梶山〜バリエーションルートで行く三千院の裏山

出世稲荷付近から眺める梶山
平成26年 4月10日(木)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】水谷さん、もぐさん


 今までなぜかあまり足跡を印したことのない京都周辺の山々。その中で洛北は大原の童
髯山に行かないかというお誘い。天気も良さそうだし、ちょうど花見時。桜を愛でがてら
のお誘いに乗ってみることにした。

 一体、こんな山の名は寡聞にして一度も耳にしたことはなかった。しかも「童に髯があ
る?」変な名前である。調べてみると三千院の裏山、三等三角点のある山で、国土地理院
の地形図では梶山となっている。また梶山から派生したらしい大尾山(梶を木と尾に分解
し、その木が大に変化した?)という名もあるという変わった山である。(童髯も”堂前”
の音を借りたという説がある。寺院が多い土地柄だけに音読みの山も多い?)

 地形図を事前に見て、三千院から登って南下、小野山を経て仰木峠に下りる周回ルート
を歩くのだろうと思いきや、当日聞けば小野山と呼ばれる670m峰の西尾根を直登して、
梶山の西尾根を忠実に下るバリエーションルートを採るという。さて、先達のHPにもほ
とんど記載のないこのルート。どんな感じなのであろうか。それは以下で。

 平日とはいえ、名立たる花見スポットなのでそれなりに観光客は多いだろうと思われた
が、あにはからんや、駐車場はどこもガラガラの状態。しかも駐車場代も有名観光地にし
ては安く、一日400円。もっとも休日や季節によって相場は変動するのかもしれないが。

 「大原の里」と看板の上がる駐車場に駐車して北へ歩く。東にも北にも緑に衣替えを始
めた山々がぐるりとあるが、冒頭記したようにこの辺りにお邪魔することはとんとなく、
山座同定はほとんど不可能。以前に登った天ヶ岳や金毘羅山、翠黛山はあれだろうかと類
推する程度と知識はいたって貧弱だ。(^^;

 三千院へ向かう車道を右に曲がると、出世稲荷といかにも現世利益的な名の神社がある。
それもそのはず以前は秀吉の建てた聚楽第の境内にあったとかで、行幸した天皇が秀吉に
あやかって命名した由。さもありなん。

