霞み立つ昼ヶ岳縦走

林道から眺めた鳥飼山から昼ヶ岳へと延びる稜線
右端の高畑峠から鳥飼山、Ca520山、ドーム状の昼ヶ岳南峰、最奥に見える昼ヶ岳本峰へと歩くことになる

平成26年 3月16日(日)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】水谷さん


 春とは名のみの余寒が続き、近頃は山といえば遅出でも行ける400m足らずの低山へ
行く程度。そこへ昼ヶ岳へ行かないかというお誘い。明日はようやく春らしい日和とのこ
と。久しぶりに少しばかり山らしい山に出かけてみた。

 8時半に山友さんをピックアップして、1時間あまりで三田市のカナディアン大磯に到
着する。ここは大船山の登山口でもあり何度か来たことがある。道路沿いの広場に駐車し
て靴を履き替え準備を整える。目の前には指折ってみれば十年ぶりとなる鳥飼山から昼ヶ
岳へと連なる稜線が北へと延びている。ただかなり白っぽい。春霞といえば風情を感じる
が、花粉に黄砂、最近話題のPM2.5がない交ぜになっているのだろう。困ったものだ。

 駐車地から少し戻ると東へ下っていく狭い車道がある。カナディアン大磯のロッジ横を
過ぎると波豆川沿いの最後の集落、大磯一帯の田園が広がる。その長閑な風景を眺めてい
る内に、路肩の気になる看板が目に入る。曰く『工事中の為、山道は通行不可』。

 「??」「どういうこと?」そういえばヘルメットを被ったおじさんの車が通り抜けて
行ったっけ。ともかく行って確かめてみようということでそのまま進んでいくとどうも砂
防堰堤の工事を行っているらしい。降りてきたガードマン風の小父さんに尋ねてみるが、
ジモティーでもなく要領が得ない。取付である高畑峠の現況も知らないらしいが、とにか
く通行出来る状況にないという。確かに建設資材を運ぶ道路で古道は跡形もなく破壊され
て、重機のうなる音が奥から聞こえるのみ。それらしい山道は見つからないわ、山靴はぬ
かるみにすっぽり突っ込んで泥まみれだわ、ほうほうの態で、結局、ここから突入するの
は諦めざるを得なかった。

