お茶で口を湿して北方向へ下る。こんなだったかな?落下防止に新しいチェーンが設置 してあり、その先は木の階段がある。トントントンと降りて行けば、まもなく「この木な んの木園」や「展望台」の標識が現れてくる。しかし通ずる道はまったくブッシュの中だ。 この分では、この木なんの木も枯れているんではなかろうか?(笑)  一旦整備された道もススキやノコンギクに覆われて半分自然に還っている。やがて現れ た人工林の方が整備は行き届いているみたいだ。尾根の突端のような小高い部分に出ると、 道は右に折れて山腹の斜面を下って行くが、ここも木製階段が整備されている。  その木の階段を下る足音に驚いたのか、一頭の大きなメス鹿が慌てて前方を右から左に 横切って姿を消した。やがて長い一直線の階段も終わりに近づいて長尾峠の舗装路が見え た。
長尾峠。杉林の中で鹿が逃げて行った
 結局、どこかいい所で昼をとあれこれ選り好みしているうちに長尾峠まで来てしまった。 後はふきあげ斎場まで車道歩きで、適当な所がない。その時ふと思ったのは牧場が高台に あって景色がよいこと。東屋とかもあったような記憶があった。およそ1時間。てくてく と歩いてきたらもう斎場まで一息という辺りまで来てしまった。ふと見上げたのが牧場の 管理棟らしき建物。階段を上がるとなんと木製板張りのデッキがある。ベンチまであって これはお誂え向きとザックを下ろす。断りを入れようと事務所の窓を覗くが誰もいる気配 がない。まあ良かろうとベンチに座ってそのまま遅い食事を始める。  標高600mの高原の高台からの眺めはなかなかいい。前はススキがたなびく放牧場と ベンガラ色の屋根をした牛舎。借景は三峰山の山並みに学能堂山。その左に大洞山と尼ヶ 岳があるが、倶留尊山は後古光山の背後に隠れている。心地よい風になぶられて、インス タントながらコーヒーが美味い。コオロギとともにまだミンミンゼミの鳴き声がどこかし らから聞こえてくる。陽射しはまだ強く、秋と夏が入り混じった感じである。1時間近く まったりとして、やおら腰を上げたのだった。そこから大峠までは10分足らずである。  8年前と同じコースでの古光山縦走。ほぼ同じ所要タイムでフィニッシュできた。行程 がやや短いのでスタミナ的な面では参考にはならないかもしれないが、少し安堵。まあこ こは良しとしよう。(^^; 古光山、密度の濃い面白い山である。
【タイムチャート】
07:45自宅発
09:40〜09:45ふきあげ斎場前(大峠)(駐車地)
10:22〜10:27P960
10:28〜10:30南峰
10:50〜10:55古光山(952.4m三等三角点『古光山』)
11:16〜11:21フカタワ
11:43〜11:55後古光山(892m)
12:20長尾峠
13:05〜13:48みつえ高原牧場管理棟(昼食)
13:56ふきあげ斎場前(大峠)(駐車地)



古光山のデータ
【所在地】奈良県宇陀郡曽爾村、御杖村
【標高】952.4m(三等三角点『古光山』)
【備考】 室生火山群に属し、倶留尊山の南に位置する山です。倶
留尊山付近から眺めると、五つの峰が鋸状に波うってい
るのが望まれ、その姿通りの劇登り、劇下りが続きます。
全山、ほぼ自然林と展望に恵まれ、室生から布引、台高
山系の山々が望めます。
■近畿百名山■関西百名山
【参考】
2.5万図『倶留尊山』



■古光山からのパノラマ
古光山南峰付近から北西から北方向を見る
古光山南峰付近から北東方向を見る
後古光山から南東方向。左は三峰山、手前に浅尾山。山麓は菅野の集落

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