筆捨山、羽黒山、関富士〜オモローな山で山納め

小野川に架かる橋から關富士(左)と羽黒山(右)
羽黒山東尾根から関富士(左)と中央の台形の観音山から右の尾根を歩いてきた
中央奥は錫杖ヶ岳

平成26年12月29日(日)
【天候】晴れのち曇り
【同行】別掲


 山納めに筆捨山、羽黒山は如何?メーリングリストに勧誘メールがアップされる。はて
どこの山なのか、寡聞にして知らなかった。なんでも鈴鹿峠を越えた向こう側の300m
にも満たない低山とのこと。が、ネットで調べると、山好きには割合知られた山らしくそ
こそこアップされている。添えられた画像には中腹にゴツゴツと白っぽい露岩を林立させ
た姿が。なんだかオモローな山らしい。というわけで、暮れも押し詰まった28日、大掃
除もせずに出掛けてみたのである。(^^;

 新名神が帰省で混むかと思われたのでアプローチは名阪国道廻り。お蔭で2時間足らず
で集合場所の関ロッジの駐車場へ滑り込む。その前に道の駅で地元の産品を少し。小生は
蜜柑と日野菜の漬物にホウレン草。合わせてワンコインでお釣りがくる。帰宅して家人に
もっと買ってくればよかったのにと小言を喰らう。(^^;