 さて、どうしたものか?とりあえず地形図を確かめてみる。すると北に尾根を一つ越え
た所に、点線路がある。しかも峠に繋がっているではないか。峠が無事なら上手く迂回で
きるかもしれない。廃道になっているかもしれないが行ってみる価値はありそうである。
そうと決まれば善は急げ。Y字路に戻って更に北上する。小さな墓地がある。その横を抜
けると小さな池で、山際の突き当たりには獣よけの電柵。その先も小道が廃道にもならず
に茂みの中へと続いているようだ。これはなんとかなりそうだとまずはしめしめ。第一関
門無事クリア!電柵コードを外す。
迂回した取付きにある獣除け電柵
 さて次の関門は道が続いていることと、峠が健在であることである。幸い、点線路は赤 松主体の倒木が所々に散乱していたり、雑木の枝が張り出していたりで荒れてはいるもの のしっかりしている。茨に注意しつつ歩いているとふいに前方に人影がちらついた。
荒れた踏み跡を抜けるとこんないい道が現れた
 ヘルメットを被った3人連れの若い男性グループである。市の職員の方かと尋ねたら地 元の森林組合の方々で、森の状況調査をしているのだそうだ。懸念していた高畑峠へ行け るか確かめるとなんと行けるというではないか。これで最後の関門突破、一安心である。  先ほどの兄さんたちが設置したらしい「復旧治山事業林況植生調査」と書かれた真新し いプレートを見る頃、道はどんどん良くなり、左に小さな溜め池を見る頃には朴の大きな 枯葉が混じる狭い林道ほどにもなる。杉やアベマキなどの混生林の中、右にいつの間にか 谷が現れると堰堤工事の作業道も現れ、更に100mほど進んだ小高い部分に見覚えある 石積み。三田市と宝塚市の境目、高畑峠へ何とか無事に迂回できた。 (^o^/~~
10年ぶりの高畑峠。北に登って行く昼ヶ岳縦走路
南に向かうと高畑山、寺山、広照寺山と続く
 真新しい凝った私製プレートはD会が設置したとある。他にはテープに香合新田(こう ばこしんでん)とマジック書き。ここから南に登れば、今は少し荒れているようだが、以 前歩いたことのある大舟寺の裏山に当たる高畑山、寺山、広照寺山と連なる尾根である。 昼ヶ岳はここから北へ。というわけで、高畑峠、小ぶりだが峠らしい峠で、石積みは元々 あった地蔵さんの身代わりのようである。  以前は指導テープの代わりに立ち木に派手なペンキが塗りたくられて雰囲気が台無しだ ったように思うが、今は一寸見には分らない。しかし、よく見るとあちこちにうっすらと 痕跡が残っている。  徐々に明瞭に形を現す尾根沿いに市境界杭を追って徐々に高度を上げて行く。鳥飼山東 尾根の小さなピークに上がると木立を通して鳥飼山の円錐状の姿が目の当たりになってく る。やや下って一気の登りに入る。手も使って四足フル回転。今日は暑くなると薄着して きたが、早くも帽子の下から汗が滲み出る。きついといってもビル12階分位だから、や がて上方にスカイラインが見えてくる。一息入れた狭い鳥飼山の頂にはなぜか鯉幟の吹流 しが立ち木高く結ばれている。相変わらずの景色。北にはこれから行く昼ヶ岳の連山。南 には高畑山から寺山に延びる三角の起伏がある。本当に四等三角点くらい置いても良さそ うな山ではある。(笑)  一息入れる。にわかに風が強くなる。風速は10mは優にあろうか。どうも風の通り道 らしい。一転して鳥飼山の西側は岩がちの急傾斜なのだが、そこを降りてゆく間も音を立 てて吹き抜ける風に汗ばんだ体は一気に冷え込んで寒い。浮石にでも体重をかけると危な いけれど、木立の中に出来るだけ早く潜り込みたく気はせく。(^^;  急傾斜を下って暫くはゆるゆるとしたアセビやヒメシャラ、ツツジの明るい尾根。マツ クイムシの影響か松は枯れているものが目立つが、多く見かけるアベマキの木はなぜか元 気だ。そこへ何か機械の音。こっちも堰堤工事?と思ったら昼ヶ岳東側の猪名川サーキッ トのオートバイの騒音である。前回は昼ヶ岳南峰の反射板辺りで良く聞こえたように思っ たが、こんな所でも聞こえるとは知らなかった。
Ca520mへの登りの清々しい雑木林
 やがて今回一番のきつい登り。それも直登に近く半端ではない。その上、広葉樹の落ち 葉が分厚く、滑ること甚だし。ズルリと滑ればガタッとスタミナ消耗。幸い手頃な灌木は 生きたものが多く、掴んで体重を預けても大丈夫で助かる。70mばかり高度を吐きだし て再びそれを取り返してCa520mピーク。ここも石と枯れ木の狭い山頂だ。  手元のGPSを確かめたら、次の554m標高点ピークと進んでいる方向とが真逆だ。 また入力ミスをしたか? 実はそうではなく、ピークの北の鞍部とは10m程度の差しか ないので、いつの間にか過ぎてしまったらしい。左に水音を立てる小さな沢。前回も不思 議に思ったが、一種の二重山稜だろう。すると尾根が広がって沢の源頭に出る。この辺り 踏み跡が薄くなる。が高みへ向かえば明るい緑のフェンスに囲まれた関西電力の反射板が ある。また踏み跡が現れてなだらかな林の最も高い場所に昼ヶ岳南峰のプレートがあった。  ここから70m下って再びそれを取り返す昼ヶ岳への最後の登り。