出世稲荷社。右に見える鳥居奥から尾根に取付く
 さて、その参道を右に折れ更に左に折れると、もう山裾がすぐそばに迫ってきている。 小野山と呼ばれる660m峰の西尾根はこの辺りから始まるはずだというので、ここから 取り付くことになった。里山にはたいてい尾根には踏み跡がつけられているものだ。ちょ うど獣よけの柵のゲートもあるので、きっといい作業道でも続いているのではないかと期 待半分で突入したものだ。  辺りは杉桧の林。足がかりの良い箇所を選んで急斜面を上がると無事尾根に上がれたよ うだ。期待した作業道はなかったが、植林下は下草もなくどこも歩きよい。先行テープも なく、滅多にこんなところへ登山者は来ないのだろう。さぞかし鹿も驚いたと見えていき なり近くで甲高い警戒音を発して遠ざかっていった。
テープ類は皆無も尾根上はこんな感じで歩きよい
 しばらくすると植林がなくなって自然林に変わる。ヒサカキの特有のガス臭が漂う中に、 タムシバの白い花びらがよく目立つ。北摂に多いミツバツツジは少ないようで、他にはア セビ、椿。カヤが存外よく目につく。「ツツピー」。シジュウカラの鳴き声が降ってくる。  急登が続く。風が通らず暑い。そろそろ水の音や風がご馳走の季節になってきた。深く 洗掘されたような小道のようなものが現れた。枯れ枝や落ち葉に埋まっているがフカフカ して歩きよい。すると上方の木立の隙間から空の光が見えてくる。稜線は近いと思いきや、 そこまで登ってみるとその上がまだある。なんのことはない。台地状に一旦、傾斜が緩ん だだけであった。(^^;  前にも増して厳しい登り。雑木の枝の張り出しが少々うるさいが、再び植林になって傾 斜も緩んでくる。風も出てきたということは今度こそ府県境の稜線だ。南北に踏み跡、傍 の木に山名プレートがある。小野山、地形図では無名の670m標高点ピークである。
だだっ広い小野山山頂
 ピークといっても南の水井山や北の梶山から歩いてくると、プレートがなければここが 標高点ピークだとは気づかないほどの、広い台地状の植林の高みである。植林の中だから 当然展望皆無。ここからは京都府と滋賀県の府県境を北東方面に植林と雑木の境目を行く。 所々に大原を愛する会だか、現在地を示す標識が立っている。曰く、「大原側へは仰木峠、 大尾山の肩から音無の滝の2ルートしかルートはありません。他は廃道になっています」 云々。ということは我々は廃道を登ってきたのか。いや、元々ルートじゃなかったんだ。 (笑) 指導テープが曲がれの指示。稜線を離れて左手に降りていく。30mばかり斜面を 下ればダート林道に飛び出す。(林道に道標あり)
林道から振り返れば小野山、案外のピークだ
 春の日にタムシバ、アセビの花が映える。振り返ればピークとも思えなかった小野山が 案外もっこりと高く見えている。20分ばかり林道を歩いたところで、暑いので左の林の 中へ避難。ちょうど京都府森と緑の公社の標識がある地点で、662m標高点ピークはそ こから目と鼻の先である。  しばらくは右側の林道と並行。その林道がどんどん下の方へ、そして行き止まりとなる。 踏み跡がやや西方向に変わったCa670mピーク付近である。木立の間が少し空いている。 初めて滋賀県側が覗ける。薄霞。見えるはずの琵琶湖がはっきりしない。  踏み跡が突き当たって左右に分かれる。そのT字路の潅木に滝寺への小さな私設プレー トが架かる。添書きに展望良とあるので試しに行って見るとこれが素晴しい大展望なので ある。今まで視界がほとんど開けなかっただけに余計にそう感じるのかもしれないが、南 側の山肌には点々とタムシバの白さが目立ち、東は眼下に仰木から雄琴、真野の里が広が る。霞んでいてはっきりしないがその先には琵琶湖が広がっているはず。そしてなんとい っても北側に比良の権現山や残雪を懐に抱えた蓬莱山が聳え立つのが大きい。梶山の山頂 は展望が余りよくないとのことなので、少し早いけれどここで食事にすることにした。
展望地から南東方向の山腹。タムシバが多い
遠く琵琶湖方面が霞む
 T字路に戻ってほんの一歩きしたら梶山の山頂だった。大尾山、梶山、童髯山と標識に 書かれた山名も賑やかだが、滋賀県側が少し開けているのみでほとんど展望がない狭い山 頂だ。やっぱり先の展望地で食事にしたのは正解だった。
梶山の山頂。なぜか梶山のプレートがなかった