関ロッジへの取付道路途中に観音山登山口がある
 滋賀から参加のHさんの車はもう駐車場にとまっている。これで今日の総勢4名が集合。 準備を終えてロッジのアプローチ道路を少し下り、案内柱が立つ観音山登山口から歩き始 める。まずは観音山の名前の由来となった西国三十三箇所の石仏巡り。といってもわざわ ざ巡るのではなくて、山頂へと歩けば自然に巡ることになる仕組である。擬木の階段を九 十九折れに登っていく。石仏は岩をえぐった大きな窪みに数体ずつ並べてある。盗難除け の為か鉄格子がはまっているので、石仏はまるで囚われの身の上のようだ。人のものを盗 んで還さない国さえある昨今の世情だから、これもいたし方ないのかもしれない。  さて、この石仏が珍しいのは、霊場巡りの石仏の場合は普通、表面を浮き彫りにするこ とが多いのだが、ここの石仏は全身彫り出してあることだ。江戸幕末の嘉永年間に造られ たというから、ざっと160年ばかり前のものである。千手観音、十一面観音、如意輪観 音それぞれ柔和な顔で、馬頭観音は厳しい顔で激動の時代を眺めてきたのだろう。  ベンチなのだろうか。丸い大きなコンクリートのテーブルが設置してある。乗ってみる と東南側が開け、関富士や関町の家並から遠く海も望める。元旦には初日の出を拝みに人 々がやってくるのであろう。
観音山山頂
 山頂はそこから少し歩いて関町テレビ中継所を過ぎた尾根道の途中然とした所で、標高 222m。プレートがなければ行き過ぎてしまうくらい地味な印象である。もちろん三角 点もなく見晴らしもない。  道なりに進めば水平だった道はにわかに崖の横の下りになる。視界は大きく開けるが筆 捨山はどれだか?はっきりしない。風化してオブジェ風の面白い形になった岩の間を抜け ると眼下に車道が見える。Y字路になっているがどちらに行っても車道に出られそうなの で、適当に左にとる。最後は細い枯れ沢を横切り細い立木の間から車道に出る。
筆捨山への登山道は東海自然歩道
 車道を東にしばらく行けば筆捨山の登山口があって急坂の階段道は東海自然歩道でもあ る。尾根に出てしまうと坦々とした道で、とくに特筆すべきものもないが、雑木林も植林 下も明るい。15分も歩くと木造展望台の建つピークへとやってくる。地形図でも無名だ が、起点の観音山登山口の案内図では大黒山とあった。この展望台からの展望は今回のコ ースで最も秀逸であろう。関富士や観音山を隔てて、四日市方面から伊勢平野、伊勢湾の むこうには知多半島が薄青い。更に山襞に雪を残した南鈴鹿の山々や錫丈ヶ岳の山並みも 綺麗だ。  ベンチが設置してある鞍部で筆捨山まで1.7kmを過ぎて、一寸周囲が遠望できるP2 76を通過する頃だったか。突然バーンと破裂音が空気を震わせる。続いて再び破裂音。 もう間違いない。1、2km隔てた辺りで猟をしているようだ。昔、ハンターと犬に囲まれ た体験がトラウマになって一寸嫌な気分になる。
羽黒山分岐を過ぎて筆捨山方面へ
 筆捨山まで1.2kmの道標が立つ羽黒山分岐を過ぎる。鳴りを潜めていた銃の音が羽黒 山の方角から再び周囲に木霊する。微かに犬の鳴き声も続く。単独行なら後半の羽黒山方 面はもう完全にパスしているところである。(^^;  Ca270mの高みを過ぎると尾根道は西に向かって標高差50mを一気に降りていく。 途中に高圧鉄塔への巡視路標識がある。黄色なのでてっきり中部電力と思いきやマークは 見慣れた関電のものである。ひとしきり降りて平坦になると雑木が伐採された明るい場所 に出た。頭の上を高圧線が横切っている。
筆捨山への最後の登りは半端ない急斜面
 植林下となって再びゆっくりと高度を上げながら尾根筋を進む。小さな鞍部にはベンチ が置かれ、右手(北)にテープを発見。四等三角点峰の花ノ木は多分ここから取付くのだろ う。そうする内に筆捨山らしい急斜面を持つ姿を見上げるようになる。標高差は約50m。 標高は285mしかないから、結構周囲からは目立つ山だろう。シャリバテの身にはつら い登りになるに違いない。案の定、補助の鎖もあるその直登は短いがきつかった。8割方 登ってやっと九十九折れとなり、筆捨山頂の白い標識を前方に認めてホッとする。直径2 mばかりの狭い山頂である。ここでユニークなのは標識である。沓掛から鈴鹿峠へと繋が るルート上を歩く小さい人影が描かれているが、合羽をまとって頭には三度笠の股旅者の 姿なのには笑いを誘われてしまった。
筆捨山山頂。戻らず直進すると鈴鹿峠方面へ行ける