ようやく前方に大き く昼ヶ岳本峰の姿。意外に三角形のかっこよい姿をしている。本峰と南峰との鞍部は東西 に踏み跡がある。但し、昼ヶ岳山系は概して東側が急峻なので、下るのは骨が折れるだろ う。エスケープするなら西。多分、林道の支線に出るのだろう。  本峰への登りもきつい。おまけにシャリバテ。そこへ正午を告げるサイレンが下界から 響いてくる。(登ればメシ、メシ)心の中で鼻先にニンジンをぶら下げる。ズルッ。また 滑った。  昼ヶ岳本峰も山頂は狭いが、西南方向だけなぜか伐採してあって見晴らしが良い。ピラ ミダルな大船山の全容が大きい。その向こう霞に白っぽいのは羽束山らしい。振り返れば 木の間越に反射板を頂いた昼ヶ岳南峰。なんだか向こうの方が高く見えるのは目の錯覚だ ろうか?それらを見ながら昼食とする。目の前でヒョウモンチョウが日向ぼっこ。と見る 間にひらひらと舞い上がると、数匹が絡み合っている。暖かさに春を感じて早くも恋のサ バイバルだろうか。(笑) 風にカラカラと音を立てるのは誰が架けたのか高い梢の大きな 山名板。裏に『十方○○』と墨で何やら宗教っぽい四字が書かれていた。
うらうらと暖かかった昼ヶ岳山頂を後に
内田池へは東側へ下山する
 北西方向にある内田池(うったいけ)への下山路は、東方向にあるから少々勘が狂う。 一旦、鞍部に出ると北方向へと方向を変える。昼ヶ岳北側の谷の源頭をぐるりと迂回しな がら向こう側を辿るという感じで更に西方向に振っていく。この辺りの雑木林はなかなか いい雰囲気である。流れの水音がやや大きくなってくるといつの間にか人工の土堤が現れ、 その上を流れに沿いながら歩いていくという算段になる。右下に満々と水を湛えた内田池 の水面を見ながら進むと上池と下池の境の土手となり、まもなく林道の車両転回広場に飛 び出す。
内田池と昼ヶ岳本峰
 前回はこの辺りで昼食を摂った覚えがある。西側を見晴らせる場所は今も健在。そこか ら望む山々は遠く近く起伏し、当時は少々よそよそしい感じがしたものだけれど、台形状 の奥山も青ヶ原の稜線も、2年前に歩いているからか今はなんだか親しみが湧く。
内田池の林道終点から西方向。左の台形状の山が奥山
右の稜線が青ヶ原で、中央は峰ヶ畑だろうか
 当初は内田池の西側の尾根も縦走するつもりだったが、林道を見るとその誘惑に勝てず 安易な方向に向かってしまう。(^^; 即ち林道歩き。でも全線舗装の無粋なものではなく 波豆川源流に沿う地道だからそんなに毛嫌いするほどでもない。波豆川源流はほんの小さ な滝などもかけながら次第に水音を大きくしていく。そして流れの沿ってピンクのテープ がひらひらしているのは、水源調査でもあったのかもしれない。  やがて山の中から飛び出すと周囲はにわかに明るくなって、視界が大きくなった左手に は圃場整備が終わった農地が広がり、遠くに大磯最奥の民家の屋根が見えるようになる。 昼ヶ岳山頂から伐採箇所を通して南に見渡せた箇所に違いない。目の前にはさっきまで歩 いていた昼ヶ岳に至る稜線が屏風に描かれたように上下している。いつも思うことだが、 今までのトレースを眺められると、なんだか感無量になるから不思議である。
作業所になっている萱葺民家から鳥飼山(右)とCa520m山
 小規模作業所と看板が上がる萱葺民家横を過ぎると、左手に取付の手前にあった墓地が 眺められ、大船山登山口を右にすると広場にぽつんと止まっている車が見えた。  10年ぶりの昼ヶ岳縦走。最高峰でも600mに満たないが、幾つも急峻なピークがあ って、そのアップダウンは結構登り応えがある。 「結構疲れましたねえ」。 足腰に心地よい疲れを感じながら帰路に着く。それにしても目が痒い。
【タイムチャート】
08:10自宅発
09:20〜09:25カナディアン大磯(駐車地)
09:45取付の電柵
10:10〜10:20高畑峠
10:30〜10:31鳥飼山東尾根の小ピーク
10:49〜10:55鳥飼山(528m)
11:18〜11:24Ca520mピーク
11:50〜11:51昼ヶ岳南峰(590m)
12:07〜12:37昼ヶ岳(595m)
12:53〜13:00 内田池
13:42カナディアン大磯(駐車地)


■今回のルートはこちら


昼ヶ岳のデータ
【所在地】兵庫県三田市、川辺郡猪名川町
【標高】595m
【備考】 波豆川と猪名川に挟まれた南北に連なる山並みの主峰で、
雑木林が主の知る人ぞ知る名山です。なだらかな南峰と
尖った北峰からなり、南峰にある関電の反射板からの眺
めが良く、北摂の山々を西から俯瞰する事が出来ます。
鳥飼山のデータ
【所在地】兵庫県三田市、宝塚市
【標高】528m
【備考】 三田市大磯、宝塚市香合新田を結ぶ香合道の峠の北に位
置する山です。峠の南にある寺山に劣らず三角錐の形の
良い山容から、大磯からは「烏帽子」と呼ばれています。
岩の転がる狭い山頂からは、良い展望が得られます。
【参考】2.5万図『木津』



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