 というわけで、三角点以外見るべきものもないので一息ついたら西に向かう。すぐに「 大尾山の肩の標識。音無の滝へは植林沿いに道がついている南方向へ降りていくようだ。 我々は標識の裏側へと尾根を直進する。  先に見るべきものがないと書いたが一つあった。カタクリだ。途中、2、3の葉っぱを 見つけていたが、一株だけ花をつけていたのに遭遇できたのは望外だった。  明瞭な踏み跡は無いが、ブッシュもない落ち葉に包まれた歩きやすい尾根である。それ がぐんと高度を落とし始める。ここから南西方向に伸びる尾根に乗りたいのだが、ここで ちょっと西よりに降り過ぎたようだ。修正の為に30mほどトラバースしなければならな くなる。ここが一番きつかっただろうか。土の急斜面に張り出す雑木の枝がすこぶる邪魔。 アスレチック状態で格闘を続けることしばし。ようやく目的の尾根。植林と雑木林の境目 になっており、鹿ネットが張られていた。ネットは更に上から張られているので、もし歩 かれる人がいるなら、植林境のネットを探されんことを。(笑)
植林と雑木の境の急斜面をネットに沿って降る
 やっぱり同じように尾根を歩く人がいるのか指導テープが現れた。古い境界杭もあり、 先ほどの鹿ネットが下へと続いている。そのネットに角が絡まって命を落とした鹿の白骨 が2体。他の鳥獣の餌になったのか頭部と散乱する毛を残してあとはほとんど何もない。  懸念した藪もなくどんどん下る。音無の滝方向の谷は急峻なのでそちらを降りていくの を慎重に避けながら、忠実に尾根を辿る。あらぬ方向から突然姿を現すのも憚られるので、 三千院境内や親王陵墓へ出くわさないようにと小さな沢の源頭で一つ尾根をずらせたら、 ちょっと薮が濃くなった。このまま続くと厄介かもと懸念したが、幸い距離的には5mほ ど。ぽっかりと飛び出したらなんと地図にないダート林道の終点に飛び出した。
突然、予期せぬ林道が
 補強材を繋ぎ止める"かすがい"もまだ光っているので造って間もない林道らしい。グネ グネと曲がり降りていくから、最初はどこに下りていくか見極めにくかったが、西方向に 進行方向を定めながらショートカットしたりしても結局また林道に合流するので、ゴール に定めた地点から遠くない所に降りていくようだ。歩きが楽なので林道を辿っていけば程 なく建物の屋根が見えてくる。鹿除け柵があり、それを抜けると今度は電気柵が待ち受け るという物々しさはそれだけ鹿の害が深刻だという証しだろう。絶縁クリップが見つかっ たので慎重に外して電気柵を抜けると萱葺きの大屋根がもう眼下間近にある。表札で知っ たけれど、大原問答で有名な勝林院の本堂であった。
花で霞む勝林院の裏へ降りてきた
 声明の声が本堂から漏れてくる。その横から境内を抜け、受付の小父さんに裏山からの 出現を詫びつつ車道の人となる。因みに大原問答とは12世紀末、勝林院で浄土宗の開祖 法然が天台宗徒と宗論を争ったことをいうそうだ。  まだ2時前と時間もあるのでここでちょっとフランス旅行。いや仏鑑賞。(笑) 枝垂れ ざくらのピンクが美しい三千院の門前を、茶店をひやかしながら来迎院へ。本来登る予定 だった音無の滝を経由する梶山への一般登山道を200mばかり上がる。石段を登ると来 迎院の門前で、本尊薬師如来、釈迦如来、阿弥陀如来の三尊を拝することができる。この 寺院のおおらかなのは本堂内が撮影禁止でないこと。折角なので本尊さんの横顔を撮らせ てもらう。  少し観光客も増えた中、車道を下って駐車場までは15分くらいの道のりであった。枝 垂れ桜の花びらが舞う大原の里の裏山歩き。なかなか面白いバリエーションルートでした。
【タイムチャート】
09:15大原の里(駐車地)
09:22〜09:25出世稲荷神社
10:40〜10:42小野山(670m)
10:45林道出合
11:05林道から山道へ移動(京都府森と緑の公社標識)
11:07P662
11:22滝寺分岐
11:25〜11:45梶山東尾根の展望地(昼食)
11:50〜11:52梶山(681.1m 二等三角点『大原村』)
11:53大尾山の肩
12:06鹿ネットのある尾根
12:31林道出合
12:50勝林院裏
13:00勝林院

■今回のルートはこちら


梶山(大尾山、童髯山)のデータ
【所在地】京都府左京区、滋賀県大津市
【標高】681.1m (三等三角点『大原村』)
【備考】
比叡山から比良へとつながる山脈の中間に位置し、大原
三千院の裏山にもあたり、大尾山、童髯山の別名もある
山です。山頂は滋賀県側が一部開けている外は展望がな
く、むしろ山頂から東側へ50mほど進んだ山頂部の突
端から琵琶湖の素晴しい展望が得られます。尚、上記山
行のコースは地形図、コンパス必携です。
【参考】国土地理院電子地図



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