 風で寒いのですぐに山頂を降り、花ノ木分岐のあった筆捨山まで0.4kmの道標地点ま で戻って食事とする。ここまで出逢ったのは 鈴鹿峠方面からやってきた単独兄さん唯一 人。意外に少ないねと話していたことだったが、よくよく考えてみたら、こんな暮れも押 し詰まった時期に山歩きする方が少ないのではないか。(笑)  標高差50mを登り返した羽黒山分岐で左に折れて、関宿里山の会の標識に従って進む。 東海自然歩道の通ずる筆捨山ほど明瞭ではないが、尾根筋はしっかりした踏み跡と赤いテ ープもあって迷うことはない。ただ、大きな露岩が出てくると、間違った方向に無理に進 んだ場合、進退窮まることがある。早速、尾根筋に大きな露岩。岩は礫岩、所謂「さざれ 石」で、左に巻き道を辿って再び尾根上へ戻る。遠くにも露岩があって見ようによっては 白いライオンやイースター島のモアイ像に見えたりする。その一つへ皆が行っている間に、 小生は小さな岩の上に上がって筆捨山を見る。コニーデ形のなかなか端正な姿である。
羽黒山西尾根付近から筆捨山
 また大きな岩が現れた。先達のHPで越えるのに四苦八苦したとあるのはこの岩らしい。 岩の上を先行していたメンバがこれより先に行くのは厳しいとの声を上げる。岩の手前、 右やや下側のヒノキに赤テープが巻かれている。エスケープルートはヒノキ林に下りて岩 の右下をまいているようだ。そこへ降りると岩がのしかかってくるように大きい。高さは 10mくらいあるだろうか。巻き終わると再び尾根筋だが、前方にまた大きな岩が現れた。 これが今回のハイライト、胎内潜りの岩である。岩と岩が重なる間に狭い隙間がある。ザ ックを背負っているととても抜けられそうになく思うが、すっぽりと入り込めるから不思 議。上を見上げると2mばかり上にぽっかりと空間があって空が見える。但し、そこへ至 るには、岩の窪みにかけるべく足を思い切り上げて体を持ち上げ、同時に身を90度捻ら ねばならないからしんどい。体とザックがやっと通れる隙間を抜けてヌーッと顔を外に出 せた時には、正直、ささやかな達成感がある。(^^;
胎内潜りの大岩
はてさて潜り抜けられるのか?
無事抜けられました
 ここまで来ると羽黒山はまもなく。偽ピークにちょっぴり惑わされるが、ザレ地の先は 四等三角点の他になんの変哲もない非常に小さな山頂で、あれだけ変化のある露岩を山腹 や尾根に持つ山の頂とはとても想像できない。なぜだか少しぬかるんでいるのが不思議と いえば不思議である。ただ、高い木がないので思いのほか展望は良く、高畑山から溝干山、 那須ヶ原山に相対して錫杖ヶ岳の凹凸、反対側にはどっしりとした明星ヶ岳が見渡せる。  朝の青空とはうって変わって、空は徐々に厚い雲に覆われだしている。すぐに降り出す ことはないだろうが少し急ぐことにする。しばらくは緩やかに下っていくが、南へ下るう ちに傾斜が増してくる。概して踏み跡はしっかりしているが、落ち葉が深く、滑るし、踏 み跡を隠して不明瞭にな時もある。とりわけ、大きな黒い岩が左手に現れる辺りが一番滑 りやすかっただろうか。立ち木も枯れて根元が腐っている場合があるので頼ると危ない。  最後に右に折れる踏み跡を辿ると小ぶりの鳥居と瓦葺の東屋があるこれまた猫の額ほど の広場へ飛び出す。鳥居の前から眺めると、大きな垂直の岩壁に胸つき八丁の急な石階段 がつけられている。登っていったMさんによれば、上に岩棚があるがそこまで近づけなか ったそうだ。面白かったのは東屋の天井に、飛騨のサルボボに似た色彩豊かな物体が大小 取り混ぜて吊り下げられていたことだ。何を象徴しているのだろうか。それより神社の名 称は何というのだろうか。  自然石を少々均したような凸凹のある道が神社の参道らしい。その途中で、杉だったか ヒノキだったかに標識があって、あの神社が羽黒神社という名前であることを知る。そう いえば東屋の中の荷物の上に置かれて埃をかぶっていた菅笠には羽黒山とあった。標識付 近へ合流してくる踏み跡があるが、おそらく下山時、羽黒神社方向へ曲がらずに直進すれ ばここへ出てくるのであろう。所々露岩が顔を出すヒノキ林を下るとやがてもう一つ鳥居 があってその先は地道の林道である。
羽黒神社参道口
 さて〆は観音山からも端正な姿が見えていた関富士。木立の陰から水音が聞こえる小野 川沿いに林道を下っていく。左から正法寺山荘跡が合流してくる。山荘といっても戦国初 期にこの辺りを治めていた関氏の居館兼砦みたいなものらしい。やがて舗装路に出、右に 折れて橋を渡りあとは道なりにどんどん関富士の山裾に近づき、その北側を巻いていく。 もう頃合かと思ううちに、これ以上いくと関富士から離れて行きそうという辺りで路肩に 金属パイプで柵がしてあり、その手前に踏み跡と関富士登山口の小さなプレートを見つけ る。地図で確かめると関富士の北西方向になる。
関富士の西北登山口
 初めは雑木と小笹の直登で山容から予想できるように結構厳しい。次第に小さくジグを 切るようになり、やや一息つける。ウラジロシダの群生を漕ぐ部分もあって踏み跡もしっ かりしているが展望はほとんどない。それが再び直線的に行くようになって傾斜が緩むと 山頂かと思いきや、それらしい表示がない。観音山から見たように山頂部が台形状を呈し ているのだ。ただ、もう傾斜はほとんどなく立ち木を避けながら進めば林の中のちょっと した切開きに出た。  細い立ち木には幾つかの山名プレート、地面には綺麗な四等三角点がある。三角点名は おこがましくも『富士山』というそうだ。(笑) 「一富士、ニ鷹、三茄子」とは目出度い 初夢だが、今年の山納めには格好の山である。というわけでその目出度い頂で一息つく。 だころが野球も山も下駄を履くまで分からない。最後にやはり道無き道が待っていた。
関富士山頂。三角点名はなんと『富士山』
 山頂からは3方向に踏み跡がある。一つは登ってきた西からの道。後は南側に降りるも のと北東側に下りるものとがある。関富士は東西に傾斜が若干緩いので、北東側に下りる ことに決まったが、これが間違いだったようだ。最初は二つほど赤いテープを追ったが、 以後そのテープが消えた。山が小さいので下りさえすれば何とかなると歩きやすい所を選 んで下る。傾斜がきついのと北側なので木々が朽ちて支えにならないのに難渋しつつ、浅 いながらも小さな谷の中に降りた。初めての山の場合、本来、谷を歩かない方がいいのだ が、小さい山なのでそのまま谷を下ろうとすると、やはり甘く見ては駄目である。雨が降 れば滝が出現しそうな数mの崖ですぐに行き止まりとなってしまった。そこで谷の対岸の 小尾根に乗ればなんとかなりそうと、急斜面のもろい土に逆らいながらも上がってみれば 幸い獣道が現れた。シダと枯れ木の中をしばらく下ると車道のほの白い路面が木の間から 覗く。飛び出た場所はなんだか見覚えがある。なんと往路で通ったトリムコース500m 標識の辺りである。(@o@) 南側に降りるつもりが北東側に降り立ってしまった。(^^;  スタート地点の関ロッジには大きく迂回しなければならない。しかも西に行けば良かっ たが東に向かったものだからますます余計に迂回しなければならなかった。しかしそのお 蔭で、関町鷲山の集落から出て、川幅を広げた小野川の橋上から、関富士に羽黒山や明星 ヶ岳を一望に収めることが出来たんだから捨てる神あれば拾う神ありだ。(笑)
関ロッジと観音山。手前は新池、右は聖橋
 富士ハイツの新興住宅地を歩いてようやくスタートの観音山が近づいてくる。新池の端 を歩いて赤い聖橋を渡れば関ロッジのブルートレイン横に出、取付道路を少し歩けば駐車 場である。  R1からの筆捨山を遠望して帰途に。名阪国道を大阪に近づくに従ってポツポツしてい た雨も本格的なものとなる。いろいろあった平成26年、最後はオモローな山でいい山納 めになりました。
【タイムチャート】
09:42〜09:47関ロッジ(駐車地)
09:52観音山登山口
10:05〜10:09円形ベンチ
10:14〜10:05観音山(222m)
10:29車道出合
10:32筆捨山登山口
10:49〜10:55大黒山(展望台)
11:20P276
11:25羽黒山分岐(筆捨山1.2km道標))
11:45〜11:48
筆捨山(285m)
11:58〜12:21筆捨山0.4km道標(昼食))
12:31羽黒山分岐(筆捨山1.2km道標))
12:51〜13:02モアイ岩尾根分岐
13:25〜13:29
羽黒山(290.4m 四等三角点『羽黒山』)
13:46〜13:55
羽黒神社
14:02林道出合
14:26〜14:27関富士登山口
14:40〜14:45
関富士(242.4m 四等三角点『富士山』)
15:05車道(トリムコース500m標識)
15:40関ロッジ


■同行: たらちゃん、ひろぴぃさん、水谷さん (五十音順)
■今回のルートはこちら


筆捨山のデータ
【所在地】三重県亀山市
【標高】285m
【備考】 R1で鈴鹿峠を越えて関の町に近づくとすぐ北に見えて
きます。た狩野元信が描くことが出来ず筆を捨てたとの
言い伝えが山名の由来といわれますが、名前の由来ほど
目立ちません。山頂を東海自然歩道が通過しています。
羽黒山のデータ
【所在地】三重県亀山市
【標高】290.4m(四等三角点『羽黒山』)
【備考】
筆捨山の東方に位置します。山頂は目立ちませんが、中
腹に怪岩奇岩が林立し、安藤広重が東海道五十三次で描
いた筆捨山は羽黒山だと思われます。
関富士のデータ
【所在地】
三重県亀山市
【標高】
242.4m(四等三角点『富士山』)
【備考】
関ロッジの北側に近江富士に似た端正な三角錐を見せま
す。近くを流れる小野川から眺めると、羽黒山と並んで
一幅の絵です。
【参考】
国土地理院電子地図



トップページに戻る

inserted by FC